第3話 母の優しさ

白戸家 リビング


「とうま、いつもご飯作ってくれてありがとう」


今日の夕飯は

悪魔の刺激を与えし牛肉煮込み

世界樹の葉~天然の素材活かし~


もといカレーとサラダだ


出掛ける前に作っておいた。


「いいよ、母さんは仕事忙しいだろ」


白戸雪(しらと ゆき)


10年前に父が他界して以来、母は1人で俺たち兄妹を育ててくれている。


怒ると怖いが優しく、いつも俺たちの事を考えてくれている自慢の母だ

のほほんとして少し抜けているが…


「トウマ、いつもご飯作ってくれてありがとう」


「ヤマト!お前は少しくらい手伝え!福の神からの祝福を持ってこい!」


人の家でご馳走になるというのにいつも椅子に座っているが文句を言いつつ福神漬けを取ってくる



「そういえば…明日母さんは墓参り行かないんだよな?」


「うん。どうしてもお仕事休めなくてね…お父さんに宜しく言っといてちょうだい」


母は盛り付けたカレーを食卓に並べながら、少し寂しげな目で家族写真を眺めている


昔はまだ1歳だった癒真を寝かしつけていた後に1人で泣いていた

当時6歳だった俺にバレないようにしてたのだろうが知っている


「さぁ!食べましょ!」


「「いただきます」」




世界樹の葉~天然の素材活かし~


もといサラダにはこれをかける事で絶品になる

暇なときに作っておいた、いにしえの秘油もとい特製和風ドレッシングだ


しかしドレッシングを持つ手が止まる


こ…これは…レッドヘルドラゴンの玉眼…

俺のには入れてなかったはずなのになぜ!


「ゆま!貴様計ったな!」


「好き嫌いしないでトマトくらい食べなさい」


くっ…癒真め食べ始める前に にやついてたのはこのせいか!


「とうま、貴様にはこの白竜の宝玉をやろう」


大和がゆで卵をそっと皿に乗せてくる


「こら!やまとさんも好き嫌いしないの!」


癒真が食卓に身を乗り出してくる


「ゆま!ご飯中に暴れるな!」


妹が年々、姑のようになっている



「はい!ゆまちゃんあ~ん!」


餌を与えられた小動物のように目をきらめかせかぶりつく


「もう!お母さんもちゃんとにんじん食べて!」


文句を言いつつも母に食べさせて貰うのは嬉しそうだ、しっかり者と言ってもまだ母に甘えたい年頃なんだよな





「「ごちそうさまでした」」





「今日は我が浄化しよう」


最近は大和が皿洗いをしてくれる


「ありがとうやまとくん、私も手伝うわ」


今日は母と大和に任せて癒真と戯れていよう





「いつもすまない」


雪から受け取った食器を拭きながら大和が呟いた


「いいのよ、剛(たけし)さんから材料代もいただいてるし

とうまもゆまも少し慌ただしいところあるから、やまとくんが居てくれて助かるわ」


10年前…俺の父がなくなった頃

大和の母も他界している。


「剛さんは明日お仕事から戻るのよね?」


大和の父、黒田剛(くろだ たけし)は職業が長距離ドライバーなため家に居る時間が少ない


互いに片親をなくして以来、家が隣なこともあり今日のように一緒に夕飯を食べることが多い


「もう高校生だ。皆(みな)に甘えてるわけにはいかない。」


大和は昔、あまり自分から行動することが少なかったが思うところもあるのだろう


はしゃぐのは斗真と遊んでいる時くらいだ


「心配しなくていいの、一緒に過ごしてからもう10年…あなたはもう家族のようなものなんだから

明日も2人を宜しくね」


優しい雪の笑顔に大和も顔を崩すのであった。

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