第20話 迷彩装備の一団
ヒュージスライムを倒し、ダンジョン脱出を目論む駿助でしたが、ゴブリン共に追いかけまわされた挙句、再びヒュージスライムの体内へと逃げ込んだのでした。
追って来たゴブリン共は、駿助を飲み込んだヒュージスライムを前にうろうろしているだけでした。一部のゴブリンは諦めたのか、ダンジョンの奥へと向かっていきます。
ゴブリン共も攻撃して来ない。
ヒュージスライムも、ゴブリンを襲う様子は無いな。
まぁ、魔物同士で戦うこともないのだろう。
そこへ、天井から新たなヒュージスライムがポヨンと落ちてきました。
真下に居たゴブリン数体がヒュージスライムに飲み込まれます。
飲み込まれたゴブリンは、あっという間に砂のように崩れ落ちると、ヒュージスライムの体内に溶けるように消えてゆきました。
そのヒュージスライムは、さらにおかわりとばかりに、パニックにあるゴブリン共に襲い掛かると数体を捕食してしまいました。
あー・・・。
前言撤回。
魔物の世界も弱肉強食なんだな・・・。
駿助の呟きも、ヒュージスライムの中では声にならず、口をパクパクさせるだけでした。
さて、どうしようかな。
ヒュージスライムを倒してもいいんだけれど・・・。
はぁ、またゴブリン達に追いかけまわされてもなぁ・・・。
仕方ない。
助けを待つか。
待つとなると退屈だな。
スライムの核を捕まえる練習でもしていよう。
ヒュージスライムの中で助けを待つことに決めた駿助は、暇つぶしとばかりにヒュージスライムの核を捕まえる練習を始めました。
キャッチアンドリリースを繰り返して、その速度を上げようと頑張ります。
おっ、そういえば、もう1体ヒュージスライムがいたな。
ゴブリン共を倒してた奴が。
じゃぁ、こいつを倒して乗り換えればいいんじゃね?
駿助は、ヒュージスライムを倒してしまい、もう1体のヒュージスライムへと飛び込みました。
よし、綺麗な魔石も手に入ったし、助けを待とう。
こいつが俺を乗せたまま出口へ向かってくれてもいいんだけどな。
まぁ、期待せずに待とう。
こうして、たまに新しいヒュージスライムが近くに見えると、ヒュージスライムの核を破壊して、乗り換えるようになりました。
しかし、それも長くは続きません。安全に過ごせるようになったものの、やはりお腹は空くのです。
腹減ったなぁ・・・・。
はやく助けに来てくれないかなぁ・・・。
もう、どれだけの時間が経ったか分からないし。
そのうち餓死しちゃうよ、俺・・・。
ヒュージスライムの核を手に、げっそりとしていると、誰かの声が聞こえてきました。
現れたのは、グリーン基調の迷彩色で統一された装備を身に着けた兵士達です。
「綾姫様、ヒュージスライム1体です」
「総員配置に着け! 魔法部隊は詠唱の準備だ」
「「「「はっ!」」」」
救援か!?
やった、これで助かるぞ。
おーい、おーい、敵じゃないぞー!
攻撃は止めてくれよー。
「ん? ヒュージスライムの中に白いものが浮かんで見えるな」
「綾姫様、手を振っているように見えます」
「何を馬鹿なことをでござ・・・うおっ!?」
よし、こっちに気づいたようだな。
それにしても、スライムの外の音がよく聞こえるのが不思議だな。
あの人達まで結構距離があるのにな。
「新種のスライムか?」
「姫様、危険でござる。ここは某が」
「まぁいい、スライムならば魔法で焼くまでだ。魔法部隊、予定通りに展開、詠唱を続けろ!」
やべっ、ちょっとタンマタンマ!
新種のスライムじゃないですって!
早く、ここからでなくちゃ!
魔法で黒焦げにされるなんて勘弁だ!
駿助は、手にしていたヒュージスライムの核をパキッと破壊しました。
ヒュージスライムの体は泥のようにべちゃりと崩れ落ち、全身白タイツ姿のままで駿助が声を張り上げます。
「ストップ、ストップ! 俺は魔物じゃないです。撃たないでください!」
「綾姫様、白いのがスライムから出て来ました」
「なんと、姫様、白いのがしゃべったでござる」
「うむ、魔法部隊、攻撃中止!」
ヒュージスライムから出た途端、両手を上げて必死にアピールした甲斐があったのか、駿助への魔法攻撃は中止されました。
「綾姫様、あのおかしな格好、魔王軍の手先かもしれません」
「そうでござる。あんなおかしな格好でダンジョンに入る奴など居らぬでござる」
「そうだな。あんなおかしな格好、恥ずかしくてとても出来ないな」
「いや、この格好のことは話題にしないでください。俺も恥ずかしいんです」
迷彩装備の一団は、駿助の姿を魔王軍と勘違いしているようです。
皆武器を構えて警戒しています。対して駿助は、白タイツの事は触れないで欲しいと情けない表情で訴えました。
「綾姫様、普通の人間ならば、ヒュージスライムから出てくるなどありえません」
「そうでござる。ヒュージスライムに飲み込まれて生きていられる人間などいないでござる」
「そうだな。あのおかしな格好、やはり人間ではないな」
「いや、人間ですから。勇者スキルのおかげでスライムの中でも生きていられるんです。こんな格好ですが、俺、勇者なんです!」
「「「勇者!?」」」
勇者と聞いて、迷彩装備の一団は驚きの声を上げました。
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