第6話 夕立

「とうまにぃ!やまとさん!早く来なよ!」


川遊びを楽しみにしていた癒真はバタバタと着替えすでに遊び始めている 


神社の裏にある清流は透き通った綺麗な水に、あまり深さがない事で知ってる人には絶好の遊び場だ

今日もなん組か遊びに来ている。



そして何より支流と言えるのかは分からないが流れが合流する場所に小さな滝があるのだ!



「ゆま!ちょっと待ってろ!」


癒真のやつ相当はしゃいでるな


「ヤマト例のやつ持ってきたか?」


「あぁ…もちろんだ!」


大和もニヤリと笑う



「よし…コクヤ滝で精神統一だ!今日こそ明鏡止水の理を覚える!」



「とうまにぃ遅いよ!ってえぇ!何それ!」



「滝修行と言えばフンドシだろ!」


ふっ癒真のやつ俺と大和の肉体美、そして男の中の男!THEフンドシスタイルに見とれて開いた口が塞がらないようだな!

毎日筋トレと素振りをこなしている、絞まっているだろう!




「「うおぉぉぉぉぉ」」



頭に肩に…いやからだ全身に水の重みを感じる

これが自然の力、地球のパワーか!



「弱きを守り邪悪を滅せよ、各(おの)の正しき行いが和の道となす、精神統一、精神統一!」


「漆黒なる闇よ全てを呑み込む、比類なき力を与えたまえ、精神統一、精神統一!」


この素晴らしい修行に他の者達も釘付けのようだ!


「お母さん!変な人がいるー」

「見ちゃいけません」



(うぅ…恥ずかしい…仲間だと思われないように離れよう…)


川の流れに身を任せ癒真は下流へと流されていくのだった…




滝修行の後、癒真に叱られ普通の水着で遊んだ後

最後に癒真が行きたいと言っていた城へと向かっていた

うるさかった蝉の声も遠く聞こえ、空は夕日に照らされ橙色に染まっている。


神社や住宅から少し離れた丘にある城

ヴレーデゥ城と呼んでいる


中学くらいに知ったが俗に言うラブホテルの廃墟だ

そんなことは知らずに俺と大和は小さい頃から忍び込んでは遊んでいた


城へと向かい坂を上る癒真は楽しそうだ


「お城楽しみだなぁ」


本当の事は癒真には隠しておこう



たが現実は残酷だった…



「せっかく来たのに入れないのぉ!!!」



城の周囲は仮設の鉄板に囲まれ今は入れなくなっていたのだ

どうやら解体中らしい

坂を昇っているあいだやけにトラックの往来が多かったのはそのせいだろう


「ゆま…残念だったな…」


癒真の頭をポンポンと撫でる


あれだけ楽しみにしていたのにな…

さぞ悲しい顔をしてるだろう…


「早く帰っておばあちゃんに貰ったトウモロコシ食べよ。」


切り替えが早い!


「今日は本当に楽しかったなぁ…とうまにぃそれにやまとさんもありがとうございました!」


「我は新たな力を手を求め来ただけだ…まぁ楽しかったが」


大和は素直じゃない…そしてなぜか睨まれている?


「そういえば…ハクト…貴様、稽古をつけて貰うとき聖騎士を超える力と言っていたがなんの事だ!」


「バカめ!お前が闇の力を手にした1年の間、俺が強くなっていないと思ったか!」


「2人共変なことでケンカしないでよ!」

癒真が割り込んでくる


「ゆま!お前も世界を癒す巫だったではないか!」



癒真の顔が赤くなる


「そんなの覚えてないもん!知らないもん!」


「ツァラと言う神を信仰してたではないか!」


「忘れろ!ばかにぃ!」


バックでおもいっきり殴られた…痛い…


でも本当に楽しい1日だった。




話ながら駅に向かい坂を下っていると

ポツポツと水滴が道路を叩く

点々と降っていた雨だが急激に勢いを増し濡れたアスファルトの匂いが周りを包む


夕立だ



傘は持っていない


「走るか!」


厚い雲に覆われ辺りは暗くなっていた


3人共びしょびしょになりながら坂道を下る


車は来ていない先に道路を渡った方が早い



「ちょっと待って!バッグ落としちゃった!」



癒真が道路を渡る途中に落としたようだ



「おばあちゃんに貰ったトウモロコシ入ってるの!」


声が聞き取りにくい程に雨は激しさを増している


癒真が道を戻りそれを追う


バックを拾おうとする癒真が光に照らされる


工事現場から降りてきたトラックのライトだ


減速しない


見えてないのか


走る


癒真を抱える


ライトが眩しい


(アテン様…父さん…)


身体に衝撃がはしる


何かに押し出され飛ばされる


大和と目が合う


優しい笑顔



目の前が暗くなる




降りやまない雨の中、道路には3本のトウモロコシが転がっていた






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