第19話 失敗バトル

 「・・!」

 (そんな・・どうしよう コマンドミスをすると

今までPコマンドで貯めた分も無駄になって全部発動しないなんて)


(でもオリジンってそういう格闘ゲームだった

やたら判定がシビアなんだよ・・


あっ・・やばい全体的に体の力が抜けてきた・・

失敗した時の技のリスクまで同じかあこれ・・)


そこに一気に突っ込むようにリズに対して強襲をしかけてきた大天狗


「ブワアアア!!」


(・・!)

リズのとっさの見立てでは

その挙動はダイビングボディプレスによる肉薄にくはくであり

その巨体はもう迫ってリズに体全体を覆う影を作っていた


(グルン・・!)

だけど直前のそこで大天狗はまた変幻自在に動きを変え

即座にその体勢からつなげやすい別の技へと切り替えてきた


「ゴオオ!」

目が覚めるような鮮やかな動きに天狗の周囲からは強い風が発生して

リズは大天狗のその巨体の反転した勢いの風にあおられる


「 回砕天かいさいてん龍下撃墜りゅうかげきつい ・・!」


「!」

(くっ・・!ここで手を替えてきた・・!

瞬時に私の対空攻撃の挙動に対抗して躱しきるため・・!?

その投げ技の動き・・まさか「地獄送り ローリングブラスト」・・!)


(ここはコマンド「ガード」!!)

「バッ」

即切り返しの動きをするリズ


「(シーン・・)」

(・・ってガードも無理かあ・・

どんだけわたし今までここで適当に戦ってきたんだよ

使えるのってもしかしてとは思ったけど ほんとにPコマンドだけじゃん


まあ投げ攻撃は普通のガードではどのみち防げないことが

多いんだけど・・)


「(って、いけない・・!)」


「ガッ!」

大天狗の空中からの掴みがリズに直撃する


・・・・・

・・・

切り替わる視点

またほんの一瞬 時はさかのぼ


リズが技を失敗する直前の空中から迫っていた大天狗


「ズオオ・・!」

攻撃を躱された直後でも即座に

少女から発せられる次に装填され始めた邪悪な力を持つオーラ


( ぬ・・これは・・対空攻撃か?

この娘・・! 初見でワシの「飛身圧潰し」への対処ができるか )


「(ピシ・・!ピシ!)」

少女の目は意識をどこかに集中していて 

またさっき外した一撃目のような莫大な邪悪なエネルギーが

瞬時にその人間の少女の右腕に蓄積して周囲の空気が激震していた


「・・!」

(やはりか・・この術も殺意が高い エネルギーは無尽蔵か・・?

あれほどの力を行使して術の反動もないとは


これだけの威力を内包する体術?をこの年端もいかぬ人間の娘が

このレベルでおさめているとは・・


この身のこなし・・)


「 ズシュウ・・」

そのとき 突如、技が掻き消えたように少女から

フッと力の波動が急に消失したのを大天狗は感じとった


「・・!」

(!・・このタイミングで術を取りやめた・・?、

それはありえん・・ならば失敗した?)


だがあの殺意の力の塊は 先ほどまで紛れもなく 

あの少女から燃えるように際限なく発せられていたものだった


(ということは・・、力を隠した・・、

おやまさかここで このワシにさらに駆け引きを仕込んでくるか

フフフ・・


ん?だが・・・

おかしいな「圧」までなくなっている


まさかほんとうに何か想定外のことが起こったのか?)


(今・・かすかにだがこの娘の唇の形は「イヴ」とつぶやいた、

誰だ・・?

いや 何らかの新しい魔法の発動合図か?)



(しかし それはワシには関係のないことだ)


「 娘よ お前が裏仕込みでワシに技をかけようと

そうでなくとも 」


「 ワシはどちらあってもかまわん・・! 」



「(飛身圧潰しからの即切り替え・・!) 回砕天かいさいてん龍下撃墜りゅうかげきつい・・!」


大天狗は上空からリズに即座に肉薄すると

「!!」

一気にリズに掴みかかる

リズは吸い寄せられるように大天狗の剛腕によって掴まれる


「 がっちりキャッチだ・・!」


「ガッ!!」

「ふぐっ・・!?」

大天狗の猛獣のような太い腕に捕まり その圧力に体全体が絞められ

「くあっ・・!」

リズの気管が締め付けられて息が漏れ出るリズ


「リズ!!!」

馬車の前に立ち尽くすネロが声をあげる


・・

大天狗は少女を掴んで

「ズガアアアン!」

宙に持ち上がっていた少女のいた地面の足場を中央から粉砕すると

そのまま嵐のような竜巻の力で回転して上空に飛び出してのぼっていく


「ギャルルルル・・!!」

粉砕されて周囲に飛散する足場と

すさまじい竜巻の巻き込む音が周囲に響き渡る


・・・

(ゴオオオオ・・!)

少女の体を空中で締め上げながら大天狗は少女を冷静に観察する


「・・・」

(・・やられているこの状況からも 

その眼は次のワシに対して付け入る隙を探しておるか


まるで戦い続けるために生まれてきたような娘だ)


(しかしこの娘・・魔の者や 物の怪の類やと思って

直接接触してみたが


華奢だ・・心音 脈拍 体温 肉感 ・・


ごく普通の人間の娘だ 


一体どこに先のような力があるというのだ)


「ブオン!!」

大天狗はピークに達した回転の勢いでそのままリズを地上へと投げ飛ばす


「ズギュウン!」


(小娘であろうと このワシに抜かりはないぞ)


さらに追撃で強い魔法の力を即発動させる



「「 風魔ノ羽衣ふうまのはごろも 」」

なすすべなくとばされて

地上に叩きつけられる軌道にいる少女に

天狗の異形の指をさし向け 容赦なく強力な魔法を繰り出した


・・・

「ゴオオオオオ!」

とてつもない勢いで地上に向かって投げ飛ばされたリズ


「ぐ・・!」

(ううっ・・隙を見つけられなかった・・

目が回る まだ息ができない・・

しかもこれは・・あの天狗の指先が光った・・追撃魔法・・!


これも最初にみたような風の強力な魔法・・!)


(だけど地上まで遮るものがない 

もうスピードが出すぎて立て直せない・・)




「ズワアアアン・・」

「・・!」


(・・・あれ・・?)


リズの体は地上に叩きつけられる直前の、その少し前で止まっていた


リズの体の周りは風のゆりかごのようなもので包まれていて


投げつけられたそのすさまじい衝撃が急速にやわらいでいた

そしての強い風のちからでリズの体を支えていた



(シュウウ・・)

「それは「風魔ノ羽衣ふうまのはごろも」、守りの術だ」


「お前たち ワシの話をきけ ワシの話を・・」


・・

大天狗はリズを投げ飛ばした後の上空から

ゆっくりと羽ばたいて地面の少し上のところまで降りてきた


投げ飛ばして距離をとった後 

風の衣に包まれて無事なリズの方を一瞥いちべつする大天狗



「(ふむ・・ここまでで済んだか)」


「・・ワシはあの馬車に引きこもっている布商人の男に呼ばれてやってきた

臨時にこの馬車の救援要請をされた者だ


敵ではない、このようなみてくれではあるが・・

「探知」で先に隠れた山賊を懲らしめてからきた


身の証明ならば正式なセントラルの緊急討伐隊証も持っておるぞ」


「え・・」


急にがっくりときたリズ

(ふう・・・なんだ・・、味方じゃないの・・紛らわしすぎでしょ

でも逆にしっくりきたなあ


結局・・だめだめか くやしいな・・)



・・・・・

・・・

その後 襲撃してきた魔物である山岳ゴブリンたちは

味方になった?大天狗の応援と

馬車のおじさんたちの連携によって完全に討伐できた


なんでも引き付けの煙の効果が強すぎてゴブリンたちは

ゴブリンのリーダー?が倒されても逃げることもせず 

ずっとそこに引き付けられていたのだという


・・・

リズは技失敗の反動ですごく疲れたので 大天狗との戦いの後 

即その場で眠るように倒れ込んで休んで

その話をあとでネロから聞いていた


いろいろと山賊やら襲撃やら問題が片付いていないし

地滑りがあってまだ安全な避難ルートが確保できないので

落ち着いて救援の本体がくるまで

休憩や待機ということになっていた


・・

今は残っていた食料などを馬車の人みんなで分配して食べている


「はー・・つかれた・・」

馬車の前の焚き火の近くに座るリズ ネロもいる

一緒にもらった食料やリズのパンを分けてあげて食べている


リズが馬車に乗った町で買っていたパンを食べる暇がなかったので

ちょうどよかった


そんな風にして座って休んでいると


「あなたの行いは偉大でした 

よい星に恵まれ 神の祝福がありますように・・」


馬車の所で襲撃中に乗客の人たちを誘導したり

励ましたりしていた聖ソウル法典の牧師さんが

私たちの前にやってきていて

戦闘で無事だったお礼に軽いお祈りのような回復魔法?をかけてくれた


「ありがとうございます」


魔法の癒しの光に撫でられてリズはちょっと楽になる

牧師さんは人質になっていた他の人の所にも行くみたいで去っていく



・・・

そこにズシリとやってきた気配があった


(うわ・・・)

そこにはさっき

リズにとっての大失敗バトルを繰り広げた大天狗がやってきていた



「まさか山賊を懲らしめにきたのに山賊に襲われずに

人間の娘に襲われるとはな」


大天狗はリズたちの隣の辺りにやってきて腰を下ろし 

その大きな翼をたたんでいる

翼からは荒げているようで意外と奇麗な黒い羽根が並んでいるのが見えていた


「ドシ・・」

大きな天狗は少し離れたところで座ったと思っていたけど

その巨体の威圧感でいきなりすごく近くにやってきたみたいだった


その後ろになぜか申し訳なさそうに

馬車で渦中にリズに話してきた布商人のおじさんが立っていた


「す、すみませんね・・」

やってきた大きな天狗に誤解のことを謝るリズ


「よいのだ ワシの姿がこうではな

というより誤解がありすぎて 山賊共ではなく

きてすぐの馬車の人間たちの弁明に一番骨が折れたわい・・


他の応援の人間も来る予定だったが

街道が倒れた黒石で塞がれておってな

飛べるワシだけ先に来て 迂回や石をどかすのに時間がかかっておった」


(・・・)

「・・・」(そうだったんだ)


「そうだ 隠れた山賊どもは懲らしめておいたが

術を封じて放置してあるでな あとで拾いにいくといい まだ生きておる


彼奴あやつらは

ある程度威力のある魔法でなければ通らぬレベルの装備はしていたようでな

悪党だが悪運だけはいいのか なかなか頑丈だ」


・・・・

その当時

リズとの戦いの後

大天狗がきてすぐは声が届かなかった事情をしらない馬車のひとたちに

決死の覚悟で襲われることにもなったらしいけど


「ち、違うんだ そのひとは・・!」

2番目の馬車の中から必死に這いでてきた布商人のおじさんが説明をしだすと

やってきた天狗の人への誤解が晴れてなんとかなったらしい

・・・


「そうだったんですね」


「説明不足だったね

この辺りの治安がいいのはこの人たちのおかげでもあるんだけど

田舎の出身が多いから

本物の大貴族の魔法使いなんて間近で見たことがない人が多かったんだろうね」


「・・・」

(大貴族の魔法使い・・)

大貴族っていうのは私の家ような辺境の小規模な貴族じゃなくて

もっと大きな規模の貴族家の名称だ


「それにこの地方は悪さをする古い悪魔の伝承も多く残っている土地柄だから

警戒心も強いんだ

今回のことで知ってもらえたらいいんだけどね」


布商人のおじさんが あの時、

リズに馬車で胸ポケットから取り出してつぶしてもらった

「風の波動をもつ硬い木の実のようなもの」は

実は大天狗の人の一族への緊急の連絡手段だったらしく


布商人のおじさんは普段一族の総本山?に布を卸してくれていて

馴染みだったそうな

それで他の用で近くにやってきていたから救援にきてくれて


探知で逃げたふりをして近くの茂みに隠れていた山賊をあぶり出して

やっつけた後

救援を呼んだ布商人のおじさんの居場所をさら探知して

やりとりをしようとしたんだけど


布商人のおじさんが馬車に他の人とぎゅうぎゅうにつまっていて動けなかったので

おじさんは状況がわからずに

やってきた大きな天狗の異形の見た目で

馬車の他の人には味方であることを認知できなかったのだ


・・

布商人のおじさんはそうやって少しの弁明をしていた後に

さっきいわれた懲らしめられた山賊たちの回収を馬車で話し合うために

向こうの方に戻っていった


・・


「それにこいつらも放ってしまったからな

こやつらは使い魔ではあるが 

完全に見た目が魔物だから敵に見えてしまっただろうな」


「クエ~」

(使い魔だったんだ 

よく見るとそんなに怖くないわね)


大天狗の肩には一緒にきた黒いカラスの使い魔の魔物がのっていて

この空を飛べる使い魔は

町の応援の本隊を正確にこの場所に呼ぶための連絡をしていたそうだ


もう一匹の犬みたいな魔物は大天狗のうしろの方にいた


(・・・)

ハッハッ・・って舌をだしている 

ベタみたいにべったりとした黒い色の体毛の少し癖のあるずんぐり体型の犬 


「こいつはベダジュウだ 結界を張るのに特化している


普段はこいつも連絡のために使うが 空のほうが早いからな

守りの結界を張ってもらっていた」


「アオン・・」


え、・・こいつ? 暗くて黒いからわかりにくかったけど

よく見るとなんかすごい間抜けな犬の顔つきをしている 

一体どういうセンスの名前なのだろう

それにちょっと変なにおい 獣くさい

結界・・?

って・・、こいつにわたしの攻撃はじかれたんならけっこうショックなんだけど


とかいろいろ思ってたら

「ブルルルン!」(わっ)


その犬のようなベダジュウという使い魔は毛並みを振るわせると

それまでの闇に溶けた黒色の色合いから

全身の色が変化して つぶらな目に白い毛並みの普通の犬になった


どうやら今までのベッタリとした黒色は夜に紛れ込む魔法の迷彩だったみたい

不思議な犬だ



「え・・この子が天狗さんの私が割った最初の結界張ってたんですか?」


「いや・・ワシにかかっていたのはワシが特別に張ったやつだ

ベダジュウには馬車の人間の周囲に守りの結界を張らせていた

魔物がおったし近くの斜面も崩れておったからな


後 ワシは天狗ではあるが

人の町では何故かオジキと呼ばれておる そう呼ぶといい」


(ああなんだ・・よかったこいつじゃなくて・・よだれ垂れてるよお

ていうかオジキっていうんですね・・え、呼ぶの? しょうがないなあ・・)


(・・・)

「オジキは・・何者なの? 普通に私の腕の力のこと見えてたし

あんな技まで使ってきて・・絶対強い人だよね」


「リズ・・さっきおじさんが大貴族の魔法使いって言ってたじゃん

呼び捨てはさあ」

口を挟んでくるネロ


「ん? いいぞ このワシが呼べといったのだ」


「え、いいの?じゃあ僕もいい?」


「いいぞ」


「やったあオジキ」


「うるさいぞチビガキ」


「うああああああああん!!」


「ハハハ うーむ、強い者かといわれるとそれは分からん 


確かに力は強い方ではあるがこの世界は広いでな 

ワシはこの辺りの台地の一角に構える風魔の山天狗その一族の長だ


それよりも何者かといわれると おぬしのほうが気になるものだな

お前のような力を持つものが何者なのか気になることがあった


お前は何者だ 娘よ」


「・・・り、リズは・・」

「おぬしには聞いておらぬ ネロだったか」

「はい・・・」


(娘、ね・・)

「娘じゃないわ・・リズよ

でも私は普通の学生よ


何者かなんていわれたってそんなの私はよくわからないわ

でもたぶん悪いやつとかそういうんじゃないから・・」


(・・・)

「ふむ・・あれほど邪悪な力をまとっておいてそれをいうのだな


たしかにこうしてみると

あの気はおぬし自身からはそこまでは感じとれぬな


ただ 普通の人間には魔に近い幽玄の狭間 

邪悪な気の力というのはあまり目視できることはない


まあワシが特殊な体質でそういった気に対する察知が高かったからの


リズ、おぬしの内なるものか・・世界は広いな」



(へえ・・やっぱり普通の人にはそんなに見えないのね)


「え でも僕も見えたよ」

これはネロだ


「そうなのか? この世界には少ないが強い聖属性を宿す人間には

幽玄に近い気を察知できる者は稀にいる

じゃが坊主、おぬしは魔法の適性はあまり・・」


「そんなあ・・!」


魔法適性を指摘されてショックを受けているネロ

まあ魔法に関してはちょっとあれだったしね

でも聖属性ぽいトーチの光は出してたから私の力も察知できたんだろうか


・・

見識が広がりそうだなあと思ったので 

続けていろいろ打ち解けた大天狗のオジキといろいろ話をしていた時


馬車の用心棒だったおじさんたちの一団が私たちの所にやってきた



「オジキの旦那ァ・・少しこっちに来て見てもらえませんか?」

「む?」


「少し見てこよう お前たちはしっかり休んでおくとよい」


「いってらっしゃいオジキ」


オジキはおじさんたちに呼ばれて去っていったので

「私たちも休もうか」

「そうだね」


私たちはこれからの移動に備えて休むことにしたのだった


・・・・・・

・・・


おじさんたちの一行 

呼び出した大天狗のオジキをその場所に案内する


「これです」


「む・・、これは」


「  」

それは以前にリズが密かに倒していた赤いゴブリンの残骸だった


「山岳ゴブリン討伐報告用の情報をまとめたかったんですが

どうもこいつだけよく分からなくて・・

こいつは鬼ゴブリンでいいんですかね」


その異様なゴブリンの残骸を見るオジキ


「・・大半は失われておる・・、ゴブリンだが これはただのゴブリンではない

鬼ゴブリンでもない


通常のゴブリンとはまるで力の異なる存在が異常に発達した個体だ・・

おそらくだが言語能力を有するレベルだ」


「な、言葉まで・・? はぐれゴブリンにはそんなやつがいるんですね

ですがこんなところで出るはずが・・」


「そんなやつでもゴブリンなのは助かったな 俺達でも最後は討伐できたしな」

「だがこんなことになるとはなあ 俺たちも鍛えなおさんとなあ」

「そうだなあ」


「(・・・)」

「(既に討伐できているからか、 

この者たちはあまり事態を重視できていないようだが


この個体がもし 他の場所で出現し動き回っていたら

おそらく大きな人的被害をもたらしていたところだ


到底この者たちで抵抗できるレベルではない魔物・・

ワシが来るまでに馬車の人間が一人残らず全滅していることもありえた


だがこれほどの力を持った個体が

離れからとはいえワシの索敵でも察知できなかったことも本来ありえんことだ


この一個体だけのようだが・・)」



(・・この体に空いた風穴・・、あの娘が倒した・・か)


異常発達した個体と推測された、ぽっかりと風穴の空いた体の残骸の周囲と

ちぎれて残されたパーツの所々の筋繊維の内部に

食い込むようにして露出していた砕かれた虫の死体


「スッ・・」

その虫の殻の残骸の一部を手に取る

(これは・・臓器の一部に虫の魔物・・?

原始虫・・

この虫は近年世界で群れて飛来する姿の目撃が増えているとされる種


この辺りの土地には生息していなかったはずだが・・)


「・・・」

(魔物の体の組織に食い込むように入り込んでおる


この虫種は群れるだけではなく

魔物への寄生することも可能だったというのか・?

この異様な個体は虫を体の内に宿してどこかからここにやってきたと・・ )


・・・

((  ))

星が今も次々と流れていく夜の空を見上げる大天狗


(開拓時代の英雄が土地の力を封じたと云い伝えられておった封石

それが山と共に震えて

ここに来るときにいくつも倒壊を起こしておった・・)



(あの原初より生まれ

流星をもたらしながら高く天をかけた大滅の星々の帯の中心


あの星の光たちがいずれの日かこの地上に巡り降りた時

世界に災厄が訪れ この世界は滅びるという


いよいよ輝きを増しておる


また少し近づいたか・・)




「なにかが起こり始めているのやもしれぬ・・」


・・・

その後 町の応援の本隊が到着して

リズたちの馬車一行は 

しっかり護衛をされて麓の町へと送られるのであった

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