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柴橋が次々と攻撃を受け、片膝をついた。それを見たライドン兄弟は時間差でにクラウチングスタートをして、柴橋の膝を足場として兄が顎に膝を、弟が側頭部に回し蹴りを続けざまに放った。大鯱はリング下でうずくまっており、助けに入れない。
兄が柴橋を抑え込んだ。ワン、ツー、スリー。試合は終わった。
ジャッジ・ライドン〇 ケビン・ライドン(2勝1敗 勝ち点6) 12分50秒 シャイニング・ダブル→体固め 柴橋健× 大鯱銀河(0勝3敗 勝ち点0)
バックステージ。柴橋は頭を押さえ、大鯱は口をへの字にしていた。
「ライドン兄弟、やっぱり強いね。この俺とさ、チャンピオンが組んでも勝てないんだからさ。けど、わかってるよ。三連敗じゃん、って。でもさ、タッグって作ってくもんじゃん。俺と大鯱も今作っていくところだからさ、出来上がったらすごいよ。だって、俺とチャンピオンだよ! だからさ、明日からは期待していいから。俺たち、まだ成長してるからね」
「そういうことだ」
インタビューを終えた二人は、控室に戻っていった。
「大鯱さ」
部屋に入るなり、柴橋は声をかけた。
「はい」
「どんなレスラーになりたいの」
「どんな……ですか」
「おれはとにかく、かっこよくなりたかった。ぴかぴか光ってたかった。けどさ、皆それぞれじゃん。俺はさ、大鯱が相撲やめてここに来て、一所懸命トレーニングやってたの知ってるよ。けどさ、お客さんはそれ、知らないんだよ。だから見せたいもん決めて、見せていかないと。あ、なんか説教みたいになっちゃった。チャンピオンに対してね、はは」
「いえ、ありがたいです」
その後、会話はなかった。
大鯱は入門後、柴橋によくしてもらった。指導も優しかったし、相談にも乗ってもらった。しかし彼は、柴橋と仲良くはならなかった。
柴橋と会うたびに、居心地の悪さを感じていた。その優しさ、朗らかさ、眩しさが怖かった。
自分は絶対同じ道を歩めない。そう思い、距離を置いてきた。それが、タッグを組むことになるとは思いも寄らなかった。
大鯱は、苦しかった。明日が来なければいい、とさえ思った。
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