第2話 振り上げられた拳
自宅近く夜の公園
「ご近所さんの迷惑になるから大声出さないで って言ったよね!
それにやまとさん!明日はお父さん帰ってくるんじゃないんですか!
ちゃんと準備してるんですか!
2人共もう高校生なんですからしっかりしてください!」
白戸斗真(しらと とうま)高校1年
【光の神】アテンを仰ぎ、聖騎士であり最強の魔剣士を自負している俺は…
小学生の妹に正座で説教を受けていた
それにしても癒真の必死さに思わずにやけそうになる
白戸癒真(しらと ゆま)妹 小学5年生
小さい頃はずっと着いてきていたが最近はあきれられている
癒真は自分の妹ながら小学生にしてはしっかりしていると思う。
しかし兄として負けているわけにはいかない。
背筋を正し手を上げる
「はい!」
不機嫌な顔で癒真が指をむける
「はい…とうまにぃ」
「ご近所迷惑と言いましたがゆまさんの声の方が大きいと思います!」
癒真の眉間にシワが増える
「へぇ…とうまにぃ…口答えするんだ…」
これは少しふざけすぎたかもしれない
みかねた大和が背筋を正し手を上げる
「はい!」
更にムッとした癒真が指をさす
「はい…やまとさん」
「もう20時を回っている小学生は帰宅した方が良いのではないか?」
真顔で意見を言う大和。
こいつはたぶん純粋に思ったことを言ったのだろう
大和だまれ
癒真の顔がみるみる赤くなる
「…」
握りしめられていた癒真の拳が高らかに掲げられた
あぁ…これはまずい
「ゆま!ちょっと落ち着いて!」
なだめようとしたが時既に遅し
「誰のせいでですか!誰のせいでこんな時間に出歩いてると思ってるんですか!」
「あで!」
「いて!」
「「ご…ごめんなさい!」」
癒真に小突かれた頭を撫でながら3人で帰路につく
「明日はやまとさんもお墓参り行くんですよね?やまとさんのお父さんもいらっしゃるんですか?」
さっきまでプンプンしていた癒真だが落ち着いたようだ
「あぁ共に馳せ参じよう。我が母も待っているのでな…」
大和の顔がどこか寂しげに見える
大和は幼い頃からの幼なじみだ。
家も隣で物心がついた頃には兄弟のように毎日遊んでいる。
あまり表情を変えるやつではないがそれくらいは分かる…そして気持ちも。
「なぁ!ヤマト!墓参りは別として明日は楽しみだな!」
ヤマトと目が合う
その楽しみに互いに思わずにやけてしまう
そう墓参りと言えば
「「神社!滝!そして…城!」」
思わずまた声を張り上げてしまう
「あの神社は雰囲気あるからな!神の力を高められる!」
「あぁ我は長老に真の力を目覚めさせて貰う!」
大和の顔も明るくなった
「神社の裏の川では滝行できるしな!」
大和がニヤリと聞いてくる
「トウマあれ準備したか?」
ニヤリと返す
「もちろん!」
気がつくと癒真が足を止めていた
「とうまにぃ…やまとさん…」
癒真が両手を握りしめうつむいている
まずい…はしゃぎすぎた…
「ゆ…ゆま…落ちつ…」
諭そうとした瞬間、癒真が顔をあげる
「あのお城行けるの!わたしも行ってみたい!」
こんなにキラキラした目の癒真は久々に見た
「ずっと行ってみたかったの!でもお母さんに近づくなってずっと言われてたから!わたしも行っていいよね!」
「もちろんだ!」
こんなに喜んでる妹を断るわけがない
「わぁ!明日楽しみだなぁ!」
無邪気にはしゃぐ妹に大和と共に笑みがこぼれる
思わず癒真の頭を撫でながらほっこりしていると家のドアが勢い良く開く
いつの間にか自宅の前に着いていたのだ
開いた扉の光の中には1人の女性が…いや…武神がたたずんでいた
急なエンカウントにしては強すぎる
「まずい!各人!戦闘体勢を取れ!」
聖剣エクスアンシャルを構え指示を与える
「う…うぅ…」
振り向くと癒真は既に戦意をうしなっている
「あぁ…後光が…差してる…」
大和うるさい
武人の拳が天をつく
あぁ。今回ばかりは諦めよう。
「静かにしなさい!」
母の無償の愛【マザー・ゴッド・ハンマー】が落ちる
「あで!」
「いて!」
「うぅ…」
「「「ご…ごめんなさい」」」
どうしたものか、やはり母は強い
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