星誕祭:リズとアスラの学園武闘編
第37話 アスラと腕輪と古代の記憶
「えっ」
昨日はしっかりダンジョンの試練で運動をして しっかり湯船にもつかったし
いいかんじに熟睡できた気がする それはよかったんだけど・・
(あれ・・なんかアスラ大きくない?)
まだ隣で昨日は作業中に眠くなったみたいで先に寝かせておいたんだけど
体が大きくなってる気がするわ
スヤスヤと寝ている少し大きくなったアスラ
なんでだ・・ 合体したからか? いや語弊のある言い方だと思うけど
合体したのはセミの合体だからね
私は上体を起こして座って
お腹に毛布がかかっている、そのアスラの全体像を確かめる
(スピピ・・)
やっぱりアスラは大きくなってる
うーん成長期?
けどそれはネロより小っちゃいくらいだから
大きいといってもやっぱり小さいのだろう
(昨日借りたネロの服を着せたら ちょうどよくなってしまいそうだなあ・・)
そんなことを思いながら
しばらくスヤスヤ眠るアスラの上下するふっくらお腹を眺めていた
・・・・
・・・
休み明けで久しぶりに聖セントラル中央魔法学園の授業を受けないとね
学園に行くために まあ基本的に服装は自由なんだけど
今日は指定の制服に着替えて準備をする
アスラは朝起きて大きくなった自分にちょっと驚いていたけど
特になんともないようだった
昨日の手のケガも大きくなってから一緒に治っていたようだ
でもちょっと活発になったような
「リズ、大きくなったあ」って
まあアスラが元気になったならいいさ
ネロの服を着せてみるとやっぱりというか
余裕はあるけどぴったりサイズに近くなっていた
不思議なことにアスラはネロの服の色を
自分の肌の色のオレンジぽい色に変えることができるようだった
(普通の元の色にもできる 肌の色と同じだと魔物感が強いので
今はネロの服そのままの色にやっぱりしてもらった)
「アスラどうする? みんなのとこに戻りたいなら先に送っていくわ
ここでお留守番でもいいわよ 私は魔法学園の授業にでるから」
「・・魔法学園?」
(ん・・・なんか言葉が流暢になっている気がするぞ
いや アスラが元気になったならいいよね)
「そうよ ネロも今日から学園の授業だから向こうにいっても
ミスラやキスラと一緒にお留守番ね」
「あたし、リズと一緒に学園行く」
「え?」
(ええ?)
(な、なんか・・たどたどしさがなくなったかも?
はきはきしゃべれるようになったから印象が変わるんだろうか
いや顔つきとか見た目とかは大きくなったけど 小さいけど
全然かわってないよ
ま、まあアスラが元気になってくれたなら それでいいよね?)
「アスラはこの学園の学生じゃないのよ?」
「だめえ・・かなあ」
と思ったけどアスラのしおらしい感じもあるみたいだ
(うーん でもほんとに困ったわね・・大きくなっちゃったから
さすがに隠せないし・・ あっ)
「アスラ嫌がってたけど・・アスラは元の姿に戻れるの?
最初のスライムの姿のことよ」
「戻れる・・とおもう・・でも」
「うんそうなのね でも無理はしなくていいから
ただ今の姿だと親戚の子供ということにしても
学生じゃないから連れていけないわ
あの小さいスライムなら大丈夫かなって思っただけだから」
「うう・・・・・」
(ポフン!)アスラがスライム形態に戻った音
おお アスラもどれたんだね
なんか意外・・そんなに行きたかったんだろうか
ピョンピョンと跳ねている
この姿だとしゃべれない・・のかな 口もないしね わかんないけど
「じゃあ・・これに入って 少しだけ出ていいから」
リズは棚から出してきた荷物用のカバンを開ける
そこにぴょんっと中に入ってアスラはすっぽり収まる
「じゃあいこっか」
カバンの中が少しピクリと揺れる
・・・・
聖セントラル中央魔法学園 魔法座学の授業
壇上の講師の先生
ボルティックス・アルハマー先生という
半分の血筋は竜人と言われる竜の血が混じっている種族で
雷魔法と剣技の権威をもつ優れた魔法剣士の先生で
この先生は教師陣の中でも数の少ない上位魔法師なんだ
そして授業の内容は普通の魔法史であった
筋肉モリモリなのに・・
(でもこの見た目・・絶対この先生武闘派でしょ・・)
中位の魔法師が束になっても勝てないと言われている上位格の魔法師
おまけに本職は剣士がメインで
剣術を極めるために魔法師になったという異色の経歴を持つ
そういう先生の授業だけあって
生徒たちの期待度も高くて受講をしている生徒も結構多いんだけども
今でこそ落ち着いているけど
最初の方は先生の魔法に期待して興奮している生徒も多かった
でもその最初の講義の時にボルティックス先生は
「いいか 何か思い違いをしていたら悪いが
俺のこの講義では
魔法の実演指導とかそういうものはない 真面目な魔法史の講義だ」
「ええ~」
まあそういうことがあったんだけど
今はみんな静かに先生の講義を聞いている
どういうことかっていうと まあみんな真面目な学生だということだ
・・・
「というわけで この優位性から祝福の魔法は
古代の大英雄の時代から急速に世界に広まったとされている
ちなみに魔法の炎というのは全般的に炎とはいわれているが「別のもの」だ
魔力によって加工された炎のようなエネルギー、要は魔力ということだ
もちろん性質を正確に似せているために効果は実際の炎と似ている
他の属性魔法にもそれは言えることだ」
・・
竜人の体格のでっかい先生は
例のテキストを小さく片手に真面目な座学に勤しんでいる
違和感は拭えないんだけど
内容は奥深くて
ここにきて けっこうためになりそうな授業をしている
(へえ・・やっぱ魔法は本物とは違うわよね 体の中から出てるんだもの)
すると先生は
「それを分かりやすく説明すると
ここに・・透明で大きく、頑丈でとても壊れにくい、
その上少々高価な水がめがある(スッ)」
先生の後ろの方に置いてあったのだろうか
片手のテキストをサッと畳んで
どこからか出してきた大きくて水が入った透明な水がめ
いきなりテキストじゃない物が出てきたよ
まあ主にって言ってたからね 例外もあるよ
(ボウ・・!)
そしてボルティックス先生は
その腕に軽く魔法の炎の力をまとわりつかせ始める
魔法の実演はないとさっき言われていた生徒たちも少しざわめき立つ
でもリズは
(え・・!やっぱりその武闘派の剛腕で水がめをたたき割っちゃうの・・!)
って思っていたら
その魔法の炎の塊は先生の腕からスッと離れて
その水がめの中へと移動していったのだった
(ジュウウ・・!)
炎は水がめの水の中に入って消えてしまうのかと思ったけど
「!」
(消えてない・・)
勢いは弱くなったけど
炎は水の中で燃え続けている
「このように魔法の炎は空気中の酸素を必要としない
魔力を消費して燃え続ける
通常の炎とは別の物であるという証明だ
だがここにさらに
水がめの中の水にも追加で魔力を織り交ぜると・・」
ボルティックス先生は両手で炎の浮かぶ水がめを掴むように
別の魔力を流し込んでいく
(ボシュウウ・・)
「(消えた・・、)」
「魔力を練り込んだ水魔法の水は
互いに属性反応を起こし その魔法の炎を消すことができる
このように魔法の力とは・・ (バギャ ガボ! ジャバババババ・・ 」
(あっ )
(わあ~・・)ちょっと嬉しいリズ
「ふむ・・」ビッチャー 教壇の床は一面水浸し
「・・・・」
「・・・」
ボルティックス先生の腕力?に耐え切れなくなった水がめが
やっぱり粉砕されてしまったのだった
「ああああ!「
(バッ・・!)
先生付きのメガネをかけたお手伝いさんらしき補佐員の人が
裏方から必死に駆けつけてくる
なんかすごい素敵な芸術品みたいな名前だ
粉々になっちゃったけど・・
「ちょっと先生ぇ! あのかめの扱いには気を付けて下さいって
再三いいましたよねえ・・!!」
「いや 丈夫だと聞いていたのだが・・」
「普通の人にとっては!ですよ 先生みたいな人の規格じゃありませんよ
この学園の備品は高いんですよお!なんて説明するんですか
説明してどうにもならなかったら
先生の来月の報酬金から天引いてもらいますからねえ!!」
「ふ、ふむ・・」
(ワイワイザワザワ・・)
ちょっとしたハプニングで講義が中断して騒がしくなった教壇前
・・
(・・・)チラ
小休止中、私は一度ノートのペンを置いて
席の隣に置いているリズのカバンをちらりとみる
このカバンはスライムを中に入れてきたカバン
(プルプル・・)
今のところアスラはおとなしい
ここにくるまで学園の構内を歩いてきたけど
特に人にいわれることはなかった
使い魔というか魔物を一緒に連れてる人もいたしね
というか使い魔を連れている人が今日の朝方は多いというか
いつもより騒々しくて学園にいる魔法使いの人自体が多かった気がする
「(だいじょうぶそうね・・)」
アスラもこのサイズなら肩にくらいはのせても許されるのかもしれない
魔物をつれているだいたいの学生の人は
いわゆる「テイマー」という使い魔を手懐ける職業の専攻をしているので
一概にはいえないのかもしれないが
珍しいものではないという事実に少し安心する
でもスライムをつれている人はいなかったなあ
なんでだろうなあ
あんまり強そうじゃないからかな 小さいし魔力量とかかも・・
かっこいい鳥のようなモンスターや
魔力がありそうな浮遊体?みたいなモンスターは見た中では割といた
一番おおきかったのは入学式の時に見た、竜のようなんだけど
羽が鳥っていう でも迫力はある感じの魔物だった
空を飛んでいた
でも普段は学園の中では見ないからゲストのような人か
生徒の親御さんだったり入学式を見にきた人の使い魔だったのかもしれない
・・・
水がめの後片付けも終わって
何事もなかったように講義は再開されている
「つまりはだ・・」
「ここからのことは・・」
先生の講義の声が続く
ボルティックス先生の声は竜由来の
滅茶苦茶通りがいいので 講義中に眠っていたとしても即起こされそうな雰囲気
普通に内容が興味深いので眠くなったりはしなかったけど・・
「・・その最も魔法が栄えた大英雄たちの時代は
唐突に終わりを迎えた
大英雄の一角であり
史上最も残虐な王であったと伝えられる
ある時 「禁忌の悪魔の子」をかくまったとして
大罪を背負わされて世界を追いたてられた
そして数ある大英雄たちの中で
最初にこの世界から消えてしまったと言われている
その時から連鎖的に大英雄たちは徐々に世界から姿を消していき
やがて完全に世界から大英雄はいなくなり
大英雄の時代は終わったとされている」
「先生!消えたって古代の大英雄たちは
どこへ行ってしまったんですか・・?」
講義に威勢のいい生徒の質問が飛ぶ
「ふむ 消えていった大英雄たちは
この世界にその時代、秩序を保つために存在し
後の魔導戦争で永久に閉じたとされる、
伝説の「楽園」なる上位世界に渡り去っていったとされている
ただそれは英雄たち全員がそうというわけではなかったようだ
この世界の果ての次元の外側を見つけ旅立っていったとも
人と同じように寿命や流行りの病によって死んでしまったともいわれている
それは詳しくは分からない
だがいずれにせよ いなくなり世からは消えてしまったということは確かだ
大英雄がいなくなるに伴って
英雄たちが持っていた
その力に依存していた多くの文明は困窮し
そしてそれが結果として 世界のほぼ全ての文明を滅ぼし終焉をもたらした、
凄惨な大魔導戦争を引き起こすことになったのだが・・
その話はまた別の日の講義で話そう
・・そうして多くの争いを経て
残ったものが今の現代の魔法として語り継がれているわけだな
いくつかの魔法は失われる前に保存を試みたものもある
現存するいくつかの秘術や祝福の魔法も その時の名残だと云われているが
正確なことはまだ失われた古代魔法史の解明途中だ 」
(へえ・・そうなんだなあ
伝説の楽園ねえ・・向こうでいう天国みたいなものなんだろか
人が魔法の力を得てから
この世界の大昔にはそんなことがあったんだね
ここはそれから大英雄っていう
すごい魔法使いたちが現れるようになるまで文明が発達していって
その後一度滅びかけた後の世界だったのね)
「(でもちょっと変ねえ・・歴史にケチをつけてもしょうがないけど
そのウラピコっていう昔の英雄が
本当に言われてるような残虐な王だったとしたら・・
その悪魔の子っていうのを匿ったりするものなのかしら・・?)」
・・・
・・
授業が終わるとアスラもカバンの中で窮屈にしてるし
周りを見て大丈夫そうかなと思えたから
カバンから出してあげることにする
「でておいで アスラ」
プルプルしたあとにカバンから ぬるぬるでてくる
「肩にのって」
アスラは跳ねて私の肩にくっつく
アスラのいる肩がじんわりと暖かくなってくる
(肩から腕があったまるから利き腕の方にのせるといいかもしれないなあ)
と ぼんやり思う
やっぱりというか特にすれ違う人にも何もいわれない
見られているってかんじのときはあったけど 反応は大丈夫そうだ
(一応聞かれた時は使い魔ですっていっておこう・・)
「やあ、それはスライムかい!?」
歩いていた廊下からの威勢のいい掛声
とっさに声をかけられてびくっとなるリズ
「え・・!つ、使い魔です!」
は、早いよ! すぐ答えちゃったけどスライムか聞かれただけだよ
・・・
落ち着いて話を聞くと
私に声をかけてきたこの人は中等部の男子学生の先輩の人で
廊下のブースでサークルの勧誘活動をしているようだった
肩にフクロウのような使い魔がのっていて theテイマーってかんじだ
(クルル・・)
フクロウが私の肩にいるアスラを見つけて少し翼をふわっとさせて威嚇すると
対抗したアスラがピクっと応える
「ああ やっぱり使い魔なんだね
スライムは珍しいね だったらテイマーの人だよね
僕はここでテイマーのサークルの勧誘してるんだ
君は新入生じゃないみたいだけど
ちょっと先に延期になってた学園のお祭りの大会があってね
王道の魔法と違って僕らテイマーはほんと肩身が狭くてね
テイマーも参加できる大会だから気合が入っているんだ
テイマーのひとにはいい助けになると思う 君もどうかな?」
(ええ・・サークルかあ)
「私テイマーじゃないんですけど・・」
「あれ テイマーを専攻してるんじゃないんだね となると魔力の補助とかかなあ
まあでも使い魔がいるなら 興味あったらどうかな
普通ならチラシとか配るんだけど・・うちはテイマーのサークルだからさ
はいこれ お試し」
(カチャ・・)
そういって その先輩は
腕を覆うような形状の細い金属の装具のようなものを
先輩が後ろのブースに積んであった、
はみ出した藁の詰まった四角い木の箱の中から取り出して見せて
私に差し出した
「これはなんですか・・?」
「知らないのかい?
これはテイマーが魔物に自分の魔法を混ぜた指令を出すときに
少し魔力を加工するんだけど それを助けてくれるんだ
テイマー専用の腕輪のようなものだね
杖よりも使い勝手がいいからよく使われているよ
ここでは普段はつけてないか服の下に隠れてるからみないけど
野外の活動中やテイマーの大会ではつけてる人がたくさんいるよ
テイマーじゃないなら つけ方も教えておくよ」
そういって先輩は距離を詰めてきて
「利き手はどっち?」
「あ、右です・・」
リズはテイマーじゃないから悪いから断ろうと思っていたけど
先輩はそのまま その装具をリズの腕に巻き始めて
「あ、ありがとうございます・・」
その手際のスピーディーさに断るに断れなくなってしまった やり手である
でもサークルに入ったわけじゃないから・・
(へえー・・ちょっとかっこいいかも・・)
先輩のことじゃないよ
腕に取り付けられた装具をなんとなく上にあげてみてそう思う
つけ方もなんとなくわかった
機械仕立てで少し光沢がある
アスラがちょっと肩から動いて腕輪を触りにきている
・・
「気に入ったかな? それはそんなに高いものじゃないから気にしなくていいよ
スライムを使ってる子はほんと珍しいんだ うまくいくといいね
あとサークルに興味出たらぜひ教えてね 僕じゃないかもしれないけど
交代で部員がいて待ってるから」
「はい ありがとうございます」
(興味でたらね・・)
・・・・
サークルの先輩と別れて もらった装具を腕につけて
中庭の少し手前に出てちょっとベンチで休憩する
(ここは木と建物の影になっていてすごく涼しいわ
ベンチもひんやりしてる・・)
リズの制服スカートからはみ出た肌が当たるとそこが冷たくて心地よい
アスラも今はそこの冷たいベンチに降ろしてあげると
アスラはベンチに柔らかい体をくっつけてへばりついていた
(・・・)
さっきもらった右腕の腕輪を改めて眺める
(いやー・・かっこいいわあ・・)
「キラリン・・」簡素な作りだけどちょっと光沢で光ってるかっこいい腕輪
(いや・・物で釣られて流されてはだめよ サークルには入らないわ
絶対に入らないんだからね)
・・
そう決心して休憩を切り上げて
リズはアスラをベンチから持ち上げて肩に戻してから教室に戻るのだった
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