第13話

 ちょっとさ、ひどいと思わない!?



 そりゃあね、トランプをひいたのは僕だよ?僕だけどさ!!



 僕は足を怪我してんの!!なのに!!なのにあいつら2人は、揃いも揃って先に屋上行っちゃうって!!






「ありえないんだけど!!」






 目の前にそびえる!!この階段を前に、思わず文句を言ってしまう。



 もう!!これ昇るのがどんだけ大変だと思ってんのあの2人!!






「何1人で叫んでんの?」

「え!?あ!?ええ!?真鍋先輩!?」






 後ろから、笑い声とともに声をかけられて、振り向いた先に真鍋先輩が居て。






 何だろう。






 あのトランプのせいなの?って、思ってしまう自分が居た。



 そんな自分の考えを、違う違うって。必死で否定した。



 これは偶然。ただの、偶然。






「友だちが屋上でお弁当食べようって言ったくせに、僕を置いてさっさと行っちゃったんです。ひどいと思いません?」

「屋上?」

「はい。真鍋先輩は?」

「購買でパン買ってきた。じゃんけんで負けて、ツレの分も。で、俺も今から屋上」






 パンがたくさん入った袋を僕に見せてから、人差し指で上を差す。






 真鍋先輩も、屋上に。






 あのトランプ………。やっぱり、真鍋先輩と、関係してる?






 あああああ、ダメダメ。待って、違う違う。何か僕の考えおかしいから。






 ぶんぶん頭を振って、ふっとわいた考えを、振り落とす。






「だから、何なのお前」






 笑う。



 真鍋先輩が、笑う。それを見て、どうしてもドキドキしちゃう僕が居る。






「ほら、行こう」

「え?」

「屋上。昼休みおわっちまう」





 当たり前みたいに。



 すごくすごく当たり前みたいに真鍋先輩が、僕の腰に腕を回してくれる。



 ふわって、先輩のいいにおいが、して。






 どうしよう。



 どうしよう、本当にどうしよう。






 振り落としても振り落としても、同じ言葉が頭に浮かんでくる。






 僕。






 真鍋先輩の笑った顔がもっと見たい。



 真鍋先輩のこと、もっと知りたい。






 ドキドキする。






 ドキドキ、しちゃうよ。

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