4
13日目。沙良星対
この対決は相撲ファンから非常に注目されていた。かたや元プロレスのチャンピオン。そしてもう一方の盾若草は元学生横綱だった。幕下付け出しでデビューしたもののしばらく上位で停滞、沙良星と同じような立場だった。ある意味二人はライバルとも言えたのである。
沙良星も盾若草のことは意識していた。共に知名度があり、十両昇進が期待されながら一年以上それが果たせずにいる。そしてこの一番、負けた方は番付を下げる。十両から遠くなる。
突き押しの相手に、受け身では苦しくなる。攻めることを意識して、沙良星は立ち合いに望んだ。
両者手をつき、前に出る。だが、沙良星はすぐに、相手を見失った。変化。右側に動いた盾若草にはたきこまれ、手をついてしまった。
盾若草(4勝3敗) はたき込み 沙良星(3勝4敗)
土俵から戻ってくる間、沙良星は首をかしげて目を細めていた。負け越しという事実は重い。これで、また十両が遠のいた。ただ、思いはそれだけではなかった。相撲にまだ適応できていない自分に失望していたのである。
プロレスでは、一度倒れたぐらいでは敗北ではない。そこからが本番と言っていい。しかし相撲では、少し土俵に触れただけで負けなのだ。
シビアな勝負の世界に憧れて、沙良星はこの世界に移ってきた。しかしいまだに、その世界に対応できないでいる。
失敗だった、とは思いたくない。頂点にまで行ったプロレスの世界を捨て、相撲の世界に入った。当然、一番上を目指すつもりだった。
心が、折れそうになる。一番上なんて、全然じゃないか。
沙良星は下をむきながら、花道を帰っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます