第4話 スキルの威力
勇者スキルで駿助は全身白タイツに変身しました。
驚きどよめく神官服の男達。
対して、異世界より召喚された勇者達は大爆笑でした。
「ゴホン。変身スキルとは大変珍しいスキルだな。あー、見た目はあれだが、我々としては期待しているぞ」
その場を仕切っていた神官服の男が取り繕うように言いました。
いやいや、見た目があれって、結構傷つくぞ。
もう少し言い方を考えて欲しい。
いや、まぁ、俺もそっち側ならそういう反応したかもしれないけど・・・。
「まぁ、なんだ。石柱を攻撃してみてはくれないか?
君のその白服?に変身した力を見せて欲しい」
「わ、わかりました」
駿助は、恥ずかしそうに顔を真っ赤にしながら石柱の前へと歩み寄ります。
落ち着け、俺。
と、とりあえず、パンチでもしてみるか。
「とりゃ!!」
掛け声と共に渾身のパンチが石柱に当たり、ゴンと鈍い音を立てました。
しかし、石柱はビクともしません。
「くぅぅ、いってぇー!!」
駿助は涙目で、拳を抑え、蹲ってしまいました。
相当痛そうです。
対して周りの人たちは、なんともいえない視線を向けるのでした。
「えーっと、その、勇者様、素手ではなく、剣でも使ってみてはいかがでしょうか」
「や、やってみます」
駿助をここまで連れてきた神官服の男の提案に、駿助は涙ながらに頷きます。
適当に渡された剣を手に、駿助は再び石柱の前に立ちます。
ちくしょう。
カッコ悪いったらありゃしない。
見た目はともかく、チート性能を発揮してくれよ、俺の勇者スキル。
「うおりゃぁ!!!」
気合を入れた大きな声と共に渾身の力を込めて剣を振り下ろします。
ガキッ! っと音がして、石柱に当たった剣は跳ね返されて宙を舞いました。
「「「・・・・・」」」
「ぷっ、くくっ・・・」
辺りは沈黙に包まれ、一部からは笑いをこらえる声がします。
そんな中、ばつが悪そうに駿助は腕を抑えて石柱を見つめていました。
石柱には傷一つついていません。
なんか、俺だけ石柱に傷一つ付けられなかったんだけど。
俺の勇者スキルって、弱くね?
カッコ悪い上に、貧弱スキルってどうよ。
あー、これ、悪夢だわ。
もう、元の世界に帰りたい・・・。
「あーっと、これで一通り勇者スキルを見せて頂いたわけだが、あー、皆、素晴らしい威力・・・、ゴホンゴホン、えー、興味深いスキルであった。
あー、それでだ、ゴホン、今後の勇者の成長に伴い、勇者スキルも成長していくので、まー、その、なんだ、努力して頂きたい」
仕切っていた神官服の人が、苦し紛れに微妙な言葉でまとめると、勇者達は係りの人に促されるまま、訓練場から移動を始めました。
「駿助様も行きましょう」
「あ、ああ・・・」
なじみの神官服の男に促されて、駿助は生返事を返しました。
どこか、心ここにあらずといった感じです。
凹んでいてもしかたないな・・・。
えっと、この姿をどうにかしないと。
変身する時は、確か『勇者ボディ、オン』と呟いたから、おそらく・・・。
「勇者ボディ、オフ・・・」
駿助の呟きと共に、瞬時に変身が解けました。
ほっ。
取りあえず、恥ずかしいピッチリタイツ姿は何とかなった・・・。
うん、変身解けて良かったよ。
しかし、まぁ、どうなってんだ、俺のスキル・・・。
なんか、思ってたのと違うよ、とほほ。
大きな溜め息を吐きながら、駿助は他の勇者の後を追うのでした。
「勇者の皆さまはこちらでおくつろぎください」
神官服の人の言葉と共に案内された大きな広間には多くの人々がいました。
駿助達と同じく、ザ・旅人の服を着た面々も数多くいます。
広間に入った駿助達5人のうち3人の勇者達は、きょろきょろしながらも部屋の中へとばらけて行きました。
最後に広間へ入った駿助は、もう一人の勇者と並んで広間全体を眺めていました。
そこへ、ザ・旅人の服を着た金髪イケメン男が歩み寄ってきました。
「やぁやぁ、新しい勇者の到着だね。これで、本日召喚された勇者は50人になるね」
「「50人!?」」
金髪イケメン男が挨拶がてら話した言葉に、駿助達が驚きの声を上げました。
「そうさ、今朝から召喚儀式が進められて、順調に勇者が召喚されてきたというわけさ。まだまだ召喚を続けているらしいから、もう少し人数が増えそうだよ」
金髪イケメンの男はそう言って、肩を竦めてみせました。
おいおい、勇者50人って、どんだけだよ。
そんなに召喚して、どうすんだ?
5人の勇者でも多いんじゃないかと思うくらいだよ。
なんか、思ってたのと違うな。
っていうか、俺の勇者スキルって、かなりあれだったけど、大丈夫なのか?
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