第16話 走馬灯?

 魔王軍により呼び出されたヒュージスライムの脅威にさらされる中、第4グループは半数ずつ逃げることを繰り返す作戦を行い、最後には駿助とマーロンが残される状況となりました。


 そこで、駿助はマーロン教官の裏切りにより、ヒュージスライムへと投げつけられて、捕食されてしまいました。



 くそっ!

 なんてことだ。


 腐れ教官に裏切られて魔物の餌になってしまった。

 このまま死んでしまうのか?


 嫌だ!

 何とかするんだ!

 考えろ!


 ヒュージスライムに飲み込まれたが、俺はまだ生きている。

 生き延びる為に、死力を尽くせ。


 そうだ!

 核だ!

 スライムってのは核を壊せば死ぬはずだ。


 核はどこだ?

 ・・・・。

 そこか!!


 駿助は、ヒュージスライムの核へ向かってパンチを繰り出しましたが、水よりも粘度の高いスライムの体液の中で、駿助の動きは鈍くなってしまい、全くパンチは当たりません。


 必死で何度もパンチを繰り出しますが、するりするりと掠りもしませんでした。



 ちくしょう、もう息が続かない・・・。

 苦しい・・・。


 頑張れ俺・・・。

 諦める・・・な・・・。


 苦し気な表情で、パンチを繰り出しますが、時間と共に、その動きは緩慢になり、やがて、ゴボッと口から息を吐きだすと、その動きを止めてしまいました。


 ああ、俺、死ぬんだな・・・・。

 思えば短い異世界人生だったな・・・・。


 勇者召喚って言うから、チートスキルの主人公だと期待していたっけ・・・。

 頑張ってレベル上げして、最強勇者になってさ・・・。


 ヒロインときゃっきゃうふふを夢見ていたよな・・・。

 いや、普通そうだよね、異世界で勇者っていったら、それが王道だよね。


 ふふふ、なんか、異世界来てからの事が思い浮かぶよ。

 これが走馬灯ってやつか・・・・。


 あー、でも、この世界に来たはいいけど、ここには勇者が沢山召喚されていたな・・・・。


 そして、鑑定も無ければステータスも分からないし、レベル? 何それ? 美味しいの?って感じだったっけ・・・・。


 チートのはずの勇者スキルは全身白タイツで・・・。


 しかも残念スキルなんて呼ばれるほどに貧弱だったな・・・。


 ・・・どうみてもモブキャラか、いじられキャラじゃね?これ・・・。



 だけど、たとえモブキャラだとしても、勇者としての成長に期待して、頑張ってゴブリン倒したよな・・・・。


 そうやって、これから大きく成長していくんだって思ってた・・・・。


 だけど、現実はそう甘くはなかったよ・・・・。


 いきなり魔王軍が現れてさ、まぁ、よくあるシチュエーションだけど・・・。


 あー、そういえば、あのカエル頭が護衛を吹っ飛ばした時の動き、早くて目で追うのがやっとだったな・・・・。


 多分強かったんだろうな・・・。


 あいつ、強かったんだろうけど・・・、自分が呼び込んだって言ってたヒュージスライムにあっさり飲み込まれちまったのってどうよ・・・アホじゃね?


 まぁ、おかげで戦わずにすんだんだけどな・・・・。



 それから、ヒュージスライムからの逃避行が始まったんだよな・・・・。


 魔法なしじゃ、勝てないっていうから、逃げの一択だったんだけど・・・。


 結局追い詰められて、二手に分かれて逃げよう作戦に打って出たんだよな・・・。


 うん、4回挑んで、4回ともはずれを引いたんだよな、これが・・・・。


 我ながら、運が無いな・・・。


 もう、なんでこっち来るんだよって、発狂したくなったよ、マジで・・・・。


 まぁ、確率の問題だからさ・・・、ヒュージスライムが来ちゃったのは仕方ないけど・・・・。


 か、確率の問題だよね? まさかあのスライム、初めから俺だけ見てたってないよね? 確かに全身白タイツは洞窟じゃ目立つけどさ。スライムって目は無いんだよね? 見えてないよね!?


 ・・・まぁ、過ぎたことだからいいんだけどさ・・・。



 しかしだ。あれはないよな・・・。


 最後の一勝負というときに、マーロンの野郎が裏切りやがるなんてな・・・。


 もう、後ろからいきなりガツンときて、あれっ?て思ったときにはジャイアントスイングで振り回されてるし、そんでもってヒュージスライムへ投げ飛ばされちまったよ・・・。


 スライムの中から見えたあいつのニヤついた顔は忘れられん。ありゃぁ、絶対狙ってやったんだぜ。そう考えると、最後に護衛を組み替えてたのは俺を犠牲にするためだったんだな。ちくしょうめ!


 そういや、必ず俺と一緒の組に入っていたな。もしかして、最初から俺を犠牲にするつもりだった??


 ちくしょう、なんだが腹が立つな。

 悔しいけど、悔しいけど・・・・。


 もう死ぬんだな・・・・・・・・。


 ・・・・・・・・・。


 そういや、随分長い時間、こっちの世界に来てからのことを思い出していたようだな・・・。


 まぁ、走馬灯だしぃ、長く感じたけどさ、きっと一瞬だったんだろうな・・・。


 あー、走馬灯という名の回想も終わったようだし、そろそろ死ぬのだろう・・・。


 思えば、異世界って、なんか、思ってたのと違ったな・・・。


 もう、だんだん意識が遠のいて・・・・。


 ・・・・・・・。

 ・・・・・・・・。

 ・・・・・・・・・?


 いや、意識が遠のかないな???

 うん、はっきりしてるよ。


 でも、息が出来なくて苦しかったはずだけど?


 あれ?

 苦しくないや。


 呼吸・・・出来てる?

 こ、これはいったいどういうことだぁ???


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