第34話 遭遇
「へえ・・回復魔法? すごいじゃない」
今日もまたリズはダンジョンに出かける前のこと
風車の家のリビングでダンジョンで持っていくための荷物をまとめていて
みんなで机のところに集まっていた時のことだ
「そうなんだ ミスラは水適性だけじゃなくて回復魔法にも
適性があったみたいなんだ ほら」
ミスラは今日は気まぐれで水色の妖精形態になっている
机の上に置いてある自分が食べた欠けたお菓子に
両手の小さなパーを前にして なにやら光の波動を真剣に当てているミスラ
「(ビビビ・・)」
「フン♪フン♪」
何故か上機嫌なミスラ
ミスラはお菓子に向かってこの波動を当てつづければ
欠けたお菓子が回復して復活すると思っているのだろうか
私は少し手で遮って具合をみると活性というか確かに癒される感じがする
(これが回復魔法というものか)
ネロが夜に魔法の勉強とかするときに
くっついてきて教えてもらったのだという
「ミスラは僕のお腹の上にのっていたときから
もしかしたら回復魔法の適性があるんじゃないかなと思ってたんだ」
そういえばネロが前にダンジョンで腹パンゴブリンに
お腹をノックアウトされた時
お腹にのってミスラに冷やしてもらっていたことがあったっけ
一応あれは効いていたのね
「それならミスラはダンジョンで もし誰かが怪我した時にでも
役に立つかもしれないわね」
私が思ったことを
ぼそっとなんでもないように言うと
(バッ!)
それを聞いていたアスラは慌てたように
机の例の欠けたお菓子に向かって両手を突き出して必死に念じはじめた
だけど特にアスラの方の手から波動は何も出ていない
「アスラには回復呪文の適性はなかったからね」
ミスラがネロ教わっていた時に一緒に試していたらしい
「お、おねいちゃ・・あたちも火のまほうなら
できゆからダンジョンで あたちも、リズとたたかいたい・・」
目を見つめて お願いをしてくるようなアスラ
(ええ・・困ったわね・・)
「いい子にしているならダンジョンにはいてもいいわ
でも戦うのはまだ危ないと思うわ、
アスラはまだ進化して少ししか経ってないのよ
魔法だって適性があったから基礎を形だけうてただけよ
まだ全然実用じゃないわ」
「しょ、しょう・・」
「練習しながらでいいじゃない、 ね?」
「うん・・」
・・・・・
「フッ!」
「ガッッ」(ガコン)
こうしてリズは
学園南のダンジョンの中の祠の印の入った紙を手に持って
祠の隣にあるオジキの使い魔ベダジュウ似の
なんともいえない顔つきの犬の石像を
足で蹴り飛ばして即現れた隠し通路に進んでいく
少し考えたけどやっぱりこの方式が最高効率であるという結論になった
(・・・)
「けっこう遠慮がなくなったね・・リズ」
「なんかちょっと腹の立つ顔つきをしているのよね・・この石像」
(キャッキャ!)
リズが石像を蹴り飛ばす迫力で喜ぶスライムたち
「今日はもうちょっとダンジョンの奥まで行ってみようと思うのよ」
「そうだね 魔物も大して危なくないし
地図も書き足しておいたから迷うこともないと思う」
・・・
ダンジョンに入ると
時々モンスターは出るけど
みんなリズに向かっていって あえなく飛散していた
「今日はこの辺りにしよう」
いつもより深い森の茂るエリア
「このダンジョンは どこまであるんだろうね・・
あんまり広くはなさそうだけど」
ネロはその場の木の根元に荷物をおろすと地図を取り出して
座標を書き足し始める
ついでにスライムたちに持参したクッキーのお菓子を配っていた
(ふーん ピクニックだなあ)
「リズもクッキーいる?」
「いや 私はあとでいいわ ちょっと見てくるから」
連休は今日までだから今日はちょっと経験を稼いでおかなくては という思いが
リズをいつもより少し前に進ませる
「パァン!」
魔物のモンスターに見つかり、
リズと目が合うとモンスターに襲い掛かられてモンスターが飛散していた
(うーん)
・・目標としては
今までのオリジンコマンドにジャンプとかキックとか
一般的なコマンドガードも
頭の中に感覚をオリジンの実戦レベルでなじませていきたい
そうやっていきたいけど・・
ジャンプコマンドはイヴにとって普通性能だけど
イヴって腕や兵器による破壊性能に振り切ってるピーキーキャラだから
キックとかガードコマンドは使えないこともないけど
他のオリジンキャラクターと比べると極端に性能が落ちるのよね・・
でも技のコマンドで使う場合があるし
腕だけに頼って足技をおろそかにしては多彩なイヴの腕や兵器攻撃を活かせないから
是非 簡単にまじえつつ
不足はないように感覚の習得だけはしておきたいなって思う
やってきた魔物のモンスターたちを飛散させながら感覚を掴んでいき
謎だったコマンドもだんだん感覚が馴染んできたしいい感じだ
そうリズは感じていた
・・・・・
そのころ
「あんまり遠くに行っちゃだめだよ」
「ネロぉ わかった」
赤い色をしたアスラは少しでも役に立ちたいなあと
(リズが もしうちこぼしたものがあれば あたしのまほうで役に立つんだ)
と思って両手を上げて立ってずっと待っていたけど・・
リズは感覚の習得のために魔物全部をぬかりなく飛散させているのか
全然 討ち漏らしは やってこなかった
そもそもリズが立っていると魔物は全部
吸い寄せられるようにリズの方にいってしまうのだった
「・・・。」
(・・リズは けっこうはなれていってるみたい)
後ろを振り返ると
ネロにお菓子を与えられてスライムのミスラとキスラが
能天気にお菓子を食べていて「魔法見せてー」とネロにせびっている
いつもならあそこにいこうと思えるんだけど・・
ネロは「あとでね」といって
「もうちょっと地図を詳しく書き込んでおかなくちゃ・・」
何かの木版に集中して地図の続きを書き込んでいる
(・・・・)
(すこしならみつからないかも・・)
アスラは少し脇道に外れて歩いて行った
・・・・
・・・
「(テクテク・・」
(あれ・・ここどこだろう・・)
速攻で迷うアスラ
今までリズとお菓子しか追ってこなかったため まだ帰巣本能が低いのかもしれない
なんとなくひきかえそうかなと思ったとき
・・・
「ガサゴソ」
アスラの目の前の茂みが聞き慣れない音を出す
「・・?」
アスラが少し興味を持って
その茂みに近づいて そっと覗いてみると・・
「!」
魔物のゴブリンがアスラの少し目の先の場所にいた
でもなにか座って真剣に唸っているような
(あっ・・)
前にゴブリンに食べられそうになった記憶が蘇り アスラは怖さを感じる
それでアスラはその場で少し動いてしまった
「ガサ!」
「あ・・!」
「ぎゃビイ・・?」
ゴブリンが恐ろしい形相でこちらを振り向く
「ブリッチ・グギゴーア・オノーレ・・!」
(貴様、俺の排便シーンを見たな・・!)
「え・・?! あう ご、ごめんなさあい!」
とんでもないところに遭遇してしまったアスラ
「グリギルーア・ブリブリーニャ・・!」
(俺の排便シーンを見た者は生きては帰れない・・!)
「そ、そんなあ・・!」
排便直後に手も洗わずにアスラに向かって襲いかかってきたゴブリン
「や、やだあ」
そのあまりの恐ろしさに思わず足がすくみそうになるアスラ
(でも あたしはまほうをおぼえた)
やってくるゴブリンとはまだ距離があった
(いまなら・・うてる・・!)
アスラは両手をゴブリンに向ける
そして魔法を詠唱する
「ファイヤー・ボうル!」 「ギャ?」
ファイヤーボールは発動し ゴブリンにまっすぐ激突する
「ボシュウウ」
「ギギャアア!!」
(はわあ・・)
その様子を不安げに見つめるアスラ でも
火魔法の才能はあるらしく
(ズシュウウ・・)
その魔法の一撃で排便ゴブリンは魔力の光を残していなくなった
「え・・!」
(かったあ かったよお あたし あいつらにたべられそうだった
だけどもうこわがらなくていいんだよ みんな
あたしがつよくなったから・・つよくなってみんなをまもるんだよ)
・・
(テクテク・・)
アスラはさらに強くなるためにもっと先に進もうと
奥の方に歩いていく
「ヤッパパ・・」
奥の方にいくと遠くにモンスターがいる
近づいて・・
「ボシュ!」
「ギャビ!」
「バシュウウ!」 「うぎゃ」
途中で近くにもモンスターがいて 気づかれて怖かったけど
魔法が当たったら倒せた
(・・・・!)
アスラはもっとテクテク歩いていって
森を抜けて少し色の違う土がむき出しの地形にでてきた
「ふん♪ふん♪ヤッパパ パヤパヤ~♪」
歌いながらルンルンでズンズンテクテク進んでいく
(あたし・・つよいかも! なーんだ あたしよわくなかったんだ
あたしつよかったんだね
これなら・・おねいちゃ リズといっしょにだって)
(おねいちゃ・・・)
アスラの目の前に
・・・
それは明らかに異質だった
「 ゴルル・・」
恐ろしい見た目をした 明らかに場違いな巨大な竜がたたずんでいた
その鱗で覆われた長い首と頭の数は4つあり、
古い紋様の重厚な金属の装甲を頭にそれぞれつけていた
背にはかつて大きな翼が生えていたような名残があったけど翼はなくて
代わりに大きな魔法陣のようなものが回っていて
どっしりと地上に構えている
目が開いているかは 首の高い位置にあって分からないけど
並んだ長い首から頭は全てアスラのほうを向いていた
「パヤパ、あ・・・・」
(あ、あああ・・
でも でもあたしはよわくないから・・ つよくなったんだよ・・!)
アスラは魔力を込めて両手を上げる
「・・ファイヤーボール!」
今日一番うまく発動に成功したアスラのファイヤーボールは
竜の頭のひとつにぶつかると爆発炎上した
「ボシュウウウ!」
(や、やったあ あたったあ)
だが
(・・・・・・・ゴルル)
アスラの魔法の炎が消えるとそこから少し焦げ目がついていたが
原形もそのままの竜の頭が少し咳をしながら現れて
アスラの方をゆっくりにらみつけた
「ひう・・」
にらまれてアスラはおびえる
「ズ・・・ズズズ・・・・!!」
竜に巨大なエネルギーが蓄積する
竜の腹からそれぞれの首にかけてエネルギーがのぼっていき
4つの恐ろしい竜の頭部から
その眼が全て装填されたエネルギーによって光った瞬間、
「
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