第12話 中央都市ウガリット1

中央都市ウガリットー城門前


「で…でけぇ!!!」


目の前には巨大な門がそびえ建っている。

高さ20m幅50mはあるのではないだろうか。

道路は馬車と人で分けられているため、ウルとファウノ一家は自宅住所を書いたメモをくれた後、馬車で先に入っていった。


ちなみにこの門は緊急時以外は閉めることがないらしい。

この中央都市ウガリットは関税がなく自由な商業が出来る、この門が常に開いてることは自由と安全の証だと道中にファウノが説明してくれた。


それにしても人が多い。

日が傾き始め夕暮れだというのに出入りの人や馬車で溢れている。


だがその中でも俺と獣人族のチャペ、エルフ族トゥランの3人は目立っていた。

そうレッドヘルドラゴンの頭があるからだ。



ドラゴンを討伐した後も大変だった。

倒れた馬をファウノの長女エレナが回復魔法で治したのは良いが、ドラゴンの頭が大きすぎて馬車には積めなかった。


そこでチャペが担いで運んできたのだ。

獣人族はこれくらいの重さなら強化魔法なしでも運べるみたいだ…たくましい。


そして何より大変だったのが道中でのトゥランだ。

無名の人間がこんな力を持ってるのは怪しいとか、聖騎士にハクトなんか存在しないとか、やっぱり邪神の加護がないのに闇魔法を使うのは怪しすぎる等々と散々だった…


ただどこから来たのかと聞かれたときに、素直に答える訳にもいかず

ここより遠い田舎の村に住んでいた、昔魔物に襲われた生き残りで都会の事は分からないと説明したら怪しみながらも一部は納得してくれた。

更に今日はファウノとの約束の時間まで色々と教えてくれるとの事だ。


なんだかんだでトゥランは優しいのだろう。


「まずはこの大荷物もどうにかしないといけないわね!行くわよにゃんこちゃん!」


にゃんこと言われたチャペがムッとする


「はいはい、行くにゃ耳長おばさん」


この2人はいつも喧嘩腰なんだよな

ファウノいわく獣人族とエルフ族は最近では仲がよくなっているが昔から犬猿の仲らしい



城門を過ぎると街並みが見えてくる。

正面には大きな城がある距離がありそうだが立派な城だ、中心には大通りが続いていおり左右には様々な商店が並んでいる。



「ハクト!迷子にならないようにちゃんと着いてきなさいよ!」


活気がある街だ、今はとにかくトゥランに着いていこう。


街の中を進んでいくと本当に綺麗な街だ、ウガリットには3つの川が流れている。その川の水を活かし街の中には無数の水路が張り巡らされ物資や人の移動手段になっているようだ。

現実だとベネチアのような雰囲気だ…行ったことないけど。


「着いたわよ!」


看板には

コシャル商会 本店

と書いてある。


この世界の文字をしっかり見るのは始めてだが読める。これはマーロ文字だ俺と大和が学校で習ったローマ字を元に作り出した。

久々に見ると読みにくいな…


コシャル商会…元はドワーフ設立した会社であり、この世界の商業の9割を占める大企業らしく、国や教会等、様々な団体に対しても力を持っているとの事だ。


たしかに周りの建物より一際大きく飾りも立派だ。石造りに見えるが6階くらいまであるように見える。



複数ある入り口の中から【素材売買】と書いてある大きな門から建物に入ると店内には様々な生き物の鱗や爪が並んでいた


「よいしょ~」


ドラゴンの頭を置いた音が重く響く


「お~レッドヘルドラゴンか!久々に入ってきたのぉ!」


大型の買取りカウンターにドラゴンの頭を置くと店の奥から1人のドワーフが出てきた。

人の半分くらいの身長だろうが、がたいがよい。


「全て買取りで良いのか?それとも加工してなんか作るか?状態も良いしこれなら中々の物が作れるのぉ!」


少し高齢に見えるドワーフは楽しそうに隅々をチェックしている。



「おっちゃん!玉眼1つ以外は買取りしてほしいにゃ!あと運んでくれたりするのかにゃ?」


チャペがドワーフに説明する、レッドヘルドラゴンの玉眼はグルメな貴族がギルドに依頼を出したりする程に美味しいらしい…少し食べるのが怖いが…


「郵送か!住所が分かれば問題ない、解体に少し時間がかかるしな金額に文句言わねぇなら料金も一緒に届けてやるがどうする?」


「それでお願いするにゃ!」


どうやら問題なく買い取ってくれるようだ、チャペがカウンターで住所を記入している。


それにしても店内には色々と置いてあるな…


癒し草 銅貨5枚

ワイバーンの爪 銀貨9枚


しっかりと鍵付きで展示されているものもある。


世界樹の葉 金貨10枚


金貨10枚がどれだけの価値なのか分からないが価値はありそうだ…


「おっちゃ~ん!葉っぱくれ~!」


入り口から大声が聞こえる、思わずビクッとしてしまった。


入ってきたのは獣人の女性だった。

柄的には虎だろうか?


「おぅ!エリーニュ久々だな!お前が世界樹の葉用意するって事は難しいクエストでも受けたのか?」


「クククク…それは秘密なんだなぁ」


エリーニュと呼ばれた獣人はドワーフと昔からの知り合いなのだろうか、親しげに話をしている。


「そうだ!エリーニュ!この娘っこ達知らねぇか?見たことねぇ顔だがレッドヘルドラゴン討伐してきた見てぇでな!将来有望だぞ!」


ふぅーん?と言いながら3人を見渡すエリーニュの目がチャペで止まる。


「ん…?チャペ?」


獣人族同士だし知っててもおかしくないか…


と思っているとチャペの尻尾がピンとたっている。


「ねぇさんにゃ!」


姉さん!?

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