第6話 方針

 アーサーは、小岩井竜馬、駿助とそこそこ話をすると、じゃぁまたと言って他の勇者の方へと行ってしまいました。彼は随分と社交的なようすで、多くの勇者と話をしているようです。


 駿助も他の勇者や神官服を着たこっちの世界の人達と雑談を始めました。


 さすがに勇者召喚されたばかりとあって、どこもかしこも、こちらの世界のことが話題の中心のようです。

 魔王がどうとか、スキルがどうとか、あちらこちらで話が盛り上がっています。


 かなり時間が過ぎ去ったころ、広間に神官服を着た人達が入ってきました。

 すると、神官服の一人が勇者を呼び集め、勇者召喚機構の代表から挨拶する旨を宣言しました。

 そして、代表であろう少し高そうな神官服を着た男が前へ出てきました。


「長らく待たせたな、勇者諸君。私は勇者召喚機構の役員を務める西宮である。


 此度の勇者召喚が先ほど終わった。結果、63名もの勇者が召喚出来たこと、誠に喜ばしく思う。これは過去最高の成果である。


 我々が勇者諸君を召喚したのは、非道な殺戮を繰り返す魔王軍を討伐する為である。今、この時も、魔王軍の無差別殺戮が繰り広げられていると思うと心が痛む。


 我々人類も一致団結して戦っているが、強大な魔王軍に対抗するには、強力なスキルを持つ勇者諸君の力が必要である。


 罪もない人々を魔王軍の魔の手から救い出し、平和な世界を築き上げる為に勇者諸君の奮戦に期待する」


 ふむ、短いながらも、言いたいことを言った感じだな。

 ちょっと上から目線なのが気になるが、まぁいいか。


 それにしても、今日一日で勇者63人を召喚したとは改めて驚きだよ。

 これだけ勇者がそろっていれば、魔王軍なんてちょろいんじゃね?


 俺、帰っていいかな。

 いや、サボっていいかな。

 魔王軍と戦わないで異世界生活を満喫するって方向でいいかな。


 だって、俺の勇者スキルあれだもん。

 白タイツだよ。

 日本じゃお笑い芸人もしくは変質者だよ。


 石柱攻撃したけど、傷一つ付けられなかったしな。

 うん、よくある異世界スローライフの方向で頑張ろう。




 勇者召喚機構の代表挨拶の後、立食形式の食事が用意され、今後のスケジュールなどについて説明がありました。


 勇者達は明日から10日ほど、グループに分かれて訓練を行うということです。


 訓練の合間には、この世界のことをレクチャーする講義や、先輩勇者による体験談などの時間も設けるといいます。


 短い勇者召喚機構による訓練が終わると、勇者達は各国へと配属され、さらなる訓練を経て、魔王軍との戦いに参加することになると説明されました。


 食事が終わると、明日からの食事や宿泊施設の説明があり、勇者達には個別に部屋が割り当てられました。

 特別豪華とも言えませんが、簡素なホテルの一室のようで、清潔感のある部屋です。

 但し、廊下には兵士が巡回していて、どこか見張られているような状況でした。



「あー、なんか思ってたのと違う・・・」


 自室のベッドに体を投げ出して、駿助は呟きました。


 勇者として異世界に召喚されたのはいいのだけれど・・・。

 いいのだけれど、なんか違うんだよな。


 はっきり言って、勇者多すぎ。

 そして、俺の勇者スキルがかなりあれだった。


 まぁ、スキルについては召喚時のガチャだからしょうがない。

 しょうがないとは思うけどね。

 でも、もうちょっとって思うんだよな。


 はぁ、無いものねだりしていても仕方が無いな。

 落ち着いて、よく考えてみよう。

 

 まずは、スキルだ。

 本当に、あれってダメなスキルなのか?


 変身だよ変身。

 変身ヒーローならぬ変身勇者ってなんか凄くね?


 うん、そうだよ。

 なんかきっと、すんごい必殺技とかあったりするかも。


 もう少し頑張ってみようかな。



 さて、スキルはもう少し研究するとして、今後どうするかだよな。

 流されるままでは、勇者同士の格差が開いていくんじゃないだろうか思うんだ。


 そう、あの石柱を砕けなかったのが痛いよな。

 たぶん、あれって、勇者の実力を見ていたんじゃないかと思う。

 だとすると、攻撃力のない勇者と認識されている可能性が高い。


 うん、まずいよな。

 このままでは、雑魚モブ勇者へとまっしぐらな予感がするよ。

 折角の異世界だし、そんな事態は全力で避けたい。


 ならば、どうするか。

 強くなるしかないだろう。


 仮に勇者を止めて、異世界スローライフを送るとしても、ある程度の強さは必要だしな。


 うん、強くなるため努力あるのみだな。



 しかし、ステータスを見る術が無い上に、レベルの概念が無いと言ってたよな。

 魔物を倒して経験値を得てレベルアップとはいかないようだ。


 この世界では、魔力が強さに直結するみたいだし、魔力を扱う練習でもしてみるべきか?


 まずは魔力を感じるところから。

 そして、体内の魔力を循環させる。


 んでもって、魔法を使いまくる。

 確か、そんな感じで魔力が向上する、・・・はず?


 むむむ、アニメか漫画かラノベあたりでは、そんな感じでガンガン魔力が向上したような気がするのだが・・・。


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