第二話 生きたがり

 「期待」


 それは私がこの世で最も嫌いな言葉だ。

 

 「期待してるぞ」


 「期待してたのに」


 「期待を裏切るな!」


 勝手に期待して、勝手に幻滅して、また勝手に期待して。

 期待という言葉はまさに理不尽だ。 


 「お前がこの世界を、死神に託された最後の道を・・・」


 小さいころからこの言葉を聞かされ続けた。

 最後って何?死神って何?この世界って何?私って何?

 それでも私は子供だった。その言葉を真に受けた。そして、彼らの言うとおり何人もの敵の命をこの手で触れた。何人も何人も、ある時は手で触れずに殺気を向けるだけでも殺せた。その度に彼らは私を褒めたたえてくれた。

 私は天才だと思った。彼らが必要としてるのは私だ。私しかいない。そんな信念がさらに私を強くした。

 普通の死神は手で触れることで命を殺す。だが私は半径5メートル以内にいる生命なら私が心にイメージするだけで殺すことができるようになった。

 彼らはさらに喜んだ。私が任務から帰ってくるたびに宴を開いてくれたりもした。だから私はもっと強くなろうとした。

 もっと強く、もっと強く、もっと強くなるためにたくさんの命を殺した。罪のある人、殺せを言われた人、何にも悪くない人。とりあえず殺した。

 そして殺していくたびに私の心の光はいつの間にか真っ暗に染まっていった。


 気づけば私は死神をも殺していた。殺したくないのに、殺す気がないのに殺してしまった。

 

 「期待してたのに!」


 私が殺した死神が言った一言だ。いまだに覚えている。

 その後、私は感情と理性を奪われ、死神の世界から追放された。

 死神は最後まで私を道具扱いしたのか人間界に放り出された。使えるゴミは使うということなんだろう。

 私が語れるのはここまでだ。

 

 そして私、「」は今日もこの世界を意味もなく、途方もなくさまよい続けている。


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