1 収支管理者は誰だー

「くそーぅ勇者め、また私の罠を尽く壊していきおって」


 小柄な少女の怒声が玉座に響いた。


 金色の目、玉のように磨かれた白い肌、透き通る白髪、まだ幼い少女に見える。しかし彼女は紛うことなく魔王なのだ。


 魔王様は若くして、この世界で一番の魔力量である。


 魔力とは、体内に存在する生命の力を凝縮したもの。その魔力をイメージによって魔法へと転換することができる。


 まあ、何が言いたいかというと、魔王様はこの世界でもっとも生命力があるということです。


 そんな魔王様ですが、勇者にお仕置きを受けてしまい。何とお労しや。


「屈辱じゃ」


 まだお尻がヒリヒリする(泣)。


 魔王は玉座から立ち上がると、痛むお尻を摩る。


 しかし次こそは勇者を殺すと、魔王は意気込んだ。


「軍団長」


「はっ」


 魔王の呼び掛けに応じ返事をしたのは、上位精霊火達磨。魔王軍最強の戦闘力を誇り、高い知性を持っている。


 次の策はないのかと、問いかけるように魔王モルは火達磨の顔を見る。


 そこへバーンと大きな音を立てて、玉座の扉が開けられた。


 誰だ、無礼なという視線を無視して、入って来たのはメイド長セルカだった。


 そしてカッカッカと小さな足音鳴らして、モルの座る玉座まで来ると。


 開口一番こう言った。


「お嬢様、現在魔王軍に未曾有の危機が迫っています」


 と。


 魔王軍幹部達は慌てふためく。まさか、勇者が攻めてきたのかと。


「いえ、勇者討伐への多大な予算投入の結果、魔王軍は未曾有の財政危機に陥っています」


 ……(一同)(マジか)(あーやっぱり)(ですよねー)


 そうして始まったのが、魔王軍収支会議。


 主な魔王軍の収入はダンジョンである。


 そんな中、行商などや、道具屋、宿屋を経営してはどうかと話題が上がる。


 そこに淫魔のナビが、挙手をして、ある意見を述べる。


「はーい、風俗が簡単に収入が入ると思います」


 モルはボンッと音を立てて顔を赤らめる。


「それだけはダメー」


「良い意見だと思ったんだけどな」


「絶対ダメー」


「ん~了解です。魔王様」


 ナビは残念そうにビシッと敬礼をした。


「それでは、今回の意見をまとめさせていただきます」


『行商、道具屋、宿屋、武具屋、畜産、農産』


「以上です。どうされます魔王様?」 


「…」


 これってお金持ちになれるチャンスでは?モルはニッヒッヒッヒと悪い顔になる。


「全部やりたい」


 魔王軍一同は、雷を落とされた時のように驚愕の表情になった。


 そして今、土地、店舗の建設を部下に任せて、魔王様は人間の町へ。何故なら、人間の需要と供給を探るためである。


 モルは、流行を探るために本屋に入った。


 そして、BL、BLと楽しそうに会話する集団を見つけた。


「店主、彼奴らは何じゃ?」


 女性の集団を指して、モルは本屋の店主に問う。


「あー、あれは腐女子です。最近の流行ですね」


 と、答えた。


「ふむ、なるほど。巷では腐女子というものが人気であるか」


 腐女子とは、恐らくアンデッドの亜種なのだろう。


 アンデッドは見た目は怖いが、気のいい奴らじゃからのぅ。流行るのもわかると、魔王は一人頷くと納得した。


 それならばと、流行に合わせて、腐った肉を売り出すのじゃ。私って天才じゃなかろうか?完璧すぎる案じゃ。

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魔王様が始めるよろず屋、本日開店しました。 七星北斗(化物) @sitiseihokuto

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