第21話 『夏期休暇計画』

 すっかり存在を忘れかけていた、僕等以外の全高校生が浮足立つであろう夏休み。

当然ながら僕達の脳内に休暇の計画が建設されている筈もなく、目先の問題に思考を巡

らせるのに精一杯だ。

そして、今日の超会では何時になく真面目に議論が交わされていた。


「夏季休暇の間に方を付けるわよ」

「そうですね。時間も十分ありますし」

「おー」

「盛り上がってる所申し訳ないんだが…… 夏休みって生徒が散らばるから効率悪いんじゃないか?」

「「あ…… 」」

「失念していたわ…… 」

「にゃ」


慰めているのだろう、クロがしょんぼりする深水の頭を撫でる。


「では—— 折角集まったのですから、この五人で遊びに行きませんか…… ?」

「「え?」」


 呆れとかではなく、純粋な驚きでその他全員の音が揃う。

誰にもそんな発想が無かったからだ。

僕等は仲間でこそあれど、友達の段階には未だ至っていない。今思うととても奇妙な関係

だ。


「何というか、今まで意識してなかったな」

「それだけ忙しかった」

「この機会に親睦を深めるというのも、良いと思います」

「じゃあ、決定ね。ずっと怯えてても息が詰まるだろうし」

「はい。では具体的には何をしましょうか」

「海水浴」

「花火大会とか」

「ハイキングかな?」

「えーっと…… 」


 この面々ならこうなる方が自然だと思う。

きっとこんな力が無かったら糸は交わらなかったと考えると、何やら運命を感じてしま

う。

 全員の意見が出尽くすと円福寺が掌を叩き合わせる。


「では、全て実行しましょう‼」

「え、どれか選び出すんじゃないのか?」

「あ、すみません。皆予定がありますから全部というのは無茶ですよね…… 」

「「いや、全く」」


 気を遣った訳では無く、四人全員が事実を述べている。

毎日放課後集まる暇があるのに、夏休みに閑暇が無い訳がない。

大体最初から予想はついていたけど。


「では問題ありませんね!」


なんかいつもより円福寺が生き生きしていて、安心の微笑を浮かべていたら、深水に呆れ顔をされた。

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