第17話 白タイツ

 ヒュージスライムに飲み込まれ、もう死ぬしかないと思っていた駿助ですが、なぜだか分からないまま、未だに生存しています。


 そればかりか、体のどこにも痛みなど感じないし、スライムの体内だというのに、普通に呼吸すらも出来ているようでした。



 夢? じゃぁないよな・・・。


 スライムの中で生きているって・・・、あー、なんか良く分からん。


 スライムの中からみるダンジョンの景色も、うん、微妙に薄紫のフィルター越しに見ている感じというか、これってヒュージスライムの体の色だよな・・・。


 はぁ、ま、夢でもなんでもいいか。

 とにかくだ、このヒュージスライムの体内からなんとか脱出しないと溶けてしまうから・・・。


 ん? 溶ける?

 ってか、現状溶けてないし、体中のどこにも痛みも何もない。


 はて、スライムの体液に触れると溶けると聞いていたのけれど・・・。

 なんか思ってたのと違う???


 むぅ、考えられるのは、この白タイツか・・・。


 この白タイツのおかげで、ヒュージスライムの中でも息が出来るし、溶けることも無いと。

 それならこの状況も納得できる。


 残念スキルと言われたスキルに、まさかこんな形で命を救われるとは思わなかったな。



 よし、体の心配は無いとしてだ、ここはのんびり救援を待つとするか?

 いや、マーロンの奴が、俺がヒュージスライムに飲み込まれて死んだと報告しているだろうから、救援は来ないのかも・・・。


 いやいや、俺の救援は来なくても、ヒュージスライムを退治するために討伐隊が編成されるだろう。

 討伐隊がきっと俺を助けてくれるに違いない・・・。


 ちょっと待て、討伐隊が来たとして、どうやって俺を助けてくれるんだ?

 ヒュージスライムを倒すためには魔法を撃ってくるはず。


 火とか雷の魔法が良く効くと言ってなかっただろうか。

 そんなもん撃たれたら、俺の命もヤバいんじゃね?


 ・・・・・・・。


 や、やっぱり、早いところここから出た方がいいな、うん。

 そうさ、自力で脱出した方がいいに決まってる。

 その為には、ヒュージスライムの核を壊したいんだが・・・。


 ふん、ふん、ふん・・・・・。


 やっぱ、捕まらねぇ。

 こいつ、スルスルと俺の攻撃を躱しやがる。


 むむむむむ・・・・。


 あ、別にヒュージスライムを倒さなくても良いのでは?

 堂々と正面から脱出できればそれでいいんじゃね?


 なんてったって、こいつの体内で動けるしな。

 まぁ、体が自由に動くとは言え、プールの中を泳いでるみたいだけど・・・。


 こう、なんとかヒュージスライムの表面から手を出して・・・。


 ・・・うわぁ、手を包み込んだままスライムも伸びやがる。

 そのミヨーンって感じで伸びるの止めてもらえますか?


 うほっ、押し戻された。

 くそう、地に足がつかないから踏ん張ることが出来ないぞ。


 盲点だったな。

 やはり、核を攻撃しないとダメか・・・。


 おや? スライムの外に剣が落ちてるぞ。

 そういえば、俺の剣や盾は・・・、無いな。

 剣は腰に着けていたはずだが、鞘ごとなくなってる・・・。


 うん、きっとあれだな。

 外に落ちてるのが俺の剣だ。

 借り物だけど、なんか見覚えがあると思ったんだよな。


 とすると、ちょっと遠くに見えるのは俺の盾か?

 ああ、剣がゆっくりと遠のいていく。

 ヒュージスライムが動いてやがるんだ。


 君は俺を飲み込んだまま何処へ行くんだい?

 ダンジョンから出てくれると嬉しいんだけどな。


 はぁ、剣も無しでは攻撃力半減どころか、攻撃力皆無だよ、俺。

 ヒュージスライムの核を壊したいんだけどなぁ・・・。


 とにかく攻撃してみるか。

 スライムの核は柔らかいに違いない。


 ワンパンで仕留められるはずさ。

 当たればだけどな・・・。


 それから、しばらくの間、駿助とヒュージスライムの核との激しい?攻防が繰り広げられました。


 スルスルと攻撃を躱す核に対して長いこと奮闘した挙句、そ~っと手を伸ばすことで、なんとか核を捕まえることが出来ました。


 ふっふっふ、漸く捕まえたぞ。

 もう逃げられまい、観念するがいい。


 駿助は悪代官のごとくニヤリと口角を上げると、左手に掴んだ核に右の拳を叩きつけました。


 コン・・・。


 あれ?壊れないぞ?

 もう一回。


 コン・・・。


 駿助が再びパンチをお見舞いしてもヒュージスライムの核は壊れません。


 ・・・・・・。


 いやいや、スライムって核が弱点だろ。

 普通、一撃で壊れるだろ?

 ってか、壊れてください、お願いします!


 更に、必死でパンチやチョップを浴びせかけるもヒュージスライムの核はビクともしませんでした。


 もう、なんでこんなに硬いの?

 これじゃ、ヒュージスライム倒せないじゃないか。

 あー、もう、なんか思ってたのと違~う!!!


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