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「にしても闇市か……」
闇市について説明するとき、自然とこの街の歴史についても触れることになる。
そもそも現在リミサを統治、管理しているのは魔導学園グリムノアであるが、それは前々からというわけではない。
魔族連合との戦いの真正面に置かれたこの街は当初、王都からやってきた兵によって統治されていた。
だが、グリムノアができてからは魔法中心の街へと変わっていったため、統治するものも騎士から魔法使いへと変化していった。
市民も「守ってくれるものが変わった」程度の認識だったが、グリムノアが統治することになり大きく変わった部分があった。
それが、「魔族連合に関する情報、物品の徹底規制」だった。
どこからか人類側の魔族に対する情報が漏れ、大きな損失につながったため、魔族連合及び戦争自体の情報を規制する。
それがグリムノアが統治し始めて最初に宣言されたリミサの町の「法律」だった。
この魔族規制の法律が生まれたとき、人々はイマイチ必要性を感じなかった。そのため、、グリムノアによる魔法の教育と生活インフラの安定を見せられた彼らはその規制に特に反対しなかった。
しかし、人間規制されるとむしろそこに触りたくなるものである。ある程度の需要が発生した「魔族」に関する物品は一気に町の暗い部分で取引させるようになった……
「……って話だけど、いくらなんでも都合がいいというかきな臭いというか……」
ブツブツつぶやきながら小袋を探す少年はこの闇市というものについて考える。
(グリムノアは一応こういった闇市を無くすよう動いてはいるけどそこまで積極的じゃない。むしろ陰ではそんなに問題視してなさそう……)
違法のアイテムと響き渡る怒号に老若男女が集まる市場、暗い路地裏でもこんなに活発的な市場は簡単に見つかるはずだ。闇市に潜り始めたのはここ半年くらいからだが、闇市が消えただとかのそういった噂は聞いたことなかった。
そして、それと同時に
(魔族の情報に関しては本当に出回らない……そういや俺、学園で魔族について教わったっけ?)
不自然なまでに思いつかなかった疑問点を見つける。
しかし、悲しいかな。
ぼんやりと考える少年は、眼の前から迫りくる物に気づかない。
「ちょっと邪魔よ!!」
「……ん?ヌガァ!?」
迫りくるオバちゃんにきれいに激突した。
どんと尻もちをつきながら前を向くと、目の前には同じ体勢で尻もちをつくオバちゃんがいた。
「……っつ…もう!気をつけなさいよ!!」
そういうとセコセコと歩き去っていくオバちゃん。やけに周りをキョロキョロしながら速歩きしている姿はどこか恐怖を感じる。
「……ああいうのが魔族の正体じゃあるまいな……」
何だかうだうだ考えるのが馬鹿らしくなってきたため、そろそろ見つからなかったと帰ってしまおうか……と考えていたその時だった。
「グリムノア兵が来たぞー!!全員逃げろー!!!」
才無き男は魔法陣と踊る 泡華 音狐丸 @houka_nekomaru
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