第18話 魔法?
駿助は、苦労して捕まえたヒュージスライムの核へパンチやチョップをさんざん浴びせかけましたが、核を壊すことは叶わず、ヒュージスライムを倒すことは出来ませんでした。
ヒュージスライム倒せねぇよ。
こりゃ、詰んだな・・・。
はぁ、仕方ない、大人しく助けを待つか・・・・。
でも、助かるのかなぁ。
むむむ、魔法で焼かれる未来が見える・・・。
ん? 魔法?
あ、俺が魔法を使えばいいんじゃね?
魔法の使い方知らないけどさ。
まぁ、他にやることも思いつかないし、チャレンジしてみるか。
さて、魔法の素である魔力はなんとなく感じることができる。
毎晩頑張って魔力を体内で動かしてみたりしてるしな。
ではまず、胸の辺りに溜まってる魔力を動かしてみる・・・。
まだまだゆっくりとだけど、焦らないで・・・。
肩から腕へと流していくのだ。
不思議と左右均等にした方が上手くいくんだよな。
両肩から上腕、肘、腕、手首へとじわじわと魔力の流れを感じるぞ。
そして魔力は両手に集まりつつある。
あとは、この魔力を変換して、両手から火を放つのだ。
さすれば、両手に捕まえたヒュージスライムの核が壊れるはず。
だが、ここで大きな問題がある。
どうやって魔力を変換して火を出すかだ。
そんな練習、夜中にするわけにもいかないし、もちろん練習したことはない。
今回が初めての試みだ。
楽しいじゃないか。
しかし、試すと言っても、俺は魔力を変換して火を出す方法を知らない。
魔法の使い方なんて誰にも教わってないしな。
だが、我に秘策あり。
魔法なんて、イメージだろ?
そうだよな。
うん、そうであって欲しい。
呪文?
何それ、美味しいの?
ピンチの時には、異世界定番、ご都合主義が発動するはずだ!
炎をイメージ!
我に力を!
出でよファイヤー!!
・・・・・。
出ないな・・・。
えっと、もう一度確認だ。
魔力は両手に集まっているよな。
うん、それは感覚で分かる。
ならば、イメージ力が足りないのか?
それとも他に何か見落としがあるのか?
う~ん・・・。
あ、魔力を放出しないとダメかも?
炎、もとい、火をイメージしつつ、魔力を放出すればいんじゃね?
これだ!
と、いうことで、思い立ったがすぐ実践。
早速やってみよう。
どうせ、ダメ元だしな!
さぁ、火をイメージするんだ・・・。
・・・イメージOK。
魔力を放出。
素早く火へと変換!
いざ、ファイヤー!!
・・・・・・。
くっ、ダメか・・・。
パキッ!
あれ?
残念ながら、駿助の手から火の魔法は出ませんでしたが、ヒュージスライムの核にひびが入りました。
そして、ソフトボール大であった核の表層が砕け散り、中に詰まっていた光の粒子がすうっと凝縮されて、ビー玉よりやや大きいくらいの魔石となりました。
同時に、ヒュージスライムは徐々に粘性を失い、泥のようにダンジョンの地面へ崩れ落ちました。
駿助は、ようやくヒュージスライムの体から解き放たれたのです。
「ヒュージスライムをやっつけたのか?」
呟く駿助をよそに、ヒュージスライムだったものは、どんどん粘性を失い、最後は乾いた砂に撒いた水のように地面に染み込んでいきました。
「いよっしゃぁ!!
なんか、思ってたのと違うんだけど、ヒュージスライムを倒せたぞ!」
ヒュージスライムが消えたことに、ようやく実感が湧いてきたきたのでしょう、駿助は飛び上がるほどに喜びました。
「はっ! 浮かれている場合じゃないな。早くダンジョンから脱出しないと・・・」
駿助は、ダンジョンを脱出するべく頭を切り替え、辺りを見回しました。
「ここ、どこ?」
間抜けな声を漏らした後、駿助の顔はどんどん青ざめていきました。
「おいおい、ヒュージスライムを倒したと思ったら、今度は迷子かよ。どっちへ行けばダンジョンから出られるんだ?」
そう呟いたとき、お腹がぐぅぅと盛大に鳴りました。
「あー、そういえば、腹が減ったな・・・」
お腹の鳴る音で空腹を思い出し、悲壮感はどこかへ飛んで行ってしまったようです。
駿助は周りを見回し、手ごろな岩陰を見つけると、隠れるように移動しました。
「魔物も居ないようだし、飯でも食おうか。腹が減っては戦は出来ぬというしな。
勇者ボディ、オフ」
勇者スキルを解くと、バックパックを背負った旅人の服姿となりました。
そして、バックパックを下ろして自分も腰を下ろします。
「変身している間、どこに行ってるんだろうな、この荷物。亜空間にでも収納されている的な? まぁ、便利だからいいけどな」
駿助は勇者スキルで変身すると、身に着けていた荷物が消えてしまうのでした。
初めて気づいた時には非常に驚いたのですが、変身を解くとちゃんと身に着けていた状態で現れるので、駿助自身は亜空間にでも収納されているのだろうと思っています。
ちなみにプロトン博士には報告していないので、彼はこのことはまだ知らないはずです。
駿助は、バックパックに入れておいたサンドウィッチを取り出して、もそもそと食べ始めるのでした。
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