1-4

「やっっっっと終わったぁ‥‥」

 放課後、アルスとラドゥの二人は帰路についていた。

「もう、実技もこう多いと手に入れた達成感や課題が体の奥からにじみ出る疲れに奪われちゃう気がするよ~」

「そりゃあれだけ最初っから最後までフルスピードで吹っ切ればな…」

「あとは今日行けば明日一日休みなのが疲れを加速させたね」

「謎理論をやめろ。そしてなんでどや顔してるんだよお前は…」


 結局あの後、追加で3つの実習があったが、どの実習もラドゥがトップで突破したのに対しアルスは最下位のスコアしかとることが出来なかった。


(転生者の事羨ましいとか言ってたけど、こいつの方がよっぽど化け物なんじゃ‥‥)


 あれだけハイペースで魔力を使ったというのに「疲れた」の一言で済ませられるのは世間一般から見てもおかしいのである。魔力を生命力に置き換えたとき、あの激しさなら、フルマラソンを全力で走りきった時と同じくらいの消耗はあるはずだ。

 そんなことを考えてると知らないラドゥは

「そういえばアル君、勇者狩りって知ってる?」

「‥‥?何それ」

 聞いた事ない言葉だった。

「詳しくは僕も知らないんだけど‥‥なんかね、主に転生者様を狙って襲う魔族連合の隠し玉だとかなんとか?噂で聞いたんだけど、すでに何人か被害が出ているとか‥‥」

「転生者が被害にあっているとか書いてある時点でガセ確定だろそれ」

 転生者の強さはそこらへんに立っている掲示板でも読めばわかる。

 最前線から流れてきた【敵軍総大将の首を取る!】や【○○砦陥落!】といった転生者の大活躍の情報が描かれているはずだ。

「でも魔族連合だってただやられるわけないだろうし、とんでもない‥‥それこそ転生者が向こうにもやってきたとか!」

「だとしたら今頃こんなのんびり話してらんねぇだろ~」

 どうせ子供が夜出歩かないためのほら話が一人でに形になったんだろう。


 授業を受けて、実習ではラドゥにボロ負けして、くだらない話をしながらラドゥと二人で帰る。

 これが今のアルスの日常だった。

 自分が目指した夢はとても遠いと知った今、アルスの最後の支えはこの日常だった。


「んじゃ、また学校でね~」

「おう」

「あ、今日は早くねるんだよ!」

「善処するよ」

 もぉ~と言うラドゥの後ろ姿を見送った後、そういってラドゥの部屋がある学生寮の前で別れる。アルスの寮も近くにあるため、後は帰るだけ‥‥なのだが、別方面へと足を向ける。

「さて、晩飯ついでに見に行くか‥‥」

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