第11話 知らない家族
「あなた…父さんってどう言うことなのかしら?」
後から来た女性が男に問い詰める
「少年よ!何かの間違いじゃないか?いや間違いじゃないと俺の命が…」
「あら…心当たりがあるのかしら?」
「ないないない!全くもってない!母さん怖いからその笑顔やめよ!いつもの自然な笑顔が母さんは可愛いなぁ!ね!?」
この女性も似ている…どうなってるんだ?
夫婦であろう2人のやり取りを見ていると、小さい何かが抱きついてくる。
「わー!お兄ちゃんはわたしのお兄ちゃんなの?」
この子もだ…似ている
「ゆま…それに母さん?」
思わず声に出してしまった。
「あら?私、知らないうちに産んでたのかしら?」
悩む姿までそっくりだ…頭が混乱する…
だが子供は違う、癒真にしては明らかに小さい…幼稚園児頃の癒真に似ている。
それにここは異世界、居るわけないじゃないか他人の空似だ。
そして弁明しないとこの父さん似の男性が大変なことになりそうだし…早めに誤解を解いてやるか。
「すみません!間違いなので気にしないでください!ちょっと家族に似てたもので」
「な!母さん!間違いだったろ!俺がそんなことするわけないじゃないか!ナッハハハ!」
とりあえずこれで誤解は解けるだろ。たぶん。
男の目線が移る
「お二人もだ!ありがとう、助かった!」
気がつくと猫耳と金髪の女性も集まってたようだ
「ニャシシシシ!みんな無事でよかったにゃ!」
「困った時はお互い様、気にしないで良いのよ!それよりあなた…」
何故か金髪の方は俺を睨んでくる。
別に悪いことをしたつもりはないが、何かしたっけ?
「一緒に戦ってくれた事はお礼を言うわ…でもあの魔法…闇の魔法よね?」
「あぁ、そうだな」
確かにドラゴンを撃退するのに使ったのは闇の魔法だが何が問題だったんだ?
「闇の魔法を使うってことは【闇の神】の加護を受けてるのは間違いない、邪教の信者が人助けなんて何を企んでるの。」
金髪の目が更に鋭く睨み付けてくる
「いや!待て!確かに闇の魔法は使ったが信者ではない!それに俺は【光の神】を仰いでいる!間違いだ!」
よく分からないが使う魔法は間違ったかもな、この世界の事はまだ分かってないんだ安易な選択だったかもしれない。
「まぁまぁ、両人落ち着きなさい!エルフの姉さんの言ってることは分かる、だが先頭で戦ってくれていたから気がつかなかったかもしれないが少年は光の魔法も使っていた!それに邪教の者が人助けするのはやはりおかしいだろ?な!」
「まぁ…安易に決めつけるのは良くないわね…ただ簡単には信じられないわ」
男が間に入ってくれた事でひとまずは大丈夫そうだ。
…が納得はいかない
「聖騎士の俺が邪教の信者なはずないだろ…」
「あなたが聖騎士!?そんなわけないでしょ!」
ヤバい…これ以上は黙っておこう…
「そ…そんなことより!今日は家でお礼をさせてくれ!」
さっきからこの男の人には間に入ってもらって申し訳ない…
「俺の名前はファウノ、そして妻のセレネに長女のエレナと次女のルナだ!
普段は近くの農場で仕事をしているんだが、今日は用事があってウガリットに向かっていた!
先ほどは本当にありがとう。良ければ君たちの名前も教えてくれ!」
セレネさんの後ろに隠れていた居たのは長女だったのか。
たしか馬車を守っていた人だ、年齢は俺と同じくらいだろうか長い黒髪が綺麗だ。
猫耳がしゃしゃり出てくる
「はいはーい!あたいの名前はチャペにゃ!見ての通り獣人族だにゃ!加護は【野生の神】アフサティ様からいただいてるにゃ!冒険者になるためにウガリットに向かってたんだにゃ…でもドラゴン討伐にはあまり力になれず申し訳なかったにゃ…」
一文で感情の移り変わりが激しいな。
次に金髪の女性が口を開く
「私はエルフ族族長の娘トゥラン、加護は【精霊の神】フラワシ様よ。ウガリットには同じく冒険者になるために向かってたわ」
たしか…
アフサティ…野生動物の守護者
フラワシ…精霊の神
この世界で神として崇められてるのか。
目線が集まる、次は俺の番だ
今はあまり派手なことは言わない方が良いだろう
「俺はハクト、【光の神】アテン様を仰いでいる。剣と魔法については多少自信がある、同じく冒険者になるために向かっていた!」
冒険者になる
これはドラゴンと戦闘になるまえにウルと決めていたことだ。
この世界には冒険者ギルドがあるらしく、有名になれば国や教会から直接依頼が入ったりと様々な情報が集まるらしい。
この世界に来て当面の目的は100年前に現れた暗黒竜の討伐、そして【光の神】の力が弱まり【闇の神】の力が増した理由の解明。
2つ目の理由は何となく検討はついている。
ウルの話だと考えられる理由は信仰心が弱くなっていること、ここ10年はそれが顕著になっているらしい。
そしてその10年前から【光の神】を仰ぐ教会には一部で悪い噂がたっている。だがその内容はウルも詳しく知らないそうだ。
そのため最初から教会に接触するのではなく、冒険者として情報を集めると決めたのだ。
皆の話を聞きファウノが喋り出す
「と言うことは皆、目的地は一緒なわけだ!ご馳走のレッドヘルドラゴンの頭もあるし!今日は帰って宴会としよう!」
ファウノさんはどんどん話を進めるな、なんか性格は父さんに似てない、どちらかと言えば大和の父親に似ているかもしれない。
でもちょっとまて…ご馳走って…
このドラゴン食べるの!?
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