↓第58話 また、会いましょう(エピローグ2)

「ああ~やってくれますねー。やってくれますよー!」


 これはエメのUFOが地球を去ったあとの話だ。

 古代魚の飛空艇はのんびりと海の上を飛んでいた。

 円盤の光に包まれたあのとき、プリンセスは一旦、迷子と一緒に機体の中に入った。

 しかしすぐに飛空艇ごと外に出され、途方もなく空を浮遊していた。


「…………」


 プリンセスは今も甲板の上でたそがれて、ぼーっと朝日を眺めている。


「あとちょっとだったんですけどねー。今世紀最大のお宝だったんですけどねー……」


 脱力した表情でぼやく。

 やはり『遺作』のことを知っているようだ。


「…………」


 朝日がキラキラと海面に反射する。

 静かな波の音と、美しい水平線。

 プリンセスの両目に光が反射する。

 左右で色の異なる瞳。

 海面から顔を出した太陽に、ぼんやりとエメの顔を想起させた。


「……まぁ、いいですよ。今回はアンドロメダくんに花をもたせてあげますから」


 そう言うと、


「次は負けませんよ、迷探偵さんっ!」


 プリンセスは水平線の彼方に人差し指を立てる。


「それじゃあいっきますよー! ぜんそくぜんしーん!」


 空を飛ぶ古代魚はゆっくりと旋回し、海の彼方を目指す。

 どこまでも続く青い海は、おだやかな風を運んでいた――

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