第29話 ひろえるのか

 (ん この感触・・)

足元をみるとこれはさっきの赤い色の饅頭スライム

なんという ついてきてしまったのだ


さいごの最後に油断して

とうとう私の脛を一口かじられてしまったかと思ったけど

それよりはまあ大分ましだ


「ダメでしょ」

そういってリズは赤色のスライムをつかんで足から離して草むらに置く


最初から変なやつらだと思っていたけど

もっと思い切り遠くにぶん投げてから戻ってくればよかったか


「リズ・・どうしようこれ」


よくみるとネロのほうにも黄色のスライムと水色のスライムがくっついていた

水色のスライムにおいてはネロの足元どころじゃなくて

頭の上にのっていた 

(ネロ・・君は途中からグルだったんじゃないのか)


「どうしようっていっても魔物・・なんでしょ このスライム」


「そうだけどついてきちゃったよ」


「いやでも 他にほんとにお母さんとかいるかもしれないし

ダメじゃない?野生の動物は・・」


「そっかあ・・」


「君たちもあそこにいたかったんじゃないの?

あのお皿からなかなか出てこなかったじゃない君たち

いいの?離れてきて」


(お饅頭でいたかったんじゃないの?)


でもそれをきくとなんかプルプルしてるスライムたち


(うーん)

普通にスライムの魔物らしく、なにか液体とか かけてきたりしたら 

一瞬でコマンド訓練の肥やしにできるのになあ


無駄に無害だとなんか もののあわれを誘うなあ・・

お饅頭扱いでいじめられてたしね・・


「それにさ ダンジョンの魔物ってそもそも持ち出せるの?

かえらずの地っていうのに 持って帰るのはOKなの?」


「それは意味が違うんじゃ・・

でも僕にはわかんないなあ でも持ち出しっていうか

普通に外にでてきちゃったら危ないし普通はできないよね たぶん」


「じゃあだめなんだよきっと」


そういってリズは試しに洞窟の穴の先に行く

それから少し振り向く


入ってきたときの洞窟の穴の光と竜の石像が咥えた丸い石碑が見えて

その穴の前には赤色スライムがいて 

さっきみたいに必死にリズの後を追いかけようとして

ピョンピョンしていたけど 穴の境目で跳ね返されるように止まっていて


リズのところまでついてはいけないようだった


「ほら だめだった」


「ダメみたいだね・・」


ネロはちょっともの悲しい顔をしたけど納得はしたようで

あたまの上の水色のスライムを下ろして草むらに置いていた


黄色のスライムは水色のスライムがおろされると

ネロの足元からは離れてそれにくっつきにいく


「ここでお別れだね 僕のお腹のことはありがとうね じゃあね」


ネロが私がいる洞窟の穴の先の入ったところに進んでくる


その場で水色のスライムと黄色のスライムは少し震えた後、

赤い色のスライムがいた洞窟の境目のところにやってくると

また最初お饅頭になっていたとき見た時のように

集まってスライム3匹で寄り添っていた


「じゃあいこうかリズ」


「そうね」


切り替えて

前を向いて元の祠の方向にリズは歩き出す


魔物は通れない世界の境目 だけど必死について来ようとジャンプして


ピョンピョンという音は洞窟の後ろから小さく響いてくる



(ピョンピョン・・)


今日はとてもいい収穫を得られた日だった

 寮舎に帰ってから何をしようかな・・


歩いていくリズの足に赤色のスライムが必死にくっついてきたときの

じんわりとした温かさが残っていた


「・・・・・」




・・・・


「リズ・・でもどうするの? 持って帰れないんでしょこれ」


「うーん まあそうなんだけど・・」


結局洞窟前に戻ってきてしまったのだった

スライムたちは喜んで跳ねてリズの足にくっついてくる


「よくよく考えたらオジキも使い魔とかいたけど

あれ魔物でしょ 可能性ないわけじゃないとおもうのよね」


「そうだけど使い魔のベダジュウたちは普通に

ダンジョンからはきたわけじゃないんじゃないの?」


「それはわからないじゃない」


「うーん・・」


話しているうちにリズはくっついていた赤色のスライムを適当につまみ上げると

手のひらの上にのせてそれを洞窟の入り口に押し付けてみる


イヤイヤってかんじで穴の境目に押し返されて

プルンプルンしてる


「はあーこういうかんじになるんだね」


「無理やりいったらつぶれちゃうのかな?」


「そうかも・・」



(・・・・)

リズは少しの間考えていたようだった

「よし ちょっと考えた ネロちょっと後ろ向いておいて」


「えっ・・なにそれ・・関係あるの?」

「いいから」

「わかったよ・・よくなったら教えてね」


・・(ガサゴソ)ちょっとなにか力をこめている音が聞こえる



「いいよネロ」

リズのいたずらな声に振り向くネロ




「フフフ・・見て・・「超絶バストUPアップ」・・!」


「ぶふッ」


そこにはさっきのスライムを2匹分 

リズの服の胸の部分にぎゅうぎゅうに詰め込んだ状態で

自慢気に大きなボリュームの胸を張るリズが立っていた


シャツのサイズに余裕がなくて

きついらしく少しリズのシャツからはみ出ている


赤色スライムは一匹余ってリズの頭につかまってぎゅっとしていた


「ちょっと・・やめてよ・・なにしてるのリズ」


「いや 密着っていうか私の体の一部扱いなら大丈夫かなって

あ・・水色の片方だけひんやりする」


「ええ・・そういうものなの?」


「どうする?君たち くっついたまま 私のバストになったまま このまま

・・・「私と一緒にくる?」」


(ぴぴ・・!)

スライムたちが少し跳ねた気がした


・・

「とりあえず試してみる」


「ええ・・大丈夫かな はじけたりしないかな」


「まあ・・そのときはしょうがないんじゃない 魔物だし」


そして外へと出ていく穴に進むリズ はじめは慎重にいく


「だめよ ちゃんと私の一部になるつもりでいくのよ

もっとしっかりもって」


リズの頭にいる赤色スライムがきゅっとしがみつく


進みだす


・・

(  )

穴の前にあった竜が咥えた丸みを帯びた石碑の文字のいくつかが浮き出して

ぼんやりと淡く光ったような気がした


「あ・・・行けたね」


前に感じた押し返すような感触は特になかった

そのまま進めている

スライムたちにも別に変化はないようだ


「ええ・・そんなんでよかったの・・?」

ネロは不思議そうにしていたのだった


・・・・

その時と同じ時刻


小さなスライムたちが去ってもう何もいなくなった

森の中の黒い石の祭壇と空になった欠けた白の器


その黒い石の上に止まっていた小さな白い蝶々が

石を離れてひらひらと飛び立つ


「パリン・・」

すると白い器は白い蝶が離れた直後に細かく割れて砕けてしまい

その欠片は光の粒子になって空へと消えていった


「ピシピシ・・」

すでに半分崩壊していた黒い石も残りの部分がひび割れていく



(( いってらっしゃい・・ ワタシの 最後の子供タチ・・ ))



(( ・・・、 ))


ひび割れた黒い石はそのまま残りの全てが崩壊して

静かにゆっくりと地面に吸収されていった



・・・・

・・・


ネロとリズは元の祠のところまで帰ってくる

ネロは気が付く

(あれ・・石像の位置が元に戻って石の模様が隠れてるなあ)


一定時間たつと元に戻る仕組みなんだろうか


リズたちが戻って少し経つとあいていた隠れた穴はフッと見えなくなって

穴は壁になっていて元の行き止まりになっていた


「普通に帰ってこれたね

これはほんとなんだったんだろうね

隠し通路なのかなあ」


ネロはまた壁になった行き止まりの部分を手で触れてみながら

スライムがつまってやたら胸がパツンパツンなったリズを見る


「ちょっと前の方はやめて・・」


リズは顔の方に赤いスライムがしっかりくっついて

あんまり前が見えないようだった



こうしてリズとネロの初めての異世界ダンジョン探検は終わったのだった


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