第10話 はじめての戦い
プロトン博士のところでスキルの調査を終えた駿助は、第4グループへと戻ると、魔物の討伐訓練を行うべく近くの森へと向かいました。
森へ着くと、第4グループは更に3つの班に分かれて、それぞれの護衛の指導の下に森の中へと入って行きます。
駿助がスキル調査を行っていた2日の間に、第4グループの勇者達は既に森の中で魔物の討伐訓練を経験していて、勇者の戦闘スタイルに応じて班を形成していたのです。
駿助は、森での訓練が初めてということで、まだ思うように魔物討伐の出来ない勇者が集められた第43班に入るように言われています。
「おい、白いの、魔物との戦闘は初めてだったな」
「はい・・・」
第4グループの筆頭指導教官であるマーロン教官が駿助に声を掛けて来ました。
駿助は、ちょっと眉を顰めつつ返事を返しました。
「まずはゴブリン1体と戦ってもらおう。なぁに、ゴブリンは最弱の魔物だ。勇者スキルをお見舞いすれば一発で倒せるはずだ」
「えっと、俺のスキルは攻撃系じゃないんですが・・・」
「ん? そうか? まぁ、ゴブリンなんぞは新兵でも軽くあしらえるくらいの雑魚だから大丈夫だろう。一応危なくなったら護衛が助けに入るから安心して戦うといい」
「わかりました」
ふむ、ゴブリンか。
定番モンスターだな。
ってか、白いのって言われた?
変身してるし、確かに白いんだけどさ。
教官なんだから、名前で呼んでくれよと言いたい。
駿助が剣と盾を構えて小声でブツブツ呟いたり、試し振りとばかりに軽く剣を振ったりしていると、森の中からゴブリン発見の知らせが届きました。
第43班の勇者5人とその護衛は、マーロン教官の後に続いてゴブリンの下へと向かいます。
「よし、白いの、行ってこい!」
「はい!」
ゴブリン1体を視認したところで、マーロン教官が号令を掛けました。
駿助は、元気よく返事を返すと、ゴブリンへ向かって駆け出しました。
「グギャ!!」
駿助を見つけたゴブリンは、錆びた剣を手に突っ込んできます。
うわっ、一目散に向かってきやがる。
なんか怖いんですけど。
とにかく、錆びた剣を一度盾で受けて・・・
ゴブリンの殺気に若干怯みながらも、駿助はゴブリンの錆びた剣を受けようと盾を構えます。
「ギャギャッ!」
「うおっ」
ガキっと音がして、ゴブリンの攻撃を盾で受けましたが、勢いに負けて体勢を崩してしまいました。
「っとっ、ほわっ、くっ・・・」
「グゲゲッ!」
やばいやばい、刃物こえぇ!
駿助は、へっぴり腰になりながらも、何とか盾でゴブリンの攻撃を受けています。
殺気を放ちながら襲ってくるゴブリンの気迫と、刃物による攻撃が襲ってくる恐怖とに気おされてしまっていました。
「こなくそっ!!」
「ギャッ!?」
無我夢中で、ゴブリンの攻撃を受けつつ盾を押し出すと、ゴブリンは体勢を崩して後ろに倒れました。
「うおりゃっ!!」
止めとばかりに倒れたゴブリンへと剣を一撃振り下ろすと、すぐに駿助はゴブリンから距離を取りました。
「グギィ・・・」
「くそっ、しぶといな・・・」
胸に傷を受けながらも立ち上がるゴブリンを、駿助は息を切らせながらも睨みつけます。
「グギャッ!!」
「このっ!!」
再度、襲い掛かって来るゴブリンの攻撃を、駿助は盾で押し返します。そして、何度か押し返しているうちに、相手が転んだところを攻撃するという戦法を繰り返し、4度目の攻撃で、ゴブリンを倒しました。
倒したゴブリンは、砂のように崩れ落ち、小さな魔石を残してゆっくりと消えていきました。
「初めての戦闘だから気後れするのは分かるが、お前、本当に勇者か?」
「えっ?」
戦闘終了後、マーロン教官が眉を顰めて、勇者を疑う言葉を吐きました。
全く予想もしていなかったのでしょう、駿助が呆けた声を漏らしますが、マーロン教官は淡々と話を続けます。
「今までゴブリンを一撃で倒せなかった勇者なんて見たことが無いぞ。お前の攻撃は弱すぎるんだ」
「それは・・・、俺の勇者スキルが攻撃系じゃなかったからで・・・」
「勇者でなくとも一般兵士だって、ゴブリン程度なら一撃で倒してしまうぞ。それを4回切りつけてようやく倒した程度だ。お前の攻撃は極めて弱すぎる。本当に異世界から呼ばれた勇者なのか疑わしいほどにな」
「そんなこと言われても・・・」
「ふん、まぁいい。今のところ、お前が最弱の勇者だ。せいぜい強くなれるように努力するんだな」
「・・・・・」
マーロン教官は侮蔑するような目で駿助を最弱の勇者と断定しました。
駿助は黙って唇を噛み締めることしか出来ませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます