第13話 『超能力会議』

 藤原を新たに仲間に加えた初めての超能力会議(通称:超会)が開かれた。

 平常通り全員出席。内一人は中途で離脱するんだけどね。

 今日はいつになくギスギスしている。無理もない。あれから三、四日しか経っていないのだから。

 終始頬杖を突いて疲れたように溜息を吐く深水。

 その膝の上で大欠伸をする黒猫のクロ。

 変わりなく何も慮ることない廻神。

 鉄球のような重苦しい雰囲気に押し潰されそうになりながら、無理に笑う円福寺。

 困り果てた様子で俯いて顔を上げようとしない藤原。

 そして、皆の顔色を窺いながらきょろきょろ右往左往する僕。

 

 どうしよう。このままだと一向に話が進まない。

 けれども、議長は解散の合図を出しそうにない。


「取り敢えず今日の議題なんだけど」


 唐突に深水が喋り始めると場が一気に静まり返った。

 といっても、然程音が飛び交っていた訳ではないのだけど。


「最近街でポルターガイストが起きているらしいの」

「ぽるたーがいすと?」

 知識の乏しい廻神はボイスレコーダーのようにその言葉を反復する。

「えっと、道具が独りでに動き出す現象のことです……」


 丁寧に円福寺が説明すると、赤べこのように何度も首肯する。

 本当に解ったのかなぁ。


「実害が出たのか……?」

 居心地悪そうに藤原が質問する。


「今の所は何も。でも恐らく」

「——超能力者の仕業?」

「そういうこと」

「俺たちに関係なくないか……?」

「何か勘違いしているようだけど、目的は街を守ることじゃない。敵になり得る者を排除することよ」

「それはつまり……」

 円福寺が震え出す。

「にゃー」

 黒猫は彼女の背中に前足を乗せて、その振動を停止させる。


「別に殺す訳じゃないわよ。仲間に引き入れられるならそうする。出来なかったらこの間のように対処するしかない」

「この間?」

「円福寺が転校してくる前のこと。藤原も聞いて」


「あ、ああ……」

 そして廻神は夢野茜『悪夢傀儡』についての事件を二人に語り始めた。

 廻神途中で戦線を離脱したため、一部は僕と深水が付け加えた。

 僕は最後まで廻神たちのやり取りを傍観していたのだが、深水は存在をすっかり忘れていたヘッドホンを装着して、終始難しい顔をしていた。

 多分、二人の反応を聴いて再度見極めていたのだと思う。

 仲間に相応しいかどうかを。


 つまり彼女はまだ彼らを疑っている。というより信じられていない。

 その事に僕は気の毒に思ったが、それよりも廻神と自分はもう信用されているのだと間接的に悟って、大きな歓喜に包まれた。




「『ポルターガイスト』って知ってます?」

「うん、勿論。あ、意味じゃなくて超能力者の情報をね」

「僕も小耳に挟んだよ。真夜中に山の方から街へ色々なものが下りてくるらしい」

「山から街へ?一体どんな意図が」

「まだ被害は出ていないというけど、絶対このままでは終わらない筈だ」


「嵐の前の静けさ……何かを準備しているのでしょうか?」

「その可能性は高いね。一番単純なのは街を襲うことだけど」

「そんなことして何の意味が?」

「さあ?学校教育の国語にケチを付けるようだけど、その人の心情、意志というものはその人にしか分からないし、解らない。だから、思い遣りとか気持ちを想像するなんていうのは全く意味が無い訳では無いけど、完璧に当てようとするのは詮無き事だよ」

「つまり、何が仰りたいんですか?」

「だから、予想を立てるのは良いけど、相手ばかりに気を取られるなっていうこと」

「はあ……」

「敢えて焦らしたけど、結論を述べると正確な超能力の種類判別は難しい。情報が少なすぎる」

「まあ、そうですよね……」

「でも、予想は出来るだろう?」


「えーっと、念力とかですかね」

「まあ、順当にいけばそうだろうけど、多分違うね」

「じゃあ、博士の予想は何なんです?」

「うーん、——かな」

「成程。それは考え付きませんでした」

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