第9話 残念スキル
駿助はプロトン博士の下で、自身の勇者スキルについて詳しく調べることになりました。他の勇者とは離れて別の訓練場へと来ています。
- 攻撃力の検証 -
「まずは、攻撃力を見てみようかな。石柱は割れなかったって聞いたけど、この丸太くらいは切れるんじゃないかね」
「はい、やってみます」
プロトン博士の指導により、駿助は丸太へ向かって剣を打ち込みます。
「とりゃ!!」
「あー、全然切れないね。もうちょっと細い丸太にしようか」
「とりゃ!!」
「うん、とりあえず、攻撃力は期待できないと」
「・・・・・」
- 防御力の検証 -
「まぁ、ボディスーツだからね、防御力が優れているんじゃないかな」
「ですよね!」
「では、死なない程度に殴ってみよう」
「えっ・・・」
プロトン博士は木刀を持ち、助手のミランダはなぜかハリセンを手にして、二人はニヤリと口角を上げると、ボコスカと駿助を殴りつけました。
「痛い! 痛い! 痛いですって!!」
「はて、防御力が高ければたいした痛みを感じないはずなんだけどなぁ」
「博士、手加減していてよかったです。本気でやったら間違いなく死んでいたでしょう」
ボコボコにされた駿助の前で、プロトン博士が呟くと、ミランダが怖いことを言いました。
「つまり、防御力もあまり期待できないようだね」
「博士、魔法防御力が高いのかもしれません」
「さすがミランダ君、早速試してみよう」
「うわぁ、嫌な予感がする・・・」
再びプロトン博士とミランダが、ニヤリと口角を上げて駿助に迫ります。
「ファイヤー」
「あちっ、あちっ、熱いですって!!」
ミランダがファイヤーの魔法で駿助を炙りました。
「ふむ、火の魔法には強くないようだね。他の魔法もいってみる?」
「ちょ、ちょっと、勘弁してください!!」
「博士、大怪我をしても困りますし、マジックアローくらいでちょうどいいでしょう」
「さすがミランダ君、それでいこう」
「ひぃぃ!!」
怯える駿助の前で、プロトン博士とミランダは、ニヤリと口角を上げました。
「マジックアロー」
「ぐはっ!」
「ふむ、魔法耐性も期待できないようだね」
「・・・・・」
- 運動能力の検証 -
「う~ん。運動能力が向上しているかもしれないな」
「博士、変身前後でデータを取って比較しましょう」
「さすがミランダ君。それでいこう。ついでに、変身時間のデータも欲しいな」
「博士、それでは、長距離走も加えてみましょう」
「うん、それがいいね。でも、少し時間が掛かりそうだなぁ」
「博士、私がデータを取っておきますので、博士は他の勇者様方の訓練を視察してきてはどうですか?」
「さすがミランダ君。わかっているじゃないか。それじゃ、よろしくね」
なんか、話がまとまったみたいだな。
運動能力テストか。
ふふふ、パワードスーツみたいに、凄いことになってるのかも。
攻撃力と防御力があれだったから、ちょっと期待しちゃうぞ。
・・・もう痛いのは無いよね?
プロトン博士は、他の勇者の視察に向かいました。
駿助は、ミランダの指示に従い運動能力テストを行います。変身前と変身後で同じテストを行い、その差を記録していくのです。
短距離走、幅跳び、高跳び、槍投げをこなし、垂直跳び、反復横跳びと続きます。
「う~ん、変身してもあまり変わった気がしない・・・」
「いえ、数%ですが、能力が向上しているようです」
「本当ですか!」
「ええ、運動能力向上は間違いないようです。多角的なデータが欲しいので、もっといろいろな動作で検証したいと思います。ご協力ください」
「はい!」
ミランダから若干の能力向上がみられると聞いて、駿助は俄然やる気が出て来たようです。嬉しそうに次の試験に臨みます。
重量挙げ、腕立て伏せ、握力測定、懸垂、逆上がり、さらには柔軟体操、ラジオ体操と行っていきます。
更には、縄跳びに綱渡り、火の輪くぐりに玉乗りと良く分からないメニューをこなします。
「はぁ、はぁ、何で火の輪くぐりが必要なんだ? 玉乗りもだけど、まるでサーカスみたいじゃないか」
「駿助様、次は空中ブランコです」
「いや、もう、これサーカスだよね。ミランダさん、鞭持ってにやけるの止めてください!」
いささか、脱線しつつも、まる2日かけて勇者スキルの調査が行われました。
- 総括 -
「これまで入手したデータから、駿助様は勇者スキルによって変身した場合、変身前と比べて3~5%の運動能力向上がみられます。
攻撃力については、運動能力向上分の効果が上乗せされますが、それ以上の効果はないようです。
また、当初期待された防御力についてですが、物理、魔法、両面とも全くといっていいほど効果は見られませんでした」
ミランダがプロトン博士へ変身スキルの調査報告をしました。プロトン博士は、ミランダのまとめた資料を見ながら報告を受けて、ふむふむと頷いていました。
「いやぁ、変身スキルには期待していたんだよ。だけど、これは非常に残念な結果だねぇ。現時点では良い評価はできないな。全くもって残念スキルとしか言いようがないよ」
「ざ、残念スキル・・・。なんか、思ってたのと違うんだけど・・・」
プロトン博士から残念スキルと言われ、駿助はがっかりした様子で呟きました。
そして、残念スキルの噂は新米勇者の間にあっというまに広がってしまうのでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます