第32話 寄生されたら赤ちゃんでした
おさらいをしようと思う
ダンジョンから持ち帰った、まあまあ かわいい魔物のスライムのペットを3匹
手に入れたリズ
キュートでよく考えられた名前もつけて
これからこのペットたちと新生活が始まる
と思ったけど
それは
屈強なミニ饅頭マン3体の間違いだった
そう そういうかんじだわ
・・・・
「ああ・・アスラ、ミスラ、キスラ・・あなたたちの正体は
実はミニ饅頭マンだったなんて・・どうしたらいいの・・!」
私はなんという
確かにあなたたちは出会った時はお饅頭みたいだったわね
でもだからってそんな・・
「とりあえず個別で不可視にしたらいいんじゃないかな」
冷静なネロの意見
「あ、そうか」ピッ (「人から見えるようにする」をoffにする音)
採用する
(シュイン)
ミニ饅頭マン3体の姿は消えて元のスライムの姿に戻る
やっぱりミニ饅頭マンの正体はスライムたちでした
よかったよかった
「大丈夫になったけど・・本当に大丈夫なのリズ?」
「大丈夫・・なはず・・お兄様も元気に生きてるし・・」
「・・・」
(まさか お兄さんにこれをつかったのかい リズ・・?)
「じゃあ・・とりあえず今日は休もっか
今日は・・ほんとにいろいろあったね
スライムたちは寝ちゃってるから僕が連れていくね
お休みリズ」
「ええ、 お休みネロ・・ 今日はありがとう」
こうしてかなり濃い一日が終わったのだった
・・・・
だけど どうやら次の日も濃い一日になるらしい
「リズ!!! リズうう!! スライムが! スライムたちが!」
昨日けっこう力を使ってしまい寝過ごしていた私の部屋に
ネロのけたたましい声が響く
「な、なに」
(バアアン!)
答える前にネロは私の部屋のドアを開け放っている
「これ・・!」
そう必死な表情のネロが胸元に何か抱いていた
え・・!これは・・
「りじゅ・・!」
「!?」
そこには小人の妖精のような体格で赤とオレンジ色でできた全身と
キュートな丸い目をしてプルプルとした物体がそこにあった
しかも、しゃべっているという
「(うわ・・、、あ、赤ちゃんだよ・・!)」
さらにネロの後ろから
ネロの頭の上にそれの水色バージョンの妖精がよちよちと登ってきていた
それにつづいて黄色バージョンの妖精も登ってきている
登っている間に赤い色のその妖精のような存在は
抱えられたネロの腕をスポン!と抜け出して
リズのベッドまできてリズに向かって飛び込んできた
(ピョーン!)
リズは真っすぐにやってきた存在をキャッチする これは・・
「あったかい・・」
(え、このじんわりあたたかさ どこかで・・まさか)
「あなた・・アスラなの?」
赤い妖精のようなその子はキラキラした目で「うんうん」ってうなずいた
この子は赤色スライムのアスラだったようだ・・
・・
(は~・・)
抱っこして近くで見ると
スライムボディなんだけど赤ちゃんみたいな短い手足に
かわいいふっくらお腹にぷりぷりのお尻
ほっぺたもぷにぷに
羽は生えてないから妖精っていっていいのかは分からないけど
そういう雰囲気
これはどういう変化だろうか 饅頭マンのせい・・?なんだろか
そんなことを思っていたら
ネロの頭頂部に登頂に成功した水色の妖精が
少しフワッとした光を放つと
妖精形態から元の水色スライムにミスラの姿に戻っていた
それを見たせいなのか黄色い妖精も
同じような光を放って元の黄色いスライムのキスラの姿になる
(え・・・姿を変えられるの?)
でもリズの目の前の赤い妖精アスラはそのままの妖精形態のままだ
「あなたも戻る?」
「やだ!」
(・・・)
「どういうことなんだろうね?
昨日の魔法スキルの詳細とかわかるの?リズ」
(饅頭マンのスキル詳細かあ・・意識してイメージで少し感じてみる)
(あ・・)
意識を強くすると
リズの脳内で少し更新された新しい情報がわかる
(・・・・)
「どうもね 饅頭マンが精細な魔法スキルの超集合体だから
存在の密度が大きくて
そのまま寄生を適応すると 寄生主の存在が小さいと
存在の大きさを何段階か押し上げてしまうことがあるんだって
でもこれも任意でオンオフできるわ」
「ふーん・・ じゃあこれは
スライムたちが存在の密度が上がって進化した姿なんだね
なんか勝手に元に戻ってるけど・・」
進化とやらをしたら しゃべれるようにまでなるんだろうか
まあ現にしゃべっちゃっているからね
魔物でも格が高いと言葉をしゃべる個体はいるって
前に天狗のオジキと馬車で話した時に教えてもらったような気はするけど・・
・・
ミスラとキスラはネロの頭の上で ぐるぐる回って遊んでいる
ネロの細くて金色の髪は見事に荒らされてボッサボサだ
(しかし どういう理屈なんだろうなあ・・
やっぱり寄生して養われるなら
どうせなら上位の偉い生き物がいいよねっていうことなのだろうか
先に寄生されたお兄様は
一応元からエリートで偉そうだからなんともなかったのかしら
寄生してみて地味だったら
せめて宿り主として存在感くらいは出してあげようということなのだろうか
いやな魔法だあ・・)
しっかしなあ・・
抱っこしていた赤ちゃんアスラの両脇を持ってちょっと高く持ち上げてみる
「りじゅ!」
うれしそうにプラプラして
小さくてかわいい手足の指をひらいたり握ったりしている
(なにが「りじゅ!」なのよね まあわかるけど・・)
(少し教育を・・)
「ねえ おねえちゃん、って・・言ってみて?」
「おねいちゃ!りじゅ!」
「(ふーむ・・・、)」
(・・私が思ってたような
魔物だし餌だけテキトーに与えておけばOK!みたいな
ペット像とはだいぶかけ離れてしまったなあ かわいいけどね・・
ちゃんと育てられるかしら・・
ちょっと不安だわ・・まあかわいいからいいか)
・・・・
・・
(わいわい・・)
その後ネロが食事の準備していたりして
みんなで集まってさわやかな朝食時
「・・・」
じっと観察しているけど
けっこうなんでも食べる新生スライムたち
この世界の食用の魔物とか(豚みたいな魔物?)とかも
なにも気にしていないようにモリモリ食べる
魔物同士・・だよね いいのだろうか?
(まあ・・栄養はつけたほうがいいよね)
赤色妖精のアスラは私の真似とかして不器用だけど
スプーンなどを使って食べようとする
(ぽろん・・)
失敗してるけど
そういうのを見ていると魔物の子のはずなんだけど
ほんとうに人の子共みたいな
かと思うとこっちの水色のミスラとかは気まぐれに姿を変えたりもする
食事の時は完全にスライムで吸収的な食べ方をする 正直とっても楽そう
ミスラの方の食事をじっと観察してみる
(プルルン・・)
体全体でダイナミックに出されたお皿ごと包みこんで吸収?している
(わあ・・ちょっと面白いかも)
朝食のネロが焼いたお魚が分解されていくのが見える
水色の体だけど半透明にもなっている部分があって
骨を残して消えていっている様子が分かる
吸収した終わったお皿にはかなり奇麗に魚の骨が残っていて
「カラン」
と音を立てる
(なんか行儀がいいのか悪いのか よくわからないね)
(でもこれだと紙のお皿とかは使えないかもなあ・・)
とかぼんやり思っていた
でもやっぱり楽そうではある
(アスラも食べるときくらいはスライムの姿に戻ればいいのにね)
まだスプーンに悪戦苦闘している妖精形態アスラをみる
「あっ・・」
(ポロリン・・)
また失敗をした口回りが汚れているアスラを少し手伝ってあげていた
・・・・
・・・
リズは今日することを考えていた
アスラたちのせい?でだいぶ置き去りになっていたけど
リズのオリジンの戦闘コマンド・・
方向キーの力の効果が今のところ万全には魔物のいるダンジョンの中でだけだけど
目に見えて分かるレベルに到達していた
それにアスラたちから寄生で吸収した相性のいい魔力のことの方もすごく気になる
だけどやっぱり今は
まだ使えない他の戦闘コマンドを一通り充実させていきたい
けっこう戦えることが分かったから
出土品や魔物の素材?とかが手に入ったりして
素材を売却して儲けることができるらしい他の場所のダンジョンにも
いってみようかなと思ったけど そういうところは人目につくから
(やっぱりあそこかなあ・・)
やっぱり昨日のダンジョンがいいかなって あそこは人いなかったし・・
相談するとネロもまたついてきてくれるという
・・
そういうことで
また昨日の隠しダンジョンにやってきたのだった
だけど・・
・・
「君たちは留守番でいいよって 言ったんだけどなあ・・」
ネロの頭の上にのっている水色ミスラ
その上に重ねたアイスのようにのっている黄色いキスラ
堂々としたものである
「(はっし)」(手をつなぐ音)
そして赤色のアスラはずっとねだってきたので
魔物が出たらすぐ離すからねって約束して私と手をつないでいる
「ふんふん」
このアスラはなんか戦う気があるらしくて
いろいろねだってきたのだった
だけど特に戦わせる気はなかったので
やることは特にないよっていうとしょんぼりしていた
でもついてくる気は変わらなかったみたいだ
アスラがいくなら私たちも行って当然みたいに残りのスライムも付属してきた
ていうかしゃべり方と妖精形態の姿でなんとなく察せたけど
スライムたちは全員女の子みたいだった
いやオスかもしれないし
そうだとしてスライムだと見わけもつかないけどね
ダンジョンにいく隠し通路を開くために
あのベダジュウみたいな
なんともいえない表情の犬みたいな石像をリズの足で蹴り飛ばすと
スライムたちは歓声をあげて変にテンションで盛り上がっていた
・・・・
「奇麗になってるわね・・」
前日に飛散した魔物たちはきれいさっぱりいなくなっていた
地面に吸収されたらしい
ダンジョンってそういうものらしい
( )
以前にアスラたちがいた大きな祭壇の石があった場所が
チラッと見えるところにも通りがかったけど
(あれ・・?)
そこにはもう祭壇はなくて
ゴロゴロした石の欠片が少しあるくらいで
前に石の周りで咲いていた白い小さい花の群生が残っているだけになっていた
アスラたちが集まってお饅頭になっていた、
あの石の前にあった白いお皿も消えてなくなっていた
でもネロやそこから生まれたはずのスライムたちは
なぜかそのことには気が付いてない
私の目が良くて
遠くだから見えてないだけかもしれないけど
(あれ・・昨日は半分は残ってたはずなのになあ
後で全部崩れてこれも吸収されちゃったんだろうか)
ネロにいうと
「やっぱりリズが全部壊しちゃってたんだね 罰当たりだなあ」
・・
とか言われそうだなあって思ったので
(・・・)
黙って先に進む
・・・・
そうして進んだダンジョンの森の先
「てあ!」
(バシャア!)
そこで幸先よくハーフラビットがリズめがけて襲ってきたので
準備運動で飛散させて継続の魔物をまっていたところ
(あれ・・・)
今日は全然後続の魔物がやってこず しばらく待っていてもこないので
スライムたちは飽きて ネロにお菓子をねだりはじめて
「わいわい」「きゃっきゃ」
ネロの周りは即席ピクニック会場となっていた
(なぜかしら 昨日倒しすぎたからいけないんだろうか・・)
リズは待ちぼうけでそんなことを思っていた
(ていうかこのスライムたちも私の腕の力 普通に見えてるみたい
しゃべれるようになったら判明した
いつか天狗のオジキが私の力を魔に近い幽玄の力とか言ってたから
魔物の目には見えるのかもしれない)
暇だったのかスライムたちは さらにネロに魔法をみせてっておねだりしていて
ネロが簡単な魔法を唱え始めていた
「何してるの?」
私が尋ねる
「え リズそっちはいいの?」
「いや だって今日は全然こないから」
「なんでだろうね これはミスラたちに魔法をねだられちゃって
見せてあげようっておもって」
ネロは「ライト」といって杖の先から光をだして
その周りのスライムたちが魔法を見て喜んでいる
(ポワアア・・)
「相変わらずネロの魔法は優しい光ね
前つかってたトーチ・ライトと何か違うの?」
「トーチ・ライトはダンジョンとかで使うから継続時間が長い回路の設定なんだ
ライトはさ、 ほらその場限りだよ」
そういってネロは白い魔法の光を消す
それを見てスライムたちは必死に真似をしようとしてるみたいだけど
両手を前に出してうんうんうなっているだけだった
「じゃあもうひとつ見せてあげるね
僕のファイヤーボールを見せてあげる」
ネロは確かにそういった
(ネロのファイヤーボール・・)
(・・・・)
私はちょっとピンときて
周りにパンチが得意そうな敵がいないか見渡したけど
・・
今は大丈夫なようだった
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