第2話 生徒会室
「会長あれはなんのつもりですか?」
生徒会室を訪れた僕は、会長である一ノ瀬涼音を問い詰めていた。
「なんのつもりも何も、僕は君を生徒会に勧誘しただけに過ぎない。
大丈夫だよ。君が女装男子ということは絶対秘密にしておこう。
それにしても君は変わっているね、普段モデルをやっている時や、セリッターなどでは、あんなにも女装しているというのにね」
「僕は学業とプライベートは分けて考えたいので」
「でも、僕が言わなくてもいつかバレるんじゃ無いかい。君その格好でも女子にしか見えないんだから」
会長は僕のことを見つめながらそう言った。
確かに僕の身長は150あるか無いかと言う、とても高校生男子とは思えない身長だ。女子と比べても小柄な部類に入る。加えて華奢な肩幅に色白で童顔。髪も高校生男子にしては長くサラサラだ。声も綺麗なソプラノ。
今も目を合わせて喋るには少し見上げければならない。
さらにこの学校の制服はブレザーなどで男子だとはまず思われない。
「多分君を見て、男子という人はまずいないと思うよ」
「確かに僕は自分の容姿が、女性的であることを自覚しています。自分の女装が趣味である事も、しかし、脅しですか」
「脅しだなんて人聞きの悪い、僕と君との仲じゃないか。同じモデルとして生徒会のメンバーとして仲良くしたいだけなんだけどね」
これはどうやっても生徒会いりから免れるほうほうは無いみたいだ。
「分かりました。生徒会には入ります、だけど僕が生徒会の仕事をするのはモデルの仕事がない時だけです。それでいいなら」
「もちろん、僕だって事実そうしてるわけだしね」
僕が生徒会入りを承諾すると、生徒会室の扉が開いた。
「涼音、新しい子勧誘出来たんだ」
入って来たのは、この進学校にありながらギャルの格好をした、スレンダー体型の少女だった。
「愛梨沙か、勧誘に成功したよ。とっても優秀な人材だよ」
愛梨沙と呼ばれた少女は僕を見るなり、いきなり抱きついてきた。
「何、この子、めちゃくちゃかわいいじゃん。はぁ私もそれぐらい小さかったらなぁ」
愛梨沙は僕より15cmほど身長が高い。特別大柄というわけではないけれど、見上げる形になってしまっている。
身長ね、身長がコンプレックスなのか。僕とは違うんだな。
僕はこの低身長は女装男子という視点から見ればメリットしかないんだが。
「いつまで抱きついてるんですか。いい加減離れてください」
僕がそういうと亜里沙は「ごめん、ごめん」と言いながら離れた。
初対面の男に抱きつくなんてこの女ビッチなのか?
そんなことを考えつつもとりあえず挨拶を済ませることにした。
「僕は1年の雪村です。今日から生徒会でお世話になります」
「私は黒島亜里沙だよ〜。お姉ちゃんて呼んで」
「解りました。黒島先輩」
「すずね〜ユッキーが辛辣だよ」
亜里沙はそういって会長にだきついた。会長は会長で悪い笑みを浮かべながら亜里沙の背中をさすった。
「はぁ、不合理だ」
僕の小声の呟きは誰の耳にも届くことなく空気に溶けて消えた。
無気力な僕は幸せになれる条件とは 雪宮一姫 @kazukiaaaa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。無気力な僕は幸せになれる条件とはの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます