東北イタコの日記より 月読アイとの出会い

ガイサイ

第1話

「きりたんから聞いたんだけど、コウレイジュツ?ができるってほんと?」


園児服を着た可愛らいい女の子がこう言います。今までいろんなお客さんが来ましたがここまで幼い子は初めてです。


「はい。できますよー。お嬢ちゃんは誰に会いたいですか?」


こう幼いとあまりお金にはなりそうにありませんが、小さなお客さんなら話は別です。それにきりちゃんのお友達っぽいですし。


「じゃあ○○年に没した××さんを呼んで?」


ん?○○年ではまだこの子は生まれてもいないどころか、おばあちゃんも生まれていない頃ですね?それに聞いたことのある名前でもないですね。ご先祖様かなにかでしょうか。


「わかりましたー。今呼んできますねー。」


まぁ、断る理由もないですし。いいでしょう。いつものようにご指名のお方を私の身体にお招きします。雰囲気悪い人ではなさそうです。というよりごく普通のおばあちゃんです。


「まぁまぁ久しいねぇ××さん。」


目の前の幼女は私の中身が××さんということに気づくとそう口にしました。突然さっきまでと喋り方変わったことに驚きました。


「おやおやどうしたんだい△△さん。そんなかぁいらしい姿で。」


わたくしの中の××さんは答えます。あぁそういうことですか。たまにいるらしいですね。学校では習いましたがお目にするのは初めてです。


「××さんも最期に会ってから変わりないようで。」

「そりゃあ死んでるもんなぁ。変わるも何もありゃせんよ。」


どうやらこの△△さんと呼ばれる幼女は××さんとお話がしたかったようです。1時間ぐらい世間話をしています。おばあちゃん達は話すのが本当に好きですね。...ていうか長くないですか?そろそろわたくし辛いのですけど。


「ずんねえさまー!タコねえさまー!ただ今帰りましたー!!!」


お、もうそんな時間ですか。きりちゃんが帰ってきました。


「おや、長話をしてしてしまったね××さん。ではそろそろ...」

「そうだねぇ。あ、そうだ。」


やっとお開きになると思いましたのに何やらわたくしの中の××さんが変なことを思いついたようです。


「あれれ~なんでだろうねぇ?この体から抜けられないぞ~?」


え、今そういう冗談やめてください。本当に辛いんです。


「いいから早く帰りなさい××さん。今の私の友人に見られたくないんだよ。」


幼女は少し焦っているようです。


「タコねえさまー!こっちですかー!」

「ほら!もうすぐきてしまうからはやくお帰りなさい!」


少し幼女っぽい話し方になってます。余裕がなくなってきたみたいです。ドタドタと足音も近づいて来ています。


「はーやーくー!帰ってー!」

「えー?どうしようかねぇー?」


子供でしょうか。いえ、見た目は子供ですが。


「帰ってって言ってるでしょー!!!」

「ちゅわー!?」


この幼女!蹴ってきました!ドロップキックです!!!


「タコねえさま!ここでしたか!いるなら返事してくださいよ!もう!って仕事中でしたか。あれ?あいちゃんじゃないですか!」

「あ、きりたん!おじゃましてまーす。」

「きりちゃん、たこねえは今仕事中だから居間で待っててくださいね。」


痛む腰をおさえながらなんとか答えます。


「はーい!」


きりちゃんは元気に返事をして居間に向かって行きます。素直で可愛いです。わたくしの中の××さんはいつの間にか帰ってます。こっちは可愛くないです。


「ありがと。イタコおねえさん。これはお礼だよ。」


見た目相応な言葉遣いであいちゃんという子は茶封筒を2つ渡してくれます。


「はいー。ありがとうございますねー。」


そう受け取った茶封筒ですが分厚っ!なんですか!中にとんでもない枚数の諭吉様が入ってるのですが!


「これはコウレイジュツのお礼でー、こっちは内緒にしててねってお願いの分。」


マジですか。この幼女とんでもねぇですわ。


「あとーこれはさっきのキックの分。ごめんね?」


と渡してきたのは棒付きキャンディ1つ。...ドロップキックが一番きつかったのですが。


「東北イタコの日記」より

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