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 魔道の都市

 誰が読んだかリミサの別名である。

 そしてその名に恥じぬマジックアイテムの集まる場所としても有名だった。

 マジックアイテムとは、何らかの要因で魔力が貯えられた道具の事であり、職人が魔力を込めて製作するマジックアイテムは、リミサの街に暮らす人々の生活の助けとなっていた

「新作マジックアイテム販売中で~す!今週は調理器具特集!そこの奥さん、火の元素を使った道具で旦那さんにおいしい料理、作ってみたくないですか~?」

「剣系、弓系、少々高くなるが銃系のマジックウェポンまでそろえてありまっせ~!

 」

 大盛り上がりの夜市ではマジックアイテムの販売が目立つ。アルスの目的もそういったマジックアイテムもとい戦闘用に調節されたマジックウェポンの調達だった。


(円環魔法が使えないのなら、外付けで戦える力を得ればいい。‥‥我ながら安直すぎるけど)


 けれど、現実はそこまで甘くない。こういった探し物は半年ほど前から行っていたのだが、世間一般で売られているようなものはあくまで一般的な武器に円環魔法の4元素のいずれかを付与しただけであり、いくつか試してみた所、まだアルスの貧弱魔法の方が強いという結論になった。


「ってなると裏路地‥‥あんまり表じゃ取り扱えないようなものになっちゃうんだよね」


 リミサは元々あまり広くない町だった。そこに急遽開校が決まったグリムノアの生徒の住む学生寮や学園関係者の住居等を一気に詰め込んだ結果、グリムノアを中心としたきらびやかな表通りの後ろに、迷路のような裏路地が存在する町へと変化したという歴史がある。

 また、あまりの平和っぷりに忘れそうになるがこの街は一応魔族連合との最前線の町。要は補給拠点なのである。

 つまり前線軍に規制されているはずの戦利品として手に入れた魔族側のマジックアイテム等がリミサには定期的に流れてくる。そこであくどい商人たちは複雑化した裏路地を使ってこそこそと商売をしているというわけである


「まぁそういうものって大体ぼったくり価格だから何とも言えないんだけどさ‥‥」

 この際お金に関しては後回しにするしかない。

 裏路地を進んでいくと街頭は無くなり、石造りの道がぼんやりと見える程度の暗い道が続く。


 何度か曲がり角を曲がり、いくつか店を除いたものの、ピンとくるものが無かったため、そろそろ戻らないと帰れなくなるかな…とアルスが考え始めたときの事だった。

 何かを踏んだ。

「?」

 感覚としては確かに何かを踏んだはずなのだが足元を見ても何もなく、何となく周りを見渡した時、気が付いた。

「あれ‥‥?」

 店があった。それも確実にさっきまで存在しなかったはずの奴が。

(隠蔽の‥‥魔法?いやこれは‥‥)

 店名は「セイリオ魔道具点」

 見るからに怪しい店だったが、いずれにせよ求めているものはまともな物では無いのだ。

「こんだけ意味深なんだし、せめてなんかあってくれよな‥‥」


 店に入ると、乱雑に積まれた箱、本、謎のアイテムが目に入る。

 ここまで荒れていると店というより盗人に荒らされた空き家かなんかだったんじゃないかと勘違いしてしまうレベルだった。

「なんだよこれ…けほっけほっ」

 その時だった。

「おいおい、人様の店に入って一言目が「コレ」とは‥‥礼儀のなってねぇクソガキがやってきたもんじゃな」

 そういって床の誇りを巻き上げ歩いてきたのは黒いぼろぼろのローブに身を包んだ、おじいさんであった。


「‥‥店の掃除くらいおじいさんでもできると思うんですけどね」

「ケッケッケ…。ほんとのクソガキじゃねぇかさっさと帰れよ」


 これが、「師匠」とのファーストコンタクトだった。

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