↓第11話 ひどい、こうけい。

「スヤァ……」


 中央フロアのドアが開いた瞬間。

 迷子の目に飛び込んできたのは、うららの幸せそうな寝顔だった。


「……え」


 思わず目を丸くする。

 人が心配しているときに、暢気にヨダレを垂らしてテーブルに伏せている。

 そんな姉の肩を、妹のゆららがゆさぶっていた。


「姉さん、姉さんったらぁ!」


「……スヤァ」


「起きてってばぁ!」


「……スヤァ」


「ほっぺにチュッチュしてもいいのぉ?」


「……ディス・イズ・ニンジャ……」


「んもう! なんの夢見てるのよぉ!」


 訳のわからない寝言を呟くニンジャ。

 ムッとしたゆららが姉のほっぺを指でつつくと、なにと勘違いしたのか「……はむっ」とその指に喰いつき、ちゅぱちゅぱと吸いはじめた。


「きゃー! メイちゃぁ~ん!」


「……まるで赤ちゃんですね、仕方ありません。置いていきましょう」


 迷子は見なかったことにして中央フロアをあとにする。

 ほかのみんなも北側通路へ駆けていくなか、ゆららは指に吸いつくうららを必死でがそうとしていた。


「ちょっとぉ!? みんなぁ~!?」


 ゆららの声が木霊こだまして、無情に扉が閉まる。

 メイド姉妹は、ひとまず置き去りにされた――

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