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 13日目。沙良星対盾若草たてわかくさは、3勝3敗同士の対戦。勝った方が勝ち越し、負けた方が負け越しという勝負になった。

 この対決は相撲ファンから非常に注目されていた。かたや元プロレスのチャンピオン。そしてもう一方の盾若草は元学生横綱だった。幕下付け出しでデビューしたもののしばらく上位で停滞、沙良星と同じような立場だった。ある意味二人はライバルとも言えたのである。

 沙良星も盾若草のことは意識していた。共に知名度があり、十両昇進が期待されながら一年以上それが果たせずにいる。そしてこの一番、負けた方は番付を下げる。十両から遠くなる。

 突き押しの相手に、受け身では苦しくなる。攻めることを意識して、沙良星は立ち合いに望んだ。

 両者手をつき、前に出る。だが、沙良星はすぐに、相手を見失った。変化。右側に動いた盾若草にはたきこまれ、手をついてしまった。



盾若草(4勝3敗) はたき込み 沙良星(3勝4敗)



 土俵から戻ってくる間、沙良星は首をかしげて目を細めていた。負け越しという事実は重い。これで、また十両が遠のいた。ただ、思いはそれだけではなかった。相撲にまだ適応できていない自分に失望していたのである。

 プロレスでは、一度倒れたぐらいでは敗北ではない。そこからが本番と言っていい。しかし相撲では、少し土俵に触れただけで負けなのだ。

 シビアな勝負の世界に憧れて、沙良星はこの世界に移ってきた。しかしいまだに、その世界に対応できないでいる。

 失敗だった、とは思いたくない。頂点にまで行ったプロレスの世界を捨て、相撲の世界に入った。当然、一番上を目指すつもりだった。

 心が、折れそうになる。一番上なんて、全然じゃないか。

 沙良星は下をむきながら、花道を帰っていった。

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