第231話 討伐組の帰還

 北の森の奥で発見されたゴブリンの群れを討伐に向かったハンター討伐組が帰って来ました。けが人もいるようですが、みんな笑顔での凱旋です。


「アキラ、お帰り!!」

「ただいまっす」


 ナノリアが討伐組の中にアキラを見つけて、ぴゅいっと飛んで行き、嬉しそうにお帰りを言うと、アキラから笑顔でただいまが返ってきました。


「お疲れさま」

「無事でよかったです」

「久々に暴れてきたっす」


 続いて駿助とレイモンが嬉しそうに一言掛けると、アキラは拳を握りしめて討伐の感想を一言述べました。


「それで、戦果はどうなのよ」

「ゴブリンジェネラルを討ち取ったっす!」

「すごいです」

「さすがだなぁ」


 ナノリアの問いに、アキラがニンマリと嬉しそうな笑顔で最大の戦果を答えると、レイモンと駿助が感嘆の声を漏らしました。


「アキラとゴブリンジェネラルとの一騎打ちは、凄かったぞ」

「ああ、あまりの凄まじさに、俺達は近づくこともできなかったほどだ」


「いやぁ、みなさんが、周りのホブゴブリン共を引き付けてくれていたから倒せたんですよ」


 周りにいたハンター達が話に入ってきて、アキラの戦いのようすを語り出すと、アキラは頭を掻きながら少し照れ臭そうに、ハンター達の働きのおかげだと伝えます。


 どうやらアキラは討伐組のハンター達と、かなり仲良くなったようすです。和気あいあいとした雰囲気の中、ハンター達とゴブリン討伐の話で盛り上がっていました。


 討伐組は、一度、町の北側で集合がかかり、討伐組の指揮を取っていたハンターが無事の帰還とハンター達の労をねぎらってから解散を告げると、駿助達は宿へと戻りました。


 アキラがお風呂に入って汗を流した後、早めの夕食を取りながら、駿助達は、近々旅に出ようという話を始めました。


「なるほど、いよいよ旅に出るっすか。楽しみっすね」

「さぁ、明日から本格的に旅の準備をするわよ!」


 アキラも賛成のようで、ナノリアがぴゅいっと飛び上がって、楽しそうに旅の準備を告げるのでした。




 そして、翌日、駿助達はギルマスの下を訪れました。


「ゴブリン討伐隊も帰って来たことですし、魔物レーダーは回収しますね」

「あ、いやぁ、それなんだがな、警察署長に見せたら好評でな、是非とも譲って欲しいのだが――」


「ダメよ。まだ開発したての試作品なんだから、いつ壊れてもおかしくないのよ。そんな欠陥品を譲り渡すわけにはいかないわ。約束通り返してちょうだい」


 駿助が魔物レーダーを回収すると告げると、ギルマスは魔物レーダーを譲って欲しいと言いだしましたが、すかさずナノリアがダメだと断りました。もともと、ゴブリン討伐隊が帰って来るまでの約束だったので、ナノリアは堂々と返してくれるように要求しました。


「いや、だから、警察署長が――」

「警察署長だろうがなんだろうが、どうでもいいの。約束通り返してもらうわ」


 ギルマスが警察署長の名を出してごねますが、ナノリアは一歩も引く気はないようです。


「いや、待て、せめて壊れるまでの間、貸して貰えないか? な、このとおりだ」

「ダメよ。絶対に返してもらうわ」


 ギルマスが両手を合わせてナノリアに頼み込みますが、ナノリアは全く折れるようすを見せません。


「なぁ、駿助君の方からも頼んでくれよ。警察署長からも期待されているんだよ」

「そ、そんなこと言われましても、俺達、近々旅へ出ようと思ってるんで……」


 困ったギルマスは、駿助を落としに掛かりました。

 すると、駿助は額に汗を滲ませながら旅に出ることを持ち出しました。


「いやいやいや、フェアリーナイツは、ハンターギルドバロン支部の期待の星なんだから、旅になど出ないで、ここでハンターを続けてくれなくては困るよ」

「そんなこと言われましても……」


「アキラ君だってゴブリンジェネラルを倒したそうだし、今、フェアリーナイツに町を出られては困るんだよ」

「そんなこと言われましても……」


 ギルマスが駿助をターゲットに次々とを仕掛けて来ると、駿助はタジタジとなってしまい、同じ言葉を繰り返すばかりでした。


「せめて魔物レーダーが壊れるまでは、この町で活動してもらわないとな」

「いや、そんなこと言われましても……」


「いつまでもとは言わないぞ。ハンターは、その辺自由だからな。だが、魔物レーダーが壊れるまででいいんだ。な、それまでの間だけ、旅に出るのを待ってくれ」

「そんなこと言われましても……」


 ギルマスは、たじろいでいる駿助を相手に言葉巧みに畳みかけてきました。あいも変わらず、駿助は同じ言葉を繰り返すばかりです。


「駿助殿、ダメダメっすね……」

「駿助さん、頑張るです」


 アキラとレイモンが駿助とギルマスのやりとりの様子をみて、小さな声で呟きました。


「やれやれね」


 ナノリアは、呆れた顔で、そう言うと、指をパチンと鳴らしました。

 すると、机の上に置いてあった魔物レーダーのタブレット石板からボフンと煙が噴きあがりました。


「何事だ!?」

「あー、魔物レーダーが壊れちゃったみたいだわー。やっぱり試作品はダメね」


 ギルマスが振り返り煙のでる端末をみて何事かと叫ぶと、ナノリアが、わざとらしく壊れちゃったと肩を竦めてみせるのでした。


「魔物レーダーが壊れたっすから、もう旅に出るのを止める理由は無いっすよね」

「ギルマス、魔物レーダーが壊れるまでって言ったです」


 そして、ここぞとばかりに、アキラとレイモンが先ほどのギルマスの言葉を逆手に取って言い返しました。


「え、いや、その、だなぁ……」

「それじゃ、壊れた魔物レーダーは回収させてもらうわね」


 ギルマスが言葉に詰まっている間に、ナノリアが魔物レーダーのタブレット石板を回収して駿助に渡すと、駿助達はギルマスを置いてささっとハンターギルドを後にするのでした。

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