第3話 第一次作戦会議 ①




「これより、第一次作戦会議を始める。礼ッ!」


「そういうのいいから。」


「あっはい」



 真面目な話をしようか。



「第一に、方針だな。勇者ギルド襲撃は確定したが…流石に各ギルド一位の中でも最強と呼ばれているアイツに挑むのは無謀だぜ?」


「少なくとも、真正面から挑むのだけは辞めておきたいよな。ハッキリ言って勝ち目がない」



 アルの言葉に深く頷いて話を進める。



「だから、作戦だ。まぁ最強の1に勝つためには…」


「――数しかない、ということか。」


「そう、要するに―」



 魔法で空中に文字を浮かびあがらせる。



「―ドラゴンテイムの時間だ。」




◇◆◇



「今回テイムするのは飛竜ワイバーンだ。ざっと50頭ほど懐柔する。」


「テイマーとしての格は?」


「2位ってので分かると思うが、五千匹はペットにできるぜ」


「…うわー」



 うわーて。

 流石に酷くない?


「た・だ、ウサギボマーラビを15匹、キングゴブリンを10体テイムしてるんだよね。隠し玉は他にもいるけどさ」


「あー、アレのことですか」


「そーそー」


 基本的に俺は少数精鋭を好む。

 仮にも暗殺者だから気付かれる可能性は極力消して置きたいんだよねー。


 まぁ、メインジョブは暗殺者でサブジョブがテイマーだから当然ではあるけどさ。


「おっ居た居た」


 空獄哭きの竜山の遥か上空。

 悠々と翼を羽撃かせ飛び回るワイバーンの姿を確かに見つけた。


 しかし、到底人間の攻撃できる位置にはいない。

 アルはそのことに苦言を呈していたが、


 ならばこうするまで。

 俺は腰に手を回し―


「―はぁ!」


「うえぇ!?……そこ魔法じゃないのん?」


「マナ食うからね」


 魔法力とは魔法による攻撃力で、

 マナとは魔法に使うエネルギーのこと。


 鑑定石のランクがあがるとそこらへんもちゃんと表示されてくれるので安心してくだせえ。



 爆弾作成で手持ちの投げナイフを魔改造し着弾もしくは指定高度(空気の薄さで判断)に到達したら爆発するよう設定して雑に放り投げると大爆発を引き起こした。


 暗殺もクソもねえ、汚え花火である。


「ガァァァァ…!?」


治癒ヒール


 撃ち落とされた体長五メートルの巨体は轟音を辺りに響かせ、土煙を巻き起こす。


 気にせず初級回復魔法のヒールをかけて完治させる。え?

 初級って話はどこにいったんだって???


 そんなの俺の魔法力でイカれちまったに決まってるじゃあないか。


「グルルルルッ!」


「流石の魔法力だな…レースト。」


「それほどでもあるぜ」


 威嚇してくるワイバーンの圧をものともせずに近寄っていく。


 未だ地面に這い蹲っている奴は、こちらを強く睨みつけ、警戒していながらも困惑の感情を若干顔に出していた。


 動物観察の鬼(昆虫じゃないのでセーフ)と呼ばれている俺からしたら些細な表情の変化くらい余裕で察知できるんだよォ!


「お前、俺の獣魔になれ。」


「ガァ!」


 飛竜などの竜種と呼ばれる高位の魔物は人間の言葉も完全とはいえないが意味くらいは大まかに理解できるのだ。


 念話で主に用いられる竜語というのは魔法として言葉の意味だけをそのままぶつける強引な技である。が、利便性は高い。


「ガアルルゥッ!」


 早速竜語を使って俺に『ならば我を倒してみせよ!』と言ってきた。


 ドラゴンのテイム方法は単純明快、ぶっとばして実力を認めさせれば『たかが百年くらいならこの者について修行でもしよう』と、獣魔になってくれるのだ。


 今のでわかると思うが竜はワイバーンでも寿命を全うすれば軽く700年は生きる。


「行くぞッ!」


「ガオオオオオオオ!」


 俺はこの戦いでは魔法を使わない。

 何故なら、仮にもドラゴンなのでテイム、つまり契約するだけでかなりのマナを食うのだ。


「せやぁっ!」


「ガァ!」


 先ずは豪快な薙ぎ払い蹴りを放つが、尻尾で受け止められる。


(ほう…相殺できるとは、ワイバーンの中でも相当上位の個体らしいな。なんならそろそろ進化しそうだ。)


 そう考えながらも特に気にせず俺は地面に貫通型の強力なパンチを放ち、大地を穿った。


「グルッ!?」


「足場は確保できたなァ!!!」


 キャハハハ!

 空に逃げようったってそうはさせねえぜ!?


 俺は爆散して宙を舞う岩を足場に連続ジャンプして既に15mくらいの高さに飛び上がってブレスを準備していたワイバーンの顎にアッパーを食らわせる。


「ガァァッ…オオオオオオオ!!!」


「マジか!」


 しかし、俺のパワーと技術を歯を食いしばって耐えたワイバーンが全力のブレスを放射してきた。


 火炎は命中すれば大岩をも溶かすほどの火力で、並のギルドメンバーなら容易く焼き払われるだろう。が、俺は一位の男だ。


「そう簡単に、俺は越させねえぞォォッ!!!」


「グラァァッ!?」


 炎のあまりの勢いに吹き飛ばされて落下までの速度が幾分かは早くなった。

 身を翻して華麗に着地すると、


 服は焼けてしまったものの気にせず大地を踏みしめて一瞬でワイバーンに到達する。


 頭を思い切りぶん殴って吹き飛ばし、ついでに持ってきた(?)岩を後ろに投げてどっかに当たって跳ね返ったところでそれを蹴ってワイバーンに追いつく。


 我ながら化け物のような動きだな。

 ガハハハ!


「どぉりゃぁあああっ!」


「グラァァァァ!?」


 吹き飛ばされた勢いでろくにガードも出来ていないワイバーンのがら空きの腹に割と本気のパンチを打ち込む。


 絶叫をあげて倒れたワイバーン。

 ……あれ…いきてる…?


「ひ、ヒールぅ!」


「何やってんだよレーストォ!?」


 団長とでも言い出しそうなアルを一瞥して手伝え!とジェスチャーする。


 このあとめちゃめちゃヒールした。



◇◆◇




「ガ…ァ…?」


「よ、ようやく起きたか…」


「グゥッ!?」


「――それで、従魔にはなるんだよな?」


「?………ッ!………ガウ」


飛竜ワイバーンと従魔契約を交わしますか?Yes/No》


イエスの方をタップする。


《飛竜をテイムしました。》


「………よし、あとは簡単だ。ワイバーンお前に名前を授けよう」


「ッッッ!!!!! ガ、ガウ」


 ネームドになるとステータスの成長率1.5倍や現段階でのステータスが3倍になったり、

 より強い種への進化が出来るようになったりする。


 なので、こいつは今超興奮しているわけだ。


「そうだな………。いや、先にお前のステータス見てから考えるか。“ステータスを教えろ”」


「ガウ」


▶【個体名:なし】◀

種族:ワイバーン レベル:24

職業:飛竜王 レベル:1


《HP:    3150》

《MP:    1550》

《攻撃力:   2770》

《防御力:   2500》

《魔法攻撃力:950》

《魔法防御力:3900》


スキル:

『騎士竜の咆哮Lv.Ⅲ』

『飛竜王の翼撃Lv.Ⅲ』

『飛竜王の覇気Lv.Ⅲ』

『飛竜王の轟尾Lv.Ⅱ』

『飛龍を従える者Lv.Ⅰ』

『飛竜王の炎Lv.Ⅱ』


習得技術:

『竜語』

『体術』

『ブレス』

『飛行術:急上昇』

『飛行術:急降下』


習得魔法:

『炎魔法Lv.Ⅰ』

『風魔法Lv.Ⅰ』

『自己強化魔法Lv.Ⅲ』


称号:

『飛竜王』



「成程…同理で強い訳だ」


 まさか、こいつが飛龍から生まれた飛竜王だったとは。

 そして、騎士竜の咆哮…これは従えた飛竜を騎士と見立てた、ということか。


 なら…


「お前の名前は、」


「ゴクリ…」


「―――アーサーだ。」


 アーサー・ペンドラゴン。

 確か、騎士王と呼ばれた者がかつて存在したんだったな。


 それが後の、いや今の騎士ギルドか。


 丁度名前にペン『ドラゴン』とあるわけだし。


「ガ、ガウガウ…!」


 目をキラキラさせているワイバーン…いや、アーサー。


「これから、よろしく頼むぞ。アーサー」


「グラァァァァッ!!!!!」


 飛竜王…正真正銘の飛竜を統べる者、“飛龍”になったアーサーの咆哮が周囲に轟いた。

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