1-2

「ア~ル~く~ん~!ごっはんいこ~!」


 授業終了時間から大きく遅れて魔法基礎知識の授業が終わり、生徒たちがぞろぞろと教室から出ていく中、ある生徒がアルスへと抱き着いてくる


「‥‥あのなドゥ、人の目が多い所でそういうことはやめようか」

「え。なんでさ」


 急に抱き着いてきたこの少年はラドゥ・ファンガ。水色をしたボブの髪が特徴の少年で、高い声のトーンに活発的な小動物を思わせる言動、そして何より中世的な見た目をしているためよく勘違いされるが、アルスと同じれっきとした18歳男性である。実際、ラドゥの事をよく知らないであろう一般男性生徒何名かが思いのこもったこもった視線を浴びせてきているため、精神的によろしくない。


「幼馴染って事が学園中の生徒が知ってるわけじゃないんだ。変な目でみられたくn」

「そうなったら正式にお付き合いするしかないね‥‥///」

「頬を赤らめるんじゃねぇよ。嫌だよ。…えっマジで言ってらっしゃる…⁉」

‥‥れっきとした男のはずである。あとなんか変な視線が増えた気がする。


「僕知ったんだ。真実の友情、それを極めたときに生まれるのが愛なんだって…!」

「さてはこいつまた変な本読んだな‥‥?」

 希少本コレクターかつド天然、そのため本の内容に言動が影響される事が多い。何を読んだのかは‥‥聞かない方がいいだろう。こういう時は話を本線に戻すのに限る。

「あ~…んで飯だっけ。こんな時間になったけど2人分も席あいてるか‥‥?」

「あ、そうそうごはんごはん‥‥まぁ、2人分くらいならあいてるんじゃない?最悪埋まってそうなら何か購買で買って庭で食べればいいじゃない」

という事でレッツランチタイム。人であふれる廊下を歩いていざ学食へ。


「にしてもこの学園、昼になると急に活気を取り戻すよな」

「授業中とか廃校なんじゃないのってくらい人気ないのにね~」

「それは言い過ぎ」


魔道学園グリムノア

 魔道都市ミリサに創設された円環魔法についての専門魔道学校。

最近勢力を増してきた魔族連合に備えるため、強力な魔法使いを多く輩出することを目的として作られたらしい。

 4年制の学園で、生徒総数は4000人を超える。そのすべての生徒が円環魔法を学ぶべく日々の学業をこなしているというのだから驚きだ。ちなみに二人は2年生である。


「真面目に勉強しても円環魔法がうまくなるわけでもあるまいに…」

「それ、生徒の僕らが言っちゃいけない事だと思うよアル君」

正論である。


「でもひどい話じゃないか。入学する前は「あなたの才能を伸ばします!」みたいなキャッチコピーで誘っといて、実際は「人それぞれ上限があるからそれまでしか応援できません」だぜ?」

「それはそうかもだけど‥‥。実際はそのキャッチコピー、魔族と戦ってくれる若者増やすための宣伝文句だろうし。それに、自分の天井を明確に知るのも大事だと思うよ?その点、転生者様は上限なしに進化し続けられるって聞くよね。うらやましいなぁ」

「何でもありだよなあの化け物様たちは‥‥」

 噂に聞く程度だが、転生者とは、これまで自分が育ってきた世界とこの世界が大きく違く事で世界そのものに【ズレ】を感じやすくかつ発生させやすくなるらしく、円環魔法の適正率がすこぶる良いらしい。そのため、成長のリミットも速度もとんでもないのである。


(一人一軍、人類の希望、勇者、‥‥ヒーローか)

これが才能。生まれの違い。絶対に超えられない壁‥‥


そんな事を考え、アルスがボケっと歩いていると隣のラドゥに声をかけられる。


「というかアル君、君もだいぶ真面目に取り組んでる方だよね。昨日も徹夜してたでしょ。クマひどいよ?」

「うるせぇ。‥‥お前みたいな天才様と違って諦め悪いんだよ俺は」

「アル君も僕に負けず劣らずロマンチックな所あるよね。そんなところも素敵だねぇ‥‥」


ちょっとばかし親友からの目線と今後の付き合いが心配になるアルスであった。

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