第49話 予選開始前
「(へえ~ ここが予選会場かあ)」
そんなに大きくはないけれど
最新式の魔力防護壁が展開できる学園の訓練施設会場の前にやってきていた
書類の審査が通ってから数日で大会予選が組まれて
学園都市の各所に散らばる大きめの訓練施設を利用して
セントラルド武闘大会の予選が行われる
予選の前にテイマーサークルで大会手順確認をしようということで
リズの組の予選が指定されている会場前で
テイマーサークルの先輩が試合案内に集まってくれるということだ
・・・
予選の今日は休日なのでリズとアスラの試合を見たいと言っていたので
ネロたちも一緒に来ていて
スライムたちは集まってわちゃわちゃしている
大会に出れることになってはしゃいでいたアスラは
どうもマギハちゃんと密かに約束をしていたみたいで一緒にきている
「ネロ ダンジョンじゃないのに そんなに荷物持ってきてるの?」
ネロの背中にはいつもより膨らんで大きいリュック
「何がおこるか・・わからないからね」
キリっとして真剣にそういっているネロのリュックの横脇からは
ちょうどはみ出したお菓子がこぼれそうになっていた
「ふーん・・」
・・
待ち合わせの予選会場前に
テイマーサークルのアーノルド先輩とリサ先輩がやってきた
「やあ リズちゃん早いね 僕らも早く来たつもりだったんだけど
待たせちゃったかな」
先輩の肩にはフクロウの使い魔のフウロがのっていた
「いえ そんなことは」
「リズちゃんも準備は万端みたいね そこでお願いなんだけど
さっそく私にアスラちゃんを・・ ん? あれは・・!」
「 」パアア・・
やってきたリサ先輩の視線の先にはネロとマギハちゃんと
わちゃわちゃしている3体のスライムたち
「まあ・・! アスラちゃんの他にも4体もいたの?
みんなかわいいわあ・・やったわ~」
なにがやったのかイマいち分からないけど
初対面で幼児たちのわちゃわちゃに加わっていくリサ先輩
「うわあ なに このお姉ちゃん!」「きゅ~」
突如やってきた陽気な接近体に悲鳴をあげるスライムたち
一応事前に先輩がくることは話していたために
不審者に思われることはないだろうけど
リサ先輩の行動は完全に不審者であった
(っていうか4体って リサ先輩の中でネロもマギハちゃんも
使い魔のカウントに入ってるのかな
まあネロもマギハちゃんもかわいい見た目はしてるけどね)
取り残された私とアーノルド先輩
「悪いね リサがああなると歯止めがきかなくてね」
「まあいいと思いますけどね」
スライムたちを所かまわず抱きしめ放題といった感じで幸せそうなリサ先輩
抵抗はしないけどちょっと嫌そうなミスラ
「あーん 水色の子は冷たーい・・でもこれはこれで・・」
とか言っている
「あれはアスラちゃんの兄弟かい?」
「兄弟・・なんですかね 一緒のところにいたから・・」
(まあしいていうなら姉妹ぽいけど)
アーノルド先輩に聞かれたので
ミスラやキスラ ネロたちの紹介もして一旦落ち着くことになった
「リズちゃんは僕らが無理を言って突然出場が決まった上に
セントラルド武闘大会は初めてみたいだからね
はじめは僕らが案内しようってリサと話してたんだ」
「ほんと助かります・・」
(大会経験者がいると心強いわよね)
「私はリズちゃんと選手控室まで一緒だから任せておいて」
(そういえばリサ先輩ってテイマーだよね 使い魔をまだ見たことないなあ)
「はい ところでリサ先輩は使い魔っていないんですか?
普段みないんですけど」
「ああ そういえばまだリズちゃんに紹介してなかったわね
私の使い魔は大きいから普段は出せないのよ
この辺ならいいかしら でておいで ガンサク」
(パッ)
リサ先輩の腕輪が光る
あれもテイマーの特殊な魔法なのだろうか
するとすぐ近くの足元から変化があった
(ゴゴゴ・・)
「ガアアンダッ!」
(うわ)
大きいって言われてたから身構えてたけど それでもけっこう大きい
大人を3人合体させたくらい
5メートルくらいある 岩?でできた人形のような見た目だ
これは授業で資料で見たことがあるゴーレムの魔物だろうか
大きいからすごい迫力だった
「これが私の使い魔 岩窟ゴーレムのガンサクよ! かわいいでしょ?」
(かわいいかどうかは・・いやかわいい・・のか?)
「ガンサクはかわいいんだけど 大きいし角ばってるから
アスラちゃんみたいにはできないのよね・・」
といって残念そうにリサ先輩はゴーレムの使い魔のガンサクを撫でている
・・
少しの間 ガンサクについて熱く語るリサ先輩の話を聞いていて
どうやらリサ先輩はこのゴーレムのガンサクを使い魔として
テイマー枠で出場するみたい
(リサ先輩は大会に出るっていってたしなあ・・ あ、そういえば)
「そういえばアーノルド先輩は その子と一緒にでるんですか?」
アーノルド先輩のフクロウの使い魔のフウロは
現れたリサ先輩のゴーレムに羽毛でふっくら威嚇をしていた
「いや僕はでないよ」(カーン)たらいの様なものの音
(ええ~!)
当たり前みたいに出場してそうな雰囲気があったよこの人
「もう信じられないわよね、この男
自分は家柄もよくて特待とれるくらい魔法もできるくせに
テイマーの学生をあれだけ道端でたぶらかして募集して
初めてのリズちゃんまで大会に送りこんでおいて
自分は参加申し込みすらしてないのよ」
(な、なんだって~)
それを聞いてアーノルド先輩
「人聞きが悪いなあ・・リズちゃん誤解はしないでね
僕のフウロは戦闘向きじゃないんだ
それにな リサ リズちゃんをここに送り込んだのはリサだからね」
「あら だめだったかしら」
「まあ、そのおかげで僕は今日はリズちゃんをずっと案内していられるしね」
そういって私に向かってウインクをしてくるアーノルド先輩
この先輩・・
・・・・・
・・・
とりあえず全員揃ったし そろそろ動こうかと思った矢先
「ザワザワ」
少し会場の前辺りが騒がしくなる
(あれは・・)
「ん・・あれは中等部の勇者の子だね」
会場に向かってきているのは
なんと勇者ミトラのパーティの3人トリオの姿だった
(でも様子が・・)
なんだか少し足取りが重くてやつれている・・?
(シュン・・)
勇者ミトラの額についている金色の細いティアラも心なしか光沢がない
大会は予選だけど そこそこ道中に人は多いので有名な勇者パーティを見かけて
道行く人がわいわい話をしていたりする
すると、
(げ・・)
勇者たちは会場に向かっているのかと思ったら こっちの私たちの方を見て
スス―っと軌道修正してリズのいる方にやってきた
勇者パーティの側近の賢者の男がやってきて
いきなり声をかけてきたのだった
「これはリズさん こんなところで予選の観戦ですか・・?
ついでにちょうどよかった リズさんの前いっていたダンジョンについて
聞こうと思っていたんですよ」
「ダンジョン・・?」
リズの返事を聞いて
後からそっと覗くようにやってきた勇者ミトラが話す
「その・・学園南のダンジョンのことよ
私たち ここに来る前に
教えてもらったダンジョンの本当の制覇の印が取れる場所を探していたの」
どうやらここに来る前に勇者パーティは
なんとダンジョンを探索していたらしい
(余裕だなあ~)
「で、それがどうかしたの?」
「それが・・」
・・・・・
・・・
ついさきほどの出来事の回想
勇者パーティ学園南ダンジョンにて
やる気のある勇者パーティ側近の男2人組
「大会予選前だが 俺たちならすぐ終わるだろ
弱いダンジョンを迂回するだけなんて楽勝だぜ
あの竜には苦戦させられたが とっとと本物を回収だな」
「竜を避けて周りから奥に進めば 本当の証があるはずです」
勇者の側近の2人が竜の居場所を迂回するように
ダンジョンの奥地へとつかつかと進んでいく
「・・・」
(ほんとにそれで見つかるのかしらね・・あの竜は試練っていってたけど・・
まあ本当の証がそれで取れるなら それにこしたことはないわ)
勇者ミトラはそれについていく
だけど・・
「見つからないわね・・」
「うーん おかしいですねえ」
その時
「勇者よ!! どうした そんな遠くで!」
「こっちにくるんだ・・!」
「勇者が来ないとつまらんぞ!」
「グレードアップしたワシらなら遠くの勇者の気配も分かるぞ!」
あの邪悪な竜たちの声である かなり遠くから聞こえてくる
すでにやってきた勇者ミトラたちの気配に気が付いているようであった
(ひええー こわいわあ)
「くっ こんなところから見つかるのかよ」
「誘いにのってはなりません! あの竜たちは足が遅いから
すぐにはこれないはずです こちらの姿も気配だけで見えてはいないはず・・」
冷静な分析をする賢者リード
すると空に竜からの大量の雷が放電される
「調子がいいから今日は直接真上に打ち上げ
いやがらせメテオライト・サンダーじゃ! グハハハハ」
「勇者よ!勇気を見せてみよ!」
(ズゴゴゴゴ・・!!)
・・・・
(いやあああ!)
「おい!うってきたぞ!リード!」
「くっ・・!そんなはずは・・ハイフィールド・シールド!」
「おかしいです・・!やつの位置は遠すぎです
強力とはいえ この場所まで術が正確に届くわけがない
だけど 一応張っておかねば・・僕の魔力が・・」
「大丈夫? でも確かにここまではこないみたいね」
稲妻の走っている向こうの空をみる勇者ミトラ
「奥には証はなかったが
まだ見てない反対側を通れば途中にあるかもしれないぜ」
「そうですね・・! では反対側を迂回していきましょう」
・・・
「なかったわね・・」
「うそだろ~」
「・・・おかしい・・そんなはずは 僕の分析では・・」
「これから大会予選があるから 今日はもうこれで引き揚げね・・」
「そうだな・・」
「そうですね・・」
結局がっつり気力を消耗して成果はなく
勇者たちのダンジョン攻略は中断したのであった
・・・・
「というわけなの・・」
ダンジョンで疲れ気味の様子の勇者ミトラ
髪の毛もちょっとやつれている
(思ったより はまってるわね・・そろそろ教えてあげようかしら
でもこの側近どもがね・・ていうか普通に
勇者の支部?から教えてもらえないものなのかしら
勇者パーティのプライド?なのかしらね)
「リズ~、 お前ほんとにダンジョン攻略したのかよー?
お前がいたずらで偽の印でも作ったんじゃないのかあ?」
(もうこの男 はいだめ 教えてあーげない)
「そんな暇はないわ 探し方が甘いんじゃないかしら?
あの竜の近くまでいったなら もうすぐだったと思うけど」
(嘘は言っていない 竜のところだからね)
「ッチ」
「まあ今日はいいですよ これからすぐ大会予選ですからね
こんなところでいつまでもしゃべっていられません
僕らもすぐに別れましょう」
「そ、そうね 邪魔をしたわね」
・・・
そうして勇者ミトラと側近の大剣士のジャスパーは
別の会場の方へと向かっていったんだけど
賢者のリードはここに残っている
「僕はね、今日はここの会場なんですよ
リズさんも応援するなら
僕の高度な魔法技でも見て魔法の勉強でもするのをお勧めしますよ」
そういって賢者リードはつかつかと会場に入っていった
(ええ・・こいつこの会場なのかあ・・)
・・
勇者一行とやり取りが終わったのを見て
私にアーノルド先輩が話しかけてくる
「・・リズちゃん あの勇者の子たちは知り合いかい?」
「私 勇者ミトラさんと同じクラスなんです」
「ああ・・そうなんだね なんというか大変だね」
「はい・・」
アスラが賢者リードが去っていった会場の方に向かって舌を「べー」ってしている
そんなアスラを横にいるマギハちゃんがじっと見ている
そのときアーノルド先輩のフクロウの使い魔のフウロが
先輩の肩からどこかに飛び立っていった
(バッサバサ・・)
(あっ・・)
「フウロどっか飛んで行っちゃったけど いいんですか?」
「あれは賢い子だからね 戻りたくなったら戻ってくるさ
フウロも少し自由になりたいのさ」
(そういうものなのかしら)
少し横やりが入ったけど これでみんな揃ったということで
リズ達はようやく予選会場入りしたのであった
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます