第31話 『クロと黒』
「意外だなぁ。クロ殿はこの戦いに参戦しなかったのかい?」
「共に戦いたいという思いはあったが、今回は別の用があったのでな」
「それはもしや、僕の件?」
「いや、それはない」
嬉しそうに尋ねる白衣だったが、端から否定され肩を落とす。
「まあ貴殿にも用はあるのだが」
「へーそうかい。それで何の用?」
「漸く貴殿の正体が掴めてきたのでな。その報告だ」
「脅しにもならないね。単なるブラフかい?」
「学校関係者なのは当然だが、当初私は教員なのかと思っていた—— が、そうでもないのではないかと感じた」
「つまり、教師ではなく生徒だと?」
「現在はその可能性が大いにあると考えている。更に大方見当もついている」
「ふーん、それで回答は?」
「一年二組賢木江麗真。候補中で最も怪しかったのでな。とは言っても最終的にそう
決定した根拠は唯のバイアスのかかった主観的な考えだが」
「それはどういう?」
「博士と名乗るからには頭が良いに違いないと」
「ぷっ、ハハハハ!そんなもの推理でも何でもないじゃないか!」
「最初から推理と言った覚えはないが」
「そうだね。猫に論理的な説明を求めた僕が悪かったよ」
「意味のない挑発は慎みたまえ」
毛を逆立てて尾を張る黒猫。シャーと野生的な叫びを上げる。
「ごめん、ごめん。では僕はこれから用があるからこれにて失礼」
怪物に変貌しかけた黒猫から逃走するように白衣はその場を後にした。
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