第10話 見知った顔
稽古をしてくれていた時の長老の言葉を思い出せ
「戦う時は常に心は平静に、その場の状況、相手の力量を見極める。そして敵には冷静を失わせるんじゃよ…ふぉふぉふぉ」
[状況の確認]
前線でレッドヘルドラゴンと交戦中なのが2人
手前では馬車が倒れている。
馬車を守っているのが1人
馬車の裏には大人2人に子供1人…計3人は戦闘が出来るようには見えない…
戦えないものがいる、守るものがいる時は安全の確保できなければ、対象を即座に殲滅するしかない…
[相手の力量]
レッドヘルドラゴン
まだ距離があるが全長で30mってところか?生物としては日本では見たことのないサイズだな。
表面は硬そうな鱗で覆われている。
だが問題ない…(想像の中では)幾度となく倒してきた!
[相手の状態]
ドラゴンは前線の2人に集中している。
急な攻撃には対応できないはず。
「今しかない!」
聖剣を抜きドラゴンへ向けて駆け出す
「神の名に冠する閃光速さを我に与えたまえ」
【アテン・オプト・アレス】
速度特化強化をかけ加速
周囲の木々が風に揺れる
「避けていろ!」
猫耳と金髪の間を突っ切る
「にゃんだ!?」
「なに!?」
怪鳥と交戦していたドラゴンが声に反応しこちらに顔を向ける
気がつかれたが…だが問題ない
このスピードなら対応できないだろ!
聖剣に手を添える
「刀身に漆黒なる炎を宿し、我の道を妨げる者をその激熱(げきねつ)をもって地獄の豪火へと還せ。」
刀身に黒炎が灯る
ドラゴンへ向けて飛び上がる
【ヘル・フレイル・ブレイド】
ドラゴンの顔の横をすり抜け、首もとから胴体を横一線に切りつけ着地
悲痛なうなり声をあげるドラゴン
切り口は黒炎に焼かれ、更に切り口から体内に放たれた黒炎は内部から拡散し爆散する、黒炎に包まれた体は高温に焼かれ炭と返し
浮力を持っていた胴体を失い頭が地に落ちる
命を失い灰となったドラゴンの体からは光が天に登り、光からはクリスタルのように煌めく大きな石を置いていった。
軽く剣を振り付与していた炎をほどき鞘に戻そうとすると
「う…」
なんだこれは…軽く目眩がする
「問題ないぞ!初めてなのに連続して大きな魔法を使ったからだな!そのうち慣れるさ!」
少しくらくらしていると頭の上から声がする…ウルのやつ乗っかったままだったのか
しかし本当に魔法を使えた…それにイメージ通りに身体が動く。
想像が想像じゃなくなった感覚だ。
振り向くとレッドヘルドラゴンの頭が落ちている、首元はまだ黒炎に焼かれており焼けた匂いが漂ってくる。
落ち着いてみるとやはり大きい、頭だけで軽自動車くらいあるな
「ウル…これ俺がやったんだよな?」
「そうさハクト!倒したのはお前だよ!そして襲われてた人を救ったのもな!」
【弱きを守り邪悪を滅せよ、各(おの)の正しき行いが和の道となす】
いつも心がけていたけど、これまでちゃんと行動していたのだろうか…
でもこの世界でなら出来るかもしれない。
「おーい!」
1人の男が走ってくる
顔はちゃんと見てなかったが、たしか馬車のところにいた男性だ。
「ナッハハハ!いやぁまさかドラゴンを一撃で倒すとはな!恩に着る助かった!若いのにずいぶん強いな!お礼をさせてくれ、少年名前は?」
駆け寄ってきた男の顔は覚えのある顔だ。
忘れもしない小さい頃よく遊んでくれた、写真の中でいつも微笑んでた顔…
「う…嘘だろ…」
「少年…どうした?」
きょとんとして問いかけてくる男の顔を見ると涙が出そうになる
そんなはずはない…でも目の前にいる…
「と…父さん…?」
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