第11話 共闘

 さてさて、この辺りはゴブリン単体しか出ないらしい。

 なので、ゴブリンと戦って経験を詰むのが当面の訓練だそうだ。

 一応、各勇者に護衛が付いているので、危なくなったら護衛が助けてくれる。


 俺も何度もゴブリンと戦っているのだが、ゴブリンよりもあのマーロンという教官がうざい。


 何かにつけて、上から目線で嫌味を言ってくるのだ。

 アホ、ボケ、カスと、なじるばかりで、具体的にどう戦えば良いのかなどのアドバイスは全く口にしない。


 普通の勇者ならば、ゴブリンくらいは軽く葬れるのだがな、と溜め息交じりに言われた時は、かなりイラっとした。


 俺達43班を弱小勇者と蔑んでいるのが顔や態度に表れていて、明らかに41班、42班への態度とは違っているから腹立たしい。


 実際、43班は貧弱な勇者を集めた班らしいのだが、それを何とか指導するのがお前の仕事だろうがと言いたい。



 さて、そんな小物にいちいちイラついていても仕方がないな。

 俺もゴブリン相手に、ちょっと情けないかなと思うような戦いしか出来ていないので、もう少しなんとかしたい。


 何度か戦ってみたが、他の勇者のように一撃で倒すのはちょっと無理そうだ。

 くそっ、もう少し攻撃力が欲しいぞ。


 時々近くで見かけるのだが、41班、42班の連中は、勇者スキルでゴブリンを確実に葬っていた。中には鼻歌交じりにゴブリンを倒している勇者もいるくらいだ。

 ちくしょう、羨ましいぞ。


 さて、周りを羨んでいても、嫌味な教官のことを愚痴っていても、楽にゴブリンは倒せるようにはならないな。


 どうしたものか・・・。




「ガイア様、目を瞑っていては当たりませんぞ」

「び、ビビってなんかいないじゃん」


「当たれば倒せるのですから、敵をよく見て勇者スキルを出すだけです」

「そ、そんなこと、わかってるじゃん」


 ふむ、あいつも苦戦しているようだな。

 あー、物凄いへっぴり腰だ。

 親近感が湧くぜ!


 ビビりながら振り下ろした大振りの攻撃は見事に空を切ったな。

 あっと、危ない!

 ゴブリンの反撃がくるぞ!

 ふぅ、護衛の兵士が倒してくれて、ほっとした。


 まぁ、あれだけ豪快に空振りすれば、ゴブリンの反撃も来るよな。

 だから、敵をよく見ろと、兵士に指摘されてるわけだ。

 親切な護衛だな。


 俺の護衛は、やる気がなさそうだ。

 あ、鼻くそほじくってやがる。

 こんにゃろうめ。


 あいつも情けない勇者っぷりだけど、傍からみたら俺も似たようなものだろうなぁ・・・。


 よし、決めた。

 共闘することにしよう。


 駿助はガイアと呼ばれた大剣を持つ勇者へと近づいて行きました。


「ちょっといいかな?」

「えっと、なんですか」


「君もゴブリンが上手く倒せずに苦労しているようだね」

「ええ、まぁ・・・」


「実は俺もなんだよ。そこでだ、しばらく協力して戦わないか?」

「えっ?」


 そう驚かなくてもいいのに。

 協力して戦うなんて普通だよね。


「俺達は召喚されてまだ数日だろ。魔物と戦うっていっても上手く体が動かないのは当然だ。俺は元の世界で喧嘩なんてしたこともないしな」


「僕も、喧嘩したことないじゃん」

「そうだろ。だから、魔物相手に慣れるまででいいから、協力しようじゃないか。短期間だけど、パーティーを組む感じで」


「パーティー・・・」


 おっと、なんか乗り気になって来たのか?

 目が輝いているぞ。


 パーティーがキーワードだったのかもな。

 もう一押しだ。


「そう、パーティーだ。一人では上手く戦えなくても、パーティーで助け合えば、何とか戦えると思うんだ。何匹もゴブリンをやっつけていれば、戦いにも慣れるだろうし、一人で戦っているより上達も早いと思うよ。作戦なんかも立てられるしね」


「なるほど・・・」

「どうかな?」

「うん、OKじゃん」


 よしよし、承諾してくれた。

 となれば、早速作戦を立てよう。



 二人は、改めて名乗りあうと、まずはお互いのゴブリンとの戦い方について話しを始めました。


 ガイアという少年は、ゴブリンと対峙すると緊張してしまい、勇者スキルを上手く当てられないと吐露します。

 駿助の方も、なかなか止めがさせずに苦労していると話しました。


 それじゃぁとばかりに、協力して戦う場合の作戦を立てると、ゴブリン相手に戦いを挑みます。


「いくぞ、ガイア」

「おう!」


 まずは、俺が盾でゴブリンの攻撃を受け止めつつ押し倒す。


「せやっ!」

「ゴギャッ!?」


 よっしゃ、上手く倒したぞ。

 ついでだ、ゴブリンの足を剣で刺しとこう。

 えいっと!


「よし、今だ!」

「任せるじゃん! 直打ち!!」


 倒れたゴブリンへと、ガイアが勇者スキルを放ったぞ。

 なんか大剣が淡く光って、恰好いいなぁ、おい。


「やったじゃん!」


 さすがに倒れて身動き出来ないゴブリンなら攻撃が当たるな。

 嬉しそうで何よりだ。


 砂となり、消えゆくゴブリンから、魔石を取っておこう。

 小さな魔石で、大した価値は無いらしいが、俺達の戦果として回収するのだ。


「ようし、この調子でガンガンゴブリンを狩ろうぜ」

「おー!」


 こうして、駿助とガイアは二人でゴブリンを倒しまくりました。


 一人で戦うよりもずっと安全に、そして確実に倒すことが出来るので、二人とも心に余裕が出来たようでした。

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