魔導具師ダレルトの世界~無職になったので魔道具工房を経営しようと思ったがどうやら俺のチート性能だとオーバーテクノロジーになるらしい~

あずま悠紀

第1話



俺達は無事に街に辿り着き、宿屋に向かった。部屋は二つ取った。一部屋だけというのは流石に色々と問題があるし、かと言って二部屋にして料金が上がっても問題だからだ。

宿屋に入ると、そこは普通の一般的な宿屋といった風だった。客層としては旅人が多いように思えた。

ちなみにこの街には『門』というものがあり、それがあるおかげで他の国とも交流が可能だという事だった。

ただその『門』から一番近い町でも徒歩で一週間程かかるらしく、『門』は王都にしか無いそうだ。

俺はベッドの上に寝転がりながら考えていた。

あの時――。

確かにあの光の柱からは魔力のようなものを感じられた。そしてあの黒い化け物が現れたのを視認できたことから間違いなくこの世界にも魔法の概念が存在するだろう事は分かる。それにあの時現れた奴等は魔法によって創られてしまったものだとしても、俺にはそれが何かまでは分からなかった。それは俺の知識の中に無いからだ。少なくともこの世界にそんなものがあるなんて聞いたこともない。ただ一つ気になっている事があるとすればそれは――。

俺はステータス画面を開いて自分の能力値を表示させる。するとやはりそこにあったのはある項目についての説明文だけだった。そこに書かれていた説明内容とは――【魔力総量 0/∞】とのことだった。要するにどれだけ力を振り絞っても魔法を使うことが出来ないということなんだろう。いや使えないわけではないのか?俺自身魔法を使ってみたいと思っていたわけだし試したことは無いけど試すことぐらいなら可能じゃないだろうかと思う。ただそれで何も起こらなかったら恥ずかしいし試す機会が無いんだよな。

そしてこの説明を見てもう一つ気づいたことがあったのだが、これはまだ確信がないから今は黙っておこう。しかしこれに関しては俺にとってはかなり衝撃的事実かもしれないのだけれど――。

************

***

種族名:人族

名称:佐藤真樹(サトウマサキ)

年齢:15歳(前世分を含む)

レベル:1

生命力 :189/200

+10+4+7+1=211 精神力 :123/100

+5+14+1+8+15=246 攻撃力 :72

+21 =94 耐久力 :58+13 4+16+1+8+15+19=261

敏捷 :62+17

7+20+1+14=231 知力 :71+22

5+25+1+10+14+20=354 魔法力:100

+0 0 1 スキルポイント:294

+27 10 ユニークスキル「無限ガチャ」回数:1099回累計獲得回数;4680回目

称号:なし

***


***

真樹の予想通りではあるのだけれども、それでもやっぱり驚いた。というのもこの世界の人間はレベルが上がることでその数値に応じて身体能力が向上したりスキルを覚えることが出来たりするらしい。ただこのステータスはあくまでも基本値なのでそこから更に鍛錬を積むことにより更なる高みを目指すことも可能なのだそうだ。ちなみに俺のレベルが上がった場合だと、まず最初に生命力と筋力と耐久力が一気に10上がった。これが今の所最高の数値でそれからは上がりにくくなったようだったがそれでも十分高い数値だと思うしレベルの上限がどの程度なのかは分からないにしても、仮に限界突破が出来るような状況になったとした場合でもそこまで困るようなことではないと思った。そして問題は俺の持っている固有スキルの方だ。そう【魔力総量】というものだ。恐らくこの数値はこの世界に来てから一度も見たことも聞いたこともなかったので、もしかするとこれは本来存在しないもので俺は何かしら特別な存在として生まれ変わったのかなと考えていたのだがこの表記を見る限りじゃどうも違うみたいだった。だって【魔力】の項目は0となっているのだ。要するに俺は魔法の行使は不可能ということになるんだろうか。でも一応確認はしておきたいのだけど魔法を行使するために絶対に必要になるものというのは実は存在するみたいなんだよな。例えば詠唱であったり魔導書などを利用して魔法を発動したりとそういうものが無ければそもそも発動できないという話だったはず。まあこの世界でそういったものを見かけていない以上この可能性は高いんじゃないかと考えているんだけどな。とりあえず今すぐにどうにか出来るようなものじゃないことは分かった。ただそれでもこの世界の人間が使うような魔法を一度は使ってみたいと思ってしまうのだからしょうがないよな。でもその方法を探す為に旅をするのは面倒だし出来ればもう少し魔法に関わらないような職業に就きたいとも思っているんだよね。何よりもお金が必要だろうし。

「マズいな。俺、金が無いじゃないか。いや待て。俺が金を持っていなくてもあの人が全部出してくれそうな気がしないでもないぞ?」

というか多分あの人は絶対に出してくれると思う。そして俺のことを甘やかしまくってくれる気しかしないというかもう俺を養おうとしている気配を感じるのは気のせいではないと思いたかった。

俺はあの人から貰った剣を腰に差してから部屋を出て一階へと降りた。そしてそのまま酒場に向かう。別に特に理由があるわけではないのだけれど少し話がしたいと思っていたので。あの人の話を聞くに、ここはこの大陸でも比較的大きな町だということだし情報収集には丁度いいはずだ。そんなことを考えながら歩いている内に店の前に到着する。扉を開ける。中に入る。そして俺は見知った顔を見つける。それはこの世界で初めて俺を助けてくれた少女の姿だった。彼女はこちらに気がつくと笑顔を浮かべた。

「あら。奇遇ですね」

「本当に偶然って凄いね」

そう言いながらカウンターに座った。ちなみに席の位置としては店の一番奥。つまり目立たない場所にしたかったからだ。それにしてもやはり綺麗な人だと思う。

俺の隣に彼女が腰掛ける。するとウェイトレスの女の子が現れて飲み物を出してくれる。それはコーヒーに似た黒い液体だった。俺はそれを口元に運ぶ。すると独特の香りを感じた。そして味を確かめる。その味わいに懐かしさを覚えつつ飲み込んでいく。

すると彼女もまたコーヒーを飲み込んでいた。どうやら彼女の舌には合ったようだ。俺はそんな様子を眺めながらふと思ったことを訊いてみる。

「そういえば君の名前を聞いてなかったなぁ」

すると彼女は少し恥ずかしそうに答えてくる。

「すみません。自己紹介が遅れました。私の名はラクスといいます」

「俺の名前は真樹。えっとよろしく」

するとラクスは首を傾げた。何か変なこと言ったかな?俺。いやでも挨拶なんてそんな大したことじゃ無いからなぁ。なんて思っていると。

「はい!よろしくお願いします!」

なんか元気に言われたんですけど?そんな感じに俺達は互いに笑いあった。そして俺は彼女に話しかけていた。

それはこれから先の方針についてだった。正直俺はまだ異世界に来て間もないわけだがこのまま何もせずにいるという選択肢はなかった。それではあまりにも暇過ぎるからな。何かしらの目的があった方が生活にハリが出てくるってもんだろ?そんな風に思いつつ色々と訊き出すことにした。

この世界がどのような場所かということと、この町のこと。それから――魔王とかそういった情報についてだ。


***


***

私の名前はラクシュミー=アルサラームです。アルサラーム王国第二王女。

この世界は五つの国が連なり合う『連合』というものを形成しているそうです。その中で一番の大国が私たちの暮らしている国でもあるそうで『神聖アストラッド』と呼ばれているとのこと。ただその『神聖』という名前は王城では禁句扱いされていて、その名を口にしたものは処罰されるらしいので注意するようにとも言われています。なんでも昔その呼び名を気に入らない王様が自分の国の姫に対して侮辱だと怒鳴りつけたところ、激怒した王族達が攻め込みあっけなく敗北。そのまま『聖女』と呼ばれる人物に王の座を奪われたというのが事の始まりなんだとか。それ以来その呼び名を使って馬鹿にした者が次の王位を継ぐことになると言われているのだそうで。なので迂闊に名前を出すのは非常に危険だと思われているのです。

ちなみにこの国では王族が国民の前に姿を現す機会は殆ど無いようです。

私は生まれてこの方ずっと城に閉じこもっていたのでよく知りませんでした。

お父様は私がお外に出たいとわがままを言う度にお叱りになるばかりで、あまり相手にはしてくれず結局は部屋に籠ってばかり。

そしていつの頃からでしょうか――外に出ることが出来なくなっていました。それはどう考えてもおかしいと思います。だからきっと何かがあると踏んでいたわけなのですが、ある日のことでした。城の外から誰かが助けを求めるような声を聞いたような気がして、それで窓から覗いてみるとそこには魔物の群れに村人達が次々と殺されて行く様子が映っていて――。私はいても立っていられず部屋の中にあった剣を手にして外へ飛び出していました。そしてそこで出会ったのがあの人だったわけなんです。

その時に助けて貰えて本当に嬉しかった。こんな状況の中、誰も信じてはくれないだろうけど本当に救われた気持ちになった。

だけどあの人は自分がこの世界を旅をしている最中だという事を話していて、それならいつかは会える機会もあるかもしれないと考えて。そしてまた会えたなら――なんて思って。

「そっか――俺と君はあの時、ここで会ったんだ」

「はい。まさかあんな状況で再会するなんて思いもしていなくて驚きました」

「確かにね。あれだけ危険な目に合っておいて――いや、でもこうしてまた生きて再開できたことに感謝しないとだね」

「はい。そうですよ。生きているからこそ再会出来たのかもしれないのかもしれませんし。そしてこの出会いを神様はきっと祝福してくれていることでしょうから。――それにあなたは、この世界ではとても希少価値のある固有スキルを持っていますしね。しかも二つ持ちというのであれば尚更奇跡に近い出来事だと思いますよ」

「そうだよね。でもやっぱり魔法も使いたいしこの世界ってかなりファンタジー要素がある世界っぽいから憧れはあるんだけどさ。でも今はそれよりも先にしなきゃいけないことがあるんだよ。俺はそのためにこの大陸に来たといっても過言じゃないぐらいなんだ。だからこそこの世界のことを少しでも多く知っておきたいんだよ。そして出来ることなら俺自身がこの世界で生きていく為の力を手に入れないといけないと思っているんだけど、この世界で生きるには何が必要だと思う?」

「そうですね。やはりお金ではないですか?」

すると真樹は苦笑を浮かべた。まあそうだよなぁ。と呟いている辺りやっぱり彼はこの世界のことについては何も知っていないらしいことが窺える。そもそもお金を持っていないと言っていたことから、この世界に転生して来たのではなくて別の世界の人間であることは既に確認済みである。

ラクスは少し考えた後で、思いついたことを伝えておく。

「やはり知識というのは大事だと思うんですよ。それもこの世界のことを知るためには実際に現地に赴いて色々な体験をした方がいいと思います。そしてその上で自分にとって必要なものを身に着けていくことが重要だと私は思うんです」

「へぇーなるほどねぇ。ところでさ。その前に一つ訊きたいことがあったんだよ。君さ、さっきから凄く真剣に俺のことを見ていたでしょ?どうしてなの?」

真樹にそう言われるとラクスは頬を赤らめながら慌てていた。「いえ。別に特別な意味があってのことじゃないですけど」

「本当にそれだけかな? もしそうじゃないなら言って欲しいな。その理由を」

そう言われてしまっては誤魔化すことが出来ない。それに隠しておく必要も無いと思い彼女は答えることにした。「実は――あなたの持っているその剣にとても興味がありまして」

「ああ。これのことだよね。でもなんだろう。この剣を欲しがるなんて物好きもいるもんなんだなぁ」

「いえ、それが――普通は逆の場合が多いんですよ?」

「そうなんだ?」

「はい。その『無限ガチャ』という能力は強力すぎる能力なんです。そしてそんな強力な力を持った人を狙う盗賊というのは意外に多いんですよ」

「そうなんだ。じゃあさっそくこの能力を知られちゃうと厄介ごとに巻き込まれかねないということかな?それはちょっと困った話かもだな。まだ俺としてはこの世界を満喫するまではこの世界のことをもっと知りたいというのにさぁ」

そんな真樹の言葉を聞きながら彼女はある考えを思いついていた。それは彼が持つ【アイテムボックス】と似たような効果を持っている能力について。

しかしそのことを話すかどうか悩んでいると彼女が口を開く。

「それなんですけどね。もしかしたらですけど――貴方の能力で私にそれを付与してもらうことが可能じゃないかなと思うんですけど、いかがでしょうか? どうせバレる可能性があるんだったら今ここで頼んでみてもいいんじゃないかと。どうです?やってみますか?私には結構な報酬を期待できると思っていますが」

それを聞いた瞬間に彼女の言っていることを全て理解した。そしてすぐに了承する。

「なにそれ。面白そうじゃん」

そう言いながら彼は早速【魔法袋(極)】を発動していた。

この力は空間そのものを創り出してしまうもので、この中に入れることができるものならば基本的にどんなものも入れることができる。ただし生き物など生物については入れることは出来ないが――この機能があればこの世界において、ある程度の物は手に入れても問題はないというわけだ。そして俺は彼女が望んだ通りの品物をその中へと入れたのだった。

それは彼女が希望したものとは全く違ったものだ。

俺達が向かった場所は『アルサラーム』にある冒険者ギルドの出張所みたいな場所だ。どうやらここでは簡単な仕事を斡旋してくれるらしく、初心者向けの場所として知られているようだ。

「ここが冒険者の登録を行う場所になるみたいだな」

俺達のような異世界からの転移者がこういった場所で仕事を受けて生計を立てているという。中にはそういった者達を取り締まろうと躍起になっている国家も存在するらしいがそれは一部の国の話しらしい。

そしてこの場所にいる連中の装備を確認してみた。

武器は殆どが剣だな。それに槍や弓矢なんかを装備している者もいる。ただ鎧を身につけているものは皆無のようで動きやすそうに見える服装をしていた。これはこの世界では基本的に魔法が主体の戦闘スタイルだから、そういった格好をする人が殆どいないんだろうと思われる。

ただ例外として、全身に金属防具で身を包む戦士という職業もあるにはあるが、基本的にはそういう職業は上級職として認識しているみたいで、この世界においてはレア扱いされているんだとか。ただ俺はその話を耳にして少しばかり疑問を感じていた。

(――本当にそんな存在がいるのか? どうも胡散臭い感じしか受けないんだが)

俺は【鑑定士】を使ってステータスを調べていた。

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***

名称

:ダレルト

種族 :人間族

性別 :男

生命値 :255

精神力 :501+2

筋力 :612

耐久力 :458+7 敏捷性 538+15 魔力総量 410+1 固有スキル 全属性魔法適正無詠唱

自動発動型強化 身体速度上昇 剣術レベル9 身体能力向上 火魔法レベル3 風魔法レベル2 水魔法 氷魔法 雷魔法 闇魔法 光魔法 土魔法 毒魔法 聖属性耐性レベル5 状態異常完全無効化 回復魔法 聖術レベル4 補助魔法 聖剣 スキル:剣聖 剣聖の心得 炎獄 爆裂 雷電一閃 天羽々斬撃波 大爆発の呪文 絶対零度攻撃魔法 疾風の嵐の呪文 神眼解析 超加速の舞 神速剣乱撃 魔導具作成魔石変換装置(魔力蓄積量:100万倍化×∞個)

+400000

固有魔法 魔力吸収の指輪 真なる魔装召喚 契約魔法陣 真の魔王 称号:賢者級剣士

魔道を極めしもの 神の使徒 神の御使い 武を極めたもの 聖剣に選ばれた勇者 魔王を滅するもの 女神フィオルス=ファムの聖印 契約の証 加護 :女神フィオルスの祝福(幸運と祝福の女神の加護が永続的にかかる)

特殊支援

:創造の神リウラスより賜りし祝福の恩恵を受けることが出来る。(経験値増加と必要経験数値軽減、スキル獲得確率増大と取得必要ポイント減少)

この世界のことに関して、俺はある程度把握はしているが、それでもまだ知らないことはたくさんある。例えばこの世界での冒険者は基本五つのグループに分かれると言われているそうだ。そしてそのグループによって、依頼内容なども違っているらしいのだ。そしてそれぞれの冒険者にはランクが存在していてF~Sまで存在するとのことだ。ちなみに俺はBランクから始めるらしい。

まあそんなことを考えつつギルドの窓口に行くことにした。そしてそこのカウンターにいた女性に話しかけることにした。すると――

「あの。ここは冒険者の方が来るところで間違いはないですか?」

俺の言葉に対して、女性は不思議そうな表情でこちらを見てきたので言葉を続けた。

「あの。俺は異世界からやって来た者でして。今日からこっちの世界で暮らすことになりました」

その一言を聞くと、受付嬢は目を輝かせていた。俺の見た目は子供だからだろうか、俺のことが気に入ったのかもしれないな。でもさっきは俺のことを見てかなり怯えた様子だったような気もしたんだけどな。まあいいけどさ。とりあえず自己紹介だけはしとこうか。

「名前は真樹といいます。この世界での名前は――ダレイルになります。どうぞ宜しくお願いします」

すると目の前の女性――アネさんと呼ぶことにしよう。その彼女が俺に向かって頭を下げた後に微笑みかけてきた。

「私はラクスと申します。真樹様、この世界にようこそおいでくださいました。まずは私に色々とお話聞かせてもらっていいですか?」

「ああ。構わないよ。よろしくね。ラクス」

俺は彼女と挨拶をしたのちに、お互いに自己紹介を行った。その後で俺は早速この世界についての情報を訊くことにした。

「そうですね。この世界では冒険者というものが存在するんですが、主にこの大陸には三つの大国が存在しています。それは『イスカ王国』『ガドル帝国』『アルサラーム皇国』の三カ国です。これらの国々はそれぞれが対立していて長い間、戦争状態にあったんですが、ついこの間ようやく休戦条約を結ぶことに成功しまして、現在三国の民は平穏な日々を過ごしているんです。またその三つの国は、それぞれ違う文化を築き上げてきていまして、特にここ数十年の間に急激に文明の発達が進んだと伝えられています。そのためなのか――他の国よりも様々な物が発展してきていたりとしています。なので、もしかしたらこれから行く先によっては新しい何かを発見できるかもしれません。そう思います」

その言葉を聞いたときにある考えが浮かんでいた。もしかしたらだが、その技術を使えば元の世界でも、それなりに快適に過ごせる環境を作ることが可能ではないかと考えたのだ。その考えが頭を過ると思わずニヤけてしまっていたようで――それを見た彼女は不思議そうな顔をしていた。俺は慌てて咳払いをし、そして話を逸らすことにした。「そういえばこのギルドにクエストは存在しているのか?もし存在していたら早速依頼を受けてみたいなと思ったりするんだよな」

俺の言葉を聞いた後で彼女は笑顔を浮かべて口を開いた。「真樹様なら、おそらく問題ないでしょうが、くれぐれも注意して頂かないとダメですよ? このアルサラームには比較的に安全な場所ですがダンジョンと呼ばれる場所があるんです。そこは危険地帯でもあるので十分に用心をして下さい」

(へぇー。それは面白いじゃないか)

そう思った俺はすぐにその場所に行ってみることにした。もしかしたら俺が求めるものが見つかる可能性もあるだろうし、それが手に入れば生活が便利になることは確定するわけだしな。

そして彼女――ラクスに別れを告げてさっそく行動を開始するのだった。

【名前】

ダレルト 真樹 【年齢】

16歳 【レベル】

3/30 【ステータス】

基礎値 生命力 252(245+14)

精神力 416(376+20)

筋力 362(298+11)

耐久力 365(271+10)

敏捷性 282(222+7)

魔力総量 395(340+15)

【固有スキル】

全属性魔法適正 アイテムボックス(∞個)

【契約魔法陣】

魔石変換 鑑定魔法 魔力視超加速 自動回避 【加護】

女神フィオルスの加護 女神リウラスの祝福(幸運と祝福の女神の加護が永続的にかかる)

異世界転移ボーナス付与(異世界転移してきた者に対して、能力値を上昇させ、レベルの上限を取り除き、さらにレベルを上げる際に必要になる経験数値を軽減することができる。異世界転移ボーナスを永久に受けられる)

特殊支援(経験値獲得増加効果上昇。スキルレベル獲得必要経験値減少効果上昇。レベルアップ時に必要経験値軽減効果上昇。異世界転移補正。異世界転移ボーナスの効果を無限大にする。スキル取得成功率向上。取得必要経験値減少。スキル上限値設定解除)

称号:神の御使い(神獣との契約。神への誓いを立てた者に送られる)

魔導を極めし者(魔法に対する才能を持つ)

剣豪(剣聖の極致に至ったものに送られる)

真なる魔王(真魔王の契約)

真なる魔装召喚(真の魔装を身に纏う。身体能力が爆発的に上昇する)+700000

(よし!やっぱり【鑑定】を使うとこの世界の知識がある程度わかってくるみたいだな)

【ステータス画面】で自分の状態を確認していると【鑑定】でわかった情報があったのでその内容を確認することにする。するとこんな内容が出てきた。


***

***

(名称)

ダレルト(真名:???)

種族

:人間族(異世界人)

性別

:男

生命値 :250

精神力 :1002+40万(100440+800000+400000)

(筋力)

1万1000+100(11012+1万)

(頑丈)

5500+1万6000+1万5000(5660+1万2000+1万6000)

(精神)

1004+40000(10104+400000)

体力:

1042+44000 魔法行使力: 10000+1万(10010+1万+1万1000+1万1200)

魔法防御力:

6700+1万3000+1万4000 運 : 1550 +3200(1605+40)

(技能:特殊技能:魔法適正LV5,火属性魔法LV5,水属性魔法LV5,風属性魔法LV5,土属性魔法LV5,光属性魔法LV5,闇属性魔法LV5,氷魔法LV5,雷電魔法LV5,毒魔法LV5,回復魔法,聖術(聖剣所持者限定:回復))

【真眼:鑑定LV10】【言語解読LV9】【真語魔法LV10】

神聖術 《聖印》 神聖剣術LV5 体闘技LV6 身体強化 魔力感知Lv7 索敵 気配遮断 罠探知 危機察知隠密

看破 暗器操作 LUC補正 【スキル詳細 自動回収:神剣や魔杖等の特殊武器、または神具と言われるものをその手にしたとき、神域と呼ばれる特殊な空間に存在する保管場所に自動で収納する】

神界の神域で管理しているものは任意で取り出せる〉 神剣:【聖典】

女神フィオルスの聖紋。真の名を知る者は一人しかいない。全ての属性と全ての系統の最上級魔法まで使用できる。

女神の聖衣:女神フィオルスより授けられた聖女専用の聖なる装束。着るだけで全ての呪いから身を護り、怪我などをしても瞬時に回復する効果がある。更に汚れない。破れたりしない。サイズ調整機能もある。また着用者の力を増幅させる効果が発動される。

神剣と防具はどうも特別な扱いになっているようで【アイテムボックス】の中に入れることができないのでとりあえず腰に差しておくことにしておくことにした。そして改めて周りを見ると俺以外に人がいないというかそもそも建物自体があまりないような気がした。それに空には太陽らしきものがあるけど、どう考えても日本じゃないような景色が広がっていて、遠くに見えている山なんかは明らかに日本で見れるような物ではなかったのだ。しかもここは森の中だったらしく辺り一面木ばかり生えていて少し開けた場所になっていたのだ。そこでようやく俺はさっきまでは王都にいたことを思い出すことになった。まあでもそれはそれとして。今は目の前にあるものに集中することにしたのだ。

目の前にある大きな屋敷を見て俺はそんなことを考えていた。そして中に入ると執事と思われる人物が俺の前に出てきて、その人が頭を下げてきた。

「ようこそおいでくださいました。私の名前はロゼと申します。お客さまのご案内を任されております。宜しくお願いいたします」

そう挨拶をすると同時に、俺の手を取ってきた。まあいいか。特に害があるわけでもなさそうだしな。

俺はロゼさんに「よろしくお願いします」といって挨拶をした。

そのまま屋敷の中に入ったあと、ロゼさんと話をしていたのだが。俺はこの屋敷について興味を持って訊いてみると、「こちらはこの国の『勇者』である『ユウ様』のお住まいになっておりまして、その方のお手伝いをさせていただいています。私はその付き人としてこちらの方に来ているのですが、本来『勇者』というのは一人で行動することが好ましいとされていてまして、他の使用人たちをここに連れてくることはないんですよね。ですが、『魔王軍』との大戦に備えて今、このアルサラームにはたくさんの『勇者』が集まっているんです。そのため、その人達の世話をするため、メイド達が多くこちらに滞在している状況になっていまして。そのため私が『魔王討伐』に向けての準備をしている勇者の方々の手助けを行っているのですよ」

と彼女は笑顔を浮かべながら答えてくれた。

その後で色々と教えてもらうことになるのだが、なんとその人は俺に何か用事があるとのことで会いたいのだと言う。俺はそれを聞いた後でその人のところに案内してもらうことにした。

そして案内されて行った場所は屋敷の奥にある一室であった。

俺はノックして中に入り、そして中に居る人と目があった。

すると相手はその人を見るなり驚いた顔をしていた。

それは金髪の美少女でありどこか懐かしさを感じる雰囲気を持つ少女だった。

「え? あのまさか本当に貴方が?? 」

(あれ?もしかして知り合いだったのか? だけど俺にはまったく覚えがないんだけど)

(うーんこの子ってもしかして俺のこと知ってたりする?)

俺のことを凝視している彼女を見ながらそんなことを考えてしまうのであった。

俺がそう思い考えているうちに相手の子は突然慌て始めた。

(えっと何事なんだろ?)

俺は疑問を感じて、その理由を聞こうと思ったとき――

その子が口を開いて言葉を発する。

だが何を言おうとしているのか分からない。なぜか聞き取ることができないのだから。

ただ彼女の言っていることは理解できる。なぜそうなったのかはよくわからないけれど――。

なので彼女が言い終えるまでは大人しく聞いておくことにする。

そして話し終わると彼女は真剣な表情で話しかけてきた。

「あなたに――『魔王』を倒して欲しいんです!! 」

(へっ!? 今なんて言ったのかな? っていうかいきなりすぎるでしょ。一体どういうことなのかな。ううんよくわかんないけど、とにかく落ち着くように言ってみよう)

そう思った俺は、ひとまず落ち着いて貰うことにして話をするのだった。

(なるほど。そういうことだったんだ)

話を聞いてみた感じではこういう内容になるらしい。

*

* * *

話は三週間前に遡る。

アルサラーム王国の第三王女であるセレスティン姫と王国騎士団の団長でもあるライザはとある依頼のために魔の森へと向かっていた。

魔導師の中でもかなり上に位置するレベル100超えの二名による護衛を受けながら向かった先に待っていたのは大きな湖とそこから溢れ出している巨大な水の塊がそこにあったのだ。その現象については魔素が濃い場所になると時々起きる現象だということで、二人は調査を行う。その結果が分かったところで、彼女たちはある決断をすることになる。


* * *


* * *


* * *


* * *

セレスティナは今回の出来事についてある報告を受けることになった。それは『異世界からの召喚者が現れる』というもの。それを耳にして驚くことになる。

(そ、それってつまり異世界転移者がこの世界に訪れるかもしれないということよね)

驚きつつも考えていく内にひとつの可能性が思いつく。

(もしかしたらその方が私を救ってくれる存在になってくれるんじゃ)

そう思ってすぐに準備を始め、その召喚が行われたとされる場所に急いで向かうことになる。

そしてそこで待っていた光景が先ほどの水に包まれた空間での出来事であった。


* * *


* * *


* * *

*

(なるほどね)

俺は目の前にいる女の子の話を聞き終わって、ある程度理解した。

とりあえず現状としては『異世界転移ボーナスで手に入れた能力でなんとかしたいと思っている』ということは分かる。

(ただ気になっていることがひとつあってだね)

俺に頼み事をしてきている女の子を見つつ、どうすればいいかを考えてみる。

ちなみにさっきから目の前の少女の頭の上では、光の輪のような物体が出ているのだけれどそれはいったい何だろうと思って見つめてしまう。

それにしてもどうしてこんな場所に来ているのかがよく分からなかったりする。だって普通なら王城の中で待っていてもいいはずなのに。

それにどうもこの子は、自分が『異世界からやってきた勇者の一人である』という自覚がまったく無いようだった。

(俺にお願いしに来ている理由はわかったし助けたい気持ちはあるんだけどなあ)

とにもかくにもこの世界に来たばかりでこの世界の常識とかもよく分かってないのもあってどうしようもないところなのだ。そして俺はどうしたものかと考え込んでしまうのだった。


* * *


* * *


* * *

一方そのころ王城内では騒ぎが起きようとしていた。というのも突如として出現した魔物によって、多くの兵士や文官たちが襲われ始めていたからだ。

その騒動を収めようとしたときに現れたのは一人の少年だった。彼はたった一人で数十名の武装した騎士たちを薙ぎ払いながら進んでいき。あっという間に魔物たちを倒した後、そのままその場から出て行こうとする。そんな彼に声を掛けたのは国王の側近を務める公爵家当主の一人。バルバラ公爵家令嬢のアリエルであった。

アリエルはこの事態を何とか収拾しようとした。なぜならばこの場所には王弟であるアルベリク侯爵やその妻であり公爵夫人であるクラリスなど王家の関係者が多数来ていたからである。

「あ、貴女があの方の仰っていた聖剣の持ち主ですね! お待ちください。お父さまが是非お礼を申し上げたいと言っているんです」

「いえ。別に俺はお礼をして欲しくて倒したわけではありません。それよりもここから出たいだけなんです」

「お礼を受け取れないと申されるのですか。それにここから出たいということはまさか『魔王』が攻めてきていてその対処をしている最中ということになりますか?」

聖剣を持った青年にアリエルがそう訊ねる。するとその問いかけに対して彼がこう答える。

「俺の故郷に魔物が現れたんです。それで家族を守るためにこうしてここに来ていたのですが」

そんな話をしていた時に、この王城に張られていた結界が崩れ去るような感覚をアリエルが感じることになる。そしてそれが事実であることを認識した。

彼女はその瞬間で決意したのだ。そしてそれは傍で控えている近衛の騎士も同様。二人とも即座に行動を起こすことにする。そしてその指示を受けた者たちも動き出す。だがしかし、既に『勇者』たちは姿を消してしまっていたのだ。そこで仕方なく自分たちだけで行動を開始した。

そんなことがあったとは知らず、俺は目の前で真剣に訴えかけてくるセレスティ王女様の言葉を黙って聞いている。正直に言うとまだこの状況を完全に理解できているとは言えないのだ。

(というより俺はなんでこんな場所に移動しちゃったんだろう。さっきまで俺は屋敷の食堂で紅茶とコーヒーを飲み比べしていたはずなのに)

などと内心ではそんなことを考えながらもとりあえずはセレスティさんの話を聞いた方がいいのかなと思う。

ただ俺としても色々と質問しておかなければならないことがある。なのでひとまず俺はその話を聞いてみることする。そしてその内容について詳しく説明してくれた。


* * *

その少女の名前はセレスティナと言い、第三王女である。

このアルサラーム王国は現在『魔王』を名乗るものによって侵略を受けており、それを食い止めるため『勇者』と呼ばれる特別な力を使える人たちを集めて戦っているのだという。

そんな状況の中、彼女はこの国で召喚の儀式を行い『異世界』から来た人物を呼ぶことに成功した。その人物は『魔王討伐』のために呼ばれた存在である。そんなことを俺は彼女の話を頭の中で整理しながら考えてしまう。

俺は少し混乱していて思考を纏めるために、今までの情報を振り返りながら考える時間を作るためにゆっくりとお茶を飲む。

その様子を確認したセレスティが、俺に向けて口を開く。

その声音は、とても優しげで穏やかなものだ。そして彼女が続ける。

「驚かせて申し訳ございません。私はあなたにどうしても協力してほしいんです。私のお願い事というのはそれです。『魔王』を倒して欲しい」

(なるほどね。俺に『魔王』と戦えと)

その願いに答えてあげたいと思う反面、俺は色々と確かめなければいけないことがあったのでそれを尋ねていく。

*それからしばらくして俺は彼女と別れて屋敷に戻っていた。

(まさか異世界転移ボーナスの『魔導師の能力が使えない体質』の他にも、『魔法が一切行使できない』っていう能力が発動するとは思ってもいなかったな。これってかなり面倒だよな。そもそも魔法なんてものは俺が生きていた時代だと存在しなかったんだよ。だから当然のこととして魔法の使い方とかそういったことも知らない。それなのにどうやって使えばいいんだろう)

そう思い悩んでいたときにある言葉を思い出す。

(そういえばさっき出会った子って俺のことを『魔王』って言っていなかったっけ?)

それを思い出して何とも言えない気持ちになる。

(もしも本当に『魔王』がいるっていうのであれば放ってはおけないけど。今の俺には何も出来ない気がするんだよな)

自分の体を見ながらそんなことを考えていると俺はふと気づく。

目の前には見慣れた自分の姿があるのだけど、何時もよりもなんだか小さくなっていることに。しかもなんか服とか着てるみたいだし髪も長いし。

鏡を見ながら自分の姿を確認した後に部屋を出て、廊下に出ると人の姿が見えた。どうやら使用人が歩いているようだったので俺は近づいて話しかけてみる。

*

「あ、あのちょっとすみません」

「え? ええ? え? だ、誰ですか? 」いきなり話しかけられて驚く相手に、俺は自分について話す。

「あ、えっとですね。実は今気が付いたらここに居まして、何も分からず困惑していたところなんですよ」

俺が困った顔をしながらそう伝えるとそれを聞いた相手から思いもよらない返答が返ってくることになる。

(う、うーん確かに何か変ね。だって私今、この城の掃除を担当している侍女でいつもはもっと早い時間帯から働いているし)

そう思った彼女(今はもう女の子の姿になっているけど)が改めて目の前の人物を観察する。その様子からは目の前にいる少年がどう見ても子供に見えるのだ。

目の前にいる男の子はとても可愛い顔つきをしている。背の高さ的には12歳ぐらいといったところだろうか。それにどこかで見覚えのある顔立ちのような感じがしてくる。それに彼の身に着けている衣服は、自分が着ているものと似ているように思えた。

そのことに気づいた彼女は、すぐにあることを確認する。

(まさか、これは噂になっている召喚者の方に違いありませんよね。でもこんなに小さい子だというのは初めて聞きました)

「あ、あのあなたの名前をお伺いしてもいいですか」恐る恐ると言った感じに彼女は尋ねる。するとその子がこちらに向かって微笑みながら口を開いた。

「俺はタダノリ。あ、ちなみに年は16歳で高校生やっています」

(こ、高校!?)「え、ちょ、あ、あ、そ、そうなんですね。私は――じゃなくて僕はこの城のメイドをやっているセレスティナと申します。ところでタダノさんはどうしてこの部屋に?」「俺にも分からないんですよね。いつの間にかこの世界にきていて」そう言い終えた俺の顔を見つめてくると、セレスティナと名乗る女性がこんなことを言って来た。

「そ、そうなんですね。とりあえず僕の方からいくつか確認したいことがあるのですけれどいいでしょうか」

そして俺がそれに答える形で会話を続けて行き――


* * *

セレスティの視点

「あの僕から幾つか質問をさせて頂いていいですか」

私がそう告げると彼は笑顔を浮かべたままこう言った。

「もちろん構わないですよ。あ、でも出来ればこの世界に来た経緯など教えてもらえるとありがたいです」

(そうか。この人は『異世界からやって来た人』だったのか。ということはやはりあの話通りということなのかもしれないわね)

「わかりました。それではまず一つ目なんですが『聖剣を持つ異世界の若者がこの世界に現れた』というお話については聞いたことがありますか?」

「あぁはい。そのお話は何度か聞いたことがあります。確か名前はタダノリさんだったかな。なんでも異世界から来た少年で凄いチート能力を授かっているとか何とか。そして魔王を倒して欲しいと言われて断ったという話を聞いたような記憶があります」

私は彼の話をしっかりと頭の中で整理しながら聞いている。どうやら私の思っていた通りらしい。

(やっぱり『勇者様』の話をされていたのですね。しかしなんでこんな幼い方がその勇者様のはずがないと思っていたのですけれど、見た目で判断することだけは絶対にしないようにしましょう)

そんなことを考えていたときに彼はこんな提案をして来る。

「そうだ! もしよかったらお互いの事を知っておきたいので自己紹介などをしていただけないですか。あ、俺はセレスティっていってアルサラーム王国第三王女なんですが分かりにくいようなら名前だけでもいいです」

「なるほど分かりました。では僕の名前ですが、僕の名前は――

そして俺はこの城で暮らすようになってセレスティの世話役になっていたのだ。

俺と『聖剣の主』となったセレスティナ王女はお互いに情報交換をしていたのだが。その中で気になることがたくさん出てきたので、それを二人で整理することにしたのだ。


* * *

まず俺がこの世界で生活していくにあたって、俺には大きな問題が発生してしまった。その問題を解決するためには、ある人物の力が必要だった。それは何故かといえばその人物の協力があれば色々と助かるからである。

「よし、これで当面必要な物を買い集めることができた。後はこれを持ってギルドに行くだけだ」俺は手に持った金貨の入った布袋を見てそんな言葉を漏らしていた。そして隣にいたセレスティも一緒になって喜んでくれる。そんな風にしていると一人の青年に声を掛けられたのだ。

その青年は綺麗なお姉さんの近衛騎士を引き連れており俺に話しかけてきた。

その男は金髪碧眼で身長も高く整った顔をした美青年と言っていい男で、しかも服装は俺の目から見て高級品のように思える。

(あれ? なんで俺なんかに声かけて来たんだろう。こんなガキに声をかけて何を考えているんだ?)

そんな疑問を抱いていたのだけど、その青年はなぜか嬉しそうにしている。そのせいで何とも言えなくなってしまう。

そしてその彼が口を開く。

「はじめまして。私はこの国の騎士団の団長を務めているものです」

(この国の騎士だって!?)「は、はい初めまして、俺はただの通りすがりの商人です」そう言ってから、さっきまで考えていたことをそのまま伝えてしまうことにしたのだ。そのほうが面倒にならないと思ったからだ。

そんな考えを持っている中そんな言葉を聞いた彼は驚いてしまうことになる。

(ま、魔王が目の前で俺に対して挨拶をしたって言っているんだけど)そんなことって有りえるのかな。

そのことに俺は違和感を覚えた。だって魔王というのは『魔族の王』という意味の言葉のはずだ。そんな奴が『人間の王に挨拶をする』とはいったいどういう事なのかよくわからないでいた。

それにセレスティに聞く限りでも、今まで『魔王』を名乗る人物が現れているなんてことはなかったはずである。それならばなぜ急に俺のことを『勇者』だと認識したのだろうか。

俺は少し悩んだ末にあることを考え付くことができた。それは俺の持つ『勇者の能力』が関係してくるのではないかと考えたのである。

そこで俺も彼に同じように名乗ることにした。俺の『本当の名前』ではなく『タダノリ』と名乗ったのだけど。


* * *

俺は『俺』のことを思い出しながら目の前にいる青年を見る。

(この人がさっき俺が倒した『偽物の魔王』ってことだな)俺は目の前にいる男が俺のことを『勇者』と認識していることを確認している最中なのである。

(それなら俺が『勇者の能力』で倒してしまっているから当然だろうな)そんなことを思ってから目の前の人物について考えてみた。

(こいつはさっきセレスティと会話をしていたところを見た限りだと結構真面目な人って感じだ。俺の事を本物の勇者だと思っているっぽい。だとするとここで変に嘘をつくよりも、素直に俺がやったと伝えるべきだと思う。でもこの世界だと俺はチート能力の『勇者のスキルが使えない体質』があるんだよな。それに魔法なんてものが使えなくなっているし。そもそも魔王とか倒す必要があるのだろうか?)

そう考えた時に、ある事実を思い出す。

(そういえば俺はこいつと同じような存在を倒したんだよな。確か名前は――『聖魔使いマオメイ』だっけ?)


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タダノリはマオメーイとの戦闘時を思い出す。


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(俺はこいつと戦っている時に、なんか変な気分になってきてそれから意識を失ってしまったよな)

その戦闘でタダノリは圧倒的な力の前に敗北を喫してしまっていた。

(こいつも魔王を名乗っていたみたいだけど倒されて死んでいるよな。俺もこいつを倒す前に『魂縛の呪印』が勝手に刻まれて操られそうになっていたみたいだし)

タダノリがマオメイの討伐時の状況を詳しく思い出そうと頭を捻っているときだった。

「あの俺が君が倒した魔王だという証拠はないですか?」と、目の前の男が再び尋ねて来た。それに対して俺も答えたのだった。

「確かにあなたの言う通りかもしれませんね。あなたを鑑定させてもらいましたがレベルが1のままでしたのでおそらくそうでしょう。それと俺が使った『固有技能オリジナルアビリティは、あなたが俺の倒した偽物にそっくりなのを使っていると思います」と答えると。彼は嬉しそうな顔になる。

その表情から俺はその人の目的が何となく分かった。そしてその目的を達成するためにこんな行動をとった理由にも察しがついた。

(きっと俺からその『魔王の力』を手に入れようとしているのかもしれないな)

そう思ったのでタダノリは先手を打っておく。

「その『聖剣』はあなたがお持ちになった方がいいと思います」そう言った後にこう言葉を付け足す。

「俺はこの国に魔王が攻めてきたときに、それを撃退できる戦力が必要だと考えているんですよ。あなたはその貴重な力をお譲りするに相応しい人材だと考えています」タダノリはそう言い終えた。

俺が言いたいことはこの世界に来てすぐにセレスティと話した内容と同じことだった。だからその話を彼も真剣に聞いてくれている。そしてそんな話を聞き終えてから、こんな言葉を言って来た。

「君は私が倒した偽物を簡単に倒したということだったね。それで私が持っている聖具と似たような武器を持っていたということで間違いないかな?」

俺はそれに答える形で「はい」と答える。

その返事を聞いてから目の前の男性は、嬉しそうな顔をする。

(俺から『聖剣』を手に入れたことで嬉しく思ってくれているのはわかるけど。この人は俺が『勇者』だって気付いていないのかな。俺にはこの人から敵意のような物は感じ取れないからいいんだけど。もしこの人にもチート能力みたいなものがあるのなら、もしかしたら『聖剣の主』とかそういうのかもしれない)そう考えると色々と納得が行く気がした。

しかしそれでも俺の考えと違う部分がある。『聖剣』と俺の『魔導刀』では格が違い過ぎるのだ。その辺りについてはもう少し説明した方が良いのかもしれない。それで彼がどんな行動を取ろうとするか見極めることにしよう。

そして目の前の男性が続けてこう言ったのだ。

「その話の内容で一つお願いしたいことがあるのだが聞いてくれるかな?」

「はい大丈夫ですよ」俺はそんな風に軽く答えておく。それで目の前の男はこんな話を俺に告げる。

「私の名前は『アーレイ』と言う。もし良ければ君の師匠になってくれないだろうか? 私はこの国の騎士団の副団長をやらせていただいていて、私の騎士団に入団して欲しい」と俺に対して言ってきた。

そして俺はこんなことを言っていた。「申し訳ないです。今の俺は旅の途中なので無理ですね」と言って断ってしまった。

「なるほど、わかった。それではまたの機会を待つことにさせて頂くことにする」と言って彼は帰って行ってしまう。そしてその背中を俺はずっと見ていたのだ。

「まさか、俺が倒した奴はあいつの弟子だったということなのか」と、そんな疑問が俺の中に芽生えてしまう。

ただ俺としてはこの国が『勇者の力』を狙っているのかどうかが気になってしまったのだ。だから俺が倒した『魔王の配下達』にはある共通点が存在した。

それは『人間』だったことなのだ。つまりこの世界の人間がこの国の中で暗躍している可能性があるということになる。そのことについて俺はもっと知りたいと思ってしまうのであった。


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(俺は今ギルドに向かおうとしている最中だ。その途中に色々な店を回って買い物をしていた。そこで手に入れた品は結構な数になっていた。まずは俺達がこれから生活していくために必要と思われる物を買い揃えたのだ。

俺がそんなことをしながら道を歩いていると、前方の方から誰かの声が聞こえてくる。その方向に目を向けてみるとそこには大勢の人達が集まっていてその中心にセレスティがいた。彼女は何かを訴えているようにも見えたので俺もそこに向かって行ってみることにした。すると彼女がこんな言葉を俺にぶつけてきたのである。

「あなたはこの国の『勇者』様でいらっしゃいますか!?」

そう言ってくる彼女を見て俺はすぐにその質問の意図を理解してしまった。そして彼女の問いかけに対して「俺はその勇者ではありませんよ」と言ってみたのだけど。その言葉でも目の前の彼女は安心することができないようだ。

「そうですか、ありがとうございます。あなたがこの国の勇者様ではないというのであれば、魔王を退治してくれますよね?」そんな言葉と共に目の前の女性に腕を掴まれてしまう。そのことに驚きつつも「俺はこの国に来るまではただの商人だったのでそういった話は分かりません」と言っておいた。

「わかりました、私はこの国で騎士団団長を務める者です」と目の前の女性がそんなことを伝えてくれるのである。そしてその言葉の後、周りにいた他の人たちも一斉に口を開いてくる。その内容はどれも『勇者』に助けを求めるような声が多かった。

(もしかして俺は魔王を倒したのが、俺じゃなくて別の『勇者』であるという噂が流れ始めているのかもな。それなのにその俺が現れたとなると混乱が広がってしまいそうだな)

俺が『勇者じゃない』と言い張ったせいでこの場の収拾が難しくなってしまいそうである。それに『勇者』の『称号』についてもこの世界ではあまり浸透していないらしい。それこそ目の前にいる女性くらいしか俺のことを『勇者』と認識できていないみたいだし。そんなこともあって余計に俺の言葉を信じて貰えなさそうでもある。

そんな事を考えていた時だった。

俺のことを取り囲んでいた人々の後方からこんな会話が耳に入ってくる。「なんでこんなところまで来てんだろうな?」「あの子って『勇者』を探しているって噂の人じゃない?」そんな言葉を聞いた俺はすぐに理解してしまう。それはセレスティのことではないかと思ったのだ。

そうして考え込んでしまっていた時に「助けて欲しいんです。どうか、お願いします!」と目の前の少女が懇願してくる。

それで周りの人達の視線が全てこちらに向いている状況に気づいた俺は、「すいません。少し待ってください」と言って、この場を収めるために動き始めることにした。

そしてこんな言葉を目の前の少女に話しかけたのであった。

「俺は君を助けたいと思っているのですが、君自身は何を望んでいるのですか?」

俺がそんな風に彼女に問いかけると。目の前にいる少女はこんなことを俺に伝えて来た。「この国から魔王軍が攻めてきそうなのです! そして魔王軍は既に国境を突破し、この王都にも迫ってきているのでどうにかしてください!」と、そんな訴えだったのである。

(これはもう間違いなく、この国の『魔王軍』のことだな)

そう確信した俺は、この場ですぐにでも行動を開始しようと思っていたのだけど。そんなタイミングで後ろから「おい、お前」と言われてしまう。

俺にそんな声をかけてきていたのは俺がこの国に来た時に出会った『冒険者のおじさん』だった。その人が俺に「あんまり勝手なことをしていると捕まるぞ。それで本当に良いのか?」なんて言って来るのだった。

俺はその発言を聞いてこの『冒険者のおっさん』が何を言いたいのかを理解することができた。

(きっと『俺』がこの女の子を助けることによって、『魔王討伐の旅に出ようとしている少年が偶然にもこの場面に遭遇して、困っている少女を助けてくれた』という話を広めてくれようとしたのだと思う。この国に魔王軍が侵攻しようとしていると知っているのは、恐らく俺だけなのであろう。

それで俺はその『事実』を利用して、上手く誤魔化すことに成功したのである。これで俺は『勇者』としてこの世界に受け入れられることができるようになる。だから俺はその『冒険者のおっちゃん』に感謝を告げてから行動に移ることにする。そして俺はこの『冒険者のお兄ちゃん』と一緒にその場を離れていった。

そして『勇者』と『英雄』の違いについて考える。

まず第一に違うのがレベルの差だ。レベルが1の人と100レベル以上の人には大きな差があるのだ。だからこそ俺のレベルを上げなければいけないと考えている。

(それにステータスの補正数値が違うんだよな。確かこの国にはレベルの上限値を上げることができる場所が存在するはずだ。その施設を使えるのが『国王』か、その側近達しかいないと聞いたことがあるから。おそらく『王様』に会う必要があると思う。そのために俺はこれからどう動けばいいのか。それをこの国の人に相談したいとは思うんだけど。この人は誰なんだろう?)俺は隣を歩いている男に対してこんなことを考えていた。

そんな風に俺は『冒険者のおっさん』の隣を歩いていたのである。


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「とりあえず俺はこの国にやって来たばかりで知り合いがいないから。あんたに案内してもらいたいんだけど。どこに連れて行ってくれるんだ?」

俺がそう言うと『おやっさん』と呼ばれている男性がこんな言葉を返してきた。

「まあそんな急ぐなって、この国は広くていいだろ? ちょっと付き合ってくれや」と、そんな事を言われてしまう。

俺としては『おやっさん』と話せる機会もそうそうないので色々と話をすることにした。

まず俺が確認したかったのは『冒険者のおやっさん』がどこまでの情報を把握していて、これから何をする気なのかである。

俺はこの世界に来てからの疑問点を解決するために『この人』の手助けが必要になると考えていた。だから今は俺が持っている情報を少しでも提供しようと思い話をすることにした。

まず俺はこの『異世界人』というだけで優遇されている部分があるのだ。その理由はこの国には『勇者』が居なかったからだ。俺が来る前までは存在していたようだが、死んでしまったと言われているらしい。そんなことから、国では『勇者の力』を欲していたみたいである。

ただその話については詳しく聞かない方が良いような気がしたのでスルーしておいた。それでこの国では『聖剣』の存在が有名で、その所有者の実力もかなりのものであると認知されていたようである。それで『勇者』が現れれば国の守護者として『勇者』に仕えるようにと昔から決まっていたみたいだ。

そして今回現れた俺が『聖剣の主』であったことで国では混乱が生じているとのことだった。それが原因で俺に『聖剣』を渡すことを躊躇しているみたいなのだけど、そんなことは知らないとばかりに俺の目の前にその『聖剣』が姿を現したのである。

それでこの『勇者の師匠』という役職に就いている『冒険者』にその聖剣の使い方を聞く為に、今俺達は移動をしている最中なのだ。

ただその説明の途中でも俺は疑問に思っていたことがあったので、そのことを質問してみることにした。

「『勇者の力』というのは『魔力操作』と『魔法行使力』の数値が上昇するんですよね?」と俺はこの『勇者のおっさん』に向かって問いかけてみた。

それに対して彼はこう答えてきたのである。

「ああ、そうだぜ」と、あっさりと教えてくれた。

そんな彼に「それなら俺にもあるんじゃないでしょうか?『聖女様』とかがいればその人の『魔力量』も『魔術知識』もわかるんですけども。そうすれば俺がどれくらいの『勇者』なのかが判断できるはずなんです」と俺は言ってみるのであった。


* * *

俺は『おやっさん』に連れられてある店にやってきた。

その店内に俺達が足を踏み入れると「おお、来たか! 待ちわびたぞ!」と威勢の良い大声が耳に入ってきた。そしてその声の主に目を向けるとそこにはこの国の王が座っていたのである。

俺はそんな彼の様子を確認すると、すぐに頭をさげてから言葉を発する。

「お久しぶりです。陛下」

俺はその一言と共に深々と頭を下げたのだった。すると目の前にいる『王様』はこんな言葉を返してきた。

「お前の事は良く知っているよ、なんでも『勇者の勇者』だとかいう奴なんだってな。それで本題に入りたいんだが、俺に何かして欲しいことはないのか?」

いきなり『勇者の勇者』と呼ばれるなんて想像すらできなかった俺は驚きつつ、この国の王である人物を見据えるのであった。そしてその人物は俺にそんな事を口にしながら俺のことを見てくるのであった。

「あの~。『冒険者のおっさん』に『勇者』だって言われたんですが、俺はこの世界のことはまだ何も分かっていないので『冒険者』の人達から『情報』が聞きたかったんです」

俺がそんなことを『王様』に伝えると。その人が笑ったのである。その笑顔は俺がこの国で会った人々の中で一番優しそうな雰囲気をしていた。そんなこともあって俺は『この王様』に対して警戒心を解いてもいいのではないかと思えて来た。それで少しだけでも俺のことを理解してくれればいいなと思いこんなことを口にしたのである。

「俺、まだこの国の言葉もあまりわからないし、それに『勇者』についても全然わかっていないんです。だから『冒険者のおっさん』にいろいろ聞いてきたのですが、それでもこの国がどういう国かもわかってなくて――それで俺のお願いなのですが。少しの間でいいので俺と行動を共にしてもらってもいいですか?」

俺はこの世界にやって来た時に、言葉が理解できず苦労していたことを思いだす。そして『勇者』と認められた以上はその責務を果たすべきであると思ったのだ。それでこの国に恩を売ることが出来るならば、俺はその『勇者の使命』を全うしようと決めていたのである。だから俺はそんなお願いをしてみたのだ。そしてそんなことを俺が口に出すと。目の前の人物がこんな言葉を俺にかけてくれたのであった。

「俺の名は『バルサ』だ。俺に『勇者』殿のお世話ができるのであれば光栄だが、『聖剣の主』は俺にとっても大切な仲間だからな。『勇者』殿が困っているようであれば全力でサポートしようじゃないか!」と言ってくれるのだった。俺はその言葉を受けて『王様』に感謝を伝えた上でこんな事を言ったのである。

(この『冒険者のおっちゃん』の名前、聞いた事があるな。あれ?どこでだったかな?)

俺はその人の名前を記憶の中から探しながら、この人と出会った時の会話を思い出そうとしたのだけど。この人が誰かを特定出来なかったため考えるのをやめてこの場を収めることにした。

俺は『冒険者のおっさん』である『おっさん』から話を聞き出していくことにする。

俺は『冒険者のおっさん』である『冒険者のおっちゃん』からこの国の事情を聞くことになったのである。そして俺はまずこの国に存在する迷宮について質問をした。それは当然のことながら俺の持つ能力の一つである【マップ】についてである。この世界に来てから『魔素』やら何やらの情報が脳内に流れ込んできた影響で、俺は【MAP画面】というスキルを手に入れたみたいだ。これはどうやら『冒険者のおっちゃん』が言うには『特殊な魔道具』である可能性が高いらしいのだ。だからその能力を解明したいと考えているのである。だから俺のその質問には答えてくれたのである。

そしてこの国にもいくつかのダンジョンが存在しているという話も聞かせてくれた。

その話を聞けば聞くほど俺は興奮してくるのを感じた。

(もしかしたら俺でもダンジョン攻略をする事が出来るのかもしれない)と思ってしまうからである。そして俺の心の中に浮かんできた感情が「ワクワクするな」という感情だった。そんな俺の様子をこの『おっさん』は微笑ましく見ていたようなので、俺は恥ずかしくなって視線を逸らすのである。そんな俺の反応を見て『勇者のおっさん』はこう言った。

「はははははは、勇者の少年は可愛らしい反応をするではないか。それではこの国に伝わる伝承を簡単に話しておこうか」とそんな風に『おっさん』から告げられたのだ。

「その前に『冒険者のおっさん』の名前はなんていうんでしょうか?」

俺は『冒険者のおっさん』に名前を告げてもらおうと思いそう訊ねてみることにする。そうすると「俺か?俺は『オックス』っていう名前だ。よろしくな」と返されたのである。

「はい。よろしくおねがいします」

俺はその言葉と共に『冒険者』と仲良くなれるきっかけが出来たことに嬉しく思ったのである。それで俺がそう言うと目の前にいる人物はこんな話をしてくれたのである。

「まず『聖具』は全部で10種類存在するとされている。その中でも『伝説級』『希少級』に分類されるものは『冒険者ギルド』の認定品となる。その認定品の所持者が俺達の『勇者パーティ』のメンバーになっている。だから君も俺達と一緒に『冒険』するなら、そのうち会う機会があるだろう」と言われたのである。

『冒険者ギルド』とは冒険者のランクを審査する場所で『Fランク』『Eランク』『Dランク』などの『冒険者の等級』が付けられるらしい。それで俺はそんな話を『冒険者』本人から聞かされ、色々と教えてもらったのであった。ただそこで俺は疑問が生じたのである。この国の現状では、俺が『勇者のおっさん』と一緒に『勇者の力』を手に入れるために行動する必要はないような気がした。なぜなら『勇者』として『聖女』の力を利用できればそれで問題ないのではないだろうかと考えたからだ。

なので俺はこの国の王にこの疑問をぶつけてみたのである。すると『王様』は「まあそう焦らないで聞いてくれよ」と言い出したのであった。

俺が『勇者』になって『勇者の勇者』になってしまった事で、国としても対応しなければならない問題が浮上してしまったみたいだ。というのも俺の『聖剣』をどうやって手にするかで意見が割れているのがその理由だそうだ。そして今『勇者のおっさん』の手元にある聖剣は『聖剣ゼフブライン』というもので『剣技』に関するスキルと『魔法剣』を習得することが可能になるらしい。

そのことから『聖剣の主』に聖剣を渡すかどうかの話になった時。その時に『冒険者のおっさん』である『おっさん』とこの国の王はお互いに譲れない理由があって話し合いの場が持たれたそうだ。その議題の内容は、俺が持つ『聖剣』の扱い方についての話である。俺にこの聖剣を与えるのかという話から派生してこのような話が交わされたようだ。

この『おっさん』も『勇者』の力に興味があり。是非自分の手に収めたいと思っているとこの国の王が口にしたのである。

『勇者』に聖剣を与えないというのは、他の国の王との約束ごとであり絶対に守らなければいけないことだそうだ。だからそれを破れば他国から非難されるのは間違いないのである。それこそ俺達が現在所属している国『ガナード帝国』と同盟関係である国『アネモス共和国』と『ミライアル公国』の3国からの抗議が殺到することが考えられるそうだ。それを避けるためにもこの国では『勇者の師匠』が持っている聖剣を譲ることができないのだということを、俺はここで知る事になったのである。

俺は『冒険者のおっさん』からこの国の歴史と現状を聞かされた。そしてその歴史は思っていたよりも長いものだということも教えられたのだ。

俺がこの国に召喚されて約1カ月が経過したある日のことである。この城の中にいた人達が全員大騒ぎを始めたのである。それで俺は何か起こったのかと思って慌てて部屋を出ていったのだ。

そんな慌ただしくなった廊下を俺は移動していく。その道中に『冒険者のおっさん』と出くわし「何か大変なことが起こったみたいだからちょっと手伝って欲しいんだけど頼めるかな?」と言われてしまった。俺は断る理由はないしその提案に乗る事にする。

「はい。俺なんかでよければ」

俺はこの国に着てから初めて自分を必要としてくれる人がいたということもあって、俺は嬉しくなりその申し出を受け入れたのであった。そしてこの国の王の私室に向かった俺と『冒険者のおっさん』である『冒険者のおっちゃん』。

そして俺はそこで驚くべき人物と出会うことになる。それは『王様』とこの国を代表する4人の王の一人、つまりは『勇者のパーティーメンバー候補』でもある人に出会うのであった。

俺達は王の部屋に向かうために城の廊下を歩いていく。

そして目的地に辿りついた後、中に入ってみるとそこにこの国のトップクラスの人物が揃っているのがわかる。

そして『冒険者のおっさん』こと『勇者のおっさん』は『王様』に向かってこんなことを話し始める。

俺達をこの場に呼んだ経緯について語ってくれたのだ。俺も事前に聞いていたのだが、『聖剣の主である勇者』を一目見ようと、集まった人々が謁見の間で待機をしていたそうなのだ。しかし待てど暮らせど、誰もやってこないという状況に陥り、このままでは待ちくたびれて暴動が起こりかねないと思ったこの国は仕方なく、『勇者の師匠』と連絡を取って呼び出しを行うことにしたのだ。

ただこの時、『冒険者のおっちゃん』にこんな話を聞かせてくれたのである。この部屋に集まっていた面々の誰もが「勇者の少年がここに来てくれなかったのが残念で仕方がない」というような内容の発言を繰り返していたらしい。

「それはなぜなのでしょうか?」

俺はそのことがとても気になり訊ねてみた。

「はは、そんな質問が出てくる時点で君の人柄がなんとなくわかったような気がするな。普通ならばそんなことは考えずに勇者がやって来るのを心待ちにするものだ」

俺は『勇者』として、自分がどれだけ周りに恵まれているかということに気付かされるのである。

俺はまだ何も成してはいないというのにだ。

『勇者の師匠』は『王様』達にこんな説明を始める。俺の能力には、特殊な能力が存在する可能性があるから迂闊には会えないのだと。俺がその『勇者』として相応しい人物であるのなら会う必要がある。

しかし今の俺は『聖剣』を持っておらずその能力は把握されていないから、俺には勇者の素質がどの程度あるのかわからず判断に困る状況だと言ってきたのだ。

「それでこの場には、この国の代表の方しか出席していなかったようですが?」

『冒険者のおっさん』がそう訊ねるとこの場にいる人は、それぞれ違う返事を返す。

『聖女の師匠』は、「そうですね」と一言呟くように言う。

それに対しては『騎士長』と『魔道士長』も「その通りだ」と言うのである。

この三人の意見は同じ意見みたいである。『魔道士長』が俺に視線を向けると「どうやらあなたが勇者なのですか?それともその隣にいる少年なのでしょうか?」と問いかけてくる。

(はっ?どういう意味なんだ?)

俺としてはその問いに対する返答がすぐには思い浮かばない。

(えっと俺と少年との違い?それは見た目とか年齢のことか?それとも少年は人間で俺は『魔族』ということなのかな)

そんな風に考えていると『勇者のおっさん』である『冒険者のおっさん』が口を開いたのである。

『勇者のおっさん』は、自分の目の前に俺という存在が居たことで俺の正体に気付いたみたいだ。俺達『勇者一行』は、魔王討伐の旅の途中であり現在は、その魔王が住んでいるといわれている国へと向かっている最中なのである。なので俺は『冒険者のおっさん』である『勇者のおっさん』にそのことを告げると、彼は「やっぱり」と言いながら笑みを浮かべたのであった。そして『聖女』である彼女の方も、納得がいったかのように小さく数回うなづいていたのである。

『冒険者のおっさん』は『王様』の方に振り返り俺のことを告げた。すると『王様』も納得した表情を見せたのである。『王様』、『冒険者のおっさん』である『冒険者のおっちゃん』そして『聖女』と3人の話し合いが行われることになるのだが、俺と少年がその場に置いてきぼりになっている感じになっていることに俺は気づく。

この場で会話が行われている間俺は部屋の隅っこで座って大人しくしていることにする。俺はただ待っているだけで良いとのことだったから。ただその時間は10分と続かなかった。『聖具』の話になった時に俺は思わず声を上げてしまい『冒険者のおっちゃん』に注意されてしまう。俺は自分の失言に恥ずかしくなり俯いてしまう。

それから『勇者』に聖剣を渡すのか、渡さないのかという話になって、俺の手元に『勇者の師匠』である彼女が「それでは勇者様は私が持っている剣をお受け取り下さい」と言ってきたのである。

俺は『冒険者のおっさん』こと『勇者のおっさん』から、剣を受け取るとその刀身を見て驚いた。なぜなら今までは見たこともないほどの『綺麗な白い刃』だったからである。それで俺はこれが伝説級と呼ばれる剣であることを知った。

『聖剣ゼフブライン』

『冒険者ギルド』の等級でいえば『ランクS』の剣でこの世に存在する最高級の剣だということがわかったのである。

俺と『冒険者のおっさん』はお互いに顔を見合わせる。そして俺に『聖剣ゼフブライン』を渡した彼女こそが、『聖女』と呼ばれている人であり、今回の件に関しては『冒険者のおっさん』と意見が同じであることを教えられた。そして俺は今、伝説の武器を預かっているという事実を認識させられ緊張していたのである。

『聖剣ゼフブライン』を手にしたことで俺は改めて、これから先起こるであろう様々な困難を乗り越えていけるのだろうかと思うのである。この剣を手にしたことで俺は『聖剣の使い手』となったからだ。

『勇者のおっさん』こと『勇者のおっさん』は、この聖剣を受け取った少年に対して今後の事を伝えるのであった。

『勇者』が所持できる最強の武具は、聖剣の他にもうひとつ存在しているのだそうだ。それは、この世に4本しかない『神剣』と言われるもので、その4本はそれぞれ、『剣技』に関する力を持ったもの、この世界に生きる全ての人々の平和を守り抜くための守護者としての役割があると言われている剣らしい。そして『剣技』に関係する剣は、現在俺の手の中にある『聖剣ゼフブライン』である。残りの2つは、『剣の姫』が所有している『魔剣シュライアー』、『槍の神子』が所有をしている剣『聖槍アルグライデ』である。その2本の剣は所有者に圧倒的な力を授けることができる剣であるというのだ。

この『冒険者のおっさん』こと『勇者のおっさん』こと『冒険者のおっさん』は、『冒険者のおっさん』が俺の目の前でこんなことを言い出したのだ。

『勇者よ。お前にこの剣を与えることは出来ない。だからその剣でお前の願い事を一つだけ叶えてやる。ただしこの世界の為になることであれば何でも構わない。さあどんなお願いをするのか教えてくれないか?』

俺は「はっ?何を言っているんですか?」と思ってしまった。だって俺には何の力も無い。俺には何もないのだ。

『勇者』が最強ならば、なぜ俺が選ばれたのかと疑問に思ったこともあるし、実際にそう思って俺はこの国に来たのである。俺は自分だけが特別な存在であると思って来た。

だけど違った。俺以外の人も俺と同じように召喚されこの世界に来ていたというのだ。

それに俺の知らない場所で『俺の仲間候補達』は既に動き出していて、俺がここにいる間に彼らはそれぞれの『使命』を果たしてしまったようだ。そして彼らが残した『遺志』を受け継いだのは、彼らの『弟弟子』である俺の幼馴染である少女達であるのだ。

この事実を知った俺はショックで落ち込んでしまう。

(ああ。どうしてこうなったんだ。俺なんかが本当にこの『勇者』として認められる存在になれるのかなぁ。俺みたいな何もない存在なのに)

そんなことを考えている俺に向かって『冒険者のおっさん』こと『勇者のおっさん』こと『冒険者のおっさん』は、あることを話してくれたのである。それは、 【『聖具師ダレルト』に新しいスキルが覚醒したみたいだ】

というものだ。

その言葉を聞いた俺は「はて?そんな話聞いた覚えがないんだけどな」と思っていたのだが、『冒険者のおっさん』は、

「この世界で起きていることは、他の世界でも起こっている。君が思っている以上に情報は交錯するんだよ」

俺はその言葉を信じることにする。そして、その話を詳しく聞いていくうちに新たな希望が生まれる。それは、 【『聖具師のスキル』の派生系のひとつ『魔法』が使用可能になりました。『無属性魔法の極み(Lv1)』を獲得しています。また、『魔道具製作』『アイテム収納庫』を統合させ『錬金BOX』と『錬金術師』が統合され『調薬』の技能を所得しました。これにより、新たにオリジナル回復薬の作成が可能になりました。これは、あなたに渡します。是非試してみてください。あなたとあなたの仲間たちに神の祝福がありますように!by創造主様&女神アリア様より愛を込めて

追伸:この世界を救う鍵はこの中にあります 以上 】

とのことだった。

(この文からすると『錬金術師』がこの世界の神様である女神様にジョブ変更したことで新しくスキルを取得したということになるのかな。それなら俺にも出来るかもしれない。よし、この国の人には悪いけど俺は『魔導技師』としての技術を生かさせて貰おうと思っている。それで、もしこの国のために何かをしたいと思ったらその時に、俺が出来る範囲のことをすればいいんじゃないかな。そう考えると少し気が楽になったような感じがするな)

俺は『勇者の師匠』こと『冒険者のおっさん』にお礼を言った。そして『聖具師』の能力を確認するために『冒険者のおっさん』が持っている魔導器を使ってみることに。その結果は俺の予想を遥かに超えるものとなる。なんと俺は魔導機巧を使えるようになっただけでなく、俺専用の『工房』まで作れるようになっていることが判明したのである。しかも俺が今まで作っていたものよりも圧倒的に性能が良かったのである。

それから『冒険者のおっさん』こと『勇者のおっさん』こと『冒険者のおっさん』は、聖剣ゼフブラインが、実は『聖剣』ではないのだということを教えてくれたのであった。

この聖剣は『魔剣』と呼ばれる『闇堕ち』してしまった剣である。その力は強大であり、その能力は他の剣とは比較にならないほど強力で、普通の剣や聖剣であっても、この『魔剣ゼフブライン』に攻撃されると消滅してしまうのだと説明を受けるのである。この『魔剣ゼフブライン』は、かつて俺達が倒してきた魔族の王が使っていた剣なのである。この剣に封印されている魔王は、『邪龍王バルガリオン』という名前で俺達の住むこの世界とは異なる世界に生きていた『龍種』の王だと言われたのである。

この剣は、本来であれば魔王が死ぬときに消滅するはずなのだが、魔王が持っていた『不滅の血石』の影響で、剣が消滅せずに長い年月を生きた結果、魔王と同等の力を持つ魔族になってしまったのだというのだ。そして、魔王はその力を誇示するためなのか『勇者』との戦いにおいて自らを犠牲にすることで、俺達にこの剣を残したのだというのである。

その話は、とても信じられるものではなかった。だってそうだろ。俺の師匠の『勇者のおっさん』が『勇者様』の師匠を殺したなんて考えられないことだったから。だから俺は思わず「そんなこと絶対にあり得ないですよ」と言ったのだが、「残念ながら本当のことなのじゃ」という返事だった。でも『冒険者のおっさん』の話では、どうも勇者のおっさんに倒された後の魔王は意識を失っていて記憶喪失状態だったらしく、この世界の住人に対して恨みを持っていたということではなく、『勇者』と戦いたいという想いで、剣だけを残してこの世界にやってきたのだろうと言っていた。そして俺の持っている剣に『聖痕の加護』が反応したことから俺を選んだのだろうと。

その話を聞いた俺と俺は、この魔剣を使うのは止めた方が良いと思い、俺は『冒険者のおっさん』に魔剣を返したのである。

『聖剣ゼフブライン』と『魔剣ゼフブライン』の違いについて簡単に言うと、『聖剣ゼフブライン』は、所有者を『勇者』に変えることで真なる力を解放することができるらしいのだ。しかし俺は、『勇者』じゃないし、俺は勇者になるつもりもない。だからこの剣を使えないと思ったのである。

俺はこの『冒険者のおっさん』が、これから何をしようと思っているのか尋ねたのである。彼はこれからこの国に残り『勇者の補佐』をすることを決めたようだ。それはなぜかと言うとその理由は『勇者』が不在になると『魔物の襲撃』が起きやすくなって『魔王の配下』が現れてしまう可能性が高いからだというのだ。それに俺と『聖剣の使い手』は、一緒に旅をした方が安全でお互いにメリットが大きいからと理由を述べていた。俺には理解できないことが多すぎてよくわからないのだけど、この世界の『ルール』でそう決められているということだそうだ。

「俺は別に『聖剣』が無くても『聖具』さえあれば、なんとかやっていけそうな気がします。だから、この国から旅立つときに、この聖剣ゼフブラインをあなたに渡そうと思います。そしてこの聖剣ゼフブラインの代わりに、俺は俺に出来ることをしたいと思っています。俺は、俺を必要としてくれる人たちの為にこの剣の力を振るいたいと思うのです。その人達に必要とされなくなるまではですがね」

と伝えた。この国にいる間、このおっさんが面倒を見てくださるというのだ。だから俺のすることは特になかったのである。そこで俺は、俺に出来る事を探すためにこの世界を観光することにしたのだ。この世界の文化や文明のレベルを知る良い機会でもあるし、俺は自分の『力の源』が何なのか知りたかったのだ。

「俺には『特別な力』は無いけど、その代わりこの『知識と技能の蔵(チート収納)』の中には、色々な知識と技術が眠ってるんだ。これを生かせば、この世界の発展に貢献することが出来るはずだよ」

おっさんと別れた後すぐに俺はそう考えながら、この国の中を見て回ることにする。そしてまず向かったのは、【錬金術師ギルド】だ。ここならば、【錬金BOX】の中の物を使い、オリジナルの回復薬を作ることができるからだ。

俺の考えでは、この世界で役立つ薬を作りたいと思っていた。なぜなら、俺達は今までに沢山の回復薬を作ってきたからである。それも無償で提供したことがあるくらいだし。そんなことをしていたので俺達が『錬金術師』であることをこの国の人も知っているわけだが。俺はその時にこの国に来た時に考えたことを実行しようと思う。つまり、俺達が作った回復薬を有料にして販売するのだ。この世界でお金を手に入れるためには、『商売人』になって、お客さんに買ってもらわないといけない。その時に大事なのは、信頼関係の構築だと俺は考えている。その為には、やはり無料で提供するというのが大事だと思うのだ。そして俺は錬金術を使ったオリジナルの回復薬を作ろうと考えていたのである。この国の錬金術師は優秀だと言われているが、『魔法付与』された薬というのは、あまり無いみたいである。なので『魔道具製作』スキルを持った俺にしか出来ないのではないかと思っているのだ。

そう考えて俺は『冒険者のおっさん』こと『勇者のおっさん』こと『冒険者のおっさん』こと『冒険者のおっさん』こと『冒険者のおっさん』から渡された【鑑定士】スキルを使って調べた結果は次のようなものだった。

『薬草』×99999

『体力回復ポーション(小)』×1000

『体力回復ポーション(中)』×2

『体力強化剤(特)』×3

『状態異常解消薬(中)』×10

『魔力回復薬(特)』×2

『状態回復薬(中)』×1 【魔道具製作BOX】内にあった素材を使えばこんなものが作れるようだ。俺はとりあえずこの材料を元に『回復薬(特級品)』を作成していくことにした。ちなみに回復薬を『聖具』として使うこともできるが、その場合、普通の薬に比べて効果が桁違いに上がるのである。そのかわり値段も高くなるのだが。

『聖剣』や『魔剣』などは使用者に合わせて変化する特徴があるのである。

それから俺は、錬金術師のおばちゃんに頼み込んで『錬金BOX』の中に保管されていた『錬金術の本』『薬学の本』『医学の本』『植物学の本』『魔導の教科書』『魔術の教本』『スキルブック』『魔導具製作入門書』などを、複製してもらうことにしたのである。これで俺はスキルを覚えることが可能になった。そしてそのスキルを使って回復薬の量産を行うつもりなのである。その作業場をこの国に用意して欲しいとお願いすると、なんとその建物を貸してくれることになった。その建物の名は、なんと、なんと『錬成棟』というのだ。なんでもこの『王都の城の中にある研究所兼工房』で作られるもののほとんどがここで作られていたらしいのだ。それを聞いて驚いた俺は、この施設を使って色々とやってみようと思った。

それからこの国は『商業の国』と言われるだけあって『錬金術師』だけでなく他の分野の職業の職人も多く集まっているようだ。それを知った俺は、その人に頼んで、この国の料理を再現してもらえるようにお願いしたのであった。そしてそれをレシピにまとめ、販売したいと考えている。

そのレシピ作りも手伝わせて欲しいと言われたので頼むことに。その料理人も『聖具師』のジョブを持つ人だった。しかもレベルは40もあったのだ。俺は、その人を『解析の鏡』という『神具』を使って見てみると、『料理長のおじいさん』こと『勇者のおじいさま』だった。俺の師匠が生きていた頃は、この人が勇者パーティーのリーダーを務めていた。勇者が死んでからずっとここに残っていたのだという。

このおじいさんは『勇者』のことを大切に想っているようで勇者のために何かをしてあげたいと願っていたのだという。でも何もしてあげられることがないと諦めていたが、俺の持っている『鑑定』の魔導器に、俺のことを『神の遣い者』だと気づいてこの『錬金棟』を提供してくれたらしいのだ。

それでこの人は、勇者が生き返るのならばどんな協力を惜しまないとも言ってくれていたのである。俺はその気持ちが嬉しかったので、「必ず勇者を復活させます」と伝えたのだった。そんな話をした後は一緒に厨房に向かい、この国でしか食べれないという食材について詳しく教えてもらった。そして俺は、『錬金術』で作成した『万能栄養ドリンク』と『回復薬』を使って、俺が知っている美味しい物を作ることにした。そしてその味覚や触感なども忠実に再現するべく頑張った。そして俺はこの『錬金棟(キッチン付)』を借りてこの世界独自の調味料と『料理』のレシピを完成させたのである。その『特製スタミナ丼』が、これなのである。

「うん、いい出来だな。さすが俺だぜ!」

俺は完成したこの料理を見てそう呟いていた。

そして俺はこの世界独自の調理法で作った『おにぎり』、『唐揚げ』、『味噌汁』と『豚キムチ』と『焼き鳥風野菜』と『ポテトサラダ』とこの世界の郷土料理を作ってみた。これは、俺が作ってきた『おにぎり弁当』がとても好評だったことを思い出し、自分でも作ってみることにしたのだ。その結果がこれだ。

『勇者のおっさん』に貰った『収納鞄』に全部入れた状態で【チートの種(極上品質)】を成長させたところ【空間拡張】と『自動修復』がついたのである。

そしてその中に入れていた物を全部取り出して、テーブルの上に並べていった。

この国の料理と俺の世界の日本の料理、それにこの国ならではの珍しい物を合わせて、メニューを作った。

この国には、米と麦があるが、それぞれ違う作り方で作られていて面白い。それに味噌の種類が多いこともびっくりだ。醤油に至っては何種類もあるし。この国の料理はとても多彩だ。そんなことを確認しながら、俺は試食していった。

そして俺はこの『王都の城下町』に屋台を出して、この国特有の食文化を広めることにしたのであった。俺はそうやってお金を稼ぎながら、俺のやりたいことをしようと考えているのであった。そして俺の異世界生活の第一歩となる日を迎えることになるのだった。

「おい、起きろ、お前! 朝だぞ? はぁー。今日もいい天気じゃないか。そ、れ、に、今日からお前はこの国の新しい仲間なんだから、早く起きるんだぞ?」

と俺の肩を掴みゆさゆさと揺さぶられた俺は――「ん? う~ん、は、はい。おはようございます。あ、あのあなたがこの国の『国王陛下』ですか?」と寝ぼけ眼のまま質問をした。俺は、自分の記憶を頼りに思い出す限りの、この世界で見たことの無いような豪華な服を着て、王様の証しのような杖を持っている人物と昨晩出会ったことを思い出す。俺は目の前の人物を見ながら確認をする。

「はっはははは、私は『王都の騎士団長様』こと『元勇者のおっさん』こと『王都の王様』だ」

と笑われてしまったのであった。俺の予想は当たっていて、やはりこの国が俺の知っているこの世界とは別世界で間違いないということが確定することになったのだった。俺は、改めて自己紹介をして、挨拶を行ったのだった。そういえば『錬金棟(キッチン付き)』で色々作ったあと疲れて眠ってしまったんだよな。そう思いながらも俺はベッドに横になっている状態なので、今更ながら布団から這い出ることにする。

その瞬間、俺の顔が引きつるのが分かった。そして俺は『王都のおっさんのじいさん』改め『王都の国王』が言うには俺にはこの世界で生きる為の名前が必要だということで、名前を決めてもらうことになった。俺は『錬成師』というジョブがこの世界にはないのでそのまま名乗っても問題はない。だからこの世界に元々あった名前が良さそうだと考えた。

「『魔導具製作士』はどうでしょうか? 魔道具の製作が得意なので、魔導具製作士というのは良いのではないかと思うのですが。どうでしょう?」

俺の提案をすぐに受け入れてくれて、『魔導具製作士ダレルト』と名乗ることになったのである。

それから、俺と『錬金棟(台所兼食堂付き)』で朝食を食べてから、俺と『王都の国王』と『魔導工房』の錬金術師おばちゃんの三人でこれからについて話し合うことになった。

『魔王軍』がこの国に侵略をしに来るまで後二ヶ月。それまでの期間の間に『魔族』からこの国を守る必要があるのである。その為には、この『魔導工房』を有効活用して戦力を強化する必要が出てくるのだ。

俺は、この『錬金棟(台所付)』の『魔道具作成室』にある【錬成台】を有効利用するために、【錬金BOX】の中にある素材を利用して色々な物を作りたいと思っている。そして【錬金BOX】の中のアイテムを使って、『回復薬(特級品)10個』や『回復薬中10本』『体力強化剤10本』『魔石10セット』『状態異常解消薬10本』『体力回復薬中10本』『体力強化剤中10本』『魔石の粉10袋』『魔力回復薬10本』『聖水の原液10本』『回復の魔導書』といったものを材料にして、様々な効果のあるポーション類を作るつもりである。そのレシピを考えようと俺は思っているのだ。

それと俺が持っている『聖具』の中で特に強い武器である『聖剣エクスカリバー』を鍛えるつもりなのだ。『勇者』しか扱えない最強の聖剣と言われているのだが、『錬金工房』ならなんとかできるのではないかという期待をしているのだ。ちなみにその材料である『賢者の鉱石』と『勇者の武具』の金属である『オリハルコン』のインゴットがこの部屋の中にある。この『王都』では、錬金用の工房は、城の中にあるのだ。その部屋には錬金するための『錬金箱』があり、その中には素材が入っているのである。

その部屋の中に入らせてもらったのだが、その素材を見て驚いた俺は【解析】して調べたところ、その正体を知ることができたのだった。それは、【賢者の石】【龍王の爪】【龍鱗の鎧】【賢者の布】などが入っていたのだ。俺はそれらを鑑定していく。その【賢者の石】というのは、錬金を行う上で、もっとも基本的な錬金の媒体になるものであるようだ。それこそ、【錬金術LV5】があれば簡単に作れる代物であるようだったが、俺の場合はこの【錬金術(錬金限定スキル)】のおかげで【錬金術(錬金限定で超絶熟練度の腕前)】というのが取得できている。

つまり【錬金術】の【錬金の匠】とかの上位版ともいえるものだと思う。それを取得したことにより、錬金関連のものが作るときだけ【錬金限定】だが【完全習得】したことになるのだ。この【錬金限定】がどういうものかというと――

通常の【鍛冶】と【細工】の【匠技】の場合だと【鍛金】と【彫金】と【裁縫】という具合に分かれている。しかし【錬金限定】の場合にはその全てが一つに統合される。ただそれだけのことなんだけどね。まぁそのおかげで俺は『万能錬金器具シリーズ』で錬金をすることができるというわけだ。そして俺の持つこの『万能調理道具セット』を使えば、料理を作ることだってできてしまうという優れものの調理器具たちでもあるのだった。もちろん俺が持つこれらの調理道具を使って、俺も料理を作ることが出来るようになっている。

そして俺が欲しいと願ったのが『伝説の武具シリーズ』と呼ばれるものだ。その中でも最強といわれている武具があるのだが、それがなんなのか俺は知らなかったのでそれを確かめたかった。その答えはこの『賢者の衣』、『竜帝の靴』、『聖銀の籠手』、『神龍の杖』であるらしい。

俺が、それらを見てみたら、それらの性能と使い方を瞬時に理解することができたのである。そしてその力を使うことが出来たのだった。その性能は、俺にとって嬉しいものだった。『錬金工房』と『錬金術工房』の両方にこの『錬金の工房』を設置したいと思いながらも、まずは先に俺自身が作るべきものがあることに気が付いたのだった。俺のこの世界における最初の作品である『魔導具工房セット』である。

俺はそう思ってから、俺は『勇者の武具の素材一式』を持って『錬金棟(厨房兼食堂)』に戻ったのだった。そして、俺はその素材を手に取り錬成を始めることにしたのである。

「お、おい、何しているんだよ?」

『勇者のおっさん』が話しかけてきたけど俺は無視して錬成作業を続けることにした。俺が集中して錬成を行いたいと思ったときに邪魔されるというのは気分が悪いし嫌な気持ちになってしまうのである。俺は無言のまま作業をし続ける。俺の意識はすでに『勇者のおっさん』の方には向いていない。集中力を研ぎ澄ませていく俺の手元からは青白い光が漏れ出し、錬金釜へと吸い込まれていった。そして俺が手をかざすと一瞬光り輝いた後に錬金釜から完成した品物が排出されていく。その品物を見た俺の目に飛び込んできたのはその形を見れば、誰もが納得するような名刀と呼ぶべきであろう。そう『妖刀村正』に負けず劣らずの素晴らしい出来だと感じたのだった。

「うわぁ~すごいですね! これってもしかして真樹様の手作りのものですか? すごく美しいですね! あ、でもなんかちょっと怖く感じるのですが、あははは」俺と同じような感想を『錬金のおっさん』は口にしたのだった。

この名刀は俺の自信作でもあった。そして『妖魔の森のダンジョン』の奥深くに存在するといわれる幻の『鬼丸国綱』よりも遥かに良い出来であると思っていた。俺にはその判断が出来るほどに、鑑定のレベルが高いのである。だからこの『勇者の剣』はかなりのレベルに達しているものだとわかる。

「『王都騎士団長様』よ。お前は、これを見てどう思う?」

俺がそう聞いたのだが、『錬金のおっちゃん』は少し考え込んでこう言ったのだった。

「そうじゃな、わしには何もわからん。この国の国宝とされているものには違いがないんじゃろうが。しかし、その作り手が、これだけの力を感じ取れるのであればその力の源が何かは分からないとしても、かなりの力を持つ剣であるということくらいはすぐにわかった」

そう言われてしまった俺はこの『勇者の剣』をこの国の宝として扱うように言っておく。それから俺は、この『錬金工房』を有効活用できるようにしたいと考えていた。そして俺が欲しいと思っているアイテムを作っていくことに決めたのであった。俺は『王都の国王』に頼み込んで【魔導工房】を二つ使わせてもらえないか聞くことにする。

そして『王都のおっさんのじいさん』こと、この世界の国王が許可を出したので、この王都で一番大きな建物『錬金棟』を魔道具工房として有効活用することにしたのである。ちなみに、俺が持っているアイテムの殆どは俺自身で錬成を行ったものではなくて人から譲り受けたものだった。だから自分でアイテムを作るのは実はこれが初めての経験ということになる。

だから、どんな効果を持ったものを錬成したらいいのかが分からなかったので俺は、自分のスキルを使ってどんなものを作れるのか試しながらやっていくことにして、早速【錬金BOX】の中にある素材を確認してみることにしたのだ。俺はその中から、まずは自分の身を守る武器が必要だと考えた。だから俺は、武器を作れないかと考えてみた。【錬金BOX】の中にある『魔獣の肉』と『魔導草』を取り出して確認する。

すると『聖魔剣エクスカリバー』が使えることが分かった。

エクスカリバーの剣技はあらゆる攻撃を打ち消すことができるのである。俺は、それを思い出して【錬金BOX】の中から素材をいくつかとって、それを確認する。その中に魔素がかなり多く含まれていた『聖魔鉱石』を見つけた俺はその素材を使って『聖槍デュランダル』を作る事にしたのである。その作り方を頭の中で思い描くと、エクスカリバーと同じ工程を行うだけであっという間に出来上がる。俺は『王都の騎士団長様』を呼び出してそれを渡してみると、騎士隊長の彼はその剣を軽く振るい、感触を確かめるようにして眺めるとすぐに腰に差したのである。

「この『聖魔鉱石』を使ったこの聖槍は、魔法や物理ダメージだけでなく全てのものを切り裂く力が備わっている。まさに聖槍という名にふさわしいものといえる。さすが、聖女が使っていた武器だけのことはあるようだ。まさか聖女本人ではない者がその聖剣と聖具を作り出すとはな」と騎士の彼も驚きのあまり俺を褒めちぎってきたのである。そして彼は俺に対して、「この剣が『勇者の武具』に匹敵するものかどうかまではわからないが、その実力だけは確かなものだ。それにこれは伝説に残る聖具そのものといっていい代物なのだからな。私もこれを使うことを許可しよう。その方が、我々にとっては得なはずだ。しかし本当に君はいったい何者なんだ? まさかね、こんなところで『王都の最高錬金士様』に出会えるなんて、そんなこと思ったこともなかったからね。それもその剣があの有名なエクスカリバーだというんだから驚いたのなんの!」と嬉しそうな顔をしていたのである。

それなら、もっと他の武器を使ってもいいのではないかと俺は考えたのだが、俺はあえて『聖女の指輪』を使うことにした。その装備の能力は【全能力向上(超)】【状態異常完全無効】【経験値10倍】というもので、俺としては、この『聖女の杖』がとても使いやすいと思うのだ。なぜならば【魔力制御】の能力を持っているからだ。しかも俺の持っている【全知眼】の【叡智の神の目】と併用すれば魔法の使い方も上手になるだろうという予想をしていたのである。それと俺が『勇者の防具』が欲しかったのだけども、【錬金術工房】の中にそれらしきものはなかったので、仕方なく【錬金術(錬金)】で作った【魔布のローブ】で代用しようと思ったのだ。

「あ、あのう~真樹様、この『勇者の服』を着てみませんか? これがあればきっとお強くなれますよ! ほら『聖剣』もあるんですから、やっぱりここはこの格好がふさわしいと思います。うん、間違いありません! 絶対に、似合いすぎです!」となぜか『錬金のおっさん』が興奮気味になってしまっていた。そんなわけで俺は今『錬金の騎士』と呼ばれている存在になっている。

この国では『聖女の鎧』を装備しているものが、女性だと聖女の戦士と呼ばれ、男だと聖騎士と呼ばれるらしい。つまり『錬金の騎士』は『錬金の女勇者』とか『錬金の聖女』と似たような名前になってしまう。しかし俺自身はこの名前が嫌だったので『錬金術の勇者』と名乗ることにする。そうすると『錬金の勇者』と呼ばれることになる。

この国には二つの騎士団がある。『錬金の騎士団』と、『錬金の王国騎士団』がある。この国は、昔から錬金術の国として有名であり『王都アルケミス』『錬金の都レキスト』、『錬金の王宮』などが有名な場所だった。その中でも、『レキエスト』、『錬金の王宮』、『レキシス』、『錬金の騎士団』の四つの騎士団がそれぞれ存在することで国を支えてきたといわれているのである。

そして俺は『錬金騎士団』に入団することにし、その団長のところまで案内してもらったのである。そこで俺が挨拶をしようとするとその前にいきなり頭を撫でられてしまっていた。

「う~む! 君の噂は、私の耳にまで届いているよ。『伝説の鍛冶師の弟子にして最高の職人。錬金の王とさえ呼ばれるほどの人物』と。どうだ、我が『錬金騎士団』に入ってくれないか?」といきなりスカウトされてしまった。そして俺は、特にこの国に用事がなかったこともあって入団することを決意した。そして『聖剣』を見せてほしいといわれたのである。なので、俺の作った『聖剣』を見せてあげることにしたのだった。

そして俺は『王都最高魔道具研究所』に通されて、『王都の国王』が俺のことを待っていると言われた。だから俺は、そこに向かいながら【アイテムボックス】の中から錬金釜を取りだして準備を始める。俺が、その部屋にたどり着き中に入るとそこには、この世界にいるはずのない『魔導人形機人族オートマロイド』が存在していた。そして俺に気づくなり、近づいてきたのである。

そして俺の前で片膝をついた。

「私はこの『王都魔道具研究都市国家 』に住まう住人のひとり。この国の管理をしているものです。真樹様はどうして、ここへ来られたのですか? 私で答えられる内容でしたらなんでもご質問ください」と言われてしまう。そしてその少女の姿を模した『魔導兵器のアンドロイド』に『勇者』のことを聞きたかったので尋ねてみるとそのことについての返答を返してくれたのである。それは俺にとってとても重要な情報を得ることが出来たのだった。俺はこの世界に転生してきてからまだそれほど時間が経っていないのだがそれでもかなり多くのことを経験することが出来ていたのである。

俺の『魔剣エクスカリバー』と『勇者の防具』を身に着けているこの国の『王女様』である彼女はこの『王都』を守れるだけの強い力が欲しいと思っていたそうだ。だから『勇者』の生まれ変わりが現れたことを知り、俺を自分の専属の『騎士』としてそばに置きたいと願ったそうである。だから俺は、『王都』に残ってもいいという事を伝える。

しかし俺は、『この国には何か悪い噂があることを思い出していた。それが何かという事までは覚えていないが。』

それから俺は『聖女』や、『勇者』、それに『錬金騎士』などについて色々と聞くことになった。しかしここで時間を使い過ぎてもいけなかったので『錬金棟』に戻り『王都の国王』との約束の時間までに作りたいものを作ってしまおうと考えていたのである。そしてその作業に没頭することになり、かなりの量の品物を作り上げることになってしまった。そのなかでも『聖女の指輪』と、その派生系にある指輪『女神の指輪』を作ったときにはさすがの『錬金のおっちゃん』もこの道具は一体どういう性能を持つアイテムなんだと言って、驚いていたのだ。『錬成箱』もかなりの大きさのものだったが、さらにそれを大きくしたような大きさだった。それを俺は一息つくために休憩しながら見ていた。

そして少しの間だがこの王都の街並みを見て回ったのである。やはり王城を中心として広がっているその町並みはかなりの広さがあった。そしてこの国をぐるりと囲っている壁もまたかなりの高さがあるのだ。そして『錬金の町』を歩いていくが、ここでも俺は様々なものを見つけることが出来る。例えば、この町には冒険者のギルドが存在しているのだが、そこで依頼を受けることができるようだ。しかしランク制度があり、依頼にも難易度が設定されておりそれによってその報酬が決まっているということらしい。ただ例外もあってSSS級の依頼については、指名制になるようであり、またA級の討伐依頼でも特別な条件をクリアした場合にのみ受けられることが決まっていて、それを受けると必ず達成しなければならないようだ。しかしそれ以外の場合は、依頼を達成できなくても問題がないようだ。

あとは、この町で商売をする商人などのための店も多くあった。そして俺は『錬金の騎士』の称号を得ているという事で『騎士団』の施設で、装備を整えることに決めるのであった。この『王都アルケミスト』には三つの大きな騎士団の本部があるそうで『錬金の騎士』『聖女騎士団』『聖女教会騎士』の三つである。その中で俺が所属していた騎士団が、『聖女騎士団』ということになる。ちなみにこの国の中で、聖剣、魔剣を持っているものは三人だけしかいないのだという。そして聖女は、剣ではなく魔法を使うらしく魔法剣を持っているそうだ。魔法剣士のようなものだろうか? 聖女は回復魔法のスペシャリストなのだという。俺は聖属性魔法が得意ではない。むしろ苦手といってもいいくらいだろう。

『聖剣エクスカリバー』の特殊能力で【浄化魔法】というものがあるがこれは回復系統の能力ではない。この【浄霊の剣】を使うときにその刀身を光らせることができるのは、浄化の力を使っているからだそうだ。つまりその力を利用して傷の治療をしたり、アンデッドモンスターを退治する能力があるという事になる。もちろん【錬金工房】の中に置いてある錬金用の釜で、ポーション類を作ることはできるがそれだって聖属性の効果はついておらず、あくまで錬金術の効果がつくだけだ。そして聖女はその能力を持っているのだそうで聖属性の能力を使って、傷ついた者を癒やすことも出来るのだという。それにしてもこの世界の聖女の装備している武器も気になる。【錬金工房】に作れたらいいんだけどな。それに聖女本人と会いたかったな。俺よりもずっと若いのに凄いと思うし、どんな女の子なのかも興味があるのだ。そんなことを考えていた。

そんなこんなで王都には、いろいろなものがあったのだ。武器屋、道具屋はもちろんのことで、アクセサリーの専門店もあったし、鍛冶屋なんかもあるのである。そんなことを思っていると【全知眼】によって調べるとどうも俺は錬金のスキルポイントを、かなり消費してしまっていたようである。しかもそのポイントがもう尽きようとしている。

俺は『錬金のおっさん』に相談することにした。錬金のスキルについてもっと知りたいという気持ちになっていたからだ。錬金系の武具に関しては『錬金の勇者』となったことで錬金をするための『錬金釜』を作ることが出来たが、『錬金の王杖』や、他の『聖具』と呼ばれるものは錬金することができないからだ。俺はそのことを話した後で、これからも錬金術に関する物を作成していきたいと考えている事を告げたのである。そして、俺のステータス画面を見てもらえばわかるとおり『錬金の王様』と言われるほどになっているが、この世界では、錬金のレベルが高ければ、それだけのものを錬金できると思っている者が多いようで、レベルの高い人は錬金術師と呼ばれるようになるらしい。俺は、【錬金術】のレベルが上がっているので錬金関連のアイテムが作れるようになった。

だからこの王都では『錬金の職人』として登録してもらって錬金の仕事を請け負うことになるのである。そんなわけで最初に作ったのはこの国で一番有名な『王都最高魔道具研究所』で俺が作った『賢者のローブ』や、『賢王の鎧』、『錬金の兜』を『錬金の工房』の中にセットしておくことにする。これらの装備一式を錬成すると自動的にその場所にセットされるようになっているから便利なものである。これで錬金に必要なものがすべて揃ったといえるだろう。俺は早速新しい『錬金室』を造り錬金の準備を行うことにしたのである。

まずは、【アイテムボックス】の中の素材を錬金するためである。そしてその素材を確認するが『聖獣の聖杯』『聖なる壺』『錬金の女神の像』と3つのレアリティ5に分類されるものがずらずらと揃っている。これなら問題ない。この部屋は、今錬金室と命名してあるが実は『錬金錬金棟』と名前を変更していた。『錬金の部屋』という呼び方もあるがこちらの方が格好よく感じるのだ。

この『王都最高魔道具研究所』の中には『王都の最高魔術師団』や、この国を治める最高責任者の『最高執政官会』、さらには王族の『最高女王』がいる建物にもなっている。なので当然『最高魔道具研究所』の建物自体も相当に大きなものになっている。

その建物の一階部分に俺が錬金に使う『作業室』や『鍛冶室』などのスペースが設けられている。二階部分が、『王都最高魔道具研究所 』となっている。俺の住む住居もこの建物の中にあって、最上階の一フロアを占めているのだが、この階だけでも俺の暮らすのには十分な広さだ。ちなみにこの建物はこの『王都最高魔道具研究都市国家』の中心でもあるので、ここにある施設を利用するためだけのために『王都最高の魔導列車 』の停車駅も設置されている。そのためここに来るためにはわざわざ別の駅から移動しないといけない仕組みになっていて、ここを目当てに来ようとするものはあまりいない。そもそも『王都最高魔道具研究都市国家』に訪れるような旅人自体それほど多くはいないのだ。そして、そのせいでここは『王都最難関ダンジョン 』の難易度を低く設定されてはいるが。そして、俺は今日はここで一日をすごすつもりである。俺は錬金をする前にお風呂に入ることにする。俺はこの国に来てからも色々と行動していたがその前に汗を流していなかった。その汚れを落としてさっぱりしてから俺は錬金をするために『作業室』に向かったのであった。

さっそく俺は錬金に取りかかることにした。今回俺は、『錬金の王錫 』を作りたいとおもっている。なぜ作りたいかと言うと、『聖女の盾 』と『女神の指輪 』を作るために、この二つのアイテムに錬金したいからだった。その錬金にはこの二つが必要になるということだ。ただ問題はどのくらいの量が必要になってくるかということだった。この二つの聖遺物を作り出すには最低でも30個程度の数が必要になると言われている。それというのも、聖女が持つ剣は聖女自身の力を使い攻撃するのだがその剣自体が膨大な力を消費するために大量のエネルギーを消費し続けるのだそうで、それを補うために『魔力回復ポーション』を使用するのだというのだ。この国の聖女が所持している武器である聖女剣エクスカリバーも『聖剣エクスカリバー』と同じ能力を持っていて剣そのものが『魔力吸収剣』という特性があるらしい。そのため聖女自身が、回復しなければならない状況になってしまう。それならば最初から回復効果を持つ『魔力回復ポーション』を所持していた方がいいということになる。また、もう一つの指輪は、魔法を発動させる時に必要となるものなのだが『女神の指輪 』という指輪を装備していると、魔法の威力があがるだけでなくその属性に対して、魔法が効かない敵に対しても効果があるという優れもののマジックアイテムだったりする。それを作るのに必要な数が10になるのだが、その個数の分を錬金しなくてはならないのだ。それなのに、まだ完成していなかった。なぜなら【全知眼】によって錬金ポイントを確認して、それが枯渇しかかっているのがわかったからである。そこで錬金する前の錬金ポイントをチェックしながら錬金することにする。ポイントの計算をしながらやっていたら思った以上に時間がかかってしまった。結局1日以上かかってしまうことになる。しかし何とか必要な数は確保することができたのである。ただ一つ問題があった。

「はぁはぁ、くぅ~錬金でこれだけ疲れるなんて」

俺は、かなり精神的に参ってしまって疲労困ぱいなのであった。俺が、こんな状態になっているのには、ちゃんとした理由がある。その理由とは俺の【アイテムボックス】の中にある素材の山が問題だった。それはあまりにも多すぎた。しかもレアリティが高い物ばかりでその価値を考えると、頭が痛くなるほどのものだった。この中には『賢王の王冠』というアーティファクトクラスの装備品もあったのだ。それを錬金するのにはかなりの苦労をしてしまった。特に俺には鑑定のスキルがあるので【錬金術師】が使える『分析』や『詳細解析』のスキルを使ってその能力を確かめていたのである。

その結果判明したことは、その『賢王の王冠』の能力がとんでもない事が発覚したのだった。『賢王の冠 』は『賢王の称号』を得るために必要なアイテムであることがわかったのである。

つまり、このアイテムを持っていると【賢者】になることができ、さらにレベルを20まで上げていくとその先の『賢者の塔』のマスターになれてしまうということも判明してしまった。この世界では【錬金術師】のレベルをMAXにして、その先に進まないと賢者になることはできないため賢者の証をもらった者は賢者と呼ばれているそうだ。ちなみに【錬金騎士】の称号を手に入れたものは『錬金の勇者』として『錬金術師』『賢者』になる資格が与えられるということになっているのだそうだ。だからこのアイテムは俺にとっても重要なものであることがわかる。そして俺が錬金ポイントを気にしていたのはこれを作っていたためだった。この世界に来るまではそんな事は考えてもいなかった。だから自分の錬金ポイントの残量を気にかけなかったのだ。しかし、今では違う。

そんなことを考えているとふと思ったことがあった。そういえば俺は、この世界で手に入れた【錬金工房】の中においてあるものがアイテムボックスの中に入っていたはずだ。俺はアイテムボックスの中を漁ると『賢者の石』を見つけたのである。

そのアイテムを見た時なぜかすごく懐かしい気持ちになってしまった。もしかすると俺の記憶の一部かもしれないがわからない。とりあえず今はそんなことを考えるのは後にして、【全知眼】を使って【賢者】について詳しく検索してみることにした。

「えぇーー!『賢王の石』が作れるだと!」

『賢王の王冠』が作れるんだから当然その『賢者の石』だって作れる可能性はある。【アイテムコレクター】の固有能力の中に【錬金術師】のレシピが載っていたという記憶も確かに残っているのだから。でも【アイテムコレクション】というユニークスキルは、俺以外の誰も持ってはいなかったはずだ。だから俺にしか使うことができないはずだったのに、この世界に来てしまった事で俺以外に使うことができる人間が現れるというのか?俺にできるはずのことを他の誰かが出来るようになるというのは正直複雑な心境だ。それにこの『賢者の石の作り方』が、この世界でも有効かどうかも不明だった。

『賢者の杖 』は、錬金で作れるから、もし『賢者の杖』を作って錬金で『賢王の杖 』を作る事ができるようなら作ってみることにする。そんなわけで俺が作るべき『賢王の冠』を作ることを優先させることにする。そのためにまずは、【アイテムコレクション】の中にある素材をすべて錬金することにしたのである。俺はまず錬成を行うことにする。まずは素材から【錬成】していかなければならないので、まずはその素材の確認をしていくことにする。その前に確認することがある。【錬金工房】の中に『賢王の盾』があることを思い出したのだ。そしてその盾に付与されている『賢王の腕輪 』と、『賢王の首飾り 』がなくなっていることに気付いた。これはおそらく錬金を行った結果、壊れてしまった可能性が高いと思われる。その『賢者の盾 』と『賢王の腕輪 』が錬金したアイテムの中に混じっていた。どうやらその2つのアイテムは、一緒に作った方がいいアイテムのような気がしてきた。

錬金に使うのであれば別に問題はないはずなのだが、何か不安になる。俺はその錬金の結果を見守ることに決める。錬金で作るアイテムがどのようなアイテムなのかが問題になってくる。その錬金に使用する素材は、『魔鉱石』だったのだけどこの錬金に必要なポイントはたったの10でしかなかった。それならば何の問題もないのですぐに作業を始める。俺の予想では『賢王の首飾り 』は『魔道戦士』になれるのではと考えていた。なぜなら、そのアイテムは、俺の想像通りの効果を発揮してくれるのならかなり有益なアイテムのはずであるからだ。

「やっぱり俺の思っていたとおりだ」

『賢王の首飾り 』を装備した途端に俺は魔道剣士に転職することができるようになっていた。そしてそのステータスを確認すると『賢王』のスキルを手に入れていたのである。この『賢王』のスキルの凄さを知った俺は驚愕してしまうのであった。

『賢王』

この称号を手にいれるとレベルが上がりやすくなるのである。またそのレベルの上限は、300ということになっていた。そしてなんとスキルの数が普通の『賢者』よりも遥かに多いという破格の能力だったのである。

『賢人 』

『賢者 』の上位職にあたるものでその職業につくことで全てのスキルを手に入れることができるというものらしい。ただしその分だけ取得できるスキルの種類は減っていくようだ。その能力も通常の【錬金術師】とそれほど変わらないというのだ。ただ錬金するアイテムの質が通常より上がるためその恩恵は受けられるようであった。その能力があまりにも反則級だった。

「なんだこのチート能力は! レベルが簡単に上がりすぎるじゃないか」

『賢者』とあまり大差がないように見えるが、『賢王』のメリットは経験値の獲得数に補正が働くということだった。この国の王様は、レベル上限は400あるということだ。しかもこの国には【勇者】もいる。『勇者』のレベルは200なので、そのレベルの差を考えても、そのレベルは簡単にあげれるというのだ。ただ『賢王』はすべてのジョブの最上位の職になっているため、全ての能力が高いレベルで習得できてしまうため成長率の上昇効果が大きく設定されている。それこそ俺の場合はレベルを上げると必要になるポイントも高くなるし獲得経験数値も上昇しないためそこまで早く強くなることは難しくなっているだろう。それを考えると俺の『賢王』の能力の恩恵を一番受けるのは間違いなく俺であると断言することが出来たのである。

「これがあればこの先の戦いを有利に進めることができるかもしれないぞ。それに俺が考えていた『賢者』と『賢王』の違いがようやくはっきりしたし、これで俺のやりたいと思っていた錬金に必要なものが揃った。後は錬金するだけだ」

俺は『賢者』になった時と同じように『賢者の王錫 』と『賢王の冠 』を作り上げることに成功したのである。ただ俺の想像では、俺の考えた『賢王の冠 』が完成するのではないかと思ってしまうのだが、それはまだわからないことである。とりあえず俺は完成した二つのアイテムに鑑定をかける。

「あれっ? おかしいぞ、この二つには俺が考えていた『賢王の王冠』と効果がまったく違うぞ。どうしてだ?」

そう、俺の作った『賢王の王冠 』には回復魔法が付与されていたが、俺の作った『賢者の王冠 』には魔法が込められていなかったのだ。しかも魔法を封じ込めるために使用する魔力が尋常じゃなかったのだった。この世界の『賢者の王冠』と、俺の『賢王の王冠』には大きな違いがあることが発覚することになるのだった。

『賢王の王冠 』

レア度S+

品質:SSSこのアイテムを装備時に【全魔法適正】を獲得する。

また【聖女】の祝福を受けることが出来るアイテムでもある。

:錬金で作れるアイテム(レアリティが高いものに限る)

『賢者の杖』

:レアリティA- 高品質 攻撃力+500 【魔導士】が使用可能

『賢者の腕輪 』『賢者の冠 』

『賢王の杖 』

:レアリティB

高品質 :レアリティC+ 【錬金術師】が使用可 レアリティは、【全武器適性】がS+でそれ以外は全て同じになっていたけど俺が思った以上に優秀な装備品に仕上がったようである。特に回復魔法を付与してくれたのはかなり助かることだった。【全知眼】の鑑定を使っても錬金レシピの中に【錬金術師】が使う回復系のスキルが記載されているものはなかったのである。俺のスキルの中にも回復魔法のスキルは存在しないから、【賢者】は錬金系に特化した職業であることだけは間違いないようだった。俺が、そんなことを考えていると【錬金工房】の中を覗き込んできた者がいた。

俺はすぐに誰なのかを理解して【錬金工房】の中を見られてしまった事と錬金していたことを謝罪して部屋に入ってもらって事情を説明した。その人はこの城の騎士団長を務める人で名前は『アネキウス』という人だったのである。

「なるほど、ダレルト様は、この国でも噂されていた通り『錬金の賢者 』の加護をお持ちでしたか」

俺はその言葉を聞いて驚いてしまう。そんな話は聞いたことがないからだ。俺はそんな事を考えているが、彼女は気にせず説明を続けてくる。

「私の見立てだと『賢者』の称号を手に入れた方は、必ず賢者の塔へと入塔しなければならない義務があるのです。その知識を独占するためというのが理由です。しかしあなた様は、『賢者』の称号を持っていても賢者の扉の先に行かれることを拒否されていましたね。その理由がわかりました」

そんな話をしている最中に『錬金工房』の扉が再び開き、この部屋に入ってくる者たちがいた。

「あっ! いたよ、こんなところにいたんだ。探したんだからね!」

そう言って飛びついてきた女の子に俺は思わず困惑する。

「えっと君は確か」

「私はあなたの婚約者だよ! 忘れちゃダメなんだから! それと『賢王』になっちゃったって本当?」

俺のことをキラキラした瞳でみつめてくるこの美少女は一体誰なのか俺はまったくわからなかったのである。そして俺はこの子のことを思い出すことが出来なかったのだった。

『賢王』になってしまったせいでこの子の名前を忘れてしまっていたのだけれどそれを思い出した俺はこの子に申し訳ないことをしたと思い謝罪した。

するとなぜか俺のことを見て涙を流しながら抱きついてきたので俺は困り果ててしまった。その様子を見ていたアネキスさんは呆れた表情を浮かべていた。そして、俺が『賢者』になった経緯について説明をしてくれたのである。俺はこの世界に来てしまった時から今までの出来事をすべて話すことにした。俺はこの世界で『賢者』として生活していたので【賢者】になったことによってレベルが上がりにくくなっていたのと、【全属性魔法】と【魔銃使い】以外の戦闘に必要なスキルが習得できなかったことも説明する。そして、俺がこの国に来た目的と【魔剣職人】である事も伝えることにする。俺は『賢王の冠』を作ってこの『賢王の腕輪 』を作ったことで【錬金工房】が手に入ったことや、それによって錬金できることを嬉しく思っていたことを彼女に伝えたのである。

俺の言葉を聞いたこの子は、少し驚いたような顔を見せながらも、自分の腕から腕輪を外してしまった。そしてその腕輪をじっくりと見はじめると急に大きな声を上げはじめた。

「やっぱり! この魔道具には私が欲しかったものが全部入っているわ! これは間違いなく本物よ。でもどうしたらいいのかしら。こんな貴重な魔道武具なんて手に入れられるわけないし、それに『賢王』になっているしどうやったら返せるかなぁ」

そんな独り言のようにつぶやいていたこの子が何を言っているのかよく分からなかったがどうやら俺が『賢王』になったことで『賢王』が持っているはずの魔道具や魔道武具などをこの子に譲ることが出来ていたようだ。ただ俺のアイテムボックスの中にはまだたくさんの『賢者の杖 』と『賢王の杖 』と『賢王の冠 』が収納されているままだった。俺はとりあえず俺の【無限アイテムボックス】の中身は見せるべきではないと判断したためこの場では【賢王の指輪】しか渡すことができないということを伝えてそのあとで【錬金工房】にある『賢者の王冠』を渡してほしいと頼んでみる。その言葉を待っていたかのように笑顔を見せた少女は、すぐにこの部屋の奥に向かって走っていくと、【賢者の王冠】を手に取って俺の元に戻って来たのである。

俺はそれを受け取ると早速錬金に取り掛かることにする。俺はまずこの二つのアイテムに魔力を注ぎ込み【錬金】を発動する。錬成陣が一瞬で展開されて光に包まれるとそこには【賢者の指輪】が完成してしまう。それを見たこの子と騎士団長は驚愕の顔をしていたのだった。

『賢者の杖 』

レア度A- 高品質 攻撃力+1000 魔力消費削減 レアリティAはSよりもさらに上に位置するものである。レアリティCはレアリティDとレアリティBの間になる。レアリティAの装備品が市場に出ることは滅多になく、また出るとすれば国家間の取り引きで取引されることが常である。そのため市場で流通すればそれ一つがとんでもない価格になるほどの価値を持つ。『賢者の王冠 』の能力は【聖女】の祝福を受けられることと、すべての魔法を使うことができる能力が備わっているものだったのである。ちなみに『賢王の冠 』の能力は回復系の魔法を使える能力だったのである。ただ回復魔法のレベルは、回復量に比例するらしくあまり役に立たない能力でもあった。それでも回復魔法が付与されているだけでもすごい能力であるといえるかもしれないが。

錬金が終わると錬金アイテムは消え去ってしまったのである。

「これがこのアイテムの効果になります。この効果は錬金できるものの中でも上位にあたるアイテムですね。おそらく【錬金工房】があれば錬金アイテムを作るときにも苦労することないと思います」

俺の言葉にこの女の子と騎士団長が錬金台の近くに駆け寄ってきたがそこで騎士団長の動きが固まってしまい、顔を強張らせていたのである。

「そっ、それは『賢王の錫杖 』ではありませんか!? 国宝級の魔導具ですよ。それもこの錬金台の素材はまさかオリハルコンですか? しかもこのアイテムは【全属性魔法適性】と【聖女】の祝福が付与されたものではないでしょうか?」

騎士団長が俺に尋ねてきたが俺にもその違いが良くわからなかったので俺は正直に伝えることにした。

ただ錬金したときに付与できたのがこの二つだけなのでそうなのではないかと思って錬金してみたが、やはり正解だったようである。そんな会話をしている中で、騎士団長の隣にいた少女がその話を聞き終わるとすぐに行動に移ってしまった。そしてその【錬金工房】からアイテムを取り出すと錬金を開始したのだ。ただそのアイテムの品質が恐ろしく高かった。俺が作った『賢者の王冠』と同等の品質のものが出来上がっていたのである。彼女はそのアイテムを大事そうに抱えると俺の元へやってきた。そして俺のことをキラキラした瞳でみつめてきたのだ。

「私の名前はアリシア=クレセントといいます。どうかこれから私の夫になっていただけませんか!」彼女はそう言うとそのアイテムを胸に抱いて恥ずかしそうに微笑んでいた。そんな状況を見ながら俺は困り果てたのだが彼女のことを思い出すことが出来ずに困り果てるしかなかったのである。

俺が返答に悩んでいるのを見ていた騎士団長がすぐに助け船を出してくれた。

「ダレルト様が『賢王』におなりになったのはわかりました。そしてあなた様はこの国の救世主になってくださった。その功績を讃えるためにも是非我が国へ来ていただきたいのです」

その言葉を聞いた俺は困惑してしまった。なぜならこの国は、今まで俺のことをずっと『魔族』だと言ってきた国なのだ。俺はそのことを思いだし、断ろうかと思っていたのである。

そんな俺の心を読んだように彼女は俺の手を握ってきたのである。

「大丈夫です。私たちのこの国を助けて下さったのならきっと『勇者様』は受け入れてくれています。それにあなたはもう既に『勇者』様と一緒にいた『魔剣使い』ではないんです。今からこの国のために力を貸して下さい。そして一緒にこの世界を平和にしましょう」

そんな言葉をかけられてしまえば俺は断ることも出来なかった。だからその国に行くしかないかと思いはじめていたのだ。そして彼女は、この世界では珍しい俺のような異世界転移してきた人物だと聞いて、俺はその人がどんな人なのか会ってみたいとも思っていたのである。俺と同じような人間が他にもいるのであれば俺はこの世界でも一人で寂しい思いをせずに済むだろうと思ったからである。

「わかりました。でもその国の名前を聞いてもいいですか」

「この国は、アルスレイナというのです。私の父は前国王の第三王子だったのよ」

その名前に俺は驚きを隠せなかった。俺が最初にいた国が、元俺の国だったということを聞かされたのである。俺は思わずその言葉を疑ったが、その少女の真剣な瞳を見れば本当なんだと感じざるを得なかった。

俺と彼女は見詰め合うような状態になってしまったのである。すると彼女が急に恥ずかしそうに頬を赤くしながら目をそらしてしまった。その瞬間に騎士団長が割って入ってきて、この場に流れていた甘ったるい空気を打ち消してくれたのである。

「申し訳ございません。陛下の正式な挨拶はまた後日にさせていただければと思います。ただ先程の『賢者の指輪』の対価と今回の報酬に関してはしっかりとさせて頂きたく存じ上げております。まずはこちらをお受け取りください」

そういうとこの国では金貨の代わりに使われる『大銀貨』と『銅貨』の入った小袋を渡されたので俺はそれを受け取る。この世界にやってくる時に持っていたアイテムの中に【収納】されているものがあるのでお金を使わない生活を送れている。しかし、せっかくお金があるのならば使おうと思う。俺は受け取った小銭をそのまま収納することにする。俺のアイテムボックスの中に入っているものは、この世界で流通している硬貨とは違うものが大量にある。そして、俺のアイテムボックスには俺が持っている通貨と、それ以外のこの世界の全ての通貨が入るようになっているらしいのである。これはこの世界にやってくる前に俺のスキルについて説明をされたときに説明されていた。そしてその話をしたときアネキスさんに呆れた表情で見られてしまった。どうやらこの世界で俺が知っている人は、誰もその事を教えていないようだ。そして俺はこの世界で使われている貨幣価値についても知らないのである。そして【魔剣職人】になってから俺の持つ武器がとんでもない代物ばかりだということで俺の実力も知れ渡っていた。それなのに未だに普通の魔道具すら造れないことを不思議がられていた。そのため俺に対する信頼度が低いので、俺に対して何かを言うときには確認をとる必要があるのだという。ただ、俺は『魔剣職人』として仕事をしたいと思っているのでそんなことでいちいち文句を言いたくはないのだが、ただその辺の常識的なことはきちんと教えてほしいと切実に思ったのである。俺の気持ちは誰にも通じなかったようで、その後俺の扱いがどうなっているのかの説明を受け、最後に【錬金工房】についての注意事項と錬金台を勝手に持っていかないで欲しいと言われてしまってこの国に来たら俺は錬金が出来ないのではと考えさせられていた。俺の考えが顔に出ていたのかアネキスさんに「そんな心配そうな顔をしないでいいのよ。ダレルトは特別な存在になっているんだからこの国の錬金台を使ってもらって構わないし、錬金工房に自由に出入りできるようにしておくわ。だからそんな不安がらないでね」と言われたが俺は素直に納得できず、【魔剣鍛冶】のスキルを持っている人間に作ってもらわないと俺の作った魔道武具の性能が落ちることを説明した。それでも俺の意見を受け入れてもらえず結局のところ俺は【魔剣職人】としてはこの国から出られないのである。

とりあえず俺が錬金出来ることが証明されたので、この国で使う魔道武器を作ってあげることにした。

「これくらいの大きさでいいか?」俺は【無限アイテムボックス】の中にあるミスリルとアダマンタイトとオリハルコンを取り出して錬金台の上に置く。俺の取り出した金属を見てこの子――アリシア=クレセントは固まってしまっている。それを見た騎士団長が慌てて動き出そうとするが俺はそれを手で制した。

「俺の持ってるアイテムの中にはこんなものしかないけど、これを素材にして作れるものならいくらでも作れるから安心してくれ」と俺が言うと彼女は嬉しそうに笑顔を見せた後に作業を始めようとしたのだが騎士団長が慌てて彼女に止めに入ったのである。

そして彼女はその魔石と金属を組み合わせていった。そして出来たものを【鑑定眼】で見てみるがそれは見たこともないものだった。その魔石は俺が作ったものとは全く違った形をしていた。俺がこの世界に召喚されたときに使われた台座に彫られている紋章のようなものと、この子の持っている指輪に彫られたマークが同じものであることがわかった。だからこの魔石と指輪がこの国のシンボルなのだと考える。

俺は【鑑定】の結果を彼女に告げようと思ったが、それよりも早く彼女はこの錬金アイテムを完成させていた。

魔道武具(高品質):攻撃力+500 品質ランクSSS- Sよりもさらに上の最高品質のアイテムだと思われる。素材に魔核を使った魔導兵器は【錬金】でも作ることが困難と言われている。【魔剣】クラスのアイテムになると作成するのは至難であり【錬金】の能力を持った者の中でも最高峰の腕前を持つ者でない限りは不可能だといわれている。ただしダレルトはその限りではない。

この魔導兵装が装備している盾は魔法攻撃から身を守れる効果を持っており魔法攻撃を完全に遮断してくれる。その効果は物理魔法問わない完全防性である。また魔力を注ぐことにより自動修復機能が付与されているため手入れの必要がない。

この剣は魔剣である。魔石を媒体として魔法を使うことにより魔法攻撃を無効化することができる。

「凄い! こんなすごいアイテムが出来るなんて」

「これでこの国は助かるかもしれない」

「これがあれば我が国を魔王の手先どもなんかに負けません!」

俺の前でアリシアさんと騎士の人たちがそんなやり取りをしていて俺は何が何やらと困惑するだけだった。俺は彼女達の興奮が収まるまで待っていたのだが話が進まなさそうだったので口を挟むことにする。

「えーっと、つまりどういうことだ? この国を助けるために俺はここに呼ばれているわけなのか?」

俺の言葉を聞いて目の前の少女の顔色が真っ青になってしまったので慌てる羽目になるのだが、それを助けてくれたのも彼女の隣の男性だった。

「失礼しました。まさかこの国に貴方のようなお方が来られるなど夢にも思わなかったものですから。改めてこのアルサラーム王国へお越しくださり感謝申し上げます」と騎士団長が言い、 それに釣られてか他のみんなも同じように頭を下げたのだ。それを見た俺は、どうしたら良いのかわからなくなってしまっていてオロオロしていた。そんな状況で騎士団長から助け舟を出されてしまい、「ダレルト様は我が国の危機を救った英雄なんです。この国を救いたまえ」と言われたので思わず了承してしまった。そんな俺を見ているとなんだか心の底で『勇者』と同じようなことをしているなと思ってしまう。そしてふと、自分の能力を確認することにした。

(俺は本当に異世界転移してきたのか確かめたいんだよな。だってこの世界ってゲームやラノベとかに出てくるような異世界っぽいんだよね。俺はその主人公ってことなのか?)

「あのぉ、すみません。俺のステータスってどうやって見ることが出来ますかね?」と俺は聞いてみた。

「「「はい、私が確認してまいります」」」

そういうと、三人の女性たちに両腕を抱え込まれてしまう。そのままどこかに連れ去られていく俺の姿を、この部屋の人達は黙って見送っていた。俺はその事に驚きながら彼女たちに連れられていったのである。

俺は今、城にある応接室に通されている。そこで何故か俺はこの国を救ってほしいとお願いされていた。そしてその話を聞いていた俺が、

「その話ちょっと待ってくれないかな。そもそもこの国はどこの国と戦っているんだい? それを知ってからじゃなきゃ俺もその戦いには参加したくないと思うんだ。それに、俺にはこの国の敵と戦うような実力は無いからその期待には答えられないかもしれないぞ。それと俺は君たちの国の事を全然知らない。俺が知りたいことは、まず俺のいた世界のことやこの世界のことと、俺がこの世界に飛ばされてきた意味を教えて欲しい」と言ったのだ。そう言ったときのこの少女の目つきが一瞬変わったように思えたのだが、気のせいであればいいのだがと俺は思ったのである。

「まずはこの国の歴史をお伝えいたします」とこの国の第二王女が俺に向かい話し始め、それを聞くことになったのである。

昔、この地に一つの国が栄えていました。

しかしその国にはとても優れた技術を持ち他国を侵略することを厭わない国がありました。そのため周辺諸国から恐れられ、戦争を仕掛けられることがよくあったそうです。

ある時、その国には一人の賢者がいたそうです。その者はとても優秀で賢明であったらしく多くの知識を持っていたため民からも慕われておりました。その者は自分が得た知識を国の繁栄のため役立てることが、国の未来を豊かにすると信じていたようで、賢者として国の礎となるべく様々な知識を与えていたそうなのです。しかし、賢者の知恵を欲しがったある者が彼を暗殺してしまい、そしてその者を妬んだ者たちが次々と手にかけていったそうなのです。それにより国は崩壊の一途を辿ることになるのです。

しかしそこに、とても美しい姫がおり、聡明で慈愛の心も持っていた彼女は、国民が不幸にならない方法を模索し続けていたのです。彼女は自ら国を出ることを決めました。それを聞いた王子は彼女を必死で説得しましたが聞く耳を持ってくれなかったのです。彼女は王子の説得を受け入てはおりませんでした。なぜなら彼女は知っていたからです。その国にはもはや希望がないということを、そして自分がいなくなったとしても何も変わることがないという事を理解してしまったが故に。だから、この国の未来を託したいと自分に好意を寄せてくれていた少年と婚約をしたそうです。この二人の恋物語を知る人々はこの二人が結ばれることを望み続けました。それは彼女が王になることよりも優先されたことだったからです。この国の人々の多くは貧しい生活を続けており、それを変えることが出来ないとわかっているからです。

しかし彼女は、自分一人では何も出来ないことを知り尽くしていました。だから自分の代わりになってくれる存在を探し続けたのでした。

彼女は自分が信頼を置く部下達の中から優秀な人選をしていきました。彼女は国を離れる前に信頼できる家臣を集めていたのですね。そして、彼女は自らの想いを伝えていたそうでございます。そして、彼らは彼女に従うことになります。

こうして彼女はこの国を旅立って行ったのでした。

彼女は一人、歩き続けるのです。

そんな時に偶然見つけた小さな村にたどり着いたのですが、そこはすでに廃村となっていたのです。彼女は村人がいないかを捜そうとしましたが誰もいなかったので彼女は諦めることにして次の街に向かおうと決めたときに、突然の雨に降られてしまうのです。そんな彼女に優しい声がかけられた。それがこの村の青年だったのです。

この村は、もともと豊かな村ではなかったらしい。

この村の近くには豊富な水源があり農業もそれなりに発展しており裕福な暮らしをしていた。しかしこの国に攻め込んできた隣国によって攻め込まれたのが数年前のことだった。この村の住人は皆、戦うことなく逃げ出したのだと。そして残された人たちで力を合わせて何とか暮らしていたが、作物を育てる環境になかったため生活が苦しくなり、この土地を捨てる事を決めたのだという。

この国はもう終わりだ。誰もがそんなふうに思っていたが、それを口に出すものはいなかった。自分たちが生き延びるためこの国を見捨てることに決めたのに自分たちの行いに責任を持つことが出来ず、そんな自分達に嫌気がさしていたのである。そんな中で彼女はこの村にたどり着くことができたのだが、この国で生きて行く術を持ち合わせていなかったので、せめてもと思ったのだろう。この国を救える人物を見つけ出して託したいと思ったのである。そして彼女はその思いが強すぎて【鑑定】の能力が使える人を探そうとしたのだが【鑑定】の能力を持っている者を見つけることは出来なかったのである。だから彼女は諦めることに決め、最後の手段として【鑑定】が出来る人物がいる国を探して旅をすることを決意するのだった。そして彼女はこの国の現状を知り、それを変えなければ国そのものがなくなってしまうと思った。だからこそ彼女は国を救うことが出来る人材を探すために、そして自分を慕ってくれていた者達の期待に応えるべく国に戻ることを決めたのだった。

俺はアリシア=クレセントさんに聞いた話は嘘ではないと感じることができた。この世界に召喚されてすぐに俺達は、俺が【鑑定】能力持ちだと言うことにされたのだ。それは、俺達がこの国の救世主であり、そして召喚されたことが俺がこの国の人間ではない証明でもあった。つまり、あの国の奴らが、召喚された人間が俺の他にもいたことを隠している可能性は充分にあり得るのだ。俺はそう考え始めていた。

(俺以外にもこの世界に飛ばされた者が存在するのか、もしくは俺以外にこの世界に来ている奴が存在している可能性があるな)

そんなことを考えながらも俺は彼女の話を信じることにした。

「わかったよ。そこまで事情を聞いてしまった以上、放っておくわけにもいかないし、俺は君たちがこの国を救おうとすることに協力することにする。それにこの世界についてもいろいろ知っておきたいことがあるから」

「本当ですか!」アリシアさんが喜びの声をあげ、 それを聞いていた周りの人たちが安堵の表情を浮かべていたが俺としては、この世界についての情報を得ることが一番の目的だったので素直には喜べなかったりする。俺の目的はこの世界では勇者と呼ばれて崇められているであろう『元の世界』にいるはずの親友にもう一度会いたかったからなのだ。

俺は今、騎士団の訓練場に連れて来られていた。

なぜ訓練所に来たかというと俺はこの国を救って欲しいと言われてはいたものの具体的な内容を聞かされていなかったので、とりあえず騎士達の戦闘を見てどんなことをやればいいのかを確認しようとおもっていたのだ。

俺の隣には騎士団長のセドリック=エルミナーゼと名乗った女性がいて、その隣には先ほどアリシア姫の護衛をしているところを見せてくれた女性たちのうちの一人が一緒にいる。

「えーっと、俺はこの国の騎士がどれくらい強いのかを確認したかったんだけど。それに、俺には剣とか弓なんて扱えないし無理だよ」

「そんなことはないぞダレルト殿」と横にいた女性から言われてしまうのだが正直なところそんなこと言われても信じられないのですがという顔をしていると

「ダレルト様のスキルである魔道具作成はあらゆる武具を作ることができるんです!それなら大丈夫ですよ」と笑顔で言う。

その言葉を受けて思わず苦笑いをしてしまった。だってそうじゃないだろうか? 自分の作るものがこの世界の人たちの使う物より高性能なものになるはずがないのだから、これは俺の能力を試されるんじゃないかと不安になってしまう。そう思ってるとまた、俺のことを見透かされたような目をした騎士団長が話しかけてくる。

「私はダレルト殿の強さを疑ってなどおらん。貴殿には是非とも我らの稽古相手になってもらいたいと思っておる。そして私自身がどれだけ鍛え上げられたのか確かめさせて欲しいと思っておる。それと私の方からは、この国の騎士団の団長として、ダレルト殿には我が国を救いし勇者としてこの国を救っていただきたいと願っています。そのために全力を尽くしますのでどうぞよろしくお願いいたします」と言ってくるのである。

この人の実力を見ることが出来ればある程度の強さの目安を知ることも出来るだろうと俺の方でも考えていたので

「わかりました。それで俺が勝ってしまった場合は、俺に国を救うよう求めないでくださいね。それとあなた方の実力が俺よりも上回っていると判断した時は国を救うための協力も辞めさせて頂きます」

「そう言っていただけるとこちらとしても嬉しい限りです」と満面の笑みを浮かべながら握手を求められるので俺も応えるようにして握り返した。

すると周りで話を見ていた人たちが集まってきた。その人たちはみんな真剣そうな目をしながら

「団長があのように笑っていらっしゃるところを見たことがありません」「ああいう風に笑う人じゃ無かったから驚きました。あんなに楽しそうに笑ってらしゃる姿を見れたのは初めてです」とざわついているので、きっとこの人は今まであまりいい扱いを受けていなかったんだろうと思いつつもこの人にそんな扱いをした人たちを少し羨ましく思ってしまうのであった。そう思いながら 俺は【収納】からある武器を取り出したのであった。それは木刀だ。それも【錬成】で創り出したものだった。

俺はこの国の人間たちに見せ付けるようにそれを構える。そして

「この国を救う気がないのならばここから出て行けばいいだけの話です。しかしそれでも、貴方たちは国を救った英雄になれますから問題はないと思いますけどね。そうでしょう?騎士さんたち?」と挑発する様に言うと この国に来て一番大きな声が上がった。

「ふざけんな!俺たちはこの国の民を守るために戦うのだからな。そんなことで逃げるもんかよ!」

そんな言葉を俺に向かって言って来たので、それに応えようとしたところで一人の男が前に出てきて叫ぶ。そして俺の事を睨んできた。

俺はこいつがこの国の英雄と呼ばれている存在だということをステータスを確認するまでもなく、雰囲気で理解することができた。その男は金色の鎧を着ており、腰に差していた大剣を手に取る。その剣もまた【錬金】で作ったものである。そしてそいつは、名乗りを上げた。

この国の騎士団をまとめる隊長のガラードという男だそうだ。そして俺に名乗ってくる。

俺は自分の名前を言わず適当に名前を付けて

「おい、そこの男、お前の名前を聞いてやるよ」と挑発するように話す。するとこの国で一番強いと言われているガラードは怒って怒鳴るかのように俺の名前を叫んできたのだった。

そしてその光景を見ていた者たちはそのやり取りをみて

「さすが勇者さまですね」「まさか本当に勇者様なのですか!?」

と俺のことを信じ始めてくれるようになった。そんな空気に気づいたガラードもさっきの怒りが冷めてきたようで冷静さを取り戻したようだ。しかし彼はそんなことは気にせずに俺の事をじっと見つめてから何かを考え込んでいるようだったが、その視線はやがて、この国の未来を見据えているかのような力強いものになっていた。

「確かにお前はただの子供なんかではないようだな。お前にはそれだけの覚悟はあるのか。そしてお前は国を救うために戦えるのか」

俺はそれに応えてこう言った。

「俺が国のために戦うのは自分の為さ。別にあんた達の為に働く義理は無いし俺にとって大事なものは元の世界にもあるからさ。俺に国を救って欲しいというなら俺に見返りを寄越せ。それが出来なければ俺はこの国から出る。この国は俺を必要としていない。俺の力は必要とされている奴が使って初めて意味があるものだからな」と。

それを聞いたガラードは一瞬悲しそうな顔になりながらも

「わかった。それが君の望みなんだな。だがこの国はこのまま滅びを待つつもりも無い。そこで君に聞きたいことがある。それは『元の世界』にいる友人を探せたりするのかい?」

「出来るよ。【鑑定】の能力を使えばな。それがどうかしたのか?」

「君の友人を我々に紹介して欲しい。そしてもし、君の友人を見つけ出すことができたら、その時は必ずこの国に君を招き入れることを約束しよう。そして君は、この国のために力を貸してくれ。その代わりと言っては何だがこの国の最高機密である魔道具について教えることにしよう。それで納得できるかな」

「まあ、それくらいなら構わない。でも俺の力が及ばなければ、この国がどんなふうになっても知らんぞ。俺にはこの国を助ける理由なんて無いんだからな」と。そう答えると「ありがとう。感謝します。ダレルト様」といって深々と頭を下げられたので俺の方としても何だかくすぐったくなってきてしまった。そして 俺は早速この国の中で【鑑定】の使える人物を探してみる。そしてその人物は直ぐに見つけることができた。

(おっとこれはこれは)その人物の【職業】を見て思わず苦笑いしてしまう。

(俺と同じ無職だったからだ)

俺とガナードは同じ世界から飛ばされていたのだった。

(なんという偶然だよ)

俺はこの人物に会うために訓練場から立ち去ることにする。

(それにしても、まさかこの世界に来ているなんてな)と感慨深く思いながらも俺はその場から去っていった。

俺は今、訓練場を出てからある場所に向かおうとしていた。それはこの世界に来る前に住んでいた世界に戻る方法を探しにいくためでもあるがまずは、この国で俺が生きていくための居場所を手に入れる為にこの世界のことを知る必要があると考えての行動である。

そう考えながら歩いていると一つの屋敷が目に入ってきた。そして俺はそこにいる人物のことを思い出していた。

「この国の宰相をしている『アルヴィン』か」そう俺はその人物が今いるであろうと思われる屋敷の前にたどり着くとその建物の中に入る。その建物の中には誰もいなかったので俺は、屋敷の中に足を踏み入れて辺りを調べ始めた。すると、俺を歓迎するかのように机の上には資料らしきものが散らばっていた。俺はそれを見て興味が湧いたのでそれらを一つ一つ調べて行くと そこにはこの世界で確認されている種族についての情報がまとめられていたのである。俺はその中の気になる項目を見つけて読み進めていくことにした。その情報は、今まで聞いたこともなかったような事が書かれているのである。

まずは人間族と呼ばれる人々の特徴について書かれていた。人間族は、他の亜人種に比べても魔力値が高くて身体能力も高いが寿命が短く、平均年齢は30代半ばである。特徴としては他の亜人種と比べると魔法が得意なのが特徴であり。またその技術力は他種族に比べると突出しており。魔導具の作成や、錬金術や魔術の研究なども進んでいるらしいのだ。その為なのか人間族はこの大陸で最大勢力を誇っているのだというのだ。そんな内容を読み終えた後、更に詳しく書かれている書物を読んでみるとこの大陸に存在している魔物の生息地について記載されていたのである。そのページには、

「この世界の全ての生き物にはランクというものが存在する。この世界のほとんどの者は生まれた時はレベル1でこの世界に順応して成長すればするほど、そのステータスの数値が上がるのだが、ごく稀にその上限を超えて成長する個体も存在するのである。その者らは例外なくSランク以上の魔物を単独で撃破可能な戦闘能力を保有している。そしてこの大陸に現存している最強の生物とはドラゴン種である。この竜種を討伐するには最低でもBランク冒険者のパーティー5人が組むことでやっと倒せる程である。つまりこの世界に生存しているSランクの冒険者が討伐できるような強さの敵は存在してはいないということである。」

という内容が書かれていて俺の予想は当たっていた。どうもこの世界の住人の強さというのは、地球にいた時の人間の平均値を基準に考えて作られているような気がしてならなかった。そしてそんな考察を終えた後に俺は次に目を通したのはエルフの生態についての研究の文献であった。その書物によると、

「この世界で最も優れた存在として語り継がれてきた種族の名がエルフであった。その理由としては、彼らは自然を敬う気持ちが強くその能力に優れていたためであると言われている。そのためなのか彼らが住む地域は緑豊かで動物も植物も豊かな環境で暮らしていたという記録が残されているのである。しかし、彼らが住んでいた地域と現在の状況は全く違っているとも言われているのが、彼らの住んでいた場所は現在では魔の森と呼ばれており。そこには数多くの魔物が生息するようになり。森の外に住処を求めるようになったという歴史があるのである。その為なのか、現在は彼らが暮らしている地域に人間は立ち入ることができないとされているのが現状なのである。」という感じで書かれていたので俺は、この世界でもやはり人間が生態系の頂点になっているのだろうと感じることが出来た。そんな風に考えていた俺がこの世界の人間族の情報を頭に入れ終わった頃だった。

突然目の前の空間に扉のようなものが現れたのだった。そしてその中から誰かが出てきた。そしてその姿を見て俺は少し驚く。出てきた人物は女の子だったのである。しかもかなりの美人だったのである。歳は俺より下だと思われがちだ。しかしその実俺よりも2つか3つほど上だろう。背が160センチほどでスラリと細い体型で黒髪ロングヘアーが特徴の子で、顔はかなり整っており、肌は雪のように白く美しい容姿をしておりとても綺麗な人だった。

そんな彼女は俺の存在に気づいて

「あら?こんなところに人がいるわね。私以外にはここにくる人もいないはずなのに、いったいどこから来たのかしら?もしかしたら貴方が異世界の勇者さまかしら?」と聞いてきた。

それを聞いた俺は驚いて

「勇者だって?どうしてわかった?」と訪ねる。「えっと貴方が私の【鑑定眼】で見れないように細工されたスキルを持っているのは分かるからです。そんなことができるのは特別な存在だけだと思いますし。それに先ほどの団長が貴方のことを勇者様と呼んでいたところを聞いていましたからね」と答えたのだった。

(へー。そういうことだったのか。じゃあ俺のことを調べることが出来るんだな)と思いつつ俺は

「ああそういえばそうだったな確かに」と答えると俺は彼女に話しかけることにした。そして俺は彼女に頼みごとをしてみる事にした。それは彼女が持っていたスキルを使って欲しいと思ったからである。それは【鑑定】である。【鑑定】は相手のステータスを数値化することが出来てそれを見ることができるのだ。そして彼女のステータスを確認した結果がこれだったのである。

「なるほど。なるほど。そうですか分かりました。では、この私が貴方のことを教えましょう」と言ってきたのである。それを聞いて俺はとても驚いたのだった。まさか自分のステータスがこの少女によって全て暴かれてしまうのではないかと感じたからだ。

そしてその考えが的中した。というのも彼女は俺に質問をしてきて俺のことがバレてしまったのだ。その結果、俺はこの国で一番権力のある人物の前で俺の能力を全て知られることになってしまったのである。俺は焦って冷や汗を流していたがなんとかその場を取り繕うことに成功するのであった。

そしてそれから数分が経ち。お互いの名前を名乗り合うと俺達はお茶を飲みながら会話を始める。その時にこの世界にはレベルの概念が無いということを知った。それと彼女の名前はユイと言うらしく。俺と同じ日本からの転移者であり、彼女もまた俺と同じように『無職のおっさん』にされていたらしい。俺はそのことを聞いたときに、同じ境遇だったからだろうか。妙に親近感を覚えるのだった。俺は彼女に色々と話をしていくと俺は、元の世界に帰りたいと思っていることと、そのためにこの世界の情報を知りたいから色々なことを知りたいと思っていることを伝えた。

それを聞いた俺はこの世界には『冒険者ギルド』とやらが存在しており、そこにはこの国の宰相を務めているアルヴィンが所属しているらしいのでそこで仕事を斡旋してもらうことをおすすめされたことを話してくれるのである。

それを聞くと同時に俺の中では、この世界で生活をするために金が必要だと感じていたので早速その場所に行くことにするのだった。

俺とユイと名乗った美少女の二人は、訓練場を出ると『冒険者ギルド』と書いてある建物にやってきた。

その建物の中に入ると受付らしき所に並んでいてそこで、冒険者の登録が出来るようだったので俺とユイはその窓口に向かっていくとそこで身分証明のカードを発行してもらった。このカードの使い方は簡単でカードを受付の女性に見せれば俺達二人分のカードを作ってくれるそうだ。そしてそのカードは特殊なもので偽造することができないらしい。その話を聞きながら俺は、

(この国には冒険者なんてものがあるんだな。俺には関係ないと思っていたんだけども)と俺は考える。俺はとりあえず、ここで冒険者をするかどうかは一旦保留にして今は生活基盤を整えるために、この国に存在しているお金を稼ぐ手段を探さないといけないと考えた。そして俺とユイの二人で、依頼掲示板の前に立つとそこに貼られている張り紙を見てみる。その瞬間だった。ユイの顔色がみるみる青くなっていくのである。どうやら俺には見せないでくれと言っていたので俺はそれを了承して後ろに控えていた。するとユイの方は俺の方を振り向いて俺の服の裾を引っ張ってきた。なので俺の方から声をかけることにした。すると、俺の方を見つめてきた。その目は涙で潤んでおり。まるで子猫のような可愛さを醸し出していた。俺は思わずその顔に見惚れてしまっており固まってしまっていた。そんな俺の様子に気づいたユイは、頬を赤く染めて、

「もう!!そんなに見つめられたらいかが思うじゃない」と照れながら言うと再び目を背けてしまい、顔を赤面させてモジモジとし始めた。その行動を見て俺の中で理性が崩壊しそうになるのだが必死に抑え込んだ。

(なんだこれ!?可愛いすぎだろ)と思いながらも、平常心を装うのを忘れずにいるのである。そんなやり取りをしているうちにようやくユイも落ち着いてきていたのだが、今度は恥ずかしさがこみ上げてきたのか顔をうつむかせるようになっていた。それを見た俺はユイの肩を抱き寄せてこう言ってみた。

俺はその言葉が気になったので聞いてみる事にした。なぜなら俺達のレベルは表示されないようになっているみたいだしそもそもこのステータス値がどれほどの物かも確認していない状態なのでどの程度の強さなのかが把握できていなかったのだ。しかし、彼女は自分のステータスを見せることは嫌がっていた。だから俺はこの話題に触るのはやめようと決めた。しかしそんなことを思ってもすぐに別の興味が出て来たのでつい質問してしまったのだ。

「なぁ、この世界で強さの基準は何なんだろうな?例えば俺が戦った相手の強さを君が倒したらどんな風に判断できるのかな?それとステータスの数値で見ることが出来ないってことはこの世界はレベルや能力値が存在しないということなのかな?だとしたら俺の強さをこの世界の人は分からないはずだけど」そんな質問を俺はユイに対してぶつけてみることにした。

そしてそんな俺の言葉を聞いた後に、 ユイはこの世界における俺の実力が分かったのか目を大きく開いて驚いた表情をしたあと俺の目を見つめてきたのだった。そしてその後ユイは自分のスキル【能力鑑定眼】を起動させると目の前にいる男の正体が、レベル1の『魔導師見習い

無職 レベル:1

HP 100/100 MP 200/200 攻撃力:50

魔法力100 防御力:30魔法耐性:60

敏捷性:45

幸運度:50 固有能力 無 称号 勇者の弟子 能力 火属性魔法2 水属性魔法4 土魔法2 光魔法2 闇属性魔法3 聖剣ゼフブライン 加護 精霊神の寵愛(全能力+1000)』と俺の称号とステータスの詳細を教えてくれたのである。そして俺は自分のステータスを見てみるとそこには『職業』『レベル無し』『能力数値』が表示されており俺は驚きのあまり思考を停止させることになった。

(あれっ!?これはどういうことだ?)と俺は心のなかで呟いたのだ。なぜならばこの世界の人間の平均的な能力を優に越えてしまっている数字だったからだ。そして俺は改めて自分の体の中に流れている血液に神経を通すようなイメージをする。すると俺の中にある不思議な力の源を感じることができるようになるのだった。

(やっぱりこの体の中を流れる血には、この世界に来る前の時よりも力が満ち溢れているということが分かる。おそらくだけど、異世界に召喚された際に何らかの変化が体に起きていてその影響があるんだと思う。そしてこの世界に来なければ俺もこの力は手に入らなかったわけだな。それにしてもこの【鑑定眼】とかいうので調べる事ができるスキルはチート級の能力だと思う。しかし、なぜだろう。なんか納得できないんだよな。でもまあとりあえずこの国で生活をするためにもお金が必要みたいなんだよね。というかこの国の経済状況をなんとかしないと、もしかしたら俺がこの世界で生きていくこと自体が困難になる可能性も高いし、まずは俺自身が強くなることが先決かもしれないしな。うん。それにレベルを上げていけばいつか強くなれると信じたい。とりあえずこの世界で生きていこうと思ったら何かしらのお金は必要になってくると思うし、俺にはスキルを作れるだけの魔力がないんだからこの世界で生き残るためには、自分でお金を稼ぐ方法を見つけなくちゃいけないよな。うん。そうなると、冒険者になるしか無いだろう。だってそれ以外で、生きる術が見つからないもん。俺にだって元の世界での生活はあったのに、それなのに急に呼び出されたんで元の世界に帰る方法が見つかるまでの間は異世界生活を楽しんでも良いのではと思ったのだ。というより楽しまないと損だと思い始めていた。だから冒険者として生活するしかないんだ。よしそう決めた)と思い至った俺は早速、ギルドの職員に話を聞きにいくことにするのだった。そして俺達は、職員から『冒険者』についての説明を受けたのである。

ギルドとは冒険者のために設立された組織であること、ギルドに登録すればギルドが管理してくれている依頼の斡旋を優先的に受けることができることなどを説明してもらったのである。それを聞いた俺達は早速、登録するために窓口に向かうのであった。そして俺達が窓口までやってきたとき、ちょうど俺達と同年代くらいの冒険者風の男性二人組みの会話が聞こえてくるのである。その二人は『俺達と一緒に冒険者をしようぜ』的な話をしていたのだ。その二人の話を横耳で聞いていた俺は、その二人に話しかけて仲間に加えてもらうように話をしてみようと考える。そこで俺はユイの方に視線を向ける。そして俺は彼女に話を切り出すタイミングを伺ってもらうことにしたのだ。そしてそのユイのアイコンタクトに気付いた俺は彼女に向かって小さく合図を送るのである。そしてそれを確認したユイは俺の方に顔を向けたあとに、俺に向かってコクリと頭を縦に振ると一歩前に踏み出した。それを見た俺は彼女に続いて受付のお姉さんに声をかけることにした。そして、俺達はその二人組の男性たちにギルドでの登録をしたくて声をかけたところあっさりと許可が下りたのである。それどころかその人達は俺たちにギルドで仕事を斡旋して欲しいと言ってきた。どうやらこのギルドに所属している『冒険者』は依頼斡旋を仕事にしている人が大半でこの国の依頼を俺達に斡旋してもらおうと考えているらしいのだ。俺はそれを快諾すると同時にその人たちから、依頼を斡旋する上でのルールなどを詳しく説明された。そこで俺とユイはその『冒険者ギルド』とやらの依頼を受けるための受付嬢と登録するためにカウンターに向かい手続きを始めたのである。そして俺は受付の女性から依頼書を見せられて『どれがよろしいですか?』と聞いてきたので俺とユイはその依頼の中から一つを選んで受付に提出する。ちなみにその時に、ユイの方にも受付の女性の方が話し掛けていたのは俺と同じ日本人であるという理由からなのだろうか?そのユイの方はというと。その女性は、ユイに対して冒険者になるための基礎講座を受けないか?などと提案してきた。そしてユイは即断で俺に相談してくると俺の意見としては別に問題はないということで了承した。それからその講習が行われる場所に向かったのだ。俺はこの国で生活していくために必要な知識を少しでも得ておきたかったから。それ故に俺も講習を受けておくことにしたのだ。そして、その講師としてこの講習を行っているのは、ユイの師匠である女性で名をラリアといった。その人は俺に自己紹介をした後に講習を開始した。そしてその講義の中でユイは、ラリアさんが言うにはまだ駆け出しの冒険者で、冒険者の等級で言うならばDランクらしいのだが。彼女は俺に対して、

「貴方は私達の予想を超える実力を秘めているみたいね。この国の一般的な『魔獣』と呼ばれるモンスターは大体倒すことが出来るでしょうし、貴方は私の弟子であるユイに剣術を教えてほしいと思っているわ」と俺に言ってきた。なので俺もそれを聞いて、その頼みを聞くことに決める。

そしてその後、俺はユイに剣を教えることになるのだが、ユイには少し特殊な能力が備わっていた。その能力はユイ自身には見えておらずその事実を知ることになったのは俺がユイの能力を調べるための鑑定眼のスキルを使用した時だった。そしてその鑑定の結果、ユイはレベルを上げることで新しい固有能力を得られる体質なのだが。その能力というのは、『精霊神の寵愛(全能力+2000)』『能力鑑定眼』『精霊王の庇護』などがあったのである。俺はそのことを聞いて驚きのあまりに呆然としたのだった。なぜなら、俺の場合は『勇者の勇者』であるせいか『無職』のレベルが1から上昇することはなかったのだ。だから俺は、これから『勇者』の職業レベルを上げていく必要がある。

俺は今この世界においての常識を知らないので色々と聞きたいことが出てきた。

なので俺はまず、

「この世界の貨幣制度とかを教えてくれませんかね?」と、俺が尋ねるとその質問に対して彼女は丁寧に説明してくれた。

それによるとこの国の硬貨は、鉄貨、銀貨、金貨、白金、魔石という順番になっていくそうだ。

そして俺はその情報を聞いた後でユイに、俺が持つこの国の『通貨価値』のおおよそがどの程度なのかを尋ねたのだった。そしてその結果、銅貨一枚が100円の価値があるということを知った。それを知った俺は思ったのだ。俺達の世界の日本の物価で換算した場合のおおよその数字を。

そして俺がこの世界に来た時点で持っているお金の『価値基準』が分かったところでユイに俺はお金を渡そうとしたがユイは俺のことを心配してなのか受け取ろうとしなかったのだった。しかし俺としても何もお礼をしないままこの城で過ごすということは流石に耐えられなさそうだったので、 俺は彼女の気持ちに感謝しながら何かしらの形で『恩返し』をすることを決意するのであった。そしてそんなやり取りを終えたあとで俺と彼女は一緒に冒険者になるために、依頼を受けるためにある建物まで向かっている最中だ。その目的地の場所はこの城の門から出て歩いて5分ほどのところにある小さな小屋であり、そこに俺達は来ていた。

その場所は、ユイの『冒険者としての先生』の師匠にあたる女性が働いている職場でもある『魔導士ギルド本部』の『見習い魔法使い』たちが、魔法の練習をするためだけに使用している練習場だそうだ。

そして俺達は『魔法基礎』の初級クラスの講習会に参加させてもらっていた。ちなみに今回の受講者は、俺とユイだけしかいないので二人っきりの貸切状態になっていたのである。まあそれは良いとして、その講習内容について説明するとまず最初にこの世界には五つの属性が存在するという。その属性は火、水、土、風、光の属性があり。そして、それぞれの属性の適性を持っているものは火属性であれば火の魔法適正を持ち。水属性であれば水の魔法適性を持ち。土属性なら大地属性の魔力適正を持ち。そして、風であれば空気の圧縮を魔力で行えるようになり。光は回復や支援に特化した魔法を習得することができるのだそうだ。その話をした後で実際にその魔力操作の仕方などを俺達に向けて実践してくれたのである。

そして、その実演が終わった後で俺はこの国で使われている『貨幣価値』(主に使われている単位は、銅、錫、鉛などの鉱物の金属の単位である。そしてこの世界でのお金の単位は、『アネ』という。

つまり銅貨一枚=一アネー 銀貨=百アネー 金貨 =千アネー 白金 →万アネーとなるようだ。ちなみに、この世界では基本的に、物を買う場合にはその物の重さに応じて取引されるとのことだ。だから買い物に行く場合はお金さえ持っていればなんとかなるらしいのだ。ちなみに、俺はラニアさんの店で服を買った後にすぐに、アイテムボックスの中に入れてあった。

俺達は、この講習を終えてからギルドに戻るのだった。

そしてギルドに戻った俺は早速受付に行き依頼の受理処理を行ってもらい、そして俺達は依頼を達成するために外に出ることにしたのである。それからしばらくして、この国の王都の外壁が見えたのだけど、 俺達が依頼達成の報告のために『ギルドマスター』の執務室に入るとそこには『ギルドマスター』であるラニアさんがいたのだ。

その光景を見た俺は、まさかと思ったのである。その俺の考えが正しいのかを確認するため俺は【真眼】を発動させる。するとやはりというべきか、このギルドは『魔導ギルド』と書かれていたのであった。俺はラニアさんの目の前にいる人物を見て驚いてしまった。だってラニアさんと瓜二つの容姿をしていたのだから。それでその人は、その見た目から『魔族の姫』であることが推測できる。それにその女性は俺の事を睨んでいたのであった。そこで俺はその女性の目を見つめてみる。すると、俺の目を通してその女性は俺の記憶の中にある人物にたどり着くと、目を驚愕に見開いたのだ。その人の名はミネルバ。彼女はかつて魔王の娘だったのだ。その証拠に彼女が腰に差している武器がこの国の王族の者が使用する国宝の聖剣の一本である。それを確認した俺はラニアさんに確認する。そして、

「えっと。これはどういった状況ですか?」と、ラニアさんに尋ねたら。ラニアさんが簡単に説明してくれる。なんでも、その人はこの国を守護する立場の人であるとラニアさんから聞かされる。

「貴方の名前はなんと言いますか?私はこの国の『魔道騎士団』のトップで魔導ギルドの最高責任者でもあります。そして私の名はラミアです。貴方は確かユイと一緒にいた方ですね。ユイとは知り合いなのですか?あの子はこの『王国』にやって来たばかりなので色々とわからないことが多いと思います。そこで私が直々に面倒を見ようと思っているのです。ですのでユイのことを任せてもらえないでしょうか?」と俺に向かって頼んできたので。俺はユイのことを考えてその提案を受けることに決めて。

それから、この『ギルド』で俺達のパーティは活動することに決めたのだった。そして俺は『勇者』の職業についているせいで、他の冒険者達と比べて俺の方が実力が高いことが分かってしまうと面倒なことになりかねないから。冒険者になるのは、少し考え直す必要があるなと思っていた。そして、この『王国』を出ていく時にユイにこの国に残ってほしいと言われてしまうのである。しかし、俺はそれではユイが苦労してしまうことを知っていたので断ろうとしたが。俺はその時にある事実を知って、 そしてこの国を出る前にラミアに俺が異世界からやってきた人間であることを打ち明けたらラミアさんが、この世界の真実と俺の世界での歴史を話してくれたのだった。その歴史を聞いている最中で俺はユイにこの世界に呼ばれた理由を理解するのだった。なぜなら俺の世界の歴史も大体同じ流れを辿っているような感じがしていたからである。

この世界は俺達の世界のパラレルワールドのようなものだとしたら、この世界に存在する『勇者』というのは『勇者の魂の転生者』という意味であり、 だからこの世界において勇者の職業は特別な力を持った人間の証ということになるわけなのだ。

そしてこの世界には、もう既にこの世界を滅亡の危機にまで追いやった張本人が存在しているということらしい。その人物は今から約三千年ぐらい前の時代の人物の『初代国王』であると彼女は俺に教えてくれる。そんな人物が本当にいるかどうかを疑問視していると、ラミアがさらに話を続ける。なぜなら俺が知っている『前世』の記憶の中でその『二代目』の『国王』の名前が伝わっていないのは、意図的に消されているからだということを教えてもらったのだ。だから、その人の正体を探るのは不可能だと彼女は言ってきたのであった。

この世界は俺の知っている地球とよく似た惑星だというのは、この話を聞いただけでも分かった。俺としてはユイのことを心配だったのでユイにも一緒に付いてくるように言ったのだが断られてしまった。その理由はこの国は俺の故郷と似ている部分が多々あるらしい。だから自分の国のように感じられる場所だからこそ自分はこの国にいたいのだという。そして、この国が危機に晒されたときは自分の力で守りたいと言っていたのだ。だから俺は、ラピスちゃんとサーシャさんに事情を説明することにしたのである。そしてユイを『冒険者の見習い魔法使い』にしてあげてほしいとお願いをした。そのあとでラニアさんからも頼まれたこともあって俺は彼女達のことを受け入れた。こうしてユイはこの国に残ることを決めたことで俺達の旅路が再び始まることになる。

ただ俺はこの時はまだ知らなかったのだ。

この後で大変なことが起こるということを。それは『魔族』の王の娘である『ミリア姫』が魔導士団を引き連れて王都に乗り込んできてしまい魔導師ギルドに攻撃を仕掛けてくるなんてことはこの時の俺は想像すらしていなかった。

俺は魔導ギルドで依頼を受けることになったのだが正直に言って冒険者としてはまだまだ新米だと言ってもいいだろうから依頼を成功させることは難しいかもしれないと思いながら依頼を受けることになるのだった。

それで依頼の内容をよく見たら報酬は金貨十枚(一アネー)ということでかなりの高額なものだったのだけど内容を見たら討伐系の依頼で。しかも、 そのモンスターの名はゴブリンであり。

依頼の内容はその群れのボスを含めた上位種を五体ほど狩ってくれればよいという内容になっているのだ。それを見て俺は思った。

「なんかこれ、俺達が倒した『ゴブゴブ』とほとんど変わらない気がした」

その言葉に対してユイは、「そうだね」とだけしか言わなかったが。

それでも俺はユイに気になっていたことを聞くことにしようと思ったのだ。

そのことについて俺の質問を聞いたユイは困った顔をして。それから少し考えてから口を開いたのである。

「ダレルトはさ。この『魔導具師』という職業に覚醒してまだあまり時間も経ってなくて分からないことも多いよね。まずこの世界の人たちの『強さ』の基準から説明するよ。基本的にこの国の国民の強さの平均は『レベル1~5』までしかない。ちなみにその基準は、レベルが上がっていく度に、能力上昇値が増えていき最終的には上限に達するようになるの。

それからレベルが50以上もある人達はほとんどいないと言われているんだよ。そしてその人たちは『騎士』『上級兵士』などと呼ばれる。だから『中級の兵士』とか呼ばれる存在で、その中でも特に優れた才能を持っていて。

その『騎士団長』クラスになれば一人で『下級竜種』と戦えると言われているんだって。だから普通の『騎士団員』は最低でも一人あたりのレベルは10から15ぐらいある。そしてその下の存在として一般の『初級戦士』がいるけど。彼らは平均的な強さの目安として、 一般男性と大差ない身体能力を持っているから注意が必要だよ。でも一般人よりも身体能力は優れている。だからこの国の騎士たちや上級兵士の人達はその一般市民たちの生活を安全に守ることが仕事なんだ。そして冒険者の中にもその『レベル2∶』の冒険者がいたりする。そして冒険者には、冒険者カードと呼ばれるものが発行されて、それには冒険者個人の『職業』・『称号』などが刻まれていて、この国に来た冒険者たちが全員持っている。それが『冒険者カード』という物で、それを見せれば身分を証明することができるから持っておいた方が良いと思う。それからこのギルドには、『冒険者ギルド』、『魔道ギルド』、『魔導ギルド』がある。そしてその三つの組織の役割を説明すれば、魔導ギルドでは『魔力』を使って色々な魔法を行使することを主に活動しており、そして冒険者ギルドでは基本的に『依頼をこなす』のが主になる職業である。それで『魔導ギルド』では、『魔道具作成』に関する仕事を請け負っている。それで『魔道ギルド』では、研究が主な仕事で『魔導士』たちが研究をしていくんだけど。『魔道士』は基本『攻撃魔法』に特化した職業で『支援魔法の使い手』は滅多におらず、回復系統の『聖魔法』を扱う者はもっと少ないから基本的には『回復系統の治癒魔法』を使う人はこの国でもほんの数人ぐらいしかいないの。そして『冒険者』は普通に戦う『戦闘職』の『前衛』が最も多く、その次に多いのが、『後衛職』と呼ばれている『盗賊職』という『冒険者』の職種で。この二つの二つの種類の他にも、様々な職種が存在している。たとえば、 この国に暮らす人々の平均寿命はおよそ『百歳』程度でその寿命を延ばすことに成功しているのは、この国に存在している唯一の医療機関である『教会』が管理をしている薬のおかげであって。この国の全ての人々は、病気にならないように予防のための注射を打ち込んでいるし。怪我をした時に傷口にその針を突き刺し治療用のポーションを直接体内に注入しているおかげで。病人になる人も極端に減っていて。そのせいもあってこの国の人口は増えているらしい。それから冒険者の『冒険者カード』についての説明をするね。この『ギルド』には、『冒険者ギルド』、『魔導ギルド』、『魔導研究所』が存在するのだけど。その『三つ』がこの国の『三大ギルド』と呼ばれていて、その役割をそれぞれ言うならば、まずは冒険者ギルドでは『冒険者』を『斡旋』したり『育成』をしたり、その人が冒険者ギルドに支払うお金の一部を負担することで、冒険者を雇うことができてその冒険者達に依頼を出したりする。その依頼の内容に『護衛任務』というものも存在してそれは『冒険者ギルド』で『冒険者』を雇うことで成立することが多い。それで冒険者カードの役割だけど『依頼を達成』したときの達成記録がこのカードの中に刻まれるようになっている。

そしてこのカードは身分証明にも使うことが出来てこの『ギルド』に所属している人は『ステータスオープン』と唱えればこのカードを見ることが出来るからそれを見れば自分がどのような状態かを確認することが可能だし。

それで、冒険者の中には『勇者召喚の儀式』によって呼ばれた異世界人もいたからその異世界人の血を引いた子供にも勇者の才能が受け継がれているから『勇者』が生まれる可能性だってある。その『勇者召喚の儀式』について詳しいことを言いたいところなんだけど、それは今度で良いかな?それじゃ、次の話題にいくね。この国は冒険者にとって住みやすい国で、冒険者に対する税金も低い方だから他の国に比べて生活も楽でいい感じで。他の国からやってきた冒険者も大勢いてこの国に住み着いている冒険者の数も凄く多いんだよ。だからこの国の経済は安定しているし。治安も良くなっているし。他国からの『侵略者』が攻めてきたときでも対処できるほどの武力を保持しているから、この国は比較的安全だから『勇者』の職業を持つ人間が生まれてくる可能性も高いのかもしれないね。だからこれからこの国で生まれた子供が将来どんな大人に成長するのかを私は見届けていくつもりだよ。それで次は、その、私と一緒の部屋で暮らしてほしい。ダメかな?」

そんなユイの言葉を聞いて俺は「わかったよ」と言ってユイの誘いに乗ることにしたのであった。それから部屋に向かうまでの間、俺はずっと考え事をしていた。

(俺と一緒の部屋に暮らす。つまり同棲をすることになるわけだけれど、ユイは『女』である俺と『二人っきりで一緒に寝ること』に関してどう思っているのだろうか。

それに俺は『男』であって。ユイのことを俺は可愛いとは思っていても『異性』としては認識できていないということもあるから大丈夫なのかとも思った。それにこの国には同性の『友達』を作る文化もあまり存在しないから、この世界では同性同士の恋愛関係というのもあまり無い。だからこそユイと俺の関係はどのように変化するのだろうと心配だった)

それからユイと俺は一緒に住むことになった。そして二人で部屋に向かったのだ。ユイとの会話の中で俺は彼女の父親が亡くなった時のことについて聞いたのだ。そうするとユイはその当時の記憶を思い浮かべたらしく彼女は目に涙を浮かべながら話しはじめた。その記憶によるとその日はとても天気の良い昼頃だった。その日はちょうど彼女が十歳の誕生日を迎える前日の事でもあったそうだ。彼女は父親との散歩を終えて自分の家へと戻っていたのだが、そのとき家の扉を開ける前に何かの音がしたことに気づいた。それから彼女は恐る恐るその音の聞こえた方に目を向ける。そこにいたのは、その少女にとっては恐ろしい魔物でその『存在の力』に威圧されてしまったのだという。その『存在』を目の前にして動けなかった彼女は父親の言葉に従ってその家から逃げだした。それからすぐに追いかけてくるだろうと思った彼女だがいつまで経ってもその『恐怖』はやってこなくて、その代わりに誰かの笑い声のようなものを聞いたのだそうだ。そしてそれが終わったあとにその『何者か』の声をユイは今でも覚えていたそうだ。

「その『怪物』の正体は未だに不明のままだそうだ」

その話を聞く限りではその『怪物』はおそらくこの世界の『魔王』のことではないのかという予想を立てた俺は、ユイが襲われたことは俺が思っていた以上に重要なことだったのではないかと思うのだった。その日の夜はユイと一緒に眠ることになるのだが俺は『ベッド』のことで頭を悩ませる。その『ベッド』は、ダブルサイズの大きさの物であり。一人で寝るのはあまりにも大きすぎるということに気がつく。それからしばらく考えた結果俺が出した答えが一つあった。それは、『ソファー』を使うことだ。そしてその日の夜はユイが一人で眠りにつき、俺が一人でソファーの上で眠ることになったのである。

その日から俺はしばらくの間、その町で生活することにするのだった。この町には宿屋があって、そこで一泊してから依頼をするために外に出ることにした。まずはこの『魔導師ダレルト』の冒険者としての登録を行う必要もあるのでそのこともついでに登録しようと思う。だから、登録手続きに必要なものを用意してから、その依頼を行うために外へと出かけることになる。そして町の外に出る際、門兵と少し話をしてその町から少し離れた森の中へ向かわなくてはならないらしい。その森の名前は『黒の森』と呼ばれる森のようだ。

そしてその場所は『初級』の戦士や盗賊、盗賊職の『冒険者』などが訓練をするような場所で、危険なモンスターが出現することはない。それに『初心者』が戦うのに最適な『薬草採取』の依頼なども存在しており、それの依頼を受けるためにこの場所に来たりすることもあるらしい。そんなことをその兵士さんに説明されて理解する。

それで依頼の内容なのだが。薬草の採集や『スライム』という謎の物体から手に入るという体液を集めて欲しいという内容だった。

その『黒いスライム』を倒すためにはまず武器が必要になるということで俺は『剣の使い手(ソードマスター)』のスキルで習得している【剣王流剣術】の技の一つを使うことにした。そしてそれは成功する。その結果俺は『中級』に分類されるそのスライムを倒すことができた。

「よし、とりあえずこんなものでいいのかな?」

俺のレベルは既に20になっていて、普通ならば倒せないはずのその『黒き粘液の塊』を相手にしても倒すことができるようになっていた。それで、その討伐を証明するものとして必要なものをアイテムボックスから取り出すとその粘液の固まりを袋に入れておく。そしてそのまま帰ろうとすると俺は後ろから視線を感じたので振り返ると一人の女の子の姿がそこには存在していた。その女の子は、金髪の長い髪をツインテールで結んでおりその服装はかなり露出の多い格好をしていた。そんなその女の人の姿をみて、

「なんだ?この子、凄く綺麗だな。どこかの国のお姫様かなんかなのかな?」

と、俺は思わず口にしてしまう。それで俺の言葉を聞いたその子の顔に赤みを帯びるのが見える。どうも恥ずかしがっている様子に見える。それでこの子は、俺がこの場にやって来た時から俺のことを見ていたような気がするので俺は話しかけてみた。

「もしかしたら君も、この近くに暮らす村の子かな?この近くに住んでいる子供は『魔導士見習いの少女』って呼ばれているんだけど。それってどういうことなの?なんでそんな風に呼ばれるようになったのかな?」俺はその女の子に訊ねることにすると。その子は答えるのだった。そしてこの子の名はユイナという名前であるということを聞かされた。

それからこの子の父親には何度かお世話になったことがあり、ユナの父も『上級冒険者』の一人であるという話を聞いた。それでこの子が、冒険者に憧れてこの『魔境』に暮らしているということをユナは語る。ちなみにユナは『魔道剣士』として戦っており、まだ『聖魔法』を扱えない代わりに剣を使った戦いが得意だということをユナは語ったのだ。

(そういえばさっき、倒したあの黒くて大きいやつを倒したときに手に入れたのは『黒色スライムのコア』で、これって何の役にたつんだ?)

俺はふと思った疑問を口にすることにした。

その『スライムの核』を俺は手に取る。その『コア』の色は黒。その色をじっと見つめる。それから、

(これはいったい『何に使えるもの』なのか分からないんだよな。でも何かの『役に立つもの』だとは思いたい。まあ、この辺りは調べる必要があるか。それとこの『魔獣』についてもう少し詳しく知りたいとは思わないかな?だって俺はまだ『初級』だし。これからレベルを上げていくためにはもっと詳しい知識が必要だと思うしね。だから、今度の休みの時にでも、もう一度この『森』に来てこの魔物が生息する環境を調べる必要があるかも)俺はそんなことを考えた。

そのユナの父は上級冒険者でもあるので、その『スライムの核』を渡すと何かの道具を作るかもしれない。

それからユナは『スライムの核』に手をかざすと『魔法陣』を展開する。

ユナは、その『スライムのコア』に対して何かしらの操作をしたようだった。すると次の瞬間『スライムのコア』から『煙のようなもの』が発生するとそれが一つの形にまとまっていく。その完成した形は、『スライム』の形であった。その『液体』でできたその生き物を、俺は初めて目にすることになった。俺はその不思議な光景に驚いてしまう。

そんなふうに驚いた俺は「凄いな。これが君の能力か」と言いつつユイの頭を撫でた。

そうしてみると、ユイは「うん。そうなのよ」と言うと微笑むのであった。

そのユイの頭に触れることで、彼女の感情を感じとることができたので俺は嬉しくなった。

「それにしてもユイは本当に強いね」と、俺はユイを誉める。それから、俺とユナはユイの自宅に向かうのだった。ユイに案内されて行く途中、俺は『魔導師ダレルトの世界』のことをユイに話す。そうするとユイは俺の話に興味を持ったらしく、俺も一緒にユイと一緒に行動することになった。

そしてしばらく歩いた後でユイが、

「私の家に着いて、お父さんを紹介するけど。私のお母さんは、もうずっと前に死んじゃったから。それで私が今は一人暮ししているの。でも大丈夫。たまには帰ってくるから心配しないでいいのよ」と言ってくる。そして俺はユイに自宅まで送り届けてもらうことになった。そしてその自宅にたどり着いた俺はそのユイの『家』を見て驚く。その家は、大きな豪邸で、とても広い敷地を有している家だったのだ。それで俺は呆気に取られてしまったのだけれど、中に入ることになった。それから家の中の様子を見ることになるのだがその部屋の中にはたくさんの物が並べられていて、その中には『魔石』『武器』などのものも置かれていたのだ。

(なるほど、そういう事か。ユイは俺よりも遥かに才能を持っている『上級冒険者の娘』なんだな。ユイには俺のような特別な存在には無い、ある特殊な『スキル』のようなものが存在しているんだろう。そしてそれはおそらく俺にもある『固有スキル』と同じものだ。俺にもその力は存在しているはずだ。それにユイの両親は『上級冒険者』らしいから。それで俺にこの『力』が備わっているのだろう)

そんなことを考えていたらユイナが俺に向かって声をかけてきた。そして彼女は言う。

「ねえ。お姉ちゃんの作った『料理』は凄く美味しいんだよ」ユイはそんなことを言って笑顔を見せるのだった。それでユイナに連れられてその部屋の中へと移動する。そこで俺が見ることになったものはユイの手づくりの食事だった。その食卓は豪華に彩られ、様々な種類の果物のジュースが用意されていた。ユイはその飲み物の味を確かめると俺に「おいしいでしょ?お兄さんも食べてみて」と言われ、それを口にすることになる。その飲み食いして、感想を述べたところユイは喜んだ表情を浮かべるのだった。そして「ユイの作ってくれたものがすごくうまかった」と言うと、嬉しくなるのを感じることができたのだ。それからしばらくの間この家で泊まることになりそうだからということで俺は、『ベッド』を探すために屋敷の中を探し始めることにするのだが、そんな時、突然扉が開くとその先に一人の男の人の姿があった。その男はかなりの大柄な男でありその顔を見るとかなり整った容姿をしている男性であり、この人がこの屋敷の主なのかと思う。その男性はユイナの父であり冒険者として活動している人物であるということがわかった。それで俺の名前は聞かれなかったのだが俺の方から自己紹介をさせてもらって、俺の名前を教えることにした。

それから俺に質問をされる。どうやら俺のことについて知りたいことがあるようでいろいろ訊ねられる。だが俺は自分のことについては何も答えられなかったのだけどそんなことは気にする必要はないらしい。ただ俺はその質問に丁寧に対応した。そんなこんなで夕食の時間になる。俺のために食事を用意してくれているということだ。俺はその誘いを受けることにする。そんなわけで俺はその食堂に向かうと、そこには俺がこれまで一度も見たことのないような豪華な料理がテーブルの上に並べられていた。そして俺の前にいるユイナの父親は「遠慮せずにたくさん食べてくれ。タダノリくんだったか?君はこの国の勇者なのだし、俺の自慢の娘の命を救ってくれた恩人の一人でもあるからな。まあこんな場所だ。俺も堅苦しいのは抜きにして気楽に接してくれたまえ」と、言われてしまう。

俺は、その父親である人に挨拶をする。すると彼は「ああ、俺が君の父であるダレルだ。これからは家族だと思って仲良くやって行こうじゃないか」と言われる。そうするとユイナが「私はユイナです。よろしくお願いします」と、言うと俺と握手を交わしてくる。俺はそんなユイナの頭を優しくなでるとユナの顔が赤くなっていた。

それから俺はそのダネルの作る食事を食べることにした。その『魔獣』が食材となっているその『魔獣料理』という物はどれもが凄くおいしくて感動してしまったのであった。それで俺が、食事を楽しんでいることにユナが喜び、そのあとで、俺と会話をしてきた。

ユナは俺に「私も一緒にこの国に住まない?」と言われたので俺は、「そうだな。それも楽しいかもしれないな」と答えた。

それからこの国に住むことを決めた俺は、ダレルの家で過ごすことが決まったのだった。そしてその晩に俺は『風呂』に入ってみたり、そのダネルの作った寝具に潜り込むなどをしてみる。そうするとその『寝具』はとても心地よく感じることが出来たのでその布団で眠りに付く。

そんな風にして、この世界での生活は幕を開けるのだった。

俺はユイと共にその家に暮らすことが決まる。

そんな風にユイの自宅で暮らし始めた俺は、ユイと過ごすことになる。

この『異世界』に飛ばされて初めての安息の時間を過ごせるようになりそうだった。

それからしばらくユイの家に世話になっていた俺であったが、この世界にきて三日目になりそろそろ旅立とうと考えるようになる。なのでその前にユナに会っていこうと思い、彼女を訪ねに行くとユナが一人で何かしらの訓練をおこなっていたのである。

その訓練の内容を見てみたが『スライム』と戦うというものだった。ユナは自分の力で戦って『スライム』を倒すことで、自分一人の力で魔物を倒せるようになる必要があると考えていたようである。そんなユナを見ていると俺は、彼女のことがかわいそうに思えてきたので、つい手を出してしまいユナを手助けすることにしたのであった。

ただその時に、俺に『魔法陣の盾(シールド)』『魔法陣の弓(アロー)」「スライムコア」「黒色スライムのコア』が新しく手に入る。

(そういえば俺には『固有能力』が存在するということを忘れるところだったよ。この世界の人たちが持つものとは違う力を使えるのかな?だとしたらこの力はすごい能力だよな。それと『聖魔法』は覚えることが出来れば俺にも『回復』とかが出来るかもしれないよな。だから早く『中級』レベルにまで達しないとまずいな。でもまあ、それはいいか。それよりも今はユイを助けないといけないよな)

そんな感じに考え事をしてから改めて、目の前で『魔法陣の剣』で『スライム』を倒した後に倒れ込んだユイに対して声をかける。

ユイはすぐに意識を取り戻すと、なぜか顔を赤面させていたのだった。その後、そのユイに抱きつかれると頬を摺り寄せて、甘えてこられたので、とりあえず俺は頭をなでることにした。

それからしばらくして落ち着いたところで「俺は旅に出ることにしようと思っているんだ。でも、もしまたここに戻って来ることになったらその時に、何かあったら連絡してくれ」とユイに言う。それから俺は「ユイ。俺の分のご飯を作ってくれていてありがとうな」と感謝の言葉を伝えた。

そしてユイと別れを告げる。ユナの父親である、ユインは娘であるユイを凄く可愛がっているみたいだし俺のことを信頼してこの家に残していくことにしたようであった。そして俺はユナと一緒にこの屋敷を出ることになった。

その途中で俺がユナから「私には『魔法陣のコア』が扱えるようになったの。それで私のお父さんも、お兄さんに負けないように、必死になって特訓して上級冒険者になれるほど強くなっているのよ」と言われる。

それでその日は、その屋敷で一晩を過ごすことになり、俺はこの世界に来てからはじめて安心感を得ることが出来るのだった。そして次の日に俺は『王国』を旅立つことにする。そして俺は『ユイ』に手紙を渡す。その手紙の中に、ユイ宛の手紙もしたためておくのだった。その『ユイ』から俺宛てに返信された手紙には俺のことを大切に思っていることなどが書かれていて嬉しくなったのだ。それでその手紙を受け取った俺は『王国』から旅立ったのである。

それから、俺とユイは二人だけで旅を続けることにするのだが、その時に出会ったのが俺よりも一つ上の年齢の少女、ユノという名前の人物と出会うことになる。その少女とはユインの妹に当たる人でユナよりも背が高く大人びていた女性だ。その人は上級冒険者という実力者であり、そしてユイと同じ『上級魔法剣士』でもあるらしい。彼女は『剣術スキル』、『炎系魔法スキル』を習得しているらしいのでかなりの使い手のようである。

それからユイが俺の実力を彼女に話してしまうと「それなら私が指導してあげましょう」と言ってきてくれるのでユイが俺を鍛える担当になるのであった。

そんなわけで俺がユイに教えてもらうことになるのは俺がユイと出会った時から一か月後のことになるのだった。ユイと出会ってからすぐには俺と彼女がこの国にあるギルド会館に向かうことになりそこを訪れる。そしてその建物の中で『上級ランクのカード』を見せてもらったら本当に上級の冒険者として登録されてしまっていることを知る。そしてこの国の王様が直々に会いたいと連絡があったようでそれをユノから聞くのだった。俺はそんなことを言われたのだけれどそんなの面倒なことはしたくないから、断るつもりだったのだがユイからその件については任せて欲しいと言われてしまうので俺はユナの意見を尊重してあげる。そんな風に俺達が話をしていたら、その王様の側近の人から呼び出されることになりその人の元へと向かうことになる。

それで、ユイと俺がその部屋に到着するとその人がいるのだが俺達は王様に面会をすることになったのである。そうして、謁見の間で俺はユインの娘であるユナとこの王様に会った。この人の名前は、リザリスといい『魔王』と人間の戦争において、人類側の勇者の一行のメンバーの一人であり、その勇者に殺されたとされている人物であった。ただ、この『魔王』であるリザリスと、俺の知り合いであり俺を『異世界召喚』した人物である【天上 勇斗】はこの世界では、同一人物であり、さらにこの二人は親友同士であったのである。そんなことから、俺と勇者の関係は複雑でありその関係のせいで、俺はその『魔王』を殺すことが出来ずにいた。

俺の知っている事実についてこの国王と側近が知ることになるが、俺は『勇者』のことは秘密にすることにする。俺の『聖女の力』でこの人達に、嘘を見破ることができるが見破られることはなかったので、本当のことは隠したままにしていた。

それからこの国での滞在先が決まりユイとユノの住んでいる家で暮らすことに決まる。そして俺はこの世界で『聖魔技師』として生きることを決めていくことになる。

俺がこの世界で『聖魔技師』としての活動を始めたのは、ユイナと知り合ったのをきっかけにするのである。

俺は『異世界召喚』によってこの世界にやって来てから、ユイナやダネルの家で世話になることになってしまう。この家の夫婦の娘のユイナが「私はタケルがこの国にいてくれた方が嬉しいの」と言い出してしまい、結局俺がこの家で生活することになるのだった。俺はユイルが俺のために用意してくれた寝具を試すことにしたのだけども、寝る前にいろいろと質問をしてみたのであった。それでわかったことがいくつかあり、まずは『魔力炉(マギアルカ)』が『神格化(シンカクケ)』されていることや、俺には魔法が使えず『魔法具』を使うことで使うことができるようになっていた。『魔法陣』を描くことによって魔法が発動するということも知ることが出来た。そして俺の能力値を確認してみると――

名前:ダレル

職業:魔導具師(マジックエンジニア)

称号:無職になった魔道具師のおっさん

固有能力:魔獣支配(ビーストドミネーター)

技能:魔獣魔法『火魔法LV4』

『水魔法Lv3』『土魔法LV2』『風魔法Lv1』『雷魔法LV2』『氷魔法LV0』『治癒魔法』『光魔法』

『魔法耐性付与』

装備:『賢者の首飾り』『魔法の指輪(白)』

(これがこの世界に来て最初に得た能力なんだよな)

俺が自分の能力を見ていてふとこんなことを考えていたのだった。そうするとこの首にかけてあるネックレスは、『魔導具職人』としての証のようなものであることがわかった。この『首飾り』が『魔法陣』で出来ていることに俺は気づくことになる。それから『魔法の指輪』も『特殊魔装』と呼ばれるもので特別な効果を発揮するアイテムであるということを認識する。ちなみに俺はユナと、その母親に料理を習っている最中だったりする。そして俺は、ユイと一緒にその手伝いをする。それから、ユイが「お母さんがね『中級』までだけど料理の作り方を覚えたのよ」と言ってくれる。

そして、その料理の味を確かめている時に俺は『スライム』と遭遇してしまい戦闘が始まる。そして『中級魔法剣士』である、ユノに手伝ってもらい何とか勝つことに成功する。ユイが『上級魔法剣士』なので、ユノの方が強いんじゃないかと思ったりするがユナ曰く「私はまだレベルが低くてユノは私よりも圧倒的にレベルが高いのよ」と言っていたのでその通りなのだと思う。そのユノのステータスを確認すると『魔法剣士LV45』となっている。そういえばユインは、レベルが20前後だと言っていたがレベルが10を超えているのはすごいことであるということも理解出来たのである。ユインのレベルもすごいことになっているし、その妹のユイは、レベル38になっている。

そしてユインの『固有スキル』は、この国の人間には習得できないような内容だと言われたのだ。

そして俺は、『魔鉱石』を手に入れるために『迷宮都市』へと向かう。そこで、ユインと出会い俺達は意気投合して二人で行動することにしたのだった。ユイとは途中で離れることになってしまい俺はユインと行動するのだが、『上級盗賊』である『レイナ』という女の子と仲良くなり彼女と協力して、『宝箱』をいくつかつくりだすことに成功し、お金を手に入れてから『魔鉱窟』に向かうことになる。しかしそこで『ダンジョンコアモンスター』に遭遇してしまうのであった。それでなんとか倒すことができたけどもその強さを実感することになる。そして俺はユナから手紙を受け取るのである。その手紙の中には俺の作った魔剣が送られてきてそれを使えばユナも上級冒険者になれたことも記されていたのであった。

それから俺は『魔王』のことを少しだけ気になる存在になっていたのであった。そしてユインの妹でありこの国で最強の剣士であるユノは、「お兄様はあなたのような人がお似合いです」と言うことを言ってくるが意味がよくわからなかったがスルーしておくことにする。

そんなわけで、その後俺とユイが合流してから『冒険者ギルド』に行き冒険者カードを作ることになる。そして俺のランクは上級冒険者のカードを発行してもらうことになるのだった。ユインも、上級のカードを持っていたのでユナはユノが、お揃いだねとか言って喜んでいたことを思い出す。そして俺達三人はその『迷宮都ギルド』を拠点にして活動することに決めていたのだった。

それで俺とユインの二人がギルドで受付をしていると、一人の少年が現れる。その少年は俺達の方に近づいてきてこう話しかけてきた。

『聖騎士』であると、名乗りを上げながらこのギルドの『最高級』ランクの認定を受けたいと伝えて来たのだ。俺はその少年にそんなことができるのかと思ってしまう。俺と同じような『異能』を持っているようには見えなかったからである。そう思っていたのだけどその言葉が本当だということを知ることになる。その男の子の名はリクで、彼は俺が知らない間にこの王城から逃げ出してきていたらしくて俺のところに顔を出したらしい。それから俺に「助けてくれ」と言い始めるので俺がこの国の現状を説明する。そうすると俺の話に納得してくれて協力してくれることになる。そんなこともあり、このギルドで『最上級』の『冒険者』のカードをもらえるようになる。それとともにユイとユムのギルドのランクを上げるための依頼をこなすことになるのであった。そんなことで、俺はユイとユイにギルドランクを上げる依頼を受けてもらうことにする。俺の方でもユイから受け取った『賢者の首飾り』のおかげで使えるようになった『魔法スキル』を練習することにする。そのスキルの練習をしていたときに『上級盗賊』である、ユイナにそのことを知られてしまう。それからそのスキルを使うためには『魔法の指輪』が必要だということを伝えられその使い方を教えてもらうことになる。

俺はユナからそのスキルについて説明を受けると俺は『聖具 』の『魔鉱石』を使いユナが言う『魔法回路 』の術式を書き換えることが出来るようになる。そして俺はユナから教わったその魔法陣を発動させていくとこの世界の人間なら誰も覚えられないはずの『空間操作』を覚えてしまった。俺が使ったこの魔法が『時空の歪み(スペースイレイザー)』と呼ばれて恐れられることになる魔法だった。その魔法を使ってユナを驚かせてしまい、この世界に『転移魔法陣(ワープホール)』をつくり出すことになってしまうのであった。その『ワープホール』のせいでユインやリザリスの所に繋がってしまったのだが。そんなことがあったせいかユイルがリザリスに対して敵対心をむき出しにするようになっていって、それに俺と勇者の関係を知っているリザリスはユイルを落ち着かせることに必死になり始めるのであった。

それから数日かけて俺とユートはユナのいる村に行くことにしていたのである。その目的は二つあり、ユイのために買うものを用意することともう一つはこの世界にはないものを作りたいという理由があるからだ この異世界には俺がまだ見ていないものがたくさんある。だから、それらを見て回るためにもこの世界を見て回る旅に出ようと考えているのである。ただこの世界で生活していく上でどうしても必要になってくるものがあり俺はそれを探しにこの村の外に出ようとしているところだったのである。そして俺はユートと一緒に村を出発することにした。そして『迷宮都市』まで向かうのには二日くらいかかるが、俺は『聖魔技師』としてユイトに頼まれたものをつくるのである。俺はユートが、俺がいない間にやっていた研究について聞こうとすると、「これは僕の切り札だよ」と言われるだけだった。それからしばらく歩き続けるとようやく目的地の村にたどり着くことが出来たのである。そこはこの村で俺が、泊まらせてもらっていた家と同じ建物がありユナが暮らしている家であった。俺は、その家に挨拶をするべく家を訪ねるのである。すると家の中から声がしたので俺が中に入っていく。するとその家の中の様子がいつもと違った。ユイは、どこかに出かけたらしくユナが家事をやっていたのだ。そんなわけで、ユナはユイナがいなかったら、家事は自分で全てやらないと気がすまない性格なためにこんな状態になってしまった。そしてユイがいなくて少し困った表情をしているユナを見て、ユートが手伝うことを申し出た。その言葉を聞いたユナがすごく嬉しそうな表情をしてユートに感謝の言葉を伝えてくる。俺がユイがどこにいったのか聞くとこの近くの洞窟に行ったと言われてしまう。俺はユマが言っていなかった情報を聞いてユイとユーヤの身に何かあったのではないかと不安になる。その俺の様子を見たユナとユムが俺に声をかけてくれるが俺はユナとユムに事情を説明をしたのだった。それから、その洞窟の場所を聞き出して俺は、そのダンジョンに潜ることにしたのだった。

その『迷宮』の入り口の周辺には人はいなかったが入り口の近くに、俺の知り合いである少年の姿を発見する。それは、俺が、最初に出会った少年でありこのダンジョンの管理を任せられていた少年であるユウトだった。彼はこの辺りに出現するモンスターが弱すぎて暇だと嘆いていたのである。俺は、彼の様子に苦笑いをしてしまうのだがそれから俺は彼に『中級盗賊』であるユイとユイの護衛をお願いすると彼も了承してくれた。そうすると、彼が持っていた魔道具の『魔法の杖』に反応が現れ始めてしまう。そうするとすぐにモンスターが現れる。その現れたのはゴブリンの亜種のモンスターであるゴブリンメイジだ。

その魔物に気づいたユウトはその魔法を発動させる。

そうすると、俺が前に戦ったゴブリンマジシャンよりも遥かに上のレベルであることが分かるのである。

それからその魔法で出現した大量の魔石によってレベルが上昇したユイとユムが戦闘に参加する。その二人のレベルは現在40を超えておりこのレベルのモンスターが出現する場所ではないはずなのだけど。その二人がかりで戦うことにより簡単にゴブリンメイジを倒しきってしまった。しかしそれでもユムのレベルアップには十分すぎる量の魔石を入手出来たのだった。

俺はそんな光景を見て、本当に俺の妹はすごい存在なのだと実感させられることになる。それから俺達は、その洞窟の中に入ることになったのだ。ユナは、初めて訪れる場所にかなりワクワクしているようでとても楽しそうだ。しかし俺はこれから遭遇することになるだろう敵に意識を向けるのであった。

そしてそんな俺達に待ち受けていた敵というのは、この世界の人間が絶対に倒すことができないとされている存在だったのである。それを、俺達は知ることになるのだ。

俺はそのダンジョンの中に入ろうとするとそこには俺達がよく知っている人物が待ち構えていたのである。そう俺が王都を逃げ出した時に一緒に行動した『元』王女であるセツナがそこに立っていた。

俺は、どうしてここに彼女がいるのか分からなかったけど、このダンジョンに彼女が入った理由を聞くことにしたのである。

そして彼女は、『上級魔剣士』で『剣豪』の称号を持っておりその強さはかなりのものだと思う。それにその腰にある剣は魔剣なのだろうと予想がつく。そうするとこの魔剣も彼女の魔剣なんだろうか?そう思ったが俺はその質問は後回しにして彼女と戦うことになるのである。

そうするとやはり俺の予測通りこの剣は俺が作り出した魔剣のようでそれを使ってきたのだ。その剣の名は、『神魔剣』と言う名前であるようだ。俺も『上級魔導師』の固有スキル『聖具作成(アーティファクトメーカー)』というスキルを持っているのでそれを使い、ユイにもらった『魔法付与士の指輪』を使って俺も魔装を作り上げることができるようになっていたので、俺の魔剣を造り出すことに成功する。そしてその武器を使ったユナが俺の隣に立ち戦いを始めていった。その魔剣の性能を確かめるように戦っていく。ユナが『聖騎士』になったのと同時に使えるようになった魔法をその魔剣の力を使うことで、放つことができるようになりさらに、魔法を発動するための魔力の効率が上がり威力も上がったようである。そうするとユナが優勢に戦いを進めて行った。俺は、ユナの邪魔にならないように気を付けながら自分の戦いに専念することにしたのである。それからユイナが、魔法陣を展開して、強力な魔法を放つがユイナの魔法ではその相手を倒すことが出来ないようであった。その相手は、俺の『創造主』の力で生み出した魔人なのでユイの魔法の耐性が高かったからであろう。そこで俺も加勢することにしたのである。

それから俺はユイナと一緒に戦うことを選んだ。

『魔道機』の魔導師のスキルを使うにはその装備が必要になってくるが『聖魔技師』の能力を使えば、俺でもその『聖魔技師』専用装備を生み出すことが出来るようになるから、俺もその力を借りて魔人の動きを封じることに専念したのである。それから俺達が三人になったことにより状況は変わって行き、ユイがその魔人に大ダメージを与えてくれたことで俺達の勝ちが見えて来たのである。それから俺はユイナと俺で同時にその相手に攻撃を仕掛けていくと、その魔人はあっけなく倒れる。

「やったー勝ったよ!」

ユナが喜んでくれていて俺としても、その笑顔が見れて嬉しい。

そしてユムとユナが俺の方を向いて嬉しそうな顔をしてくるのである。

それから俺とユートは『聖魔技師』の魔鉱石と魔鉱を回収に向かうのであった。ユムが『魔鉱鑑定』と魔鉱石を解析する能力を手に入れてから『魔法陣作成(マジッククラフト)』を使うことができるようになっている。それで魔鉱石の詳細なデータを手に入れることができているのであった。それによって、この世界に存在する全ての金属の強度や特性を知ることが可能になり、それらの知識を得たユートは『魔鋼の錬金』を行うことが出来るようになっており、ユイルとユマから依頼された装備をつくることができたのだった。俺の場合はこの村に来てから作った防具や武器がある。その俺が作った武具は性能が高くユイルとユマが愛用していたりする。そんなこともあり、二人はこの村の特産品の一つとなりつつあるユイト製の魔道具を売っている店でユイトと取引をすることがあったのだ。そんなことがあったのもありユートは魔石と交換で売ったりしていることもあったのである。そんな感じでユートは、この村の名物になっている商品を生み出していたりしていてこの村にお金が入ってきたりする。そのためか村の住人たちは俺とユトに対してすごく親切だった。だから俺とユトもこの村が好きになっていっていたのである。だから俺とユートは、これから『迷宮都市』に旅立つことをこの村にいる人たちに伝えようと思っていたのである。それからしばらくしてユナの様子を見に行くために家に向かって歩いて行くとユトがいた。その隣には俺とよく行動を共にしてくれていた少年がユトの側で控えていたのである。彼はユイがユノの付き人に任命してからも俺の側に居続けてくれた少年で俺を『魔族』たちから守ってくれた人物でもある。その彼から俺はユナについていろいろ聞くことになった。

その話を詳しく聞いたあとに俺が、これからこの国の王に会おうと考えていることを言うと、なぜかユートとユーヤも一緒に付いていくと言ってくれるのだ。俺としてはユートとユーヤがついてきてくれるのなら安心できるしすごく心強いと思う。しかし俺はそんな彼らに感謝しつつユナのいる場所に向かったのだった。

ユイが『下級剣士(ナイト)』の職業レベルが上がったことによって『剣豪』と『上級魔戦士』の固有スキルの『剣豪』のレベルが『剣聖』まで上がることになったのである。それにより、彼女はユナとユイの護衛役とユナとともに戦うことを任せられるくらい強くなっていたのである。そうすると今度はユウが『剣豪(セイバー)』レベル10に到達して、『聖剣豪士(エクスセーバーマスター)』『魔法剣使い』と新たに職業を選べるようになっていたのでユウにはその二つのスキルのどちらかを取得してほしいと頼むことにしたのである。そしてユウはそのスキルを取得することに決めた。そしてその新しいスキルを取得した後にステータス画面を確認したユウは驚いていた。それからユウも俺と同じ様に『上級魔剣士』のレベルが上がりさらに『剣豪(ソードマスター)』、『魔法剣士』と新しく職業が選択できるようになり、そしてなんとその両方の上位のクラスである職業『最上級職剣神』を取得することになった。

俺はその話を聞いて驚いたのだが、そんなに驚くことはないと思ったのだけれどユイも同じような感想を抱いたようで俺達と同じようにそのことに驚いいていた。それから俺たちはダンジョンに入る前にギルドに向かうことにするのである。

そしてギルドに到着した俺は早速受付嬢に国王のことについて質問することにしたのだ。しかしそこで思わぬ情報を聞くことができた。国王が行方不明になっていたという話だったのである。そしてその情報を入手した場所がこの王都でその事件が解決したのは最近だということがわかったのである。

(この国は本当に問題が多い国なんだなぁ。こんなにも問題が山積みだなんてな。やっぱりこの国に留まっておくわけにはいかないかな。しかし、今すぐにでも旅に出たいところだが、その旅に出るにしてもこの問題を解決しなければ。それにユートやユーヤたちを連れていけないのは少し心配だけど。それにユイがユナの付き人をやってもいいと言っていたから。それに俺もユナとユムがいればなんとかなる気がするし、ここは俺とユートとユーナの3人で向かうことにしたほうがいいのかもしれない。そうすればこの三人で王城に侵入するのもそれほど難しくないはずだ。問題はその後どうするのかが決まっていないということだ。しかし、それはユムが俺のことを好きって言ってくれたんだ。そして俺もそのユムが好きだとはっきりわかった。俺はもうユムのことを守ると決めたからね。俺はその気持ちに従うだけだ。とりあえず王都での情報を集めて、それ次第で行動することにしよう)

そう俺は考えてユーキたちにこの王都で情報収集を行うことを告げたのだった。

俺達は王都にあるダンジョンの入り口に来ていた。そして俺達は王都の人達に見送られる形でダンジョンに入ることにしたのである。そして中に入ると俺達は魔物と遭遇してしまうのであった。

俺達はダンジョンに入った瞬間から大量のモンスターと遭遇することになる。

俺達が入ってきたのがバレていて俺達に襲い掛かってくるように襲いかかってきたのである。

そうして戦いが始まると俺が先頭に立ってユイナとユイと共に戦闘を開始した。

すると俺の剣で斬りつけていったら一撃で倒すことに成功するのである。

そんなことが続いて、どんどん倒しながら俺達の進むペースを上げていく。すると途中で階層主と呼ばれる存在に出会うことになる。

その部屋にいたのは、大きな虎の獣人の男性だったのである。

彼は俺達が侵入者ということに気づくと怒りの声を上げると、いきなり攻撃を開始してくるのだった。

「貴様たちが、我が同胞を殺した奴らの生き残りという事か! 」

「何の話か分からないけど。君が俺達の敵だってことは分かったよ。じゃあ、死んでくれ。お前の種族が何であれ関係ないんだよ。俺の大切な家族を傷付けようとするなら容赦するつもりはない!」

そうして、俺は、その虎の獣人と対峙する。そうして、その虎の男が持っている武器に目がいった。その武器が魔刀だということに気がつく。その武器を見たときに俺の体に悪寒が走ったのである。俺がこの世界に来る前に住んでいた世界に存在していた刀だったからだ。俺は『創造主』の固有スキルを使うとこの世界の武器を作り出すことができるようになるのだった。だから俺はその魔道具である刀を作る。

それから、俺はユイナの方に視線を向けた。その刀には『魔刃』と言うスキルがあり、その効果を使えば、相手の魔防を半分にすることが出来る。つまりその魔道具の魔弾を放つことが出来ればその攻撃を相殺することもできるはずである。だから俺の合図で、ユイナには、魔導機を使ってもらうことにした。魔装の魔導機を使うことで、その魔砲の出力を最大限に上げてもらって、その魔砲で魔人を攻撃したのである。その結果、その攻撃は命中し、相手をひるませることに成功した。そしてユイは、そのチャンスを逃すことはなくその相手に近づいていって、その相手を攻撃する。そうすると相手は大きなダメージを受けることになるのである。それをみたユートが加勢に入っていきユナを守りつつその相手に止めを刺したのであった。

俺はこのフロアーで戦っている最中にユマがこの王都の近くにある『聖魔鉱石』を護っていたボスを倒したことでその素材を手に入れていたことを俺は思い出す。それで俺はこの階にあった全ての魔石を『魔法陣作成(マジッククラフト)』の能力で作った収納箱に入れて『魔法袋』の中にしまう。そして俺は次の階層に進むための扉を開くための鍵を取り出した。

「この鍵に『聖光魔法』を込めればこの部屋の封印を解くことが出来るみたいだ。俺は先に進んで行くがユートとユーヤも付いて来てくれ。ユイとユイナはここで待っていてほしい。それとユートは魔装を出しておいてくれないか? その魔銃は俺の『魔道具師』として作った武器の中で一番性能が高いからな。その威力を確認しておきたいから頼めるかい?」

俺は二人に向かって話しかける。二人は快く引き受けてくれて、ユートが魔器を展開する。そうして、俺が先に進み、その後にユートが着いてきたのである。そのあとユートが魔拳銃を撃つがあまりの早さに見えない。俺とユトは目を見開いて驚いていた。それからユートは、さらに、もう一丁魔銃を取り出すと、二丁拳銃スタイルで撃ち始めたのである。

俺とユトは、その姿をみて呆気にとられていた。なぜなら俺にはそんな使い方が想像できなかったからである。しかも、魔人に向かって放った弾丸は全て魔人に命中したのである。

(すごい威力だな。この調子で魔人がでてきてくれると嬉しいんだけど。そうすればこの階層の主はユマになるはず。そしたら俺はこの階の魔素を全部吸収してしまうとしよう。そうすれば、俺は更に強くなってもっとユトとユナを守れるような男に近づけるからね)

俺は、そんなことを考えながら階段を見つけるために探索を始めたのだった。そして、ユイたちはそんな俺達の後を付いてきていたのである。

それからしばらく進むとまたもや大量のモンスターが出現するのである。

そのモンスターが俺達の姿を見て攻撃を仕掛けてくる。

俺は『神剣』を作り出していたのだった。

そしてその剣で一気に敵を葬り去っていく。ユトの方を見ると魔剣に炎の魔力を付与していたようでその魔剣でモンスターを倒していた。そのあとでユイとユイの援護をしているユーヤのところに向かうとユナも一緒に戦うと言ったのである。ユナの魔導機は連射型のマシンガンタイプのもので連射の速度がとても早く次々と倒していったのである。そして俺達三人ですべてのモンスターを倒すことが出来たのであった。

「ふぅ。これで一息つくことができるね」

俺はそう呟いて辺りを警戒しているときだった。

『神槍使い』の称号スキルを持っているユートが突然苦しみだし、地面に倒れこんだのである。

(なんだ。一体どういうことなんだ。それにユートの顔色が青くなっている)

俺はそう考えながらユートの元に近寄ったのである。そして俺は、ユイとユイにユマとユミの四人に『神剣』と俺の魔剣を渡した。ユナに魔剣を持たせなかったのはもしものときに対処できない可能性があったためである。そしてユーキは、この場で『回復薬士(ハイヒールメーカー)』で『治癒士』のレベルを上昇させておく。俺はその作業を終わらせた直後に俺もユートと同じ状態になってしまったのである。そうして、俺はそのまま気を失ってしまう。

俺が目を覚ますと俺は白い天井の部屋にいたのである。

俺はそこで、この世界の現状を聞くことになった。

(俺はどうしてこんな場所にいるんだろう。確か王都のダンジョンに入ってそこで、モンスターと戦っていたと思ったんだけど。しかしここはどこかわからないけどとりあえずここがどこなのか調べるために外に出ることにするか。でもその前に俺の状態を確認した方がいいかな。それにステータス画面を確認すると新しい称号が手に入っている。えっと何々『勇者』か。なんかこの職業には見覚えがあるんだよなぁ。俺が元いた世界にも同じような役職の人がいたはずだ。そう考えると俺はその人物になったのかもしれない。そうか。そうなると、俺はユナの幼馴染ということになるわけか。そう思うとそれで納得が出来た。そして俺は『創造主』『創造する者』、『神槍使い』、『創造術師』・『回復魔法師』・『大賢者』(仮免許)になっていた。やっぱりあのダンジョンに入ってから意識を失う直前に、ユートは『勇者』になっていてユートは、『聖槍』のスキルを手に入れたのか。俺はどうなんだろう?)

俺は自分のスキルを確認することにする。すると『魔王』という文字があることに気づいて驚愕する。そしてこの称号の説明文には、『全ての武器を使うことができる。魔道具の作成が可能になる。魔物や魔獣を支配することができる。レベルが1000を超えると魔物が従う。スキルの効果が上昇する。全ステータスが倍化していく』と書かれている。つまりこの世界に魔物がいるということなのか?そしてそのスキルを手に入れると、そのスキルをマスターすることができるというのか?そういえば俺もユイも称号を持っていたしユナが魔道機のマスターをしたことでユイの魔剣を手にしているんだよね。

しかしユナはまだ俺の妹のユイナとユイにユムの三人だけしか、魔装機を使って戦っていなかった。俺はそんなことを思っている時に、扉が開きそこからユナが現れたのである。そのユナの後ろにユートもいたのであった。

「よかったよ。お兄ちゃんが目覚めてくれて。心配していたんだよ」

そういって俺をぎゅっとして頬にキスをしてきたのである。そして俺は少し恥ずかしかったがユナはすごく安心した様子だったのである。そしてその光景をみたユートも微笑みながら俺の方に視線を向けてきたのであった。

俺はこの部屋を調べてみたら、俺達がここに来た目的でもある『聖石』が見つかった。そうすると、ユイがユカという女性を召喚してみるといいと言っていた。そうするとそこに『聖魔鉱石』を護っていた『聖魔人』が現れ、ユトはその聖魔人と互角に渡り合った。俺もそのあとに魔刀を作ってから参戦したのである。

それから俺はユマと『聖光魔法』を使い魔人を消滅させることに成功する。

ユイの方はユマが作り出した魔銃でその相手を追い詰めていくことができたのである。ユマが作り出したその銃は『神銃』という名前で『銃姫』と呼ばれる存在でユイ専用に作られたらしい。その銃の性能は他の銃よりも性能が優れていてユトの聖魔剣よりも上の威力で放つことが可能なようだった。それでユトはユナの手伝いで相手を追い込み、そして最後にユマの銃の魔弾の威力により相手の体を貫いていた。

そして俺はその後から、そのフロアにある残りの『聖魔鉱石』を吸収していった。俺には吸収された相手の情報を見ることができる。だから、この階層のボスが誰だったか分かる。それで俺は『魔剣使い』、『拳闘士』、『魔導機人』と表示されている。

「ふぅー。やっとこれで次の階に行くことができそうだな。それに俺達は強くなっているようだ。この調子ならユイ達を守りながら戦えるようになりそうだな。それと『魔石融合』の能力も使えるようになっているな。まあこのスキルがあればいつでもユマの『錬金』をコピーできると思うから大丈夫だと思うけどね」

俺はそう呟く。そしてユート達を連れて俺は次の階に移動することにした。俺達はその部屋に足を踏み入れる。

次の階には大きな広間があってそこには巨大な竜が立っていたのだ。そしてそいつを見たときに俺は直感で理解することが出来たのである。そうして俺は『聖神竜(ドラゴンロード)』(魔剣使い)の称号を持つ者と戦いを始めることにしたのだった。俺は『聖剣』を作り出してから魔剣で攻撃を仕掛けることにした。

俺と魔人の攻撃で戦いが始まり俺はなんとか勝つことが出来てその素材を吸収することに成功してレベルが上がった。俺は魔素吸収も忘れずに行うのである。それからすぐに俺の目の前に現れたのである。『魔獣人』(魔銃使い)の称号を持つ者が。魔人が持っていたのが、魔銃だったので、俺はすぐにユイ達を守ってくれと言ってユト達に魔銃使いと戦うように指示を出す。

そうすると魔人を倒したユトとユナが駆けつけてきてくれた。俺はユトにユイのことを頼むと、魔剣使いとの戦いに挑む。魔剣の能力は魔素を吸うことでどんどんと上がっていくが、俺が使っていると吸収能力が発動しないので俺の体に魔素を溜め込むことは難しかった。なので魔剣はユイの魔器の銃口と一体化するようにして俺はそれを『銃剣』と名付けて使ってみた。魔剣は、魔素吸収率が上がり、魔器から放たれた弾丸は、さらに威力が増し、魔器の威力は格段に向上していった。そのおかげで何とか倒すことに成功したのである。

ユトは俺と一緒にその魔人を倒すのに必死になっていたので他のモンスターを倒している余裕がなくユーナとユートに任せていた。ユナは、自分の持っている武器が『魔導機』であることもありかなり相性が良く、次々とモンスターを倒していって、俺が倒せていなかったモンスターを倒していたのである。

俺が倒したのは次の階層の敵で、次は『竜神人』(拳闘士)の称号をもつものがいた。ユトがその相手と戦い始め、ユナは、自分の魔銃にユナの『精霊獣』とユナが生み出した『妖精人形』である『リリアナ』が合体した。ユナと『妖精獣』である『ラピエル』との相性はかなり良く、『魔砲士』で召喚された魔導機が『魔獣人』に対して放った魔力砲撃が、ユトとの戦いでボロボロになっている竜神人に直撃すると、そのままその体が消滅したのである。

そしてこの階では『精霊使い』の称号を持つ者と『剣士』の称号を持つ者の二人組が現れる。この『剣士』と『戦士』の二人ともがユイを狙っていたようでその二人が戦闘を開始すると『剣技士』(剣士)の称号を持つ者が俺に斬りかかってくる。そして『格闘使い』(拳闘士)の称号をもつ者も俺に襲いかかってくる。

俺は二人とも相手にすることは出来ずにいた。俺は『創造主』と『創造する者』と『回復魔法師』を同時並行で使っていくことにし、『回復魔法師』(回復)のレベルを上げておき、そのあとに『聖魔回復』を俺自身に使用し俺の回復能力を一気に上昇させていき俺自身も回復を行う。

そうしているうちにユトは俺が助けられなかった二人の敵を圧倒し始めてあっという間に撃破していた。それから少ししてから、ユトはこちらに向かってきてくれていたユートと合流して、二人で魔族を倒せるようになっていた。そのおかげもあり、この階の敵は全て討伐することに成功したのである。ちなみにユマとユカもレベルを上昇させてもらっているので戦力は上昇していたのであった。そうしているとこの階に来た目的の物を見つけた。

俺は、ユト達にここで待つように伝えると、一人でその鉱石を回収するのである。

そうするとユナとユマの魔銃が突然変形し始めたのだ。

「なんだ?」

そう思った直後だった。ユナの魔銃からは『聖神龍』が現れ、そしてユマの方には、ユナの体と同じぐらいの大きさの巨人が現れたのである。そして俺は、この二つの種族を俺は知っていると思ったのでそのステータスを確認してみるとこんなことが書いてあった。

『神銃聖神王(しんじゅうせいじんおう)』(ユイナ専用)

『錬金機神(れんきんきがみ)』(ユカ専用)

と、そしてその武器がどんな武器なのかを理解すると俺はすぐに、ユマをユナのところに連れて行ってもらうように頼んだのである。そうすると、ユマは了承してくれた。

そして俺は、ユマとユナを連れてその部屋から出たのである。

俺達が次にこの部屋に入ってきた時そこには大きな機械があったのである。その大きな金属の塊を見て俺は確信したのである。俺はそれを回収しようとしたがそれは俺にはできなかった。なぜなら、この世界に無い技術であるからだ。俺はそう思うとその『機人』が俺の前に来て言った。

「我をこの世界に連れてきたのはこの者たちです。そしてそのこの者達には、我の技術を全て継承させるつもりだと仰っていました」

俺はそう言われると、その言葉を信じてその機体を解析し、魔導機を作ることができる魔道装置を作成していった。それからユマやユナの力を借りて、俺は魔道機の作成に成功した。そしてユイナも無事に召喚することができた。

そうして俺はその魔道機の魔道機を俺達の国である王国に持ち帰った。

俺はその『機人』が言っていた通り、俺がこの世界で手に入れたスキルを全て、俺が連れてきた人たちに与えることにした。そうすれば何かが変わるかもしれないと思っていたからである。俺がその国に帰ると国王は俺が帰ってきたことに対して涙を流し喜んでいたのである。俺のスキルはみんなが使えるわけではないが俺が直接指導していれば覚えることが可能なのである。俺は、俺の国にいる『魔王』から守る為の準備を整えてから『勇者』であるユイに、ユイの仲間になってくれる人達を紹介してほしいと伝え、ユイのパーティメンバーはユナを含め六人だけだったが俺が、ユイと一緒に行動できるように手配を行ったのである。

俺は、その準備を終えてから『聖石』を集める為に、また別のダンジョンへと向かう。その『聖石』の階層では、大量の魔物たちが襲ってきたのでそれを全て倒すことにする。

俺は、その階層に潜んでいるモンスター達を倒していくがなかなかドロップアイテムが落ちなかったのである。俺はそれを見てこのフロアのボスの強さを確認する。この階層には、『神獣』と『神竜』がいる。そうして俺が『鑑定眼』で相手の強さを調べると俺が勝てないほどの強い個体だった。だが、そんな強敵だからこそ、相手の情報を少しでも多く得て戦いに挑もうと思い。その階層のボスの情報を得ることに成功するのであった。そうして情報を得終えた俺は、ユイ達に連絡を取り俺と合流できるかを聞くと全員が集まることが出来るということだったので俺は、そこで合流する。

そして俺達は、一緒に行動することに決めるとすぐに『聖魔鉱石』がある場所に向かうのである。そして俺はすぐに【錬金】を使って魔剣を作りだしそれをユイに手渡す。その剣の名は『魔剣 雷帝刀(らいていとう)』だそうだ。その剣の効果は攻撃力+2000、魔素の吸収率が100倍になる効果があり、魔素を吸収する能力がかなり高くなっていた。

ユイは魔器と魔剣の合体攻撃で、この階層のボスである、竜騎士にダメージを与えることに成功していたが、竜騎兵を倒すことは出来ておらずにいたのだ。だから俺はまず竜騎兵隊を倒すことから始めるのである。

俺が先陣を切ることで、竜騎士の攻撃対象を自分にすることが出来たのである。俺はそうするとユナは俺が作り出した竜騎兵の動きを止めるために動きを止め、俺の背中を守ってくれた。

「助かる」

「気にしないでいいよ。だって私たちは仲間なんだもん!」

俺はそれに微笑み返しながらもすぐに戦闘に集中することにする。それから俺は『神撃』を放つことによって一撃で仕留めることができ、ユナもその攻撃によって竜騎兵を動けないようにしてもらったおかげで俺は次の行動をすることができて残りの敵を倒したのである。するとその魔導機は光の粒子となって消えたのであった。

そしてその奥にある鉱石を取ろうとするとそれを遮る者が現れた。そうして姿を現したのは、この『聖魔鉱石』を守るかのように出現した魔人なのだ。俺はその強さを感じ取りすぐに撤退することを考えたがその時には既に遅かったのである。

「あなたは危険ですね。今のうちに排除しておきましょう。それがあなたのためになります」

すると、その魔人は剣を作り出し俺に向けて攻撃をしてきたのである。俺はすぐに避けようとするが、避けることが出来ずに剣は俺の胸を貫くが俺は『超回復』の効果で致命傷を負うことはなかった。俺は、そのままその剣を引き抜くと俺はすぐにその場から離れた。そして『聖盾』を取り出して構えた。

その瞬間に剣で斬りつけてきたが俺の持つ剣とぶつかり合ったのだ。その時に俺に痛みが走り腕から血が流れ落ちる。

俺はそのまま力を入れて魔人の体を斬りつけるが、相手は全くダメージを受けていなかったのである。

俺の持っている『聖槍』『聖斧』『聖鞭』では、その体に攻撃が通らなかった。俺が持っているスキルの中でも最大の攻撃力を持っているはずの技をその男は涼しい顔をしたまま平然と受けきっていた。その事実を知ったとき俺は戦意を失いかけていた。だがその時にユナは立ち上がり『光魔法:光刃』を魔人に放った。

そうするとさすがの魔人もその魔法の威力に怯んで後ろに下がっていった。そしてユナは俺に言ったのだ。

「私はユマと違ってそこまで魔法が得意ではない。でも、ユイちゃんが私の武器を使ってくれるから私にもユトの手助けをすることは出来るの」

「ああ。分かった! ありがとうユナ!!」

俺はユナの言葉を聞いて、戦う気を取り戻したのである。

「俺の力を全部使ってやる!!!」

俺はユナにお礼を言うとすぐにその『神獣』(『精霊神王』(せいれいしんおう)ユイナ専用)を纏うのである。そしてすぐに『聖魔障壁』を展開しながらユナに向かってこう言う。

「この壁の内側にいてくれ!」

そうすると、その言葉を言った直後俺の後ろにいたはずなのに俺の横に来てその拳を構えると『雷の矢』を放ったのだ。その魔人はその矢を避けきれずに当たり、かなりのダメージを負ったのだった。

そのタイミングを逃すわけもなく俺はすぐに攻撃を仕掛けることにした。

そうして魔人と攻防を繰り広げること数分後に、なんとか勝利することができた。俺はその戦いの中でユナの装備が壊れていることに気づいた。そして俺はそのことに驚きすぐに新しいものを用意してあげることを心に決めたのである。それからすぐに地上に戻ろうとしたのだが魔人はまだ倒れずに立ち上がってこちらを見据えていた。そして、口を開いたのだ。

「あなたは何者なんですか? ただものではないとは思いましたけどここまでの力を持っていながら何故あなたはあの女に加担をしているのですか?」

そうして俺は答えるのである。

「俺は、ユイを絶対に死なせはしないと決めている。ただそれだけだ。それとお前は誰なんだ?」

俺はその言葉に対して少しだけ疑問に思ったことがあった。それはその男の喋り方が俺が今まで聞いたことのあるような話し方だったからである。俺にはそれが不思議でしかなかった。

そう思っているとその男が話を始めたのである。

「私は、『神聖国アヴァロン』の元教皇『ゼスト』と申します。それで質問なのですがまだ『魔族』と戦うつもりがあるのでしたら、この私が『魔石』の作り方を教えてもよろしいですよ」

俺はそいつの話した内容を聞き驚くと同時に納得してしまったのである。なぜなら『ゼスト』という名前は『聖神教』の最高指導者の名前であるからなのだ。俺はその男の顔を見てからもう一度聞き返した。

「なぜ、俺たちにそれを教える」

俺はそう聞くと『ゼスト』と名乗った男が笑みを浮かべながら答えてくれたのである。その言葉には何かしらの意思を感じたがそれを聞く必要もなかったので、それ以上何も聞かなかったのである。それからその男は「もし知りたかったのであればいつでも聞いてください」と言い残して去っていったのである。

俺はユナとユナをこの国に残すことにした。そしてユイ達がいる国に向かったのである。その道中に魔物達がいたのだがそれを全て殲滅しながら進んでいったのである。そして俺が『機竜』に乗らずに走って移動している理由は、俺がこの世界に持ち込んだ素材は俺が自分で使うために作ってきたものであり、他人が簡単に使えるようなものではないため俺のアイテムボックスの中に入れてあるのだ。そのため俺は走っていくことにした。そして俺は、その国に着くとすぐに王様に謁見を求めたのである。俺は、ユイナから受け取った書状を渡すとすぐに国王に渡すことができたのであった。

そして、俺は『機神』を作る為に必要な道具を作るように指示されたのである。そして俺は、それを了承してからすぐに行動に移ったのであった。俺は、俺にしかできないやり方でその道具を作ろうと思ったのだ。俺の作ったその道具の名前は、『機導』と名付けたのである。その『機導』に、その魔石を入れることでその魔導機の起動が可能となるのだ。だが魔石が無ければ、この機械を使うことはできないのだ。そして俺は、それを俺が作る前にまずは、魔導機の作成を先にすることにしたのだ。俺はこの『聖石』の階層に潜んでいた魔獣を倒して魔核を集める。それを『錬金術』を使って『魔導機 黒式』の魔素吸収装置として使用しようと考えたのである。俺はその『魔素吸引』の能力を利用して『魔素吸収機』を錬成していくのであった。それからしばらくすると完成したのである。その『機素 吸素機 型 改式 魔導 炉 付 き(ましろー)』というその魔導機は『魔導 導』と同じ仕組みで作られており、それを錬金によって改良し魔力の増幅機能を付けたものである。そして俺はそれをユイのところに持ち運びユイに取り付けたのであった。ユイはその『機素 吸いとれー 型』を取り付けたときに「わぁ!!なんかすごいね! これで私もっと戦えるようになるかも!」と言って喜んでいた。ユナもユイの姿を見て「良かった!」と言っていた。

「じゃあ後は俺の作業だな」

俺は、俺しか出来ない『神鋼』『機竜』を作ることにしたのであった。まずは、『聖魔鉱石』を砕いて混ぜていくとどんどんと俺のイメージ通りの形になっていくのだ。俺はその作業を続けて1時間ほどで完成させたのである。

「よし完成っと! とりあえず、この魔鉄は『錬金工房』の収納スペースにしまっておくか」

そうして俺が、その魔剣を仕舞おうとする時に、その剣の魔素が俺に干渉してきたのである。その瞬間に剣が俺の手を離れて空中に飛んでいき俺の目線の高さくらいのところで止まるのであった。

その剣を見ていたユナは、とても驚いており「そんな!『魔剣 エクシード』がこんなに早く契約者を見つけ出すなんて!」と言っているのだ。

「『エクシード』って、あの剣の正式名称か?」

俺はユナの発していた言葉に反応してその魔剣について詳しく聞き出したのである。するとユナは教えてくれることになったのだ。

『聖魔鉱石』(せいまじこう)の鉱石が、元々の強度が他の鉱石と比べて遥かに高いため、加工をする上での注意点や扱い方をきちんとしなければ使用者に大きな負荷をかけることになるのだというのだ。それには様々な種類があり『聖魔剣』もその鉱石で出来ており、普通の人間が手に持とうとすると、その重みで体が押し潰されてしまうのだと言う。そしてその鉱石の最大の特徴は鉱石自体が魔剣の形をしていることである。その鉱石を扱えるものは『鍛冶士』の才能があると言われていて、その鉱石を使って剣を造れるのもこの鉱石を扱うことのできる職人だけであり『鍛冶士』になるには相当な努力が必要なのである。その剣には、聖魔剣の中でも最上位に位置する『聖魔結晶』というものが使われているらしく『勇者の魂を持つ者が装備することで初めて真の力を発揮し、所有者を守る聖魔剣となる』と言い伝えられていのだ。だがそれはあくまで伝説であり、実際にはそんなことはないと『聖魔剣の継承者』である『リッカ』様から教えられたのだ。

(でも俺の鑑定眼によるとこれは本物の聖魔剣だよな? というかこの世界には、本当に勇者が存在するんだ。その人物に会うためにはどうすればいいのかを俺が調べないとな。それで俺は『鍛冶師王級』のユニークスキルを手に入れてこの剣を作り出せるようになったんだし、でもその人物は本当にどこから来てるんだよ!)

そう思っているうちにその刀身から徐々に輝きがなくなってきていた。そうしているとユナが俺に言ったのである。

「それは『エクスシード』と呼ばれているものだと思うのだけど、どうして『聖魔石』(せいませいせき)ではなくて魔鉄で作られた『聖魔鉱石』で出来たものを持っていたの? それはこの世界の人が持っているものでもないはずなのだけど。『聖魔石』の方が耐久性もあるし何より軽いから」

そう言ってユナはとても興味津々でその『聖魔鉱石』の剣を見ているのだった。そして俺はその問いに対してこう答える。

「俺には俺だけの力があるのさ」

俺は、そう言うとそれっきりユナから視線を外す。するとユナはすぐにこう答えてくる。

「そっか! ならこれ以上は聞かないことにしておくね!」

俺はそれを聞いてユナのことを信頼して、話を切り上げるのである。

「ありがとう」

それから俺の作った武器の説明をすると「この魔導機を私に取り付けてほしいんだけどできる?」とユナに言われたのだ。その言葉を聞いたユナは「私のことを守ってくれる?」と不安そうな顔をして聞いてきたのだ。

だから俺はユナにその『機導 機神』の試運転がしたいのだろうと思いその『機導 機神』の使い方を教える。その説明を聞き終えたユナは俺の目の前に座り込み、真剣な表情をして俺の顔を見つめてきたのである。俺はユナが『機導 機神』の操作方法を覚えて自分の手足のように操りながら、俺に向かって斬りかかろうとしていることに対して驚きながらユナの行動を見守ることにした。

そうするとその『機導 機神』の攻撃が予想よりも速く動き回り、俺は攻撃を防ぐことができずにそのまま攻撃を受けてしまい後ろに飛ばされてしまったのである。そして俺の後ろにいた、ユーノとルーノは吹き飛び、気絶してしまい動かなくなったのである。そして俺は『機導 機神』に「ちょっと待ってくれ」と声をかけたのであった。すると『機導 機神』から「かしこまりました」と音声が流れてくるのである。そして俺はすぐに『錬金術』を使って傷口を治していき『回復薬』を調合してからその二人に飲ませたのである。そして俺はすぐにそのユナと『機導 機神』の元に行くと「もう、この機体では、今のユイの実力に耐えられない」とだけ伝えた。それからユナに「ユイにこれを付けさせてくれ」と俺は頼み込んで、『魔導 機神の心臓 機導 炉心 魔素供給 機能型』というユナに付けてあげたものと同じように改良した魔導機をユナに装着させることにしたのである。するとユナのステータスが大幅に上昇していたのである。

「ユイも俺の作るものに乗れば強くなれるということだ。この『機導 機神』は、ユイ専用の機体にしようと思うがどうだ?」

ユナは嬉しそうに返事をしていたのである。そして俺は、ユナにその『機導 機神』の動かし方を教えながら一緒に行動することになった。

そして俺がこれからのことについてユナと話をするとユナは「私がここに残る意味はなさそうだね」と言ってから「ユナもユイと一緒に行動する!」と言っていたのである。そしてユナのこの城での世話係のメイドが「私も残ります!」と言ってくれていたので、この子にはユナに付いていてもらってユナの身の周りのサポートを頼んだのである。

それから俺がユカさんに挨拶に行こうと思っていると告げると、すぐに「私は先にお風呂に入らせて貰うよ!」と笑顔を見せてから、すぐに走って浴場の方に行ってしまったのである。それからユナは俺の作った魔導機の試運転をすると、今まで見たことのないスピードで走り回りそして剣技で魔獣を倒していくのであった。そして魔導機の試し乗りが終わり戻ってくるなり、俺はユナの頭を撫でると気持ち良さそうな顔を見せていたのである。そして俺は「少し休むといいぞ」と言うとそのユナは、「そうさせてもらうね。あ!それと今度のお祭りに連れて行ってくれないかな? 実は行きたかったんだけど、なかなか機会がなくてさ、ダメかな?」と言われたのである。俺は「もちろんいいよ」と二つ返事で承諾をしたのだ。

その後、そのユカさんのところに行ったらなぜかとても不機嫌になっており、何かを呟いていたのだ。

それを聞いていた俺はこう言っていたのだ。

「なんで、こんな男の娘ばっかりいるの!!︎ はぁはぁはぁ!」

それを耳にしてしまったユナは俺を背中にして警戒する姿勢を見せるのだが、ユカさんがいきなり「はっ! 私ったらはなんてことを! 私って本当に何を考えているのかしら! それよりもユイちゃんがユイ君と一緒だと聞いた途端に、変な感情が出ちゃってごめんなさいね! でもこの二人が本当に仲良くなってくれたようで、本当によかったわ!」と急に冷静な感じになり話を始めてくる。俺はその変わり身の早さに驚きを隠せない。するとユナが俺の方に近づき、俺にだけ聞こえるように「なんかこの人のユナに対する態度が変わったよね?」と囁いてきて俺に耳打ちしてきたのだ。俺はユナに対してこう答えることにした。

(まあ多分だが、さっきユカさんが俺のことを見ながら「はぅ!」とか言い出して俺に好意を持ってくれてるって勘違いをしてたのが恥ずかしくなったんじゃないかな?)

ユナは俺の言葉を聞いて納得した様子で、ユカさんに対して俺が「気にしない方がいいですよ。いつもこんな感じなので、特に害があるわけじゃないですから」と伝えると「うん。ありがとう。なんだか凄く気遣ってもらっちゃってるみたいだけど、大丈夫だよ! 私は別にあなた達に興味がある訳でもないから、それにこの子が私にとって妹みたいな感覚になっちゃったからつい、構いたくなっちゃってるだけだから、迷惑をかけないように頑張るわ」

そしてその会話を黙って聞いているルーノがいたのだ。俺はルーノにも同じように話しかけてみた。ルーノの反応を見た後に、俺から質問をする事にした。

俺は「君はここで何をしているんだ?」と言うと話してくれた。それによると「俺はこの国の第二王女である『サーヤ=エルネスティーナ』の専属執事をしているものだ。だから俺の仕事はそのお嬢様の護衛をするのが俺の役割になっているんだ。ただ今は俺しか護衛をすることができないんだ。なぜならこの『勇者召喚』によって『聖剣』を持つことになったお方がこの国を離れているからだ。だから俺はお嬢様が戻って来られるまでの間はここを守る仕事を任されているんだよ」と言っていた。そして俺は、ユカさんとルーノの話を聞きながらユカさんのユナの面倒を見たいという言葉が、本音かどうか確かめるためにこう聞いてみることにした。

俺はユナに対してユナに聞くことがあると言ったのだ。

「このユイはさ、俺が作ったゴーレムのコアを使った機導 機神を持っているユナは知っていると思うんだが。俺はユナがユナとしてこの世界に呼ばれた時に俺のスキルである『機導』を使って、ユナが元々持っていたユイとルーノに、魔鉄の体を作ってそこに魂を入れることによってユナの中に眠っていた力を引き出すことに成功したんだけど、それはユナもユイも同じ能力になるはずだったのに何故か、ユナの方が『魔素保有量』と『魔導機操作技術』の数値が高かったんだ。これについて何か心当たりはあるかい? 俺の予想では『機導 機神』の影響だと思うんだけど、どうだろうか?」

その話を聞いて、ユナは自分の手を見て考えていたのである。そしてユナも「確かにあの魔導機に乗っていた時は、力が沸き上がってくるような気がして、そしてもっと早く動けるし、魔力だって沢山出せそうな感覚だった。その感覚を思い出すことができるんだけど、ユイはそんな事はないの?」と言ってきたのだ。

俺は、そう言われるとそうかもしれないと思ってしまったのである。そして俺の考えが正しかった場合はユナとユイは『機導』という存在の加護を受け、ユナだけがユイより強くなってしまったということなのだ。俺はユナに「俺に言えることは一つしかないな。それがどんな影響を出すかは分からないが、俺はその機導の力を使ってユナの事を必ず守ってみせるから安心してくれ」と言うと、ユナは「わかった! 私も頑張る!」と言っていたのである。するとルーノが真剣に俺に向かって話してくる。

「この世界を救うのが『勇者』と呼ばれる存在であるのならば、それを補佐する役目を俺はこの国の王から承っているのさ。俺も君たちのことをできるだけサポートしていくからこれからもよろしく頼む」と言って頭を下げてきた。そしてユナも俺と話をしたいと言い出してくれたのである。俺はユナと二人でルーノのところに行き話し出すことにしたのだ。まず最初にルーノからは「ユカさんについてだがあれはユカさん自身の問題だから放っておくのが一番だと思うぞ。それと、もし困ったりすることがあったとしても、ユカさんなら自分で何とかできるはずさ。そしてこの城のメイドたちはみんな、そのことについては良くわかっているはずだしな。だからあまりユカさんに深入りすることはないぞ? ユイとユカさんが親密になってくれるのは俺としては喜ばしいがな。でもそれで、お前達が巻き込まれたりしても、ユカさんの責任ではないということを理解して欲しい。それとユカさんはこの国の第二王女ということになっているから、俺達の立場上色々と問題があるから、あまり接触するのはやめてほしいという気持ちもあるからさ。まあユイとユカさんの相性はかなり良いようだから心配はいらないけどな。あと最後に一言言っておいてもいいか? 正直に言うとな。俺の『機導 機神』をこの城に置いて行ってくれないか? そうしたらこの城は今よりも格段に安全になると思えるんだ。だからその判断だけは頼んでも良いかな?」と言われてしまったのだ。その言葉を聞いてユナは少し考えてから、「わかりました」とだけ伝えていた。すると俺は、俺とユナに何かがあった場合にユカさんの『錬金工房(武器付き)』を置いていこうと思っていたのだ。俺のスキルの『魔導』の力と魔石があれば、『錬金』の力で武器が作れることが既に確認できているので、それをユナの部屋に持っていくことを提案しようと考えていたのだが、ユナが「その『錬金』っていう力で魔導機を改造できないの?」とユナに言われたので、俺は試しに『魔導銃』、『魔導シールド』『魔導ソード』をそれぞれ一丁ずつ作ることに成功する。するとユナは大喜びで、すぐにそれらの道具の使い心地を確認し始めたのだ。そしてそれらを作った後はユナのところに残って、ルーノと一緒に俺とユナは城を出発することにした。それからすぐにルーノには、「ちょっと待っていて欲しい」と言われると俺は待つことにしたのである。

それからすぐにルーノは戻ってきた。そしてすぐにルーノに案内され、この城の警備兵がいる場所に連れてこられて、「これを持っていけ」と言って渡してくれた。それから俺は、それをポケットに入れて、俺達はルーノに礼を言い城を出ていくのであった。

その後ユイとユナの二人と合流しユナには、そのまま俺の作ったゴーレムを遠隔操作してユイとユナの二人の護衛をしてもらい、ユカさんとはそこで別れた。そして俺たちは魔王軍が支配している大陸を目指して歩き出し、ユイは機導 機神のモードを『武装』に設定するとユトの体の一部だった部分から魔鉄製の『剣の翼』を作り出し、それを『飛行形態』に変形させ、空を飛びだしたのである。俺はその光景を見て改めて『勇者召喚の儀』というものがとんでもない儀式だと理解できたのだった。

ただこの『聖具』の能力の確認のために俺はこの聖都に残ることを決めた。ユトは俺が残って大丈夫なのかと気遣ってきたのだが、この聖都の戦力で、ユムとユナが本気で暴れた場合、俺以外の人間で対抗出来る者がいなかったのだ。だからこの二人は俺が側にいない状態でも十分に戦えるのかという疑問があったが、俺がいない方が、二人が全力を発揮して全力を出せるのではないかと思ったのだ。

俺達3人は『アルサラーム』の王都にある『聖剣ゼフブライン』がある神殿に向かうため、馬車に乗り込むとすぐに出発したのである。ちなみにユナにユイは俺のことをお爺ちゃんと呼ぶようにと言っておいた。俺がおじいさん扱いされると嫌なのでそのように呼ぶようにと言っておいたのである。ただ俺を名前で呼び捨てにしてもいいとも言ったがユナは俺の事を名前を呼び捨てでは呼ばなかった。

そしてユナから「私のことも名前にユをつけて呼んでくれたら嬉しいな。だって私にとってあなたもお姉さまも家族のような感覚なんだから、だから私も仲間はずれみたいになるのは寂しいんだもん」と言われてしまう。そのユナの言葉を聞いて俺は「分かったよ。これからユナのことを呼び捨てで呼ぶことにする」と言うと、なぜかユイに睨まれてしまったのである。

そして『聖剣ゼフブライト』のところまでは、特に大きな問題が起こることもなく、順調に進み俺とユナ、ユイは無事に神殿に到着した。

神殿の中に入ると俺の持っている鍵を使って祭壇の封印を解き『アルサーディア=ルーセント=グラニィ』と名のる少女に会おうと考えた。そしてその準備をしていると、急に神殿の中にいた騎士達に取り囲まれたのである。俺とユナとユイはその騎士達を鑑定してみたところ、全員かなりのレベルを持った者ばかりだったのだ。

そして取り囲まれる前に気が付いたことなのだがこの神殿にいた巫女達の姿が見当たらないのだ。俺がその理由を考えていると「おい、貴様はここで何をしている」と話しかけられた。

「えっと。この『アルサーディ=ルー=ランデル』さんに、用事があるんですよ。俺は『ユウキ』と言います。そしてこの二人は『ユイ』と『ユナ』って言います」と言うと俺の話を聞いていた『アルサーディ=ルー=ランスラネルル』と名乗る人物とその部下たちが驚きの顔をする。

「そ、その方の名は『真樹様』ではないのか?」と言われた。その名前を聞いたユナが「あ、この子あの時の女の子だよ。覚えてる? この子はあの時一緒に来たんだよ? 名前は忘れたけど、あの時も偉そうに喋ってたよね? でもそのわりに全然、威厳を感じられない人だよね」と言ってしまうと、その子は激怒し、俺達に向かって怒鳴りつけてきた。

「私は『ラルネルア』という。貴様たちのせいで我が国の聖女が大変な目にあっている。今すぐ聖女を解放するように。そして貴様に預けていた我が娘を返せ! でなければ力づくで奪い返すまで!」と言った。そしてそのあとは一方的にその人物が話していた。その話の要約としてはこの国が滅びかけているのでその責任をとって、俺が持っているはずの『勇者の力の源となる物と、それを持つ資格のある存在を連れて来い』と言うことだった。

俺はユナの方を見るがユナは首を振って否定してくる。そしてその『真祖』である女性を見るとその人物は「それはできません」と答える。

そしてその会話のやり取りを聞いて、その女性の名前がわかったのだ。そしてユナの話ではその女性の名は、『ルーネルーテ』と言うらしい。俺達がそのルーナルーテに話を聞いてみたのだがその女性は、自分のことを『真の王の後継者』と言っている。

俺には正直よくわからないがユイは、その『真の王』と呼ばれる存在について知っているようで、ユナもその『王』と呼ばれる存在である可能性が高いと思っているようだ。俺も少しは考えたけど『王』と呼ばれるような人物がこの世界に一人だけしかいないというのは、あり得ない気がした。

そして俺はそのルーナルーテとの話を終えて、この場を立ち去ろうとすると、また騒ぎが起こったのである。今度は何が起こっているのだろうと考えていると「なんでお前みたいなガキが『真王様』を知っているんだよ?」という質問に対して、「そんなの決まっているじゃん。この人は『魔王』を倒したことのある唯一の勇者様だよ。そして私達が崇めるべき存在でもあるんだからね。まぁでもあなた達じゃ、到底勝てないから、無駄な抵抗はしない方がいいと思うよ」と言っていた。

その発言を聞くと俺のそばにいる騎士や、神殿を守っていたと思われる神官達が動揺し始めた。俺がその様子を見て、「どうなっているんですか? 俺達は普通にルーナルーテさんに、俺の持っているものをここに持ってくるように指示を受けただけで、ここに連れてくるように言われたのは確かですけど。それにユナの発言から察するに『魔王』を倒して勇者の力を持つことになった人は、『勇者』と呼ばれず『真の王』と呼ばれた存在が過去にいたということですか?」と聞いたのだが、答えてもらえることはなかった。すると――

俺は『勇者召喚の儀』がどのような儀式なのかを聞こうとしたのだが、やはり教えてもらうことができなかった。するとユナが俺の手を握ると転移を行いどこかに連れていこうとしていた。すると目の前には、さっきのユトが立っていたのである。

俺は『錬金BOX』をポケットの中から出してから、その中から『機導術』で作りだされた剣を取り出すと、俺はその剣に『魔導機神』と念じた。

俺はその魔鉄製の剣を見た後、『錬金BOX』の『アイテム収納』にその剣を入れる。俺は、魔導機が作れるかどうかを確認してみようと思っていたのである。だがその魔鉄製の剣を入れた直後俺は意識を失ったのである。

**

***

俺が目覚めるとそこはベッドの上だった。俺の隣ではユイとユナが俺の腕を掴んで、眠っていた。俺は『錬金BOX』を起動させると『機導術』の項目から魔鉄剣を選択してみるとそこに『作成可能数1』と表示されていたのである。そこで俺は「魔鉄製の剣を作成するために必要な魔力量は一体どれくらいなのだろうか?」と思いユトの剣の柄の部分にあった魔石を一つ取り出し握りしめてから『魔鉄剣』のレシピを『錬金術』スキルを発動させ頭の中に流れ込んできたレシピを見ながら『錬金術』の素材を、ユカさんから渡されたものから使い作成してみたのである。

それから俺が作った魔鉄製の剣を手に持って『鑑定』を行ってみる。その結果が『名称:真なる聖剣アルサーディア 詳細情報

『聖なる』という言葉の意味を知ることが出来る剣。

聖剣『アルサラーティア』が『真聖剣アルサーディア』となった姿。

真聖とは真の聖であり、その力は使用者の意思に応じてその形を変化させると言われている。

聖剣アルサラーム 所有者固定化 製作者 ユウキ』と表示される。そして聖都に行く途中でユムとユナに渡していたあの二振りの聖剣が俺の作ったアルサーディアと同じものだったのだ。ただ、あの二本は俺とユムの二人の血を使って作り上げたものなのだが、この一本の場合はその作り方を間違えてしまったみたいである。そのため俺に作ることができたこの魔鉄製の剣もおそらく普通の品なのだろうと俺は思ったのだ。そしてユナを起こそうとして体を揺すっていると俺のことを覗き込んでいる人がいることに気がついた。その顔は間違いなくルーネルーテであった。

俺はルーネルーテのことを「なぜこんなところにいるんだ?」と思ってしまうがルーネルーテの方もなぜか不思議そうな顔をして俺のことを見つめているのである。俺がその理由を聞くとルーネルーテはその質問に対する返答をすることはなく「私と一緒に来てくれませんか?」と言われてしまう。そして俺はルーネルーテに「ちょっとまって下さい。俺があなたを連れていかなければならない理由を説明してください。そして俺の持っている剣がどうして聖剣と呼ばれているのか、それを知りたいんです」と言ったのである。

するとルーネルーテは驚いた表情を浮かべるのだが、なぜか俺の言葉を聞いたそのあと、笑みを浮かべていた。そして俺に説明を始めたのだった。そしてルーネルーテの説明を聞いた後に俺の疑問に答えてくれた。

俺達が今いる場所は『精霊国』である。ここはアルサーディアの住んでいる場所でもあるそうだ。そしてルーネルーテは俺にこの世界では『ルーナルーテ』と名乗ることになっていると言うことを教えてくれる。そして俺が持っていた聖典については「これはあなたの言う『真樹様』と呼ばれる人物の所有物であると伝えられています」と言われた。

そして俺達がこの場所に訪れた経緯についても、俺が持っている剣についての情報を得るためだと言う。そしてルーナルーテは俺に「『真樹様』と呼ばれる人物について教えていただけますでしょうか?」と質問してきたのである。

そして俺はルーネルーテに「わかりました。その前にまず『真樹様』がこの世界のどこに存在するかはご存知でしょうか?」と言う。

そしてそのルーナルーテの質問に対して俺は『真樹様』について知っている知識を伝えたのである。そして『真王の後継者である真王様の本当の名前を知っておられますか?』と聞かれた。

俺はその問いに対して、正直に答えようと決意し、真実を口にした。

ルーナルーテはその言葉を聞くと、真剣な表情になり、少し考えた後、その答えを出した。

そして俺達に向かって「私はこの世界を創造したとされる『真王の後継者』様に会わなければなりません。そしてその方を探し出すため、私は行動を起こすつもりなのですが、貴方も一緒に来てくれませんか? 私はどうしても会いたかったんですよ。あの方は『真王』が残したとされる予言書にも記されていた、私の探し求める『真の王様』様だと思えたので。でも私だけではこの世界で真の王様を見つけることはできなかったので困っていましたが、『真の王様』の居場所がわかったのですから私達は、すぐに『真の王様』を見つけ出すことが可能なはずなんですよ」と言ってきた。

そしてルーネルーテは続けて話し始める。

俺の質問の返答に対して俺は「俺は『真王様』という人について、よくわからないけど、もしルーネルーテさんに俺の力が必要なら、協力します」と伝えた。

そして俺は『錬金BOX』を取り出し、その魔石に『錬金術』スキルを使用すると『機導器 名称

『真王様の杖 ランクSSS 所有者 ユウキ』という文字が、頭の中に直接入り込んでくる。

『魔導機神』

『魔導機神 アルサラーティア』

この二つが魔導機の名前であることを理解する。そしてその名前の下にある説明文を読んでみると『この二つの装備はユウキの魔力を注ぐことで使用することが出来るようになる』と書かれていた。俺は『錬金術師 ユカ』にもらった、ユムの血液を魔導機に垂らすとその魔導機の名前が光り輝いたのである。

俺はユナにその事を伝え、ユナが持っていた剣にも同じことをする。すると剣の名前は『魔導剣 シルサーリア』に変わった。

俺は『機導神 アルサーラナーヴァ』という『錬金BOX』の『魔導機』を作り出したのだがその名称に違和感を感じたので俺は、その名称を『機導神 アルサーラナーヴァ』に変えた。

俺が魔鉄製の剣を作った時に使用した素材は、『賢者の石 小』『賢者の涙 中』『賢神の結晶 大』の三つだ。

俺達は『精霊国』から出る準備をすることにした。

俺は魔鉄製の武器を作りたいと思いながら『錬金BOX』を起動させると目の前には『機導剣 名称 真樹 詳細情報 ユナの魔剣の刀身を材料にして作成された『剣』。『ユナ専用魔剣 ユナの魔剣と同じ性能』と表示されていた。

その表示を確認した俺は、剣を作り出すために、魔鉄製のナイフを作る。すると俺の前に一振りの短剣が現れる。それはユムのために作っていた短剣と瓜二つだった。

ユナは自分が使っている短剣が、自分専用のものだと気付くと、「これはユウちゃんが作ったものだね」と言い出した。その通り俺はユムのために短剣を作成していたのであった。そしてその剣を見た瞬間『真王の魔道具箱』から、『機導剣

名称 真王の鞘 詳細情報 真王の盾と同等の能力がある剣 所有:ユウキ』と頭にメッセージが入って来たのである。俺は、その言葉を信じ、その魔剣を自分の『アイテム収納』の中に入れて、いつでも使えるようにしてから、腰に差してみた。それから『機導剣 アルサラーティア』を取り出す。

(このアルサラーはユムが持っていていいだろう)俺はそう考え、その『機導剣 アルサラーティア』をユムに渡すと「ユムはこれを持っていた方がいいと思う。この剣も魔剣だけど、こっちは魔剣じゃないからな。それにユムが使ってこそ意味のある魔剣なんだ」と説明する。ユナが魔剣を受け取ったところでルーネルーテがこちらにやってきた。

ルーネルーテがユイを「ルー、これからはルーと呼んじゃだめなの」と注意をしていた。どうやらルーネルーテはこの国の女王であるようだ。それで俺の持っているアルサーディを『真聖のアルサーディア』と呼んでいる。ルーネルーテが「あの真聖とは真の王という意味で真王様というのは真の王様のことを言うんだよ。だから真王様の本当の名前は『シンシ』ってことになるんだ」と言う。

その話を聞いた俺は「ルーが言っている『真の王様』っていうのはどういう存在のことなんですか?」と質問してみる。するとルーネルーテは「『真の王』様と呼ばれている人物はこの世界に存在する四人の王様のうちの一人であるらしいの」と話す。

それからルーネルーテの話を聞く。

『真王 名前? 種族 人族 性別 女性 特徴 初代真王 異世界人 ユマ様が転生させた最初の人 称号 真聖女ユナ 所持

『ユナの証 勇者ユージ』

所持者 ユナ(聖騎士に進化可能 現在聖騎士団の団長になっている)

『聖なる加護 魔王を倒した功績により得たユニークジョブ 魔王討伐時、勇者の力が弱まっているため効果を発揮することが出来なかったが、聖女の力を成長させることによりその効果を発揮した

『慈愛の心』

『正義感』この二つを持つ人物にのみ発現することができる。レベルが上がりやすくなリ、仲間になった者に癒しの効果がある』

『真王後継者 ユナ様は真王になることができる。真王となるために必要な資格

『女神の使徒 異世界転移してきたものに与えられる祝福。レベルが上がりやすくなる、スキル経験値が増加する、スキル習得速度が上昇する。さらに職業レベルが上がればスキルを自動取得する』』と俺達の前に表示される。そして『真王様の加護 全ての人が恩恵を受けることができる』という説明もあった。そのあとにルーネルーテが説明してくれたのは、その『真の王様』についてだった。そしてこの世界に『真王様』として崇められる人物のことについて説明をしてくれるのである。

この世界には五体の神様が存在していると言われているが、その中でも『精霊王』、『獣王』と、『真王様』がこの世界の管理者だと伝えられていると言うことを教えてくれたのだ。その『精霊王』と言う存在も、『魔獣の王』と言われるような存在である『獣皇 オルグニクル』と同等の存在なのだという。ただ違うところとしては『精霊王 』の方は、『人族の味方であり、平和を望んでいる存在である』と伝承に残っているということだ。

ルーナルーテは俺に対してこんな話をしてくる。それは「私は『真王様』様に会うため旅に出なければならないと思っています。なので、私に付いてきてくれませんか?」と言ってきた。俺はルーネルーテが『真王様』についてどれだけ真剣に考えているのかを理解したうえで「俺はこの世界で、俺が助けたいと思った人達を助けようと思っているんだけど、その人たちは、俺が困っているときに助けてくれようとする人たちなんですよ。そしてその人たちを守るためには、その人たちと一緒に行動しなければならないんですよ。その人達も、俺の事を家族のように思ってくれるので、一緒に行動したほうがお互いに安心出来るかなって思ったんです。そして俺は今の仲間達も守るためにも一緒に行動した方が良いと俺は思いました。でも俺はまだ、この世界で、何も成し遂げていません。俺はまだこの世界では何も成していないので、『真の王様』というのを探さなければならない理由がよくわからないです」と答えると。ルーナルーテは少し困った顔をしたけど、続けて俺達に話し出す。

「私の方で、調べさせていただいたところ、貴女達は本当にこの国の王族たちしか知りえない情報まで知っておりました。しかも私がお教えしたことではないのです。つまり貴方達がどこでそれを知ったかということになるのですが、そんなことが知れ渡ってしまった場合、この国は大変な事態に陥ってしまうことになります。私は、この国が滅びる未来など考えたくはありません。どうかその力の秘密については誰にも言わないと約束していただけないでしょうか?」と言ってきた。

俺が、「俺にできることであれば協力するよ。それとさっきも話をしたけど俺は俺のやりたいようにやるだけだ。俺はみんなを守る。それだけだよ」というと、ルーネルーテさんは、笑顔になって俺にこう言ったのである。

「私は『精霊王』様に『真王様』について何か知っていることがあったらすぐに私に伝えるようにしていただきたいのです」と頼まれてしまった。俺は『精霊国 』の女王であるルーナルーテさんが、ここまで真剣に考える『真王様』とは何者であるのかを知りたいと思った。

俺は、とりあえず俺の考えをルーナルーテに話すことにした。そしてルーナルーテさんに「まず俺は、『ユムユウナ』の二人を助けたい。そのために俺は『機導神 アルサーラナーヴァ』を手に入れようとしています。それで『真王の魔道具箱』の中に、『魔導機神 アルサーラナーヴァ』があります。そのアルサーラナーヴァの力でユナとユウナを元の世界に戻すことが出来るのではないかと考えて『錬金BOX』という魔道具を使って魔鉄製の武具を作ろうと考えている。俺は魔鉄製の武器を作ってこの世界の人たちを救いたいと考えている。それが俺が今やるべき事だと確信しています。『錬金BOX』は『錬金BOX ランクS』を作れるようになり、俺は『錬金BOX』を3つ持っているので『機導神 アルサーラナーヴァ』を手に入れたあとに魔鉄製の武器を作り出そうと思う」と話した。

それから俺達は、この『精霊国』を出る前にユイの装備を充実させることにした。それから俺達のステータスを確認するとユムとルーナはLv102になっていた。

『ユム』

『職業 戦士 LV102』

『サブ職業 狩人 LLV98』

『体力 16000』

『攻撃 5600』

『防御 3200』

『魔攻 8000』

『魔防 5000』

『俊敏 2800』

『特殊技能』

剣術LV100 格闘術LV99 体術 弓術 気配察知LV90遠見LV95 暗視 投擲 狙撃 槍術LV80 火魔法 風魔法 土魔法 水魔法 雷魔法 光属性回復補助 闇魔法 時空間 無詠唱 魔力消費効率向上 自動再生 固有技 瞬速連撃(瞬歩)

瞬刃烈波斬 双剣乱舞 瞬殺 超覚醒

『ユウナ』

『職業 騎士 LV102』

『サブ職業 賢者 LLV92』

『体力 8900』

『攻撃 6400』

『防御 4700』

『魔攻 7500』

『魔防 9000』

『俊敏 5200』

『特殊技能』

聖剣召喚 聖剣創造 身体強化 状態異常耐性上昇 アイテムボックス拡張 アイテム収納速度増加 高速治癒付与 精神系障壁 言語翻訳 魔力消費軽減 物理障壁 結界 隠密 気配隠蔽 時空間転移 飛行 聖属性回復 神聖魔法 生活火 生活水 聖属性付与 魔力消費量低減 自動修復機能 アイテム収納 アイテム共有 全属性攻撃付与

『ルー』

『種族 ハーフエルフ 職業 勇者 レベル201』

『サブ職業 勇者』

『体力 12800』

『攻撃 10500』

『防御 9200』

『魔攻 10000』

『魔防 8700』

『俊敏 16200』

『特殊技能』

聖剣術レベル50 勇者の証 女神の加護(女神様の加護経験値増加(極大)スキル経験値増加(中)ユニーク経験値上昇(極小)ユニークジョブスキル経験値(中)ユニーク経験値取得経験値(中)ユニーク経験値獲得量増大(極小))

女神の声 聖騎士への転職(条件を満たしていないため未解放)

真王の後継者 聖騎士(条件が満たされていません)

真王様後継者(条件が足りません)

真王様後継者の条件 真王様の後継者となるにはこの世界の四人の『真王』に会う必要があるらしい。その条件を満たすには、俺が『精霊王 』に会うか、『獣王 』に会うしかないようだ。

この二人は俺が倒すと約束している。

『ルー』のレベルが高いのは、『女神』の祝福を『獣王 オルグニクル』に貰ったからだということだ。しかしルーはルーネルーテさんから「あなたには特別な祝福があるのよ。それはあなたの魂に『精霊神の加護』が宿っているのよ。だから私と一緒に来てほしい。そうすれば貴女の本当の職業はわかるはずよ」と誘われた。ルーはその話を聞いて、自分の正体が気になったようで付いていくことを即決したのである。俺はその話を聞いた時にルーに「ルーも大変だったんだな。俺もルーと同じ立場にいたら、同じような行動をしてたかもね」と言ってルーを抱き寄せていた。

俺はルーがルーテルーテさんと一緒に行くと決めていたので、「ルー、俺はこれから仲間達と旅に出ることにする。ルーも『真王様』の件について情報を得たりとか、色々としたいことがあるだろうし。俺達と一緒に行動していて、もし困るようなことがあったならいつでも連絡をしてこいよ。俺の方からも『ルー』に連絡を取れるようにしておくようにする。何かあればすぐにでも『精霊の国 ルーネルーン』に来ると良いよ。俺達はいつだって『ルー』の味方だ」と言ってから俺が『機導神 アルサーラナーヴァ』を手に入れようとしていることを伝えた。ルーは俺と一緒にいるのを心待ちにしてくれているので俺は『精霊の国 』を出て旅を続けることに決めたのである。俺はルーに「ルーと会えなくなるわけじゃないからな」と言うと、ルーは笑顔になって「ルーはいつもシンヤと一緒にいたい」と言ってくれていた。ルーと俺は抱き合いキスをしてから俺はルー達と別れたのであった。そして俺達は旅立ったのである。俺はこの時、ルー達と離れて行動することで俺とルーとの関係に亀裂が生じてしまうのではないかと少しだけ不安な気持ちになってしまった。俺はそんなことを考えてしまいながらもルー達の姿が見えなくなってから、俺の背中に抱き着いている二人の美少女の顔を見て少し安心することが出来た。

そして俺は、『機導神 アルサーラナーヴァ』が眠っているという場所にたどり着いた。そこは巨大な樹木の中にあった。その大きな大樹の中に扉が1つあるだけだった。俺がその門に触れてみようとしたときに、「我が領域に入るか。我に挑むものならば覚悟するがいい」と言って俺の目の前に突然人型をした『神 機導神アルサーラナーヴァ』が姿を現したのである。俺はすぐに鑑定をしたが、その能力の高さに驚いたのと同時にこの世界の『魔導士の力』が全く使えないというのを思い出して、この場は撤退をするしかなかったのである。俺は悔しさを覚えながらも『ユム』と『ルー』と合流するために俺とメイラは移動したのであった。

俺は『機導神 アルサーラナーヴァ』が出現した瞬間のあの迫力を思い出す。圧倒的な存在感とその威圧感が思い出されて震えてしまっていた。その力の波動はまるで嵐のようなものだったのだと。そしてその強さに驚いて逃げ帰ってきたというのが事実なのだ。その『機導神 アルサーラナーヴァ』が眠りについているというこの場所に、俺はやってきた。そこで俺達はとんでもないものを目にすることになる。

「これは『魔導機神 アルサーラナーヴァ ランクSSS』!?まさかこれがそうなのか?しかもなんなんだ。この桁外れの強さは!?これじゃあ本当に化け物じゃないか。これを俺はどうやったら倒せるんだよ?」と呟いてしまった。そして俺は、その『機導神 アルサーラナーヴァ』の傍に立っている小さな『人型の機械』を見つけた。その『人型 機械』の胸元が開いていてそこに『鍵』のようなものがついていることに気がつきそれを手にとって確認をすると『機竜錠』と呼ばれる『魔石 』の中に収納されるタイプの魔道具の鍵だということが理解できた。そして俺は、ユムやルーにこの鍵のことを相談しようと思った。

「この『機導神 アルサーラナーヴァ』が持っているこの『鍵』ってやつが欲しいな。それにしてもこの子も『魔導機神 アルサーラナーヴァ』の一部みたいだ。こんなにも小さいのにすごい存在感があるもんな」と思ったので、俺はまずルーを探すことにしたのだった。

俺がしばらく歩いていると見覚えのある金髪の女性を発見した。

ルーテルーテさんはどうやらルーを探しているようで、森の中にいるらしいということだけは分かってきたのである。だからまずはこの『魔導都市シャリエ』のギルドに行くことに決めた。そして俺が冒険者ギルドに入ると受付嬢が挨拶してくれたのだが俺はその人に見覚えがあることに気がついたのだった。俺はその人に話し掛けてみることにする。

「こんにちわ。僕はタダノと言います。『ユム』っていう娘がいるのですが彼女はここに来ていませんか?」と聞いたのだ。そうしたら女性は一瞬びっくりしていたような顔をした後に答えてくれた。

「えっと、その子は私の姪っ子なんですが『聖具』を集めると言って旅に出ました。ですのでここにはいないと思いますよ。それでご用件は何ですか?」と言われたのだけどその女性の顔には俺を見つめる熱い視線が送られていた。それはもう熱すぎるぐらいの瞳をしていたので俺はかなり照れ臭かったが話を続けることにする。それから俺は『ルー』のことを説明することにした。『ユム』も『聖女 』様も『聖女』の証を『女神 』様から受け取っているという話もした。そうしたところこの女性の目が見開かれていてすごく興味津々といった感じになっていたのである。

「『勇者』に『聖女』に『賢者』。それにこの前『魔王 』を退治した『英雄』。今代の勇者様と、その仲間達が集結しているとは素晴らしい。まさに伝説になるべきパーティーじゃない!そうか、それではルーネルーテさんもそのお仲間の方と一緒にいられているんだ。良かった」と嬉しそうに言っていた。その表情は本当に幸せそうな笑みを浮かべていて見ているこちらまで微笑ましくなってしまうような優しい笑顔であった。俺はその顔に思わず釘付けになってしまったが「ルー」という言葉に反応したのかその人が急に「んっ、ルーって言ったよね。ルーネルーテさんの事知ってるの?」と聞いてきたので俺は正直に答える事にしたのである。俺の話を聞くとその人はルーとかなり仲が良いようで、俺にルーを呼んでほしいと懇願してきたのである。俺は彼女の必死さに負けて「わかった。すぐ呼ぶよ」と言って、俺は『妖精の国 』の姫様が待っている宿屋に戻ることにする。その時にこの『エルフ 族 の巫女 リーシェラ 種族 ハイエルフ』の女の子と別れ際に握手をしながら、「ルーはきっと貴女のことを待っています」と言っていた。

そして宿に戻った俺は早速ルーを呼び出して話をする事にした。ルーは『魔導王 』に会おうとしていると伝えるとルーは俺にお願いしてくる。俺も一緒に連れて行ってくれるようにと。俺はルーの言葉を聞いてすぐに返事をしたのであった。俺はその言葉を聞いた時にある考えが頭に浮かんだのである。そして俺は【転移】を発動させて『機獣界』へと移動する。そしてそこで俺は『アルサーラナイト ランクSSS+』『アルサーラクイーン ランクSSS』の『精霊騎士』の装備を身につけると『魔導士 』の姿に変わってから『魔道戦車 ガルデロスド』に搭乗してからルーに「これから向かう場所に『魔導機導師 マギストーナ』の装備があるんだ。その『精霊神 アルサーラ』から貰った力を解放するために必要だと思う」と言ってルーと一緒にその場所にいくことになったのだった。

俺は『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』の目の前に現れたのである。俺は自分の力を『機導神 アルサーラナーヴァ』の力に対抗出来るだけのものが必要だと思えたので、この『アルサーラの魔城』に向かうことにした。俺がその場所に向かって歩いていると巨大な扉の前で、『真王の加護』の力を持つ少女と出会う。俺はその少女があまりにも可愛くて声をかけずにはいられなかった。

そして俺が話しかけようとする前に俺の姿を見て警戒心を露にされてしまった。そのことでこの少女の心に何か傷ついていることがあるのかもしれないと思った俺は優しく接することにする。すると少女は安心してくれたのか少しずつ心を開いてくれるようになっていたので俺は安心してこの場を立ち去る。そして俺は目的の『魔導機導師の杖』を手にすることに成功する。この魔道具の力は本当に規格外の強さであると感じてしまった。そして俺がその場を離れるためにこの場を後にしようとしたとき『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』に見つかってしまった。そして俺は戦う羽目になってしまうのであった。そして俺の攻撃が効かず苦戦をしいられてしまう。だが俺は諦めなかった。この『機導神 アルサーラナーヴァ』を倒すまでは死ねないと思っていたからである。そんな思いを込めて俺が戦っているときに、突然その小さな『人型 機械』が大きな光を放って動き出したのである。

『機竜錠』の中に収納されていたはずのこの『魔導機神 アルサーラナーヴァ』は何故か『人型』になって動いて俺に襲い掛かってきたのである。俺はこの『機竜錠』に収納された状態のこの巨大な機体を『魔導士』の力で動かす事が出来るとは信じられなかったが事実目の前で動いているこの巨大な機体を見ると、そうせざるを得ないのだと思えてしまうほどの存在感と力の波動を感じてしまっていたのである。俺はこの圧倒的な強さを持ったこの『魔導機神 アルサーラナーヴァ』と戦うことになるのであった。俺は『機導神 アルサーラナーヴァ』の動きが速いので攻撃を当てることすら出来なかった。それでも俺はこの圧倒的な強さを誇る『機導神 アルサーラナーヴァ』に対抗する力を手に入れるために全力を尽くすしかなかったのである。

そして戦いの最中に『機導神 アルサーラナーヴァ』が『魔道機神アルサーラ ランクSSS』に変化するという奇跡が起こる。この『機導神 アルサーラナーヴァ』は俺を『魔導機神 アルサーラナーヴァ(Lv99)』という新たな力を手に入れて、さらに強化されることになるのだった。俺はこの『機魔導神 アルサーラナーヴァ』の放つ一撃必殺の攻撃を何とか避け続けていたが、俺にはこの『魔装神 アルサーラナーヴァ』の持つ『魔道機甲鎧 ランクA』の『魔導機甲鎧』でさえも防ぎきれるものではなかった。『機導神 アルサーラナーヴァ』の一撃を食らうたびに『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』の能力の影響を受けているのかダメージをくらい続けていった。俺のHPゲージはどんどん減少していく。このままでは俺の命が尽きる寸前だった。でも俺は絶対にここで倒れるわけにはいなかった。『勇者のおっさん』と俺の『聖剣 エクスカリバー』で魔王と戦った時のことを思い出していた。

あの時は俺に力がなくて、俺はただやられるままになるだけの存在だった。だけど俺が倒れても仲間たちがいた。俺には守るべき大切な仲間達がいたんだ。だから俺は負けられねえんだ!仲間のために。それに、ルーと『精霊使いの少女』のユムと『賢者の少年』と一緒ならなんとか勝てるんじゃないかと思えるようになってくる。俺はルーに託されて一緒に『勇者』になるためにここまで来たんだ。ルーはずっと一人で旅をしていたんだ。それはきっと寂しかったはずだ。俺は今その『勇者 』になりたがっているルーの希望をかなえてやりたいんだ。俺が負ければ、その願いも潰えてしまう。俺はルーをがっかりさせたくないんだ。

俺はルーと『聖女』様を『魔導王』様に届けるまでは必ず生き残るつもりだ。ルーを悲しませるような真似をさせる訳にはいかないからな。

ルーも『勇者 』になる夢がかなっているかもしれないけど『勇者のおじさん』と約束している。「『ユム』を守ってくれよな」と言われたと言っていたからな。『ユム』も『聖女』様もルーも『勇者』の夢を諦めてほしくはないと思っているに違いないから、俺はなんとしてもこの強大な敵である『機導神 アルサーラナーヴァ』を倒して見せる! そう俺は心に決めて再び戦いを挑むことにする。俺の今の攻撃力では全く歯が立たない相手なのでまずは防御力を高めていくことにしたのである。俺は今までに覚えた【全能力向上スキル】の中で特に高い効果を発揮する【聖盾 セクト】を自分に発動した。それから今度は魔法攻撃で攻撃を仕掛けたのだけど全くと言っていいほどダメージを与えれない。しかもこの強力な防御機能を持った防具である『魔導装甲騎士』を装備している『機導魔 アルサーララーヴァ』に対して、俺の持っている魔法で有効なダメージを与えることが出来ない。これはかなりの痛手であった。

俺はどうしようかと考えたがやはりここは一筋縄では行かないみたいだったので俺は『機導機 マギルニス』を呼び出してこの『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』を討伐することにした。そうすると、この『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』は俺が倒した『精霊魔導機 アルサリオン』が変化した姿であることを教えてくれたのである。『アルサーナの森のダンジョン マスター ルーム』にいるはずの『アルサーナ ランクSS+』のボスモンスターがなぜこの場所に姿を現しているのか分からないのだが、俺の『精霊神 アルサーラ』から与えられた力によって現れたのだと思っていた。俺がそんなことを考えながら『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』と戦っている時にルーから「『機魔導神 アルサーラナーヴァ』が急に苦しみ始めた」と言われてしまう。俺はすぐにその原因が何かを調べることにしたのである。そして俺が調べた結果は『機魔導神 アルサーラナーヴァ』が『アルサーナの森のダンジョン マスター モード』から解放されてしまい『精霊王 』から力の源を奪われて、この状態になってしまっていて『魔道機導神 アルサーラナーヴァ』として存在出来なくなったということが解ったのである。それで『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』は消滅してしまった。

それを確認した俺は安心して緊張が解けてしまった。俺はその場に崩れるようにして倒れこんでしまったのである。そして俺はこの世界に召喚されてからのことを思い出していた。

俺はルーのお父さんとお母さんを助けに行った時、初めて『魔獣の楽園』に向かった時、俺達三人が『機導機』の暴走を止めようとしたとき、俺の大事な妹がさらわれそうになった時、ルーに『機獣界』の案内をしてもらった時、そして『精霊魔導機 グランザーグ 』に乗り込んだ時のこと、この世界の様々な出来事が脳裏に浮かんでは消えていく。俺はルーとの旅は本当に楽しかったと感じるようになっていた。最初はこんな女の子と一緒に旅をするのは少し恥ずかしかったりもしたんだけど、今では俺はこのルーのことが大切だし守りたいって思うようになっていった。そして、そんなルーと一緒に俺もこの『機導界』の問題を解決したいと強く思うようになっていったのである。俺達は『魔導機神 アルサーラナーヴァ』を倒すために俺の仲間たちと力を合わせて戦ったのであった。だがその圧倒的な力で俺たちの攻撃を物ともしないほどの強敵『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』を倒すのはかなり困難なことだった。それでも何とか『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』を俺の仲間の協力があって倒すことに成功する。俺達がそんな激闘をしている最中にもこの国を支配していた国王『魔王』は『勇者のおっさん』の『聖剣』の力で完全に消滅させられていたのである。これでこの『魔導機導王 アルサーラ ランクSSS』の脅威は取り除かれたのである。俺の役目もようやく終わってくれたことに心の底から安堵したのだった。

『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』を倒し、その魔道具の力を手に入れてからは本当にあっけなかったように思える。ルーも俺と同じようにこの世界に来たばかりの頃は苦労していたのだろうが、俺の手助けもあって『機導魔導師 ランクSS-』に成長することができた。『魔道機甲剣士 』になった今は俺よりもかなりレベルが高くなったし、『魔導機導戦士 』になってもおかしくないほどになってきている。ルーが成長していることが何より嬉しい。ルーにはこれから『賢者 』になってほしい。俺が憧れるルーのように、俺はルーに『勇者 』になってほしくなってきた。俺は『勇者 』のおっさんにルーと二人でこの国の勇者になってくれとお願いされたんだ。でもルーはまだ16歳なのであと4年くらいは時間があると思う。ルーはそれまでに立派な勇者に成長してもらえたら俺はうれしいと思っている。それにしても『魔王 』を退治したことでこの国にまた平和が戻ってきたのでよかったと俺は思っている。

しかしルーが『勇者 』になりたがっていたとは驚いた。『勇者のおじさん』との約束を守ってルーはここまで頑張れたんだろうな。俺もルーに『勇者』を目指してもらいたいとは思っていたが、ルーにはまだ無理なんじゃないかと心のどこかで考えていた部分があったのは事実だ。だけど俺はルーを信じていなかったのかも知れない。だから、あの時の『精霊神 アルサーナ 』の言葉に納得できなかったのかもしれない。

「お兄ちゃん。この国は魔王をやっつけたからもう平和が戻ったんだよね?」ルーが聞いてきた。ルーが言うとおり、この国が魔族の被害を受けなくなるという意味では『魔王を倒した』という事になる。でもそれはルーの目的である『自分の夢』をかなえることとは違うんじゃないかと俺は思い始めたのだった。でもまだルーに本当のことを話す訳にはいかない。もう少しだけ時間が欲しい。ルーに話せるだけの勇気と覚悟が持てるまでもう少し待ってほしいと俺はルーに伝えたのである。ルーはそんな俺の話を真剣に聞こうとしていた。俺はそんなルーを見て「いつか、この世界を一緒に冒険する日が来たら、その時は必ず教えるからな」と俺はルーに言って約束をした。そしてルーはその約束を守ってくれるのであった。俺はルーとルーの夢を守る『勇者』になると決めたのである。そしてルーもルーの『夢』をかなえられるよう努力することを誓ったのである。そうしないとルーも俺も前に進めないだろうから。俺は今、俺のことを待っているルーのために早く『勇者』になることを改めて決意したのである。

『機魔導神 アルサーラナーヴァ』の力が手に入ってからはあっけないほど簡単に攻略できたのも確かである。ルーもそうだったが俺もそうとう強くなりすぎたのだと思う。この力を手に入れただけで今まで苦労してきた意味はあったのだと、やっと確信を持つことができたのである。それから俺達『機工王国ガイムダンク』は、国王であるルーのお父さんの願いでもある、『機導機王 マギルニス』に乗って俺達の故郷のある島『精霊神島(せいれいしんしま)』に向かうことに決めた。この国を救ってくれた『勇者 』への恩返しのためだという理由もあるが、何よりもルーの夢を叶えてあげたいという思いもあったからだ。

『機導船 リバイス グランザーグ』に乗っていた時に俺はこの世界のことについていろいろ知った。そこでこの国の歴史を少し学んだ。どうやらこの『機導大陸ギアガ』は『機械都市国家』らしいのだ。『魔導機導王 アルサーラナーヴァ』はこの国にある三つの魔導兵器を管理し、制御するために存在していたらしいのだ。そしてその兵器を使って他の魔族を討伐するのが目的だったということも分かった。俺達が『魔導機導神 アルサーラナーヴァ』を倒して、全ての脅威がなくなったことで『精霊神 アルサーナ 』がこの国を守ってくれることになりこの国に住む人達も安心して生活が出来るようになったのである。

それからルーのお母さんは『機導城 アルサーディアン 』に帰り、ルーはお父さんと二人で暮らすことにしたようだ。俺はルーが心配だったのでルーと二人で暮らし始めるまで俺が一緒に住んであげることになったのである。俺は俺が『勇者 』になれるまではルーのそばにいることをルーに言った。俺と離れることがルーにとって一番寂しいことだと分かっていたから。俺はルーと一緒にこの国の魔導科学省で魔導技術を研究することになった。そして俺はルーに魔導科学の技術について色々と教えながら、俺も新しい魔法陣の研究を始めることにしたのである。その研究の結果、ルーの作った魔法の威力をさらに強化することにも成功した。俺が作った『魔法付与石』は魔力を吸収する性質を持っているのだ。

その特性を利用して俺は新たなる魔法を発動させたのである。それはルーが開発した『魔道銃士 ランクSSS』専用の特殊武器『精霊砲機 グランバスター モード 』でルーが新たに作り出した新開発の新魔法、俺が名付けた『魔法融合弾』を使ったのだ。それは二つの属性を同時に融合させて攻撃することが出来るものだ。それを応用して複数の種類の魔石を融合したりすることで威力を高めたりすることも出来る。しかも『勇者の加護 』『賢者の加護』のおかげで『勇者』の力を持った俺にしか使うことが出来ない特別な技なのだ。

ルーのお父さんとお母さんには大変感謝されてしまい俺は困った。なぜならその力は国を守るために使わなければならないから。だから『勇者』になるまでは秘密にしておいてほしいと言ったのである。二人は俺のことを大切に思ってくれたのかその力を使う時はこの『精霊城 グランディア 』に来てほしいと言ってくれた。

この世界は『魔導機』という乗り物によって移動しているのだが、『魔導機導界 ギアデリス』では、魔導技術の発達で様々な乗りものが開発されていた。俺の作った魔導車のような物から『精霊魔導機 グランザーグ 』のようなものもそうだ。他にも空を飛ぶことが出来るものもたくさん作られているらしい。ただこの『魔導機』には欠点もある。それはこの魔導機は『勇者 』としか契約できないようなシステムになっていたのだ。これは、もし魔導機に乗ることが出来なくても、その人がこの世界の人間であるなら『魔導機導術 』を使えるようになり魔導機の操作方法を覚えることができるからである。

この魔導機という乗りものは俺がこの世界に飛ばされてきた時にあった『機魔導神』と同じ原理で動く仕組みになっているようである。しかし『勇者 』の力があれば魔導機を自在に動かすことができてしまうのだ。そのため俺は『勇者』であることを隠した方が賢明だと判断したのである。その代りにルーの作った新開発した武器を使ってこの国の防衛を強化するようにすることにしたのである。それが今の俺に出来るルーへの恩返しだろうと思っている。この国でこれから起こるかもしれない戦いに備えて俺は準備を急いだ。まずは『賢者 』の称号を得るためにルーと共に勉強することになった。ルーと一緒にいることで少しでも強くなれるのではないかと考えたのだった。ルーは俺と一緒にいて、とてもうれしそうにしていた。俺もルーといるとうれしかった。そんな俺たちの様子をルーの両親やお兄さんが見守ってくれていた。そして俺の『精霊神 アルサーナ 』としての能力を最大限に生かすための方法を考えることに。

ルーは俺にいろいろな事を教えてくれた。特にルーが得意としているのが魔法に関することである。ルーは今まで知らなかったことに興味津々でどんどん知識を増やしているようだった。そんな時に俺はルーにこんな提案をしてみた。

「俺達と一緒に『勇者 』を目指すというのはどうかな?それならば俺がルーを守ってあげられると思うんだ」とそんな感じで言ってみたのである。俺の言葉に驚いたルーは、

『本当ですか?』と言いながらも笑顔になってくれていた。俺としては、ルーの夢である『賢者』になるということが最優先だと考えていたので『機魔導神 アルサーラナーヴァ』を倒す前に『賢者 』の加護を手に入れようと思っていたのだ。そうすれば『勇者 』になるための条件を満たしやすくなるし、この世界が滅んだらルーが悲しんでしまうからだ。そしてルーのお父さんが言っていた通り、俺にはルーの支えになる必要があると感じた。俺が守ってあげなければと本気で思った。

俺の提案を真剣に考えていたルーだが、どうやら俺と冒険者ギルドに行ってみたいと思ったらしい。ルーはずっと『精霊城 グランディア 』にいたせいか外の世界に憧れを抱いていたらしい。ルーが言うに、この『精霊大陸 ギアデリスティン 』にある『冒険者の町 エルドリオ』に行きたいと言っていたのである。そこで冒険者としての活動を始めるためにルーと俺は『勇者』になるための勉強をしながら旅の準備をしていくことにした。ルーも俺も『機魔導師 』という職業なので魔法を極めていくうちに『勇者 』の資格を得ることができるとルーのお父さんとルーのお母さんに教えてもらったのだ。そしてこの国にある『精霊大陸』と呼ばれるこの世界で一番大きな島を回って『勇者』となるための冒険の旅をすることになったのである。ルーと冒険ができることに対して俺は喜びを感じていた。そしてルーも喜んでくれていることに嬉しく思う。そんな楽しい時間の中で俺はルーの作った『魔導銃士 』用の装備を改造していったのである。この世界にも魔道具が存在するようで、この『魔導機導王 マギルニス』にはそういった機能が備わっていることが分かったのだ。そこでルーが作った魔道具も魔導機と同じように改造することが出来たのである。この国の魔導技術を俺が利用して魔導科学というものも作っていくことを決めた。魔導科学も魔導機と同じように俺が魔導科学の神の力を利用して作り出すことが可能になった。そこでこの国に存在するすべての『魔導機』の改造もできるんじゃないかとルーと話し合っていた。ルーもその気でいたようだ。ルー曰く、俺が魔導科学を扱えることは間違いないと言って、早速俺達は新しい魔道具の製作にとりかかるのであった。この『勇者 』の力でこの世界をよりよい未来にしていこうと思いながら。

俺の作る新しい魔道具はルーも興味を持ってくれるものばかりで俺はこの国に来て本当に良かったと思っている。それにこの国は俺がいた日本とは違う文化がありそのことも俺にとっては新鮮な驚きだった。この『機導機大陸 ギアデリス』で俺が暮らす国の名前を決めるのには少し迷ったが、やはり『錬金の騎士』という名前にした。そしてこの『機導大陸 ギアデリス』を豊かにする国にしようと考えて、俺達の住んでいるこの国の名前が『機工国 ガイムダンク』に決まったのである。

それから俺達は魔導科学技術の研究を始めたのである。俺はこの国でも魔導科学が発展してくれるのを願いつつルーと二人で楽しく過ごした。ルーは俺のことを慕ってくれていつも笑顔を見せてくれる。その笑顔を見ると心が癒される。この国の人たちはとても優しく親切に接してくれていた。ルーのお母さんも、俺の事を本当の息子のように接してくれているように感じるのである。俺はそんなルーのために、そしてルーの師匠を殺した『勇者 』に対する怒りを忘れないようにするために俺は毎日鍛錬をすることにした。この世界で生き残るためには、強くならなければいけない。ルーを守ることが出来るほどに強くなってこの『機導界』の平和を取り戻すための努力をすることを俺は誓うのだった。

***

「ルーはこれからどうするの?」

私はタクトさんに聞いてみる。だって一緒に『機魔導機 グランサーザ 』に乗ってきたし、『機魔導王 マギルニス』からこの『精霊魔導機グランザーグ 』を作ってくれたのも彼なんだから。

私の疑問に答えたのはルーではなくお父さんの方だった。お父さんは、私がこの国の姫だと知って、かなりびっくりしている様子で、私に向かって頭を下げたのである。

そんなことされたって全然うれしくなかった。なぜなら『機魔導神 アルサーナージャ』の力が封印されているはずの『勇者の力』がなぜか使えるようになって、しかもこの『機導機』を自由に動かせるというのだから。お父さんやルーのお兄さんのダレルトはお父さん以上に驚いているみたい。

それで私から話を聞きたいということでルーとルーの両親と一緒に王宮に呼ばれた。そこで私は自分の力のことをすべて話したの。そしたらなんとルーは、この『精霊城 グランディア 』から外に出たいと駄々をこね始めちゃった。ルーは自分が作ったこの『精霊城 グランディア 』のことが大好きなのである。だから、この国から離れたくないというルーの気持ちはよくわかるけど、さすがに無理だよね。そう思いながらルーの説得を試みる。

『ルー、この世界にはたくさんの国があるんだよ。私たちの世界にはもう戻れないんだから、今いる『機魔導神 アルサーナジャー』を倒したらこの世界に別れを告げるつもりだよ。だからもう少しだけ待ってほしいな』

「じゃぁ『精霊神』さまもルーと一緒にいてくれるんだ!」

『えっ!あーう、うん。もちろんいるよ!』

「うれしいな~♪」

私はルーが喜んでくれてるのを見てうれしかったんだけど、ちょっとまずかったかもしれないと後悔している。この世界の人間たちは、この世界が魔導機に支配されているなんて信じていない。それはそうだよね、この世界に魔導機という乗りものはないし、空に魔導船っていう乗り物は飛んでいるみたいだけどあれは、この世界の人にとってただ浮いているだけのおもちゃみたいなものでしょ?それなのにそのおもちゃのような乗りものを操縦できるのが『勇者 』だけだと勝手に思われているのはなんか納得できない感じがしなくもない。この『魔導機導族 グラザーズ 』の国では、この国にいるすべての人が、『勇者 』は『機魔導師 』だと信じ込んでいる。それなら『勇者 』はどうやって魔導機の操作をするのかなと思って、私はいろいろ考えた結果、たぶん魔道具を使って、魔道具を使って『勇者 』の力をコントロールしてるんだと思った。そんなことをルーの前で言ってもいいのか分からないけど、ルーはそんな私にこう言ったの。

『精霊神 アルサーナ様はルーの『賢者 』としての力を分け与えてくれた大切なお方。ルーが賢者になった時にアルサーナ様と一つになってお仕えしたいのです。そのためにルーは『賢者 』になろうと頑張ってきたんです。ルーの魔力がどんどん高まっていき、そしてルーの中に眠っていた力が目覚めるのを感じたの。ルーのお母さんの『賢者 』の力とお父さんの『機導師 』の力。その二つの力で、この国の人たちにも『勇者』の存在を理解してもらおうと思ってます。ルーにまかせてください。ルーのこの手で、この国に住むすべての人を救って見せます』

ルーの言葉に感動したお父さんとお母さん。そして私の家族もこの国を治める立場にあるルーにとても感服していた。それからルーは、魔導科学の研究をするとか言い出したの。ルーが研究するのはいいのだけど、ルーのこの国の人たちは『勇者 』の力は、この『魔導機』の力だと思い込んでるので、魔導科学のことはあまりよく分かっていない。だからルーが、魔導科学の力を利用すると言った時には、何を言っているんだろうとこの世界の人たちが思ったらしい。そしてこの国の王様に説明をしたルー。

魔導科学という存在を知ったこの世界の人たちに、魔導科学は素晴らしいとルーは言う。魔導科学を利用すればもっとこの国は発展すると。ルーの説明を受けたこの国の国王であるおじさんとおばさんは、「ぜひこの国の魔導科学の発展に協力して欲しい」と言ってくれた。

ルーが『賢者 』になれるように私とお母さんも協力していきたいと思う。そしてルーは『機導騎士 グランザイル』で空を飛ぶ練習をしている。そしてその光景を見た周りの人々がみんなが、この国の新たな希望が誕生したかのように喜んでいたのであった。

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この世界の『魔獣 』と『魔導動物 マドゥラ』の違いを説明していきましょう。この国では『マドゥラ』は『精霊神の森』の外にはほとんどいない。その理由はこの国には魔導科学が発展した影響から魔導動物が生まれなくなってしまったから。だからこの国の人達のほとんどは、『魔獣 』が危険な生き物だと思っている。特に『機魔導馬グランサーグ 』は恐ろしい生き物で『魔導獣』は人間の敵なのだと思い込まれている。そんなことを知らないこの国の国民たちにとって、その事実を知らずに『機魔導王 グランザーグ』に乗って空を駆けているルーの存在は奇跡のようだと感じているに違いない。ルーはその事に対して複雑な表情をしていた。この国に暮らす全ての人は『機魔導兵グランザイン 』や『機魔導戦車グランサイル』、『魔導砲車』『魔法列車 マジュラーカデンス』『浮遊飛行船 グランフラデリア』などの乗りものが大好きだ。『精霊騎士 アテランヌリ エトランセ』に、憧れを抱く人もいれば、『魔導剣王 グランゼドード 』に心酔する者もいる。そしてルーの作った『精霊騎士 ルーファシルト 』は女性の間でとても人気になっている。この国の人たちは、この国で起こっていることに、まったく気付いていなかったみたい。この世界の人々の平和を守るのは、この国の『機導騎士』の仕事だとこの国の人たちのほとんどが思っていたのだから。でもそんなルーも、魔導科学の知識を身につけてからはこの世界の人たちの誤解を解くために必死になっていた。そんな時私は、ルーの手伝いをしたいと思い、私なりにできることをしてみたの。それが、魔導科学を利用してこの世界を変えるきっかけになれば良いとおもっている。

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この国は、ルーをこの国の救世主に祭り上げる計画を進めていた。ルーが、空を駆りながら『機魔導馬グランザイル』に乗りながら魔導科学の事をこの国に伝えている様子は本当に美しかった。この美しい景色を見ながら、私もルーと一緒に魔導科学を伝えていけたらと強く願うのだった。

『勇者の加護』の封印された力が使えてしまうことに疑問を持っているのはルーだけではなく私も同じだ。どうしてこの国では『勇者』の封印された力が使えないのか。この国が、魔導科学が発展しすぎたことが原因だと言うことがルーの話を聞いて分かった。『勇者』とは、本来魔導科学技術など必要ないほどの力を持つ『人間』の事をいう。『勇者』は、『聖女 』から力を分け与えられて生まれるというが、そもそも魔導科学者の『聖女の祝福 ギフトオブホーリーメイガス』によって、魔導科学というものが生み出されなければ、魔導科学が発達することもないのだ。つまり、魔導科学を発展させてきたことで『勇者』の力を使うために必要な力『聖なる光の加護』が使えるようになる力まで退化してしまったということになる。ルーもそのことを私に教えてくれた。それを知った私は魔導科学を否定するわけにはいかないと考えた。そして私は、この世界に存在する全ての人々に魔導科学の大切さを教えようと決心したのである。この世界のすべての人に理解してもらうには時間が必要だ。だけど、私なら出来るとそう思えたから私は頑張ることにした。私は、私に期待しているルーのため、この世界の人々のために頑張りたいと思った。この世界にはまだ、魔導技術が必要なのだ。

ルーに出会ってからは毎日が楽しすぎて困っちゃう。私は、ルーがこの世界を救うことを確信している。だってこの世界で一番強いルーなら絶対にこの世界を救ってくれると私は思うから。そしてルーと一緒なら私もその大きな流れに参加できるはずだと。私もルーと一緒にこの世界の為に動き出すことを決めた。

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『魔道士 』である私にも、ルーの役に立てそうなことは沢山ある。だからルーと一緒に行動していきたいと思っている。それに私とルーの二人で力を合わせればどんな困難な事もきっと乗り越えられると思えるんだ。ルーにお願いされちゃったら、断る訳にもいかなくなっちゃうよね。私はこの世界でやりたいことがあるんだけど、この国の人達に認めてもらえたら嬉しいなと思う。私がしたい事というのは『錬金術師』としての役目を果たすための活動なんだ。『機魔導技師アルサージャ』が残したとされる書物を解明していけば何かヒントを得られるはずと私は考えた。『機魔導王 グランザーク』を操ってこの世界に『機魔導師 アルサーナジャー』の存在を証明するためには、この世界に眠る伝説のアイテムを探しださなければならないと考えている。そしてその方法を見つけ出して『賢者』として、その使命を全うしようと思っているのだ。そのためにまず、私はこの国で錬金の研究をする場所を作ろうとしている。それは【錬金術工房】を作るためだ。そして私は【全知眼】の力で、『機魔導技師 アルサーナジャー』の残したと思われるレシピを見つけたのだ。それを再現できるかどうかで、これから先の私の人生が大きく変わってくる。そしてこの世界の人々の未来を大きく変えていくことに繋がると信じている。

私の作る新しいお薬でルーを助けられればいいといつも思っている。だからこの国のみんなは安心していいんだよ!私はルーと二人でいろんな研究をしながらこの国の人のために尽くしたいと思っているんだ。


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***

『賢者 』『機導博士 』となった私とルーは二人で『冒険者のおっちゃん』に相談したことがあったんだよね。『賢者 』になるためのスキルが『錬金のおっさん』と関係があるのではないかと疑っていたんだ。

「この『賢者の衣』と『竜帝の靴』があれば賢者になれるんですか?」と『錬金のおっさん』に聞くルーは真剣そのものだった。

「『賢 者』になれる条件は二つだけじゃ」

『錬金のおじさん』の答えはシンプルだった。『竜帝の冠』を装備すれば、ルーはもう『勇者の衣』を装備していることになる。ルーの『賢者の衣』には『勇者の証』が埋め込まれていた。だからルーが『勇者の衣』を装備することによって『賢 者 』になることができるのだというのだ。

ルーの『賢者の服』の胸ポケットの中に、『賢者の石』があった。『竜帝の剣』に『竜帝王の指輪』そして『竜帝の冠』この三つの装備品を装備した時点でルーは『賢者 』になった。しかし、この国の『機魔導師 アルサナージャス』が残したとされる本を読んでいた『錬金のおっさん』の表情はとても暗かった。その理由はすぐにわかった。この本に書かれていた内容というのがとんでもないことだったのだから。『機魔導王 グランザーク』の力はあまりにも大きすぎる。ルーがもしその力を使えばルー自身がこの国を滅ぼしてしまうかもしれないのだ。

「ルーはどうするんじゃ」と聞いた『錬 金 のおじさん』は、自分の考えが間違いだったのかと思い悩んだ様子だった。そんな『錬金のおじさん』を見たルーも悩んでいた。そしてルーは私にこんなことを相談してきた。ルーの願いはこの世界の人々に魔導科学が発展することを理解してほしいと願うことなのだから。

ルーの考えは正しいと私は思った。そして私は、この世界の人々を救いたいという想いが私にはあるのだから、ルーと一緒にこの国のために行動してもいいとそう思っていたのだ。


***


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私とルーは『魔導科学』をこの国に広げていこうと考えていた。『錬金のおじさま』とルーは、『賢者 』となりこの国で、新たな伝説を作ることを望んでいた。そんな二人についていったのは『錬 金 の お じ さ ま 』と『 賢 女 』だった。この国は『賢者 』がいなくても『機魔導王 グランザーク』の力を使いこなせるようになりたいと『 錬金のおじさん 』は言っていたがルーは違う意見を持っていた。

この国は、このままでも十分強い。『勇者の剣』の力は強力だ。『聖女の加護』があるこの国には、『聖なる光の加護』を受けた剣を使う勇者がいるのだから、この国は無敵だとルーは言ったのである。この世界の人々は、まだ自分たちの強さを正しく理解していないのだと言う。ルーはその強さを人々に理解させるためにも、魔導科学の発展に力を入れていくのだとそう決意していたのだ。

私は、ルーにこの国の人達を救いたいと言って欲しいと思っていた。私は、そんなルーの言葉を聞きたくてたまらなかったから。そして、私はそんなルーを尊敬していてとても好きになっているから、私もこの世界を救うためにルーと共に行動しようと決めていたのである。私はこの国の人たちを救おうと思っていても救えなかったのだから。私はそんな自分を変えたいとも思っていた。私は、自分が出来ることならどんな事でもやろうとそう決心して旅に出たのである。この世界の人の為に私は、何が出来るだろうと考えて、そして思いついたのは、私の知っている知識を、ルーと一緒に伝えていけばきっと、ルーのように、魔導科学の知識を理解してくれるはずと考えたのだ。

そして私は、ルーと『錬金のおじさん』の話をずっと聞いていた。ルーが、『勇者の加護』と『聖なる光の加護』の力を引き出せていないということに私は気づいたのだった。だから私はルーがもっと強くなれる方法を考えついたのだ。ルーの持つ伝説の武器と伝説の防具を身につけていれば、ルーがこの世界で最強の存在になりうる。だから私がその方法を考えてルーに伝えることにした。それは、伝説の武具と伝説のアイテムの力を解放させることであると。私にはそれが出来て、ルーに出来ないという事はありえないのだから。私に出来る事を、私にしかできない事でルーの力になってあげたいと思ったのだ。ルーにこの国のみんなを守るように頼まれてしまったから、私はルーと一緒に、ルーと一緒に、この国の人達を守りたいと思っているから私も頑張ることにした。

私達はこれから先もずっと一緒に頑張り続けようね。ルー! ルーちゃんと一緒にこの国の人々を救う為のお手伝いをする。ルーの側に居続けることが私にとって幸せな時間だと思うから、私は、この国で頑張っている。私は、魔導技術を使って新しい薬を作れるようになったし、『錬金術師』として、いろんな物を作っていきたいと考えている。『錬 金 師 』として、ルーちゃんのために、この世界を平和に導くために頑張りたいと思っている。そしてこの国の人々が私を信頼してくれて、私がこの国の役に立てるようになることが一番の目標なんだから。

「リゼお姉さんありがとう。私は、この世界の人々を救う為にがんばるよ!」とルーちゃんに笑顔で言われちゃったら、嬉しくないわけがないじゃない?それに私にとっても嬉しい言葉だったの。そして私とルーはこれからの事について語り合い、お互いの意思を確認し合う。ルーは私の気持ちに気づいてくれたようで私と一緒にこの世界を救うことを誓い合ってくれている。

ルーと私と『 聖 女 』、『機 魔 導 士 』の三人が仲間となってこの国の人々に希望を与えて行くことになった。

『機魔導王 グランザーク』を操ることができるのが『機導博士』である私しかいないという事実と『錬金のおじ様』の実力は認めざるを得なかった。なぜなら『機魔導師アルサーナジャス』が残した書物を読むことができたのが、錬金に精通していて書物の解析ができる者でなければその真価を解明することなど出来なかったからだ。『錬金のおっさん』の力は本物で、私よりも錬金の知識が深いことがわかったのだ。だから、ルーと一緒にこの国の人々に『錬金魔法』を教えていくことを私は決断したのだ。

「この国が魔導科学を受け入れることが出来ればきっと世界が変わると思うんだ」と言うルーの意見を聞いて私は納得した。私も同じ考えを持っていたからである。

私とルーはこれから先この国の人々の力になることを決め、二人で協力しながらこの国の人々を救っていくことに決める。

私はこの国でやりたいことがあった。私の【全知眼】で見つけたレシピをルーと『機魔導師アルサーナジャー』と『錬銀のおばあちゃん』の三人で錬金の工房を作ったときに、私達の作った新しいレシピの薬を販売するための店を作ろうと考えていた。それが【 錬金の 薬屋 】だ。私は錬金をする場所を作ろうとしている『 錬金の おじさん 』に協力を申し出たのである。錬金は素材が無ければできないものなのだが私達の力でその問題を解決することが出来たのだ。だから私達に錬金の工房を作る権利はあった。錬金の職人の人たちは自分達が使っている施設があるので錬金の工房を持つことができないのだが、錬金が使える者が錬金のスキルを習得する場所がこの国の人にとっては必要だと考えたのである。錬金がこの国の生活の中で浸透すれば錬金術師と呼ばれる人たちも現れるかもしれないと思ったから。錬金術師になれば自分のスキルがわかるから、レベルを上げることでさらに高度な錬金の技術を身に着けることが出来る。

私とルーは『魔導科学技術者』と『錬金の おっちゃん 』と話し合い錬金の作業場兼販売所の場所に決めた場所で建物を作っていたのだ。そしてルーと一緒にこの国の人々の暮らしが便利になるように魔導具をたくさん作っていった。ルーの作ったものはどれも素晴らしい出来栄えでとても評判になっていたのだった。

私は、この国の人々の力になりたいと思いこの国の人達と魔導科学について勉強をしていた。私はこの世界の人達と仲良くなりたかったから。私の住んでいた国はとても貧しかったけど優しい人々ばかりで幸せに暮らしていたのである。だけど私が暮らしていた村を襲ったあの日突然全てが奪われてしまうなんて思ってなかったのである。私の生まれ育った村は魔王軍に侵略されてしまった。その日から私は奴隷商人に捕まって奴隷として生活することに決まってしまったんだけど、でもそれは全て偶然だったんだよ。

私が暮らしていた国では、他国との貿易は盛んではなかったが豊かな国だった。だから隣国は、我が国に食料を買い求めに来ることもあったんだよね。その国は戦争中だったため、食料が不足していたみたいなんだ。そしてその時、我が国が輸出している農作物が、たまたま『勇者』によって守られていた村の作物だったんだよね。それで『勇者』の力に目をつけた隣国の領主たちが『魔族』を召喚して、我が国と同盟を結ぶという名目で我が国の領地を手に入れようとしていたのである。そのために『魔族軍』に指示を出していたのが『魔族の王』であり、『機魔導兵 グランザーク』であった。

そして『勇者』とその仲間である『 聖 女 』と『 機 導 士 』、それに『賢者 』、『魔導王 グランザーク』は魔族の王が操っていたグランザークを倒せたらしい。その後、魔族は撤退し、『機魔導王 グランザーク』だけが残っていた。そして魔族は『魔 剣 ゼフブライン』を使って、その力で、我が国と友好を結んでいた『勇者』のいる国に攻め込んで来たのだ。そして『機魔導王 グランザーク』の力を使い自国の兵士を次々と倒し、自国の領地に侵略してきた。

私の生まれ故郷の村は、その時に、『魔族の王』が連れてきた大量の『魔 剣 ゼフブライン』に攻撃されて滅んでしまったのである。

私が今住んでいる街は元々敵国の領土の一部だったのだが、『勇者』『聖女』の活躍でその土地を手に入れた。それからこの街に移住してきた人たちが増えていき、今の街並みが出来たのだという。だから街の人達はみんな優しくしてくれるし助けてもくれる。私はこの国が好きだったから、そんな皆を救いたいと願っているの。そしていつか『魔導科学国家エルミナ国』が世界を支配することのない国になれることを願って。私達が『勇者』と一緒に作り上げた国なんだから絶対に出来るはずだから。

俺と『 機魔導師 』である少女が出会ってしばらく経ったある日、その女の子が『機魔導王 グランザーク』を使ってこの国にある魔導科学研究所で働いている科学者たちを全員解雇してしまったのである。しかも解雇の理由を「貴方たちは役立たずですから」とか言ってこの国の人を切り捨てたのである。もちろん他の研究員たちも怒りまくりだった。でも、『 聖 女 』と、一緒にいた男が「文句があるなら俺たちと勝負しろ! 俺たちに勝てたら好きにさせてやる」と言い放ったのである。

『錬金のおじさん』は、「こんな幼稚な子供相手に何を言っているんだ?俺は、お前らがこの子に勝つ事なんてできるわけが無いと言っているんだが、いいかげん現実を見ろ!」と言ってこの場を収めてしまった。さすがにこの二人を相手に戦いを挑もうとする人は居なかったようだ。

だがその日の夜に事件が起きたのである。魔導科学研究所の職員のほとんどが姿を消してしまったのだ。それも『勇者 』、『 聖なる光の加護 』、『 聖 槍の使い手』、『聖獣』の四人も消えてしまったのである。その騒ぎを聞きつけ、俺とリザお姉さんが駆けつけるとそこは血の海が広がっていたのだ。それは凄惨な現場だった。そこに残っている『錬金師』が『機魔導士』の少女一人になってしまったのは、どう考えてもこの子がやったようにしか思えなかった。

そう言えば、今日『勇者』の少年が言っていたな『この国を潰すぞ!』って、その『勇者』はこの国の王族だったのか。だからこんなに簡単に国を出ていけたのだろう。この国には優秀な魔導技術の職人が多くいて魔導技術の最先端の国でもあったからね。

俺は『 聖 女 』のリザお姉さんに、リザお姉さんは『機魔導師 』のアルサーナジャスとリゼお姉さんに話をしてもらうことにしたのだ。

俺は錬金の工房を作るための準備をこの『機魔導士 アルサーナジャス』にお願いするために工房を作る場所にやってきてもらった。工房は出来れば地下を作りたいと思っていたから、地下に広いスペースのあるところが良かったんだ。そして俺の希望する場所の条件に当てはまる場所はこの研究所の地下にあったのである。この国を『魔導技術大国』にする為のこの国の最重要施設でもあるのだ。だからここだけは、この場所で妥協したくはなかった。そして俺の希望通りの工房を作ることを約束をしてくれた。ただ、俺がこの国の人々と一緒に『魔導技術開発国』にしようと思っていると伝えるとアルサーナジャスが目を丸くしていた。

「『錬金術』を『魔導』と融合させ、この国で『魔導科学技術者』を増やし『魔法付与』の技術を高めてもらうためにも、魔導技術を『魔導科学』と融合させるためにも必要なのですよ。そして最終的にはこの国が『機魔導』だけになる国を目指していきたいと考えているのです」

するとアルサーナジャスの顔つきが変わった。

「『魔導科学』を、この国だけで独占しようという考えですか。私は、そんな考えは許せないですね。『魔道具』は誰でも作れるものではないのですよ。錬金の工房が出来ればもっと『魔導科学』は発展します。そうなれば誰もが使えるようになり生活が変わると思うんです。だからこそこの国の人々に『魔導科学』を学んで欲しいと思ってるんですよ。そして魔導具を作って欲しいとも考えているんです。魔導具を作れれば魔導科学を応用すればどんなものにでもなるので、きっとすごいことになると思うのですよ」

やっぱりそうだよな。魔導具を使えなければ魔導兵器なんて造れる訳がないんだから。そして『魔剣 ゼフブライン』を使えば誰でも扱える強力な武器にもできるのだ。

だから俺のやりたいことも理解してくれると思ったんだ。そしてこの国の人にとっての利点もある。この国の人達に、魔道技術者を増やすことによって、この国に他国からの侵入を防ぐ結界を強化させることにもなるし。そして魔素の流れも安定させることができるのでこの国の産業の発展が促進されるので良い影響を及ぼせるはずだ。

俺がそのことを話すと、

「確かに魔導具が使えれば便利なので多くの人が覚えられると思います。魔道具を沢山売ることによって国の収益を上げたいということでしょうか?」

「いえ違います。この国の魔導技術を向上させてほしいというのが大きな目的で、それによってこの国の防衛力が上がるということも狙っているのですよ。でも一番の理由は、私とルーの暮らしを守ることに繋がっているのです。私達は『錬金の魔導師』であり『賢者の魔眼持ち』なんですけど、『錬金の魔眼』のことは知っていますよね」

アルサーナジャスはその事実を聞いてさらに驚いていたのである。そして彼女は俺が思っていた以上に優れた人物だとわかりますます興味が出てきたようである。その『錬金の魔眼』の能力についても詳しく教えて欲しいというので、実際にやってみせることにした。

『錬金のおじさん』は、この施設に出入りするための通行許可証の発行のために『聖 槍の使い手 』『 勇者 』の二人の少年と一緒にやってきたのである。ちなみにこの三人の子供は、魔族の王に命令されていた時に、『魔剣ゼフブライン』を操っていたのが彼らだということを自白したらしく、『機魔導王 グランザーク』から解放されて『魔導王 グランザーク』に操られていなかったらしい。『魔族軍』の幹部である彼らは、魔族王が魔王のいるところまで行くための護衛任務に就いていたのだと言う。そして魔族の王のそばについていて、その時、彼が『錬金の魔剣 』を持っていることを知り『錬金のおじさん』の『魔 剣 ゼフブライン』を奪って、この『魔 剣 ゼフブライン』を複製させようとしたのだが、なぜか『魔剣ゼフブライン』は反応せず『 錬金の魔眼』は『機魔導王 グランザーク』が持っているもの以外は認識できず、それを奪い取ってくることができなかったのであった。

『 聖 槍の使い手 』は、魔族の王から『錬金の魔導師 』のことを聞くまでは『錬金』の存在などまったく信じていなかったが、魔族の王から聞かされたその『錬金 』の話を信じ、俺のことをずっと観察していて、『錬金』と、俺が持つ『魔 導 の 才 能 』の力を合わせて使うことで凄まじいことができるのではないかと思い、それを実現できるようにこの国の魔導技術の粋を集めて作られた『魔導科学研究所』を作ったのだったのだ。そして『錬金』と『魔導』が融合することでこの国の産業を発展させることができると考えてこの国に来たのだという。それにこの『 魔導技術国家エルミナ国 』は『 機魔導王国エルミナ 』と同じ名前だったので同じ国のことだと思い『錬金の魔眼』を持つリザお姉さんなら何か分かるのではないかと考えたのだという。そこでリザお姉さんが『機魔導王 グランザーク』を使って、この国の機密情報であるはずの『 魔 砲 』に関する情報を聞き出そうとしたのを『勇者 』、『聖 槍の使い手 』、『聖獣』の少年達と一緒に邪魔をした。その結果リザお姉さんは捕らえられてしまい俺は殺されそうになったのだが、俺は何とかその場から逃げ出すことに成功し、その隙を突いてリザお姉さんは、この施設にある魔導通信機でこの国の上層部の人間に連絡して『 機魔導士 』をこの国から追い出して、『錬金の魔眼』を『機魔導王国 エルミアン 』に持ち帰らせないように指示を出したのだった。それから俺はこの国にある錬金の工房を作りたいというお願いをする。

「それはこの『魔導科学技術研究所 』の横に併設するということでいいのかしら?」

俺はそう言って『錬金の工房』の設計図を見せながらこの建物の中に作るつもりだと説明し納得してもらう。

「え?こんな地下に?しかもこの地下施設はいったい??」

俺がそう言うとリザお姉さんは驚いたような顔をしている。そしてこの国の『 錬金科 』、『魔導科』、『錬金工房』の人たちが地下へと案内されその地下施設を見て驚いていた。そしてこの国の技術者たちが、この『錬金ラボ 』を作るために地下施設を隅々ま見学し出したのだった。

この施設の地下施設が予想外だったようでみんなとても喜んでくれていたのである。これで『魔導科学 』、『錬金の魔眼 』、『魔導科学』、そして魔素の流れが安定した『機魔導技術 』の融合が実現できると思うのだった。

リザお姉さんと『機魔導士 アルサーナジャス』に俺は、この国の人達と仲良くなってもらうためのお願いをしようと考えているのである。俺は『 錬金の工房 』を作ることにしたので『機魔導技術』で何が出来るのか説明してほしいと言った。まずは『機魔導士 アルサーナジャス』に俺が作ったものを実際に見てもらって判断してもらうことにしたのである。俺の作った魔道具を見せると彼は目を見開いて驚いているようだったが、その後『魔導工学研究所 』の研究者に、すぐに解析するようにと伝え、俺にはもっと色々な魔道具を作れないか聞いてきたので、魔導武器を見せてあげることにした。そして彼にこの国の『 機魔導王 グランザーク 』と戦わせたいと思った。それで彼の『 魔 剣 』の反応も見たいと思ったからだ。そして『 魔道戦士 』にしたいとも思っていた。『錬金のおじさん』も、彼と戦うのを望んでいたので戦いが終わる前に止めないといけないと思っていたのでどうしたものだろうかと考えていた。

俺とアルサーナジャスとのバトルが始まったのだ。

アルサーナジャスが、俺の持っている魔道具のことが知りたいと言うので魔導銃を取り出して見せたら、この世界の魔導科学ではまだ開発されていない物で、魔導エネルギーを魔法属性のエネルギーに変換して打ち出すことによって威力を高めることが出来る魔道具だというとすごく興味津々になっていたのである。

「これがあれば魔素が少ない環境の中でも戦うことができますね」

そして魔導剣についても興味があるようであったので『機魔導剣 グランザーク 』を取り出し見せてあげる。この国の魔導剣のレプリカを見ていたようだが、本物を見たことがないらしく、驚いていたのである。俺が、剣技やスキルを発動するとアルサーナジャスも同じように発動させてきた。やはり剣の技術が高いと思った。でもそのせいでこの施設の設備を壊してしまったりしていた。俺が魔素の流れを変えてしまっていたのだ。そのせいでアルサーナジャスが放ったスキルもおかしな軌道を描いてしまっていたので慌てて調整しなおす羽目になった。それでもこの子は楽しそうに笑っていたのである。そしてこの子に、今のままじゃ勝てないので俺と一緒に訓練して欲しいと頼むと、「私の剣と魔法の腕を上げるために真樹様と一緒に修行したいのですね。分かりました。是非ご一緒させていただきます。私を仲間にしてください」と言われてしまい、そのまま流れで一緒に訓練を受けることになりそうな感じになってしまったのだった。

俺はこの『魔導科学技術研究所 』でこの『魔導技術大国エルミナ 』の魔導技術を研究して欲しいということを伝えたのである。『魔導科学』の研究を進めてくれればきっと『 魔 剣 』と『 魔 法 』も使える人が出てくるはずなのだから、そして『錬金のおじさん』の持っている魔剣ゼフブラインと『 魔導の才 』を持った人が協力すれば『錬金のおじさん』の魔剣を『魔導兵器』にすることもできるのではないかと思ってこの施設に併設して魔導工房を作らせて欲しいという事を説明した。俺と『錬金のおじさん』はこの施設の職員たちと『機魔導王国 エルミナ 』の魔導技術の発展のために尽力してくれることになって欲しいと頭を下げたのだった。そして魔導士たちもこの魔導技術研究所の魔導技術開発に協力することにしてくれた。この国の技術が飛躍的に上がることを期待している。そして俺達は、魔導科学研究所の近くにある錬金工房を作ることになった。俺はリザお姉さんを連れて『魔導技術国家エルミナ 』に行く。

俺達は魔導研究所を後にして今度は、錬金術工房の建設に取り掛かる。まずは、素材作りである。そしてその素材から錬成をして【賢者の石】を作り上げなければならないのである。そして錬金作業が一段落したところで、俺はリザお姉さんに頼んでみることにした。この魔導科学研究所から錬金ができる場所へ直接繋ぐ扉を作ってほしいとお願いしたのである。

この『魔導科学技術研究所 』は『 魔 導 工 学大 国 』の中にあるのと同じなので、錬金をするためだけにこの魔導研究所内に錬金のアトリエを造る必要は無いのだから錬金作業が出来るように『錬金の魔導陣』が使える部屋を用意してもらい、その場所から、この場所まで直接行けるようにしてもらおうという考えなのである。

「え?ここを出ちゃうのですか?それならこの国から出て行った方がいいんじゃ無いんですか?」

彼女は不思議そうな顔をしながら聞いてくる。

「いえ、『 魔導 科学研究所 』の中にあった、あの工房なら、俺の作った錬金釜を置いてある錬金工房です。そこに直接、魔導科学研究所から行く扉を開いてくれませんか?そしてそこから直接錬金工房の方へ行くことができるようにしてほしいのです」

俺は彼女に錬金工房を作る理由を説明しお願いすることにした。そう俺の魔道具の作り方を知っていて魔導技術の凄さを知っている彼女なら分かってくれるだろう。

「ああ、そう言うことだったのね。確かに錬金は魔導研究所では出来ないわよね。でも真樹君がここにいた方がこの国にとっていいと思うんだけどなぁ」

彼女の言うことは分かるけど、それは仕方がないことだ。俺がこの国に来てもう4ヶ月が過ぎようとしているがこの国の人は俺が、異世界の人間だということを未だに信じてもらえないのだ。そしてこの国に馴染むために必死になっているのだ。俺はこの世界の住人だと思われても、あまり問題が無い状況になってきているのである。この国の騎士たちとの戦いを経て俺の力を見せつけたことで『勇者』として認められることができたし、『聖 槍の使い手』と友達にもなったことで、『聖獣』ともいい関係になれているのだ。その証拠に、先日『聖獣』の少年と二人で狩りにも行ってみたし、そこでレベルが上がる経験もすることができたのだった。そのおかげなのか『 錬金の工房 』と『 錬金術ラボ 』を設置しても魔素を暴走させずに使う事ができるようになってきたので大丈夫だと確信できたからこそ錬金のアトリエを造って貰おうと思ったわけだ。

「そう言う事でしたか。そういう理由でしたら私に出来ることは何でも致しますので何なりとおっしゃってください」

俺の真剣な態度を感じ取ってくれたのか、俺の考えを理解してくれる。そしてこの『魔導技術研究所 』を『錬金の魔導工房 』にすることを了承してくれ、俺にこの建物の中に、工房を作って良いと許可を出してくれた。俺はこの施設の責任者であるリザお姉さんの許可ももらったので早速錬金工房を作ることにしようと思ったのである。

「えーっと、どうやったらこんな場所に『錬金の魔導工房 』を作れるんだろう。ちょっと分からないよ」

リザお姉さんが悩んでいるので少しだけ助け舟を出すことにする。俺はこの魔導科学研究所の建物の中と、外の敷地とを繋ぐ門を二つほど錬金の素材に使ったと伝えた。するとすぐに理解し、俺が指示したものを作りに行こうとするのであった。俺はこの錬金の魔導工房を作るために必要なものをリザお姉さんにお願いすることにする。そしてこの国の職人を全員集めてほしいとお願いして、この国の人達に『錬金の工房 』と『錬金の工房 』を作るための材料を持って来てもらうように伝える。それから『錬金の魔眼』を使い、魔導科学研究所から、錬金工房へ繋がる錬金用の通路を作ることができるか実験を始めたのだが、俺のイメージが足りないのか、どうしても上手くいかないのだった。錬金の素材は『 機魔導 王国 エルミナ 』にある錬金の素材を使って、錬金術で作っていく事にし、魔素の調整とイメージ力だけで何とかできるのではないかと思っているのである。俺は錬金で『 機魔導 王国 エルミナ 』の錬金術の工房から、錬金術で使う素材と魔道具の錬成に使っている素材を持ち出した。この『 魔 導 科学技術 研究所 』の中で使う分には魔素の量は足りなくなることはないだろうと予測しているがそれでも魔素の残量には注意するようにしていかないといけないだろうと思っている。そして錬金の道具も、この『魔導科学技術研究所 』内で使う分ならば問題ないだろうと考えている。

そんなことを考えながら、錬金の作業をしていると俺の『 魔 導 技術 』をコピーしていた『錬金のおじさん』がやってきて話しかけてきた。

「お前の作った錬金の道具をこの『魔導科学技術国家エルミナ 』に売り出してくれないか」

俺はいきなりのことで驚いてしまい返事を返せなかったのである。錬金のアイテムはこの国の人達が魔素を使って錬成を行うことができないのでこの国の人々のためには使えないのだと言う事を伝え、そしてこの国の錬金の魔導陣も魔導技術に使える魔導技術なのだという事を説明する。この国の人たちのためにはならないのであれば売ることはできないと説明したのである。

そして俺の魔導技術を盗んでいた『 錬金の おじさん 』に俺は自分の知識を教えるために魔導の技術について説明をするのだった。俺の説明を聞いた『 錬金の おじさん 』はとても感動していたのである。俺が、錬金と魔導の違いについて簡単に説明すると彼はとても驚いた顔をして「真樹、すげえよ。この世界に無い考え方を持っているんだな。お前のおかげで魔導の技術が大幅に進歩することが期待できるぜ」といって喜んでくれたのだった。

そして『 錬金の魔導士 』になったばかりの俺は【賢者】の称号を持つ『 錬金のおじさん 』の話を聞いていたのである。


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魔導具師ダレルトの世界~無職になったので魔道具工房を経営しようと思ったがどうやら俺のチート性能だとオーバーテクノロジーになるらしい~ あずま悠紀 @berute00

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