第19話 ゴブリン共
ダンジョンの中で食事を食べ終えた駿助は、バックパックを背負って立ち上がると、あてもなくダンジョンの出口を目指して歩き始めました。
「ダンジョン内を一人で歩くのって心細いな・・・」
呟いておいてなんだが、言葉にすると一層心細くなるな。
今は剣も盾もないからは戦闘能力は皆無と言っていい。
魔物が現れたら逃げるしかない。
ゴブリン相手であっても、俺は迷わず逃げるつもりだ。
そして思う。
ダンジョン内で魔物の遭遇しないって無理じゃね?
だけど、じっとしていても魔物の方から寄って来るだろうからな。
岩陰に隠れながら進むしかない。
グギャッ。
早速、ゴブリンの声だ。
岩陰に隠れてやり過ごそう。
ゴブリン語なんてわからないけど、見つかってないよね?
駿助が岩陰に身を潜めている間に、ゴブリン3体がダンジョン通路を通りすぎて行きました。
ゴブリン達の姿が見えなくなったところで駿助は再び歩き出します。
ふぅ、なんとかやり過ごせたな。
この調子で進もう。
それにしても、ダンジョンって思ったよりも広いのな。
洞窟みたいになっているけど、天井は高いし、道幅も10メートル以上あるんじゃないか?
こんなのが何層もあるっていうんだから凄いよな。
まさにファンタジーだ。
地震があったら崩れたりしないかな・・・。
しばらく進むと、突如岩陰からゴブリン3体が飛び出した来ました。
グゲッ!
グギャギャッ!!
「おいおい、岩陰に隠れているなんて、ずるいじゃないか・・・」
俺も隠れてやり過ごすつもりだったから非難出来る立場じゃないが。
さて、どうしよう・・・。
というか、どっちへ逃げるかだな。
後戻りすると、さっきのゴブリン共と鉢合わせしそうだから、壁際を突っ切るしかない!
「勇者ボディ、オン!」
全身白タイツ姿に変身した駿助は、一目散に駆け出しました。壁際を走り、迫りくるゴブリン達をかわすと、そのまま全速力で逃げ去ります。
「フハハハハー、お前達に構っている暇など無いわ!」
駿助は高笑いしながら、猛ダッシュでゴブリン共を突き放します。
グゲゲッ!?
「うおっ、新手のゴブリンか」
しかし、行く先には新たなゴブリン2体が待ち構えていました。
ちらりと後ろを見るも、先ほど躱したゴブリン3体が追いかけてきています。
「突っ切るしかないな。うおぉぉぉぉぉぉ!!!」
前方のゴブリンへ向かって突進した駿助は、直前でフェイントを交えてゴブリンの横を駆け抜けます。待ち構えていたゴブリン共は、綺麗にフェイントに引っ掛かり、駿助を攻撃することができませんでした。
「よし! 行けるぞ!」
おっと、分岐だ。
迷ってる暇は無い、右だ!
グギャギャ!?
グゲッ!
「うわっ、ゴブリン群れてる!?」
分岐の先には、ゴブリンが10体ほど群れていました。
駿助は慌てて引き返すと、元来た道からゴブリンが走り込んでくるのが見えます。
「くそっ、追手が迫ってやがる」
眉間に皺を寄せながら、おのずと、もう一方の分岐へと走り込みました。
しかし、その先にもゴブリンが2体いました。
「また居やがった。ちくしょー!!!」
後ろから多くのゴブリンに追われ、戻るという選択肢はありません。
正面のゴブリン2体の手前にあった岩へと飛び乗り、大きくジャンプして、ゴブリンの上を飛び越えました。
その後も、ゴブリン達と遭遇を繰り返しては、フェイントを交えて突っ切っていきました。そのたびに、追ってくるゴブリンの数が増えていきます。
「な、なんでこんなにゴブリンがいるんだよー!
なんか、思ってたのと違~う!!!」
涙目で叫びながら走り続ける駿助でしたが、かなり走り続けていたので、走るペースも落ちてきました。
今では追ってくるゴブリン達と着かず離れずの距離で走っています。
しばし新しいゴブリンの姿が見えなくなってから、緩やかなカーブを曲がったところで、ヒュージスライムの姿が見えました。
「くっ、こんなところでヒュージスライムか」
駿助は一瞬後ろを振り返りました。
数十体のゴブリンが駿助を捕まえようと走り寄ってきています。
「仕方がない・・・」
そう呟いて、駿助は全力で走り込みます。そして、そのままヒュージスライムめがけて飛び込むと、トプンといい音を立てて飲み込まれてしまいました。
追って来たゴブリン達は、ヒュージスライムの前で止まると、右往左往しています。さすがにヒュージスライムには危険を感じている様子です。
ふぅ、危ないところだった。
どうやら俺の予想通り、ゴブリン共はヒュージスライムを襲わないようだ。
ふはははは、ここは俺専用の安全地帯だな。
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