第35話 流星絶威招雷 激闘!還らずの地の主
「
竜のエネルギーの光が解き放たれた瞬間
竜の背面から大爆発を起こし
周囲の岩石を巻き上げて稲妻がそこから四散してさらに細かく岩を砕き
背後の広範囲にとんでいく
「ゴオオオオオオ!!」
(ひゃあああああ)
「ひいぃぅ・・」
アスラは よたよたと岩影になっているところに隠れようとする
その時 四散した稲妻がアスラがいた脇にあった岩山の一部にぶつかり
その岩のかけらがアスラの近くに襲いかかり
さらに地面にぶつかって
「ベシイ」
それがアスラの足にぶつかる
(あっ・・・!)
「ああぁ・・!いちゃああい いたい たいやああい・・・!」
「はちゃああ・・こわいよお・・・みんなぁ」
「ぴやう・・こわい・・」
倒れてその場でうずくまってしまうアスラ
それを見て
やがて巨大な竜の首はぐぐっと伸びてきてしゃべりだす
「ピピ・・ガ・・、なんじゃ 勇者ではないのか出力を誤ったな・・」
「なんだこれは やらかしてくれたのう
人の子に似ているとはいえこれは魔物だぞ
それもこの地の魔物の子だ」
「じゃがここで攻撃してきたのだ 反応しても仕方があるまい」
「どうする またこんなことをされては面倒だ つぶれてもらうか」
「この場所でそんなことをする魔物がおるとは そんなはずは」
・・
迷い込んだ突然の小さな放火魔スライムアスラ
やらかしたスライムに対する世間の目は厳しい
アスラの処遇について竜の頭たちがしばらく話しこんでいる
(うやああ・・でも に、逃げれるかもぉ・・)
アスラは少し思う
だけど
(あっ・・・)
完全にびっくりして足がすくんでしまっていたのと
足が怪我していてアスラは全然動けなかった
(そんなあ・・うう・・)
「え・・・」
そこに素早く走ってアスラの元へ向かってくる影がある
「(タタタタ・・!)」
それは動きやすい妖精形態で黄色い色をしたキスラの姿だった
その頭の上には水色スライム形態のミスラが一緒にのってくっついていた
(パッ!)
「アスラ・・・!」
近くにいる恐ろしい竜の姿を見ても迷わずに
まっすぐ倒れこんでいるアスラの元まで弾みで飛び込んでくると
すぐにぴったりとくっつく
キスラの頭の上にいたミスラは
到着と同時に形態を妖精状態に変化してポン!とジャンプしてアスラに寄り添う
「だいじょうぶ・・?」
「なにあのでっかいの」
「こわかった?」
「けがしてるの?」
「うん・・こわかったよお・・ふあああん・・・」
「だいじょうぶ わたしたち いつでもいっしょ」
「アスラの足 かいふくまほうをかけるね」
「でもふたりともきちゃだめだよ・・あたしたちたべられちゃうよお・・」
「ごめんね わたしたち アスラがこわがってたから
さきにとびだしてきちゃった・・でもネロはきがついたとおもう」
「アスラいまから いっしょに にげれる?」
「まだ・・ちから 入らない・・」
「そっか・・でももしダメでもわたしたちいっしょだから だいじょうぶ」
「 」
そうしてスリスリと寄り添いあう3体の妖精スライム
「!」
それに気が付く竜の頭
「なんじゃ 増えておるぞ」
「仲間か? まあならば一緒につぶれてもらおう」
「おや・・」
「すぐにすませるぞ・・」
やってくる巨大な竜の体、
寄り添ったスライム3体に大きな影が迫っていた
「お、おねいちゃ・・」
・・・・
そんな状況になる少し前の森の中
「 アスラが・・ふるえてる 」
木の根元でのんびり地図の作成作業中のネロの隣にいたミスラが
突如何かに気が付いて、空を仰ぐ
「いかなきゃ・・!」
(ポウン!)
すぐに状態変化してスライムになってすばやく
妖精スライムキスラの頭に乗ると
「タッ!」
反応したキスラはすぐ駆け出していく
キスラは普段おっとりとしているけど
運動能力が高くて動き出すととても素早い動きをする
背筋をピンと伸ばした姿勢でひょいひょいと走り去る
のんびりとしていて事態に気が付いていないネロは
完全に置いてけぼりになっていた
「え・・? そういえばアスラが見当たらないね
ってあれ そっちの方向・・!え、どこいくの!ちょっと
ちょっとお・・?! は、はやい
リズううう!! すぐもどってきてー!!」
・・・・
・・
(タタタ・・)
ネロの声を聞いてすぐ駆けて戻ってきたリズ
「・・どうしたの?アスラたちは?」
「アスラがいつの間にいなくなってて・・
そしたらミスラたちがいかなきゃって すぐ走って行っちゃった」
「どっちにいったの?」
「あっちの方向」
森の奥にネロが指をさす
「追うわよ急ぎましょ」
・・・
「タタタ・・」
リズたちがスライムたちを追って森の中をしばらく走ると突然
「ゴオオオオオ・・・」
とてつもない爆発音が聞こえてきて
その方向のダンジョンの上空の色がしばらく変わっていた
「!!」「なんだこれ」
少し走ると森はなくなって
辺りは剥き出しの地面の土色の地形になっていた
「 」ズズーン・・
そしてその先には巨大な なにかの影がうごいていた
「・・!」
(うそ・・、ここには小さい生き物しかいないんじゃなかったの・・?)
「あそこでアスラたちに何か起こってる!」
「・・ネロ、ちょっとわたし先にいくわ」
「うん気を付けて」
(いけるわ・・!)
森を抜けて障害物がなくなって直線が使えるようになったため
リズは最近馴染みこませた
オリジン方向キーの感覚を使って一気にダッシュ移動していった
(ギューン!)
「(うわあ 私思ってたより めちゃくちゃ足速いわ)」ダダダダダ
覚えたてのコマンド方向キーの力でぐんぐん加速しているリズ
「!」
近づいていくと遠くから見た時もそんな気がしていたけど
まさかとは思っていた
その巨大な何かの生物の影の正体が分かる
(あれって・・、竜よね・・? 首がひとつじゃない・・しかも相当大きい・・
ここって初心者のダンジョンじゃないの?
入り口に竜みたいな石像は確かにあったけど奥にあんなのが出るなんて
でもとにかく急がないと
あれは・・?)
その大きな竜の持つ4つの頭のひとつが
ググっと首を伸ばして地面の方に向かっていて
その地面のすれすれの先に探していた小さな影も見えた
(寄り添っている妖精スライム・・アスラたちだわ!
無事みたい・・だけど まさか襲われてるの・・? あの竜に・・?)
「グググ・・」ズシュウ・・
(鼻息がかかるほど小さいスライムたちに竜の頭が近づく)
「ち、ちゃああ・・」「ぴうう・・」
「(スライムたちが た、食べられちゃう・・!)」
するとその間近に近づいてきた最初の竜の頭は
怯えるスライムたちに鼻息をふきかけながら
「「 クンクン・・ふむ・・
お前たちからはなんだか懐かしいような匂いがする・・」」
「ぴや・・」クシュン
(・・・?)
食べられはしなかったけれど竜の鼻息の風がかかるとムズムズして
小さくくしゃみで返していたアスラ
・・
そのとき別の竜の頭の一つが外からの気配を察知して
猛スピードでやってくる人間、リズのほうを振り向く
「おや・・やってくる 人間だ」
「おいまて お前たち」「ほう」
「勇者かもしれんぞ 証の気配をかんじる」
「なんだと・・だがあまり時間はないぞ」
巨大な竜たちの動きが止まり
スライムたちに最接近していた頭が下がり 4つの首が元の定位置に戻る
そのおかげでリズは
3体で一緒になって寄り添うスライムたちの元に駆けつけることができた
「ズザアア・・!」
リズは方向キーの力にブレーキをかけてなんとかそこで止まる
「ほおねいちゃああん・・」
「リズう・・」
まん丸な目に玉のようにいっぱいの涙を浮かべているアスラと
そのそばにくっついて寄りそっていたキスラとミスラ
「だいじょうぶだった!?」
「アスラが足ケガしてるけどだいじょうぶ」
リズの声に答えるミスラ
「動けないの? ネロがくるから すぐここからアスラを運んで逃げて
2人なら運べるから 帰っていいから
危ないからここには近づかないようにいって 」
「リズは・・?」
(・・・)
「あれの相手は私がするわ 急いで おねがいね」
「わかった」
ミスラたちとネロに後のことはまかせて 私は竜の方に向き直る
・・
すると向かい合ったリズに竜の言葉がとんでくる
「ふむ 人間のようだが お前は「勇者」か・・?」
(うわあ・・この竜 普通にめっちゃしゃべってるわ・・答えないと)
リズは答える
「勇者・・?私はただの学生よ 勇者じゃないわ」
その返答を聞いて
「それみろ 勇者ではなかったぞ くたびれもうけだな」
「ぬう だがもう 賽はふられたのだ 娘よ あれはお前の仲間か?
赤い小さき者がワシに炎を浴びせてきたのだ おかげで動かねばならん」
「勇者でない者がこのワシに挑むのは迷惑だ
だが試練はうごきだしている 力を無駄にするわけにもいかん
勇者がいないなら懲罰代わりに受けていくがいい
そこのお前が」
「・・・」
(勇者・・?試練・・?どういうこと?
理解が追い付かないわ)
でもちょっと竜の話を聞いてる限りだと
アスラの方が若干やらかした臭がするけど
理解が追い付かなくてリズが考えながら少しの間黙っていると
「 娘よ・・この地にきて
(・・!)
(還らずの、地・・)
「・・試練が何だか知らないけど ここであなたと戦えばいいの?
それなら私でいいわよ」
「ふむ・・」
「決まりだな」
「決まりか」
「決まりだ」
「では」
「まいるぞ」「まいるぞ」「まいるぞ」「まいるぞ」
「「 ドオオオオン・・! 」」
「・・!」ザ・・
(でっかい・・、)
(どうしよう軽く了承しちゃったけど こんなの戦えるのかしらね)
「時間だ・・」
急速な魔のエネルギーの力が竜の全身から竜のその目に集まっていく
(え なにこれ 絶対やばいやつ・・)
「「
「ゴオオオオオオオ!!!!!」
(うわ!これがひとつの魔法の規模だっていうの?!
この竜めちゃくちゃよ!!なんなのよ!!)
巨大な竜の背後に魔力のはち切れるような大火球が発生し
それが上空にむかっていき
「キュオオオオオン!!」
そこから光の火の玉が上空にのぼったその状態を維持しながら爆発する
強烈な爆風が発生して
吹き荒れる炎が竜の背後を焼き尽くして空間に滲むように覆っていく
「 勇者とは・・底知れぬ勇志の資質を持つ者・・」
「・・!」
(え・・!やっぱり勇者ってそういうものなのね)
「「そして・・この世の覇者たる星の
4つのそれぞれの竜の咆哮がこだまする
(ええ・・?!なにそれ)
(っていうか・・、私はだから勇者じゃないって!)
ピンチでも思うことは思うリズ
「!!!」
炎の光で竜の姿が背後に強力に影を映し出したところで
「(ブアッ!)」
その時
炎ではなく巨大な竜の頭が光を割ってリズに襲ってきた
「ふはは いくぞ!」
(え・・!ここで直接くる・・!?)
(これは噛みつかれる・・!・・だけど!)
「ズオオオオ!」
リズはその右腕に急速に力をためる
一気に邪悪な力が放出され
装甲をまとった悪魔のようなイヴの腕になる
「
「ボギャアアアア!!」
イヴの右腕の凶悪な一撃が かみつこうとやってきた巨大な竜の頭に食い込んで
そのままエネルギーを爆発させる
「ブン!」
その腕をリズは大きく振りぬいて弾き飛ばす
「ぬうあああああ!!」
リズに初手に襲い掛かってきた巨大な竜の頭は1つが半壊して
頭に付いている紋様の付いた分厚い装甲がボロボロになっていた
その衝撃で
その半壊した竜の頭のひとつは大きくのけぞえって後ろに下がった
「ゴオオ・・!」
そのときまた竜の
上空に維持された巨大な火球の塊から
いくつか地上に流星のように炎が放たれて落ち それが爆発していく
「ギュワアアアン!!」
その時 4つのうちのひとつの頭が大きく光り 上空に天をかけるように
強い魔力を誇示するような熱線の強力なビームを打ち上げる
「やるのう・・」
「まだだ・・これからだ・・」
そしてそこから爆炎が一瞬 竜の巨体を隠し
リズの近くに爆風がかかり視界が遮られる
(くっ・・!)
リズが爆風に対して体勢を構えなおし 視線を前に集中した瞬間
「ガアア・・」「ゴルル・・」「グラア・・」
「!!」
巨大な竜の3つの首が次々にリズの目の前に迫っていた
首のひとつは口の中が光っていた
(今度はほぼ同時に3つも・・!!)
「・・だけど!」
(僅かでも時間差があるなら すべて一対一で対処可能!)
(方向キーを交えて的確にハイチャージ
(口が光ってるやつは下から顎をぶち抜く!!)
一瞬でリズの脳の回路にコマンド対処を構築する
「
「ボギャアアア!」
「
「ボギイイイイ!!」
「
「ボッゴアアアアア!!」
「ぐああああ・・・・・!!」「ぬぐう・・!」
「ふぐおおおおお・・」
3つの巨大な竜の頭はそれぞれ側頭部や顎を
横から上から下から
リズの邪悪な力で膨れ上がり強化された腕で 思い切り叩きつけられて振りぬかれた
「パキャアアン!」
それぞれの竜の頭についていた古い文様の装甲のようなものは
はじけ飛んで半壊し
さらに残っていたものは ベコベコにへこませていた
(これで4つ全部・・!)
一瞬で拳を振りぬきすぎて勢いの余ったリズは
軽快にトンッっと少しジャンプして華麗に体勢を整える
「ぐうう・・!! だがこれで4つの頭すべて討伐できたと思うな
なぜなら最初のワシの頭は再生・・・」
「
「バキャオオオオ!!」
「うっぐええええええ!!」
最初に砕いた竜の頭をもう一度 遠距離集中からの破壊した同じ場所に
えぐるように
邪悪な力が纏うリズの腕からまっすぐ発射され
竜に直撃してぶちまけられる
「ズドオオオン・・!」
その
最初の時よりも大きく後ろに竜の首はのけぞえって
竜はその大きな体を地面に打ちつけて倒れた
戦える首がなくなって
上空に魔法で常に維持されていた竜の大火球も維持ができなくなり
「ズヌウウン・・」
後方の地上にズブズヌと落ちて にぶい爆発を起こした
「ポオオ・・!」
(・・!)
竜の首たちは全部のけぞえっているけど
まだ竜たちには奥の手があるのか また新しい炎の呪文の文字のようなものが
竜の後ろの方から立ち上っているのが見えた
・・
「ゴゴゴ・・!」
しかしあいにく
まだリズの方の戦闘モードも続いていたのだった
(なにかの魔法を使ってるみたいだけど 竜の方が動く気配はないわね・・
だけどまだこれ この竜がいうには再生するんだよね・・・
やっぱり何かさせる前に
完全に竜の胴体から上が消滅するまで叩き込まないと・・!)
(ボオオ・・!)
また一気にイヴの悪魔の右腕に邪悪な力を噴出させる
修羅のような醜悪なオーラがかまえた腕の周りに立ち込める
リズの淡い色の瞳が光って揺れる
「ズアアアアア・・!!」
「(この腕を前方に突出しながら撃って至近距離から
首の根元から竜の巨大な体 その全てを殲滅、破壊する・・!)」
「滅拳 (メギラ・・
「ま、まて・・・ 試練は終わった・・! 娘よ止まれ・・
腕を、おろせ・・」
それはぐったりとしていた竜の降参の声であった
「(あら・・・)」
リズはその邪悪な腕の力を鎮める
こうして このダンジョンの謎の試練は終わったらしかった
・・・・・
・・・
「実はわしらの術は見てくれだけなのだ・・」
「ええ・・・」
わずかな時間だけど もう少し受けていた傷が再生したのか
ボロボロで傷だらけの竜の頭たちが いじけたように話しかけてくる
・・
「ここは勇者たちが試練を受けるためのダンジョンだが
太古から現存する空間をベースとした初心者用のダンジョンだ・・」
「最初にある程度の威力以上の攻撃をわしらが受けると
わしらと管とパスで
わしらが溜めこんでいた魔力を時間差で自動的に起動させて
大規模な魔法を発動させるのだ・・そこから試練は自動で進みだすのだ・・
ほれ、あそこにあるあれだ・・
あれは本来は魔の土地を抑制する古い装置のようなものでのう」
(あ・・ほんとだ)
よく見ると竜の後ろにある岩山には まるで血管のように
パイプのような古そうで大きな機械が何本も飛び出ていて
そのうち似たような数本が
竜の体のしっぽの方の一部とつながっているのが見えて
パイプはその先の岩山のふもと辺りにある、
大きな心臓のような形のいびつな遺物のような機械へとつながれていて
(ポポ・・ポ・・)
その遺物の巨大な砲塔のようなものからは
モクモクと大魔法を出した後の煙を出していて
それはちょっと前に竜が撃ってくる魔法かと思っていたけど
ただの炎で書かれたなにかの文字のようなものがプカプカ浮いている様子だった
(・・・)
その浮いて見えていた文字について尋ねてみるリズ
「あの浮いてる文字ってどういう意味なんですか?」
「ん?どう見ても 「試練達成おめでとう」と 書いてあるじゃろうが
古代文字じゃ、読めんとは言わせんぞ」
(ええ・・、そんなの読めないんだけど・・)
どうやらさっきの戦いであの文字が出てた時に
すでに試練は達成されていたみたい
ぷかぷかと浮いた謎文字の
ややシュールな光景が広がる
「・・話を戻すが
勇者というのは危機的な状況であっても常に機敏に戦えねばならない・・
それを駆け出しのランクの低い勇者でも安全に状況を再現するために
こちらから術は放つが
勇者が立つ場所には極力強い術は当たらないようになっている
まあ間接的に小さい岩のかけらが降るくらいは するかもしれんが・・」
「そして勇者は基本編成の4人組で送り込まれてくるように伝えられている
ワシらは攻撃力がほぼ抑えられておるが
膨大な魔力と耐久力、そして再生力を合わせ持っている
だから勇者たちが息を合わせずに個々でバラバラに戦っても
ワシらを通常の魔法や技などで めったに傷つけることはできない
少し傷ついてもワシらの力で即再生する
疑似的な危機的状況下で勇者たちが4人で
ワシらの4つの頭それぞれに
人の知恵を出し合い、息を合わせてコンビネーション攻撃をすることで
勇気と人の知恵を試す我が試練の条件を満たし
簡単にワシらの頭の装甲がとれるようになる」
「ほれ このように勇者のちょっとした戦いの工夫で
こんなに簡単に・・(カパカパ)」
他の竜の首が 取れている頭の装甲具合をちょっと目の前で実演してくれる
実演販売の番組みたいだなあ
「・・そうして最終的に本当の制覇の印が証に刻まれるようになり
ここでの勇者の試練は終わる・・ということになっていた」
試練の至極理想的な手筈の流れを教えられるリズ
「ええ・・でも試練は終わったのよね」
「そうだ・・お前はワシらの装甲を全て破壊したから
強制的に条件は満たされて試練は終わった
この最奥のダンジョンは部外者には探索許可がおりないし隠されておる
ここへ通じる隠し通路は起動した者たちにしか開かれないし
強力な人払いの呪いを持つ古来の石碑もあったのだ
入り口の仕掛けによって動かした石像もすぐ元の位置に戻るから
新たに気が付かなければ誰も来ることはない
それに真の証の印を必要とする勇者パーティ以外には
来てもなんの意味もないところだ
付近の魔物程度の持つ弱い力ではワシらの最初の起動装置は反応せんし
そこになんの関係もない者がきて
いたずらに試練用の魔力の蓄積マシーンを起動されては
あの規模の魔法構築はワシらの力でも時間がかかる
迷惑だから そんな者たちはもう来たくなくなるように
後ろの装置の埃の掃除をさせたりして使い
懲らしめてやろうと思っていたのだ
それを・・」
「ああ・・わしらは特に悪いこともせず
ただ勇者の試練を受けにきた資質ある勇者を待っていただけだというのに・・」
「・・・・」
あまりかける声が見つからないリズ
「そもそも お前は本当に勇者ではないのか・・いや邪悪な・・
資質ある4人の戦士が息を合わせて それぞれわしらと相手をして
試練を達成していくところを
上級位の力を持つ
あろうことか一人で、さらには徒手で
すべてのわしらの頭の装甲を無理やり抉り取って試練を突破するなど・・」
「面目も丸つぶれじゃ・・」
(今 私のこと、邪悪っていった?)なんて失礼な
「ごめんなさいね・・勇者じゃなくて・・」
・・
(ズシン・・)
少し私に向かって首を近づけてきた竜
「まあいい・・娘よ
お前のもっている証の紙には本当の証の印が刻まれただろう
お前はもう二度とくるんじゃないぞ・・
あの仲間の赤い小さき者にもよく言って聞かせておけ・・迷惑なのだ」
わりと本気で迷惑を
このダンジョンの制覇の印が刻まれたことを教えてくれる
(あら ほんと・・)
ちらりとポケットにしまいこんでいた、
くちゃくちゃになった祠の紙を広げてみると
祠にあった時とは違う、別の文様の赤い印が証に刻まれて
ポウ・・っと少し光っていた
それは前の「炎」のように見えた文字が変化して
その形に近い、この目の前の竜のような
首の多い竜の姿を模ったような象形文字に変化したものの
リズにはその文字が少し別な風にも読めたのだった
「 」
((「
・・
それはそれとして
「え・・でも初心者用ダンジョンなんでしょうここ
人がこなくて練習にとてもちょうどいいの・・」
せっかく見つけたのにもう来れないのはちょっと困るかも
「・・・・」「・・・・」「・・・」
「・・それでもワシらのいるところにはくるな
いや、絶対にもうくるんじゃないぞ わかったな くれぐれもだぞ」
・・
こうしてリズは試練でやつれた竜たちの元を去り
遠くに避難して心配そうにしていたネロたちと合流して
ダンジョンを後にしたのであった
・・・・
・・・
「コオオオ・・」
(あれ・・光のオーロラ・・?)
いろいろあった学園南のダンジョンを出た後の日が落ちかけた空には
いつかの日も見えていたことがあった長い星の川の光の帯が
その時見えていたんだけど
「 」
今日は何故か
そこから別の虹色のオーラのようなものが重なって見えていて
そこからいくつかの細かな青白い光が降り注いでいるみたいだった
奇麗だったけどなんだかそれは異様なかんじ
少しネロと顔を見合わせたけど
(今はすぐ帰らないとね)
すぐに抱っこしてフルフル震えてリズの腕にくっついているアスラに目がいって
いろいろ立て込んでいたので
リズはすぐに切り替えて風車の家に向かっていた
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