第5話 百の騎士とアルの修行
始まる前の全く役に立たない豆知識。
レイクは一人称は俺だがあ、ここ格好つける場面だ、と思うと一人称を私にする癖がある。
アルは素の一人称が私。
「で、アル。ざっと確認したワイバーンの数は?」
「一時間かかったので分かると思うが…まぁ、ざっと百頭だな。きっちり百頭だ。」
「そ、そんなに睨むなよ…悪かったって…」
軽い気持ちで『ワイバーンちゃんの数測ってー』と言ったらまさか1時間もかかるような事態になるとは全く持って思いもしなかった。
「………」ジーッ
「な、なんだよアル…?」
「別に…?」ギロッ
眼力がすげえ…。
凄い圧をかけてくるじゃん。
「悪かったよ初陣で置き去りにして…」
「………ふん」
「そ、そうだ! 修行つけてやるからさ!
一気に強くなれるぜ!?」
「……それで勘弁してやろう。」
椅子にすわって足と腕を組みふんぞり返るアル。
仕方ない、俺の修行も兼ねて騎乗スキルをⅩまであげてやろうか!
ついでに技術で覚えてた槍術と王国語に加えて体術と魔槍術を教えてやるか。
「よし!そうと決まれば…暗殺者ギルドに行くぞ!!!」
「おう!」
実は修行つけてやる宣言の時点で完全に機嫌を直していたアルであった。
調子のいい奴め!
◇◆◇
「おい、通せ」
「え!?一位!?
はっ、はい!運動場ですね!?」
「そうだ。」
受付嬢にタメ口。
いや暗殺者ギルドはギルドマスターよりランク一位の俺のほうが圧倒的に偉いんだから通さなかったら即座にクビにするけどな。
権力振りかざすのキモチィイイイ!
「よしゃ、着いたな」
現在、俺はなんか少し遅れてきたアルと共に暗殺者ギルドの体慣らし用の運動場に来ている。
後ろからアルが入ってきた。
小さく受付に
「ワイバーン連れてきたのか。名前つけてやるの?」
「いや、俺が強くなってからのほうが成長率いいし。従魔ギルドでテイムのやり方覚えたら自分のパートナー見つけるよ」
「ほーん。じゃ、アーサー。思い切り暴れてくれ!」
「ワイバーン、やってくれるか?」
「「ガァッ!」」
ちなみにだが名前は付けた相手が強ければ強いほどその名前に見合った強さのネームドになる。
アーサーはつまりガチで世界最強ドラゴン目指せる訳だな。
「「グラァアアアア!!」」
「「うぎゃあああっ!?」」
空を飛び全力で急降下したり急上昇したり上下運動(語弊)しながら回転したりして非常に激しく飛行するアーサーと名もなきワイバーン。
悲鳴をあげつつも何処か楽しんでいた俺たちだが、10分も経つといよいよ体に限界がきて振り落とされかけている。
俺はステータスの暴力があるからなんとか耐え忍んではいるが、アルにはそれがないので既に50回は落ちている。
「ぎゃああ――おっ?騎乗スキルを覚え、あんぎゃあああっ!?」
「ナイス!俺も騎乗スキルアップしt―どぅわぁああああ!?」
「「ガァアアアアアアアアアッ!」」
単純なステータスだけでなく、技術も用いることでスキルアップが早くなっている。
アルは騎乗スキルを覚えたようで、俺もレベルが2にあがっていた。
「「ぐわぁああああ!?」」
新人暗殺者と最凶暗殺者の絶叫がギルド内に響き渡った。
◇◆◇
「うごおおおおお!?」
「どぅえああああ!?」
3時間後、アーサー達も勿論疲れ始めていたがそれ以上に俺たちが叫びながら全力で鞍なしで跨って首根っこ掴むとかいう頭おかしい体勢なので、
とんでもなく疲れていてもう半ば気絶している。
時折聞こえるアーサーたちの鳴き声が、
『貴様はただ叫ぶ以外脳のない虫なのか!』
と罵られているような錯覚さえ覚えていた。
アルは騎乗スキルがレベル8まで伸び、
俺は騎乗スキルがレベル7まで伸びた。
ちなみにこの修行でアルと俺は習得技術に忍耐が追加された。
アルに関しては体術まで覚えている。
あれっ才能の塊…?
《個体名:アルフォンス・ステラがスキル:騎乗レベルⅨを習得しました。》
「おっしゃぎゃあああ!」
《個体名:レイク・ビーストがスキル:騎乗レベルⅧを習得しました。》
「よっしゃぎゃあああ!」
どうやら同時にレベルアップしたらしい。
騎乗スキルの補正のおかげで大分乗るのが楽になってきた。
とか言ってすんません。
舐めた口聞いてごめんなさいでした。
ぎゃあ落ちる落ちる落ちる!?
なんでいきなり急上昇すんの!?
アーサーが突如今までとは比べ物にならないほどの超上空に登る、勿論ワイバーンと共に。
すると、空に腹を見せる姿勢になったアーサーたち。つまり、俺は手を離すと直ぐに落下死するような状態なのである。
そのままアーサーは風魔法を空に放ち、その勢いを利用して複雑な挙動、錐揉み回転しながら地面へ向けて高速落下し始めたのだ。
有り得ねえ!なんだこの挙動は!?
「「助けてくれえええええ!?」」
あんぎゃあああ!?
叫び声がシンクロする。
そして、地面にぶつかる寸前―。
ギリギリでアーサーは浮上した。
「はあ…ッ、はあ…ッ…!?」
「ぜえ…はあ…ぜえ…ッ…!?」
「「し、死ぬかと思った…」」
そして、その瞬間。
最後のアナウンスが鳴ったようだ。
《個体名:アルフォンス・ステラがスキル:騎乗レベルⅩを習得しました。》
「終わったぁぁぁ!!!」
《個体名:レイク・ビーストがスキル:騎乗レベルⅨを習得しました。》
「うぉおおおおおお!」
こうして、俺たちの長い長い戦いは終わった。
ちくしょう!!!
結局俺はマックスじゃねえじゃんか!
アルが薄情にも帰ったあとも俺は一人寂しくレベルマックスまで騎乗訓練を積んだのだった。
◇◆◇
「んじゃ、次は新しく従魔にした百頭のワイバーンとアーサーを見せに行くか。」
「従魔ギルドは飼っている従魔の幸福度、忠誠度、
そう考えるとあんな
「いんや?一応二百はいるよ?」
「え゛っ!?」
「言ったじゃん、隠し玉がいるって」
「居すぎでは…?!」
それもそうだな。
まぁ一位のあの方は相当ヤバイけどな。
それに比べりゃ俺なんてまだまだよ。
なにせ、一位は五千の魔獣の軍勢と千のドラゴン、三千の動物に千の種族違い猫を飼ってるからな。
動物界の裏のボスだ。
ギャング的な、裏ボス的な、
「じゃ、出発〜!」
「了解〜」
俺は一番近い従魔ギルド、もといこの街にある支部に向かった。
「ちなみにだが、従魔ギルドはかなり質素な部屋なんだ」
「えぇ?従魔ギルドってかなり母数多いだろ?だってカッコ可愛い従魔と触れ合えるんだから」
「それがなぁ、これには深い理由があるんだ。」
「へえ?」
若干間を開けて話す。
別に溜めるほどのことじゃないが。
「実は、あまり豪華な装飾は従魔の目に悪い「あ、そういうのいいから。」「…ん」
ちょっとしょんぼりしたぜ。
▶『あとがき』◀
補足ですが、この物語というか一章の舞台である王国は貴族とかがあって、不正しても容易に金と権力で揉み消せる場所です。
ので、当然アホみたいに強くてバカみたいに数の多い護衛と騎士を持ってます。
暗殺者ギルドで一気にランカーと化したのはそれを物ともせずに下級貴族を殺したからですね。
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