次男ルシウス、家出する


 とりあえず今日、新婚ほやほやの上の息子夫婦が新婚旅行に出発するまでは、弟のルシウスが暴れるのを阻止せねばならない。



「やはり昨日、結婚式の後に会場から直接、新婚旅行に向かわせるべきだったか……」



 家の伝統で、結婚式の当日は屋敷で盛大に一族や使用人たちまで総勢での食事会なのだ。

 だがこの様子だと、今回ばかりは悪手だったようだ。


 とりあえずルシウスは午後まで自分の部屋に閉じ込めておく。


 食事やおやつは部屋に運ばせて、後は本人が反省してくれれば言うことなしなのだが……。




 そして昼過ぎ、初々しい新婚夫婦が新婚旅行へ向かうため馬車で出立したのを、ルシウス抜きの父親と使用人たち一同で見送った後。


 家の使用人が発見したのは、もぬけの殻となったルシウスの部屋だった。



「ど、どう致しましょう、旦那様!?」



 部屋には書き置きが一枚残されていた。




『家出します。兄さんのいない家にいたくない』




「兄はおらずとも父がおるだろう! ルシウース!!!」



 どうやらブラコンを余計に拗らせただけだったようである。


 親バカの父、ブラコンの次男。


 正直、どっこいどっこいの親子であった。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る