1ー6
「ワシの名前はセイリオ・マッデル。ここの店主じゃ。んで?わざわざこんな薄暗いところまで何の用だ?」
あの後、若干ギスギスとしたムードを漂わせながらも部屋の奥へと招待されたアルスは毒々しい色のお茶らしき何かを出されていた。
「‥‥これ、飲めるんです?」
「飲んでみりゃわかる」
「遠慮しときますね」
‥‥舌打ちが聞こえたのは気のせいにしておこう。
「俺の名前はアルス・マグナルです。で、こんなとこまでやってきた理由ですけど‥‥単刀直入に言います。マジックウェポンを見せてください」
そういうと、セイリオは目を丸くし、
「おいおい、グリムノアの制服着てるってことは天下の円環魔法使いさんだろう?なのにマジックウェポンなんてわざわざ金のかかるもんを‥‥ってまさかおめー」
そういうとクスクスと笑い初め、
「え、円環魔法をつ、つかいこなせないダメガキってことかぁ‥‥?」
(コクリ)
「グリムノアなのにぃ‥‥?」
(コクリ)
すると、我慢の限界が来たのか、セイリオは大声で笑いだした。
「ケーッケッケッケ!!!く、クソガキなのはわかってたけどそれを超えて才能無しのポンコツとは笑わせるのう!ケーッケッケッケ!」
さてここで状況を整理しよう。
他に誰もいない部屋。
外には黒猫一匹すらいやしない。
そしてとどめの今にも殴り掛かりたくなる形相でこちらを笑い続ける爺
やることは一つ。
「ああそうだよ最大火力が出せないダメ魔法使いじゃそれはそうと入れ歯食いしばれクソ爺ッ…!!!」
年の差とかそういったものを意識から外し、本気で拳を顔面にぶつけようとした‥‥
はずだった
「なっ…ぬ‥‥」
体が動かない。
正確には殴るために突き出した右腕が空中に固定されたまま動かなくなっている。
「う、動かねぇ‥‥」
「ケーッケッケッケ!楽しませてくれる奴じゃのう‥‥失礼な奴だが気に入ったわ」
そういうとどこからか出した杖を一振りした。すると、先ほどまで完全に固まって動かなかった右腕が急に自由になった。
「わっとと…」
「ま、年寄りは大事にするべきだという基本的な社会マナーを守れてないのが残念な所だが」
「人には突っ込まれたくない部分があるんだよ‥‥というか今のは」
「ただの『固定化』の魔法陣じゃよ」
―魔法陣
今の円環魔法が広まる前、陣形魔法という種類の魔法が使用されていた時期があった。陣形魔法とは名前のとおり空中や地面に魔法陣を基本とした【サイン】を書き込み、そのサインへ魔力を流し込むことで魔法を成立させていた。
「まだ使っている人いたんだ‥‥使っていた人はほとんどシステムの近い円環魔法に乗り換えたって聞いてたけど」
「ノーアクションで世界に直接ズレを起こすことが出来る円環魔法と違っていちいちサインを描かないといけない分、今の社会では使う奴は減ったが、まだまだやれるものじゃよ」
今のようにな?とセイリオはウインクまできめた。
(だとしても俺が殴り掛かる一瞬の隙に空中に魔法陣を‥‥?)
セイリオ自身が言っていたように、陣形魔法は魔法陣を描く必要があるため、発動までに早くても数十秒かかるのが普通だった。
「ま、ふざけるのもここまでにして取引の話を‥‥といいたいところだが気が変わった」
「じゃあ早くアイテムを‥‥へ?」
その表情におふざけの意思は読み取れず、ただ真剣な瞳でアルスを見つめていた。
「どうだガキ。いや、アルス。陣形魔術を学んでみないかの?」
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