閑話 電波キタコレ!って(神託なの?司祭・談)
(ニュース抜粋)
9月16日現在、〇〇県〇〇市の首都圏物流センターにて、火災の続報を県が発表した。
発生当初から、消火活動を継続しているが、3日たった午前1時現在も鎮火の確認はとれていない。
問題とされる物流センターは、業務委託先従業員の他10名ほどが、煙りを吸い込んだことによる火傷で病院に搬送。命に別状は無いとの事。
ただ、現時点で延焼面積よりも大きく近隣の住民に避難勧告がだされる事態となっている。
理由は、度重なる爆発と延焼が継続しており、この物流センター近くにあった療養施設も類焼。多くの怪我人と一名の死亡を確認。
火災元よりも周囲の損害が著しく、また、鎮火の見通しがたたないことから、避難継続となっている。出火原因は、現在調査中。
(週刊〇〇抜粋)
類焼した療養施設は、センターの爆発の衝撃で窓ガラスが割れ、個室の壁も壊れる被害が報告されている。また、その破壊のあとにセンターからの火の粉で火災が発生、施設の長期療養棟が二棟焼失した。
当該施設は、多くが末期癌患者等の、終末医療受け入れ先を待つ間の準備逗留施設としての役割を担っていた。また、認可待ちではあるが、いずれ療養型ホスピスとしての運用を視野にいれており、出資者の一人である犬神氏が..(施設側インタビュー省略)
物流センターを経営管理する株式会社社長の謝罪会見は、県民への謝罪と共に、療養施設を運営する母体と山野の提供者である犬神氏への損害賠償へも言及された。
慈善団体への寄付と共に、この療養施設に出資した犬神氏本人が、同じく物流センターの敷地の所有者というだけでなく、この火災による死亡者に含まれるという事も、大きく取り沙汰されている。
ご家族を病気で亡くし、その悲しみを同じくする方々に少しでも役立ててほしいとの考えで、敷地から運営資金にいたるまで様々な援助をしてきた人物である。その犬神氏を、このような形で失うことに、近隣住民だけでなく、多くの世論が火災の原因究明を...
《出火原因を自然災害とする企業側の説明が紛糾》
企業側の説明と当時の気象条件の検証が行われる。
また、この物流本社には効率化の為に安全性を疎かにしたとの指摘もある。謝罪会見に誠意が見られないとの意見も多く..
***
或る国に、神の教えを守る良き息子がいました。
父母は熱心な信徒であり、その息子にも同じく信心を求めました。
父母の期待に答えるべく、息子は神の子となるべく、毎日厳しく躾けられました。
朝に神の教えを学び。
昼に剣を学び。
夜に天へと祈る。
そんな良き息子に父親は言いました。
良き友人をつくりなさい。
父親には沢山の友人がいました。そうすればきっと父親のように、毎日楽しく暮らせるでしょう。
そこで彼は、厩番の優しい子供と遊びました。
そんな良き息子に母親は言いました。
高貴な者は、下々とは分けて生きなければいけません。
確かに母親には、高貴と名乗る沢山の人々があつまりました。尽きること無く多くの会話をして、賑やかに暮らせるでしょう。
彼の周りから、子供の姿は消えました。
父親は更に云いました。
良き人々と同じことをしなさいと。
そうして権威のある学校に入りました。
そんな息子に母親は云いました。
人より多くを学びなさいと。
そこで彼は勉学に励みました。
そうして良い成績を残したのですが、彼が寄宿舎に入ると、父母は彼を忘れました。
思い返さずともわかってはいました。
良き神の子である息子を、彼らは恐れたのでしょう。
彼らは、決して息子を人前以外では褒めも、愛しもしませんでした。
そんな父母に、新しい子供ができました。
休暇であろうと何であろうと、家には帰ってくるなと連絡が来ました。
もちろん、彼らはそれが彼の為だと云いました。
それでも仕える者からは、様々な話が伝わってきます。熱心な信徒は神の子への奉仕を忘れません。
新しい子供は、神の教えも教わる事なく。
嘘も偽りも学ばずに、父母と一緒に暮らしました。
剣も習わず、打たれる事もなく。
すべてが正しく、成すこと話すこと、父母はすべてを愛しました。
けれど、良き息子である彼は、別に父母を恨むも、新しい子供を妬むもありません。
彼は良き息子で、良き神の子だからです。
彼は嘘と偽りを正す神の子です。
だから、たった一人でも彼は平気です。
それに自分を諌め導く事ができるは、神、だけなのです。
父も母も、彼に偽る事はできません。
正しい息子でいる限り。
そんな良き神の子を前にして、父母はいつも笑顔です。
彼の父親は神様を恐れているので、いつも下を向いて目を合わせません。
彼の母親は神様を恐れているので、いつも一方的に喋ります。
文句を云うのは、出自の定かでない新しい子供だけです。
ですが無知な子供を、良き息子は許しました。
母親も言っていたように、神を知らぬ下々には許しが必要だからです。
それに神の教えを説けば、そんな新しい子供も笑顔になりました。
偽る者の笑顔は皆、同じでした。
そこで彼は良き神の子としてのみ生きることにしました。
朝に祈り、己を鞭打ち。
昼に祈り、鍛錬をし。
夜に祈り、聖句を唱えました。
笑顔の人々に囲まれて、彼は一人で祈りました。
彼は祈り、答えを探しました。
暗い夜に、月を探しました。
彼の父親は、とても嘘が上手でした。
教会の教えである美徳を守らずにいるのに、貴族だから許されていました。
ですが貴族だからこそ、賭博や背教者に惑わされ、権利を奪われるは間違いです
彼の母親は、とても嘘が下手でした。
教会の教えである美徳が守れないのに、貴族だから許されているのです。
故に、偽りが露見していないからと奢ってはいけません。
ましてや己の産んだ不義の子を、神に偽って名乗らせるのは重罪です。
そして彼から簒奪するには、見え透いた嘘はいけません。もっともっと狡猾に動かねば、神の子から相続財産を奪える筈もありません。
そして一番彼ら夫婦が過ちは、愚かな行いが周囲に知れ、統治にさえも影を落とすという愚行の事なのです。
一見すればすべては、彼ら夫婦の物に見える全ては、彼の持ち物でした。
相続権の無い父親には、家名を継ぐ血は流れていません。
長子相続が遺言で残されている限り、彼以外は公爵ではありませんし、もちろん、出自の定かでない弟と名乗る者は、人とさえ認められていません。
すべては、彼が許しているからこその話でした。
故に、彼の元には聞きたくもない話が積み上げられ、彼は耳を塞ぐこともできませんでした。
良き息子は、嘘を嘘とせず真実とできる力があるならば、許すものをと失望しました。
失望と共に、彼は祈りました。
納得のいる答えを求めました。
彼は祈り、相変わらず神は与えず。
彼は祈り、答えを出しました。
彼が大人になった時、宗教的理由と領土欲により大きな征伐戦争がおきました。
神の名を掲げた争いは、彼が何者であるかを教えました。
己の嘘と偽り、そして何者であるかをあきらかにしました。
彼は聖騎士であり、公爵であり、ただの人殺しでした。
神の子であり、支配者であり、強欲な人間でした。
あの父母と同じく、愚かでした。
愚かだったからか、それとも元よりか、彼の神は、神の子を救いはしませんでした。
彼もわかっていました。
疎まれた人生をわかっていました。
彼は..それでも信じようとした人に裏切られました。
積み上げられた薪の上、業火に焼かれながら彼は思いました。
皮膚がめくれ上がり炭になりながら、思いました。
弾けた見えない目で月を探しながら思いました。
「我だけの、裏切らぬ、
人殺しの罪人は祈りました。
彼は良き息子で良き神の下僕でした。
それでいて偽りでも神を信じる者でもありました。
ですが最後まで、神は無慈悲であり、救いは無く。その魂は消えました。
ただ、その乞う声は、失われた神に届きました。
神なぞいなかったと嘆く声が。
安寧を司る死したる神。
そしてその神から生まれし神の欠片に届きました。
それは妻である異形の神へと齎され。
消えゆく魂は、失われし器を..
***
忌神(偽神)はイヤルメザの人々に告げる。
シュピツナを招聘し、我らが手を出せないロプを取り返すのだと。
そしてロプにて我らに神格を与えるのだと。
本来の神を殺し、後に現れた忌神は、彼らに耳障りの良い言葉を並べる。
シュピツナを招聘し、力を特別に与えよう。
彼らの多くは死ぬが、それによってさらなる力を神(偽神)は得るだろうと。
そしてその行いを続ければ、確かな未来をイヤルメザに与えると。
確かな、未来を。
神を殺した者に救いなど無い。
神を殺した者の国に未来など無い。
己を守る神を、親を殺した者に何を与えようというのか?
オロドムに多くのシュピツナが招聘される。
多くがイヤルメザに落ちる。
だが、あまりの罪の重さに神々の嘆願が主神へと届けられる。
今更の嘆願に主神は嗤う。
だが、見捨てずに、2つの魂を手に取った。
1つをソルソンドの高地人の元へと流す。
1つを多くのメザシュピツナの中に混ぜて落とす。
沢山のシュピツナ、沢山の奪い合い。
混ぜられた慈悲は1つ。
残り1つは、絶望だ。
2つだけ、種を混ぜた。
この2つの魂が辿り着く先を見て、暇を潰そうと。
その2つの魂が出した答えで、慈悲の配分を決めようと考えた。
これもまた、地に生きる者どもには遠い話だ。
「何だか、キュピーンって来ましたっ!先生」
「食事中ですよ、オリザ巫女見習い」
「何だか、神罰しちゃうぞって言ってます、先生」
「いつものですね、まぁ今の王家は、罰当たりしかいませんし」
「今回は、超弩級っていってますっ!」
「スープをきちんと食べなさい。亡命の準備は進んでいますから。多分、申請も通るでしょう」
「さすが先生ですっ!いつもの
「お野菜も食べなさい。それから、異端審問で火炙りにならないように、言葉には気をつけましょうね」
「大丈夫です、異端審問官の長が先生ですしっ!」
「ほら、ちゃんと噛んで食べるんですよ。雑談で神と交信できるオリザには負けますよ」
「先生、今回の招聘で、
「お水を飲んで落ち着きなさい。見ればわかりますか?」
「先生でもわかるそうです」
「では、他の者にもですか?」
「いいえ、他の方々は見つける事はできません。きっとだめです」
「何故ですか?」
「今までの方々とは真逆の
「それはそれは。なら、私が確保しても逆に疑われる事は無いと?」
「
「つまり、その者を回収してから亡命する時間はあると?」
「急げって言ってます!」
「他には?」
「うーんと、うーんと、あっ、
「きた?」
「多分、連邦は大幸運期か転換期になりますぅ、はぁはぁ」
「繋がりを切りなさい。消耗して食事を戻してしまいますよ。ほら、もう、食事だけに集中しなさい」
「はぁい」
「..転換期ですか、まったくどうしたものか」
「先生、皆は?」
「オリザだけですよ」
「そ、ですか」
「オリザは私の娘として連れていきます。たぶん、お目溢しは、そのメザシュピツナだけになるでしょう。監視もつきますしね。
残念ですが、貴女のお友達は無理です」
「私は大丈夫ですっ、先生がお父さんで嬉しいもん。でも先生の家族は?」
「家族も駄目だったよ。でも、仕方がありません。卑怯ですが私とオリザだけ逃げることになりますねぇ」
「卑怯じゃないですっ、先生はいつも頑張ってましたっ」
「保身しながらね」
「でも、選んだのは皆です。
連邦に渡っても大丈夫になる方法を教えたのに、信じなかったのは皆ですもん」
「私の力もたりなかったんだ。でも、オリザは信じてくれたしね」
「あたりまえですっ!
それに
自ら、気がつくことを、方々は求めているのです。
だから先生が、あちらに渡られたら、
双葉様は可愛いそうですよ、きっとこことは違って楽しい事がいっぱいですよ、あれ?
あれ、先生?
あれ、泣いてる。
泣いちゃダメですよぉ。
ねっ、おめめがとけちゃいますよぉ〜どうしよぉ、泣かないでくださいよぉ。
う〜ん、そだ、ご飯食べましょ、ご飯ご飯、先生、ご飯食べてないでしょ、そだそだ、たべましょ」
(オリザの言葉のルビは、先生が意訳しております。この後、先生もご飯を食べて泣き止みました。)
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