第26話 『同好会』

「あれ、円福寺は?」

「文化祭実行委員だそうよ」

「—— 文化祭?」

 

 午前中は不機嫌で酷い有様だったのに、眠って回復したのか珍しくちゃんと目を開いて

話し合いに参加している。

 まあ、話し合うこと自体がそんなになくて、大抵四方山話で終わるんだけど。


「そういえば、そんなものあったな」

「休もうかしら…… 」

「人多い。面倒くさーい」

 「文化祭」という単語だけで、ここまでブルーになるものなんだなぁ……

 僕も正直積極的に参加しようとは思えないんだけど。


「遅れてすみません—— 皆さんどうしたんですか?」

 そこに対称的な円福寺がやって来る。


「大丈夫よ、只文化祭の存在を改めて知って溜め息が出ただけで」

「そうそう。人混みを想像しただけで—— うっぷ」

「その日行くか否か決断を下そうとしていてだな…… 」


 多少は円福寺に気を遣ってオブラートに包んでいるけれど、更に悪化しているような気

がする。

「もしかして皆さん文化祭は嫌いですか…… ?」

 円福寺が瞳を潤ませると三人とも窮鼠のようになって目で合図を送り合う。


「いや、そんな事はない!」

「そうそう。只何をしていいのか分からなかっただけよ」

「何か意見はあるか?」

「その点については大丈夫です。同好会を作りましょう‼」

「「同好会?」」

「丁度良いのでこの機会に団体を設立しようと思いまして」

「作るのはいいが、表向きの活動はどうするんだ?」

「それなのですが、色々勘案した結果—— 」

 ごくりと四人の喉が鳴る。


「—— 写真同好会ということになりました」

「確かにこの学校に写真部は無いけど…… そうなると最低限カメラは無いとまずいんじゃない?」

「それについても何とかなりそうです。学校の方に数台ありましたので」

「まあ、携帯でも十分綺麗に撮れるしな」

「じゃあ、決定で良いのかしら…… ?」

「では、申請書出して来ます!」

 予め用意してあったようで、直様駆け降りていってしまった。


「今ふと思った問題が一つ」

「何?」

「今から文化祭の準備して間に合う?」

「「あ」」

少なからず気分が盛り上がろうとしていた所に、ドライアイスが投下され、四人の顔は色

を失った。

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