第3話 勇者スキル

 しばらく待たされた後、神官服の男が返って来ました。


「大変お待たせいたしました、駿助様。こちらが勇者カードでございます」

「ありがとうございます」


「勇者カードは駿助様の身分を証明するものですので、くれぐれも無くさないように注意してください」


「万が一、紛失した場合はどうすればいいですか?」

「再発行には応じますが、審査等にかなりの時間が掛かります。その間、駿助様の身分が証明できませんので、いろいろと不便なこととなるでしょう」


「不便なことって、例えばどんなことですか?」

「国境を越えられなかったり、検問で捕まったり、城塞都市に入れなかったりと様々です。宿によっては宿泊を拒否される場合もあるでしょう。国によっては武器を購入することもできません」


「あ、はい。無くさないように注意します・・・」

「それがよろしいでしょう。再発行には金銭的にもペナルティが課せられますので」


 金銭的にペナルティって、どんだけ万円かかるの?

 そのニヤリとするの止めてください。

 ちょっと怖いです。


「それでは駿助様、参りましょうか」

「どちらへ?」

「訓練場です。勇者としてのお力をご披露頂きます」


「えーっと、いったい何をするのですか?」

「訓練場で担当の者がご説明致しますので。ささ、こちらです」


 訓練場でいったい何をするのだろうか?

 体を動かすのは確かだろうな。

 いきなり戦闘とか?

 いやいや、ろくに喧嘩もしたことないんだよ、俺・・・。




 神官服の男に連れられて、訓練場へとやってきました。

 訓練場には、既に何人か集まっています。

 そして、駿助の後にも数名やってきました。


 俺と同じ、ザ・旅人の服を着た人がいるな。

 彼らも召喚された人達だろうか。

 むぅ、勇者って一人だけじゃなかったんだな。


「本日召喚された勇者達は、こちらへ集まってください」


 神官服を着た人の一人が声を上げると、召喚された勇者5名が集まって来ました。

 皆が集まったところで、少し偉そうな人が勇者達へと声を掛けます。


「君達勇者は、魔物を討伐するのに適した勇者スキルを使うことが出来るはずだ。ここで、それを披露して頂きたい。

 ・・・とはいえ、勇者スキルはどのようにすれば使えるのかピンとこない者もいるだろう。勇者スキルは勇者の魂に刻み込まれたスキルだ。心を静めて自身の魂に問いかけてみて欲しい。さすれば、おのずとスキルのイメージが浮かび上がってくるであろう」


 勇者スキル・・・。

 そういえば、そんな話があったな。

 確か召喚される際に与えられるガチャスキルだったはず。


「あのう、剣を使うスキルみたいなんですけど・・・」

「あちらにさまざまな種類の武器を用意してあるので、好きなものを使ってもらって構わない。各自、勇者スキルであそこに見える石柱を攻撃して頂きたい」


 おっと、あの男、早速勇者スキルに目覚めたのか?

 武器は用意してあると。

 そして、あのデカい石柱が的ということか。


 この場を取り仕切る神官服の男が示す先に、多彩な武器が多数と大きな石柱が5つ用意されています。

 それではとばかりに、若い男が剣を取り、石柱の前へと向かいました。


「斬鉄剣!!」


 気合一閃、振り下ろす剣が淡い光を伴い、石柱を切りつけます。

 おお、っというどよめきの中、石柱に切れ目が入り、一部がポロリと崩れ落ちました。


 うほっ、剣がうっすらと光ったか!?

 なんかファンタジーしてる!

 欲を言えば、すっぱりと切り落として欲しかったな。


 おっと、俺も自分の勇者スキルを見せなきゃだったな。

 心を静めて、魂に問いかけるんだったか?

 とにかくやってみよう。

 ・・・・・。


 旅人の服を着た勇者達が順番にスキルを披露します。


「バレット!」

 魔法の玉が、石柱へと叩きつけられます。


「スラッシュ!」

 剣撃が石柱を穿ちます。


「爆裂剣!!」

 剣撃が石柱に当たると、ドカンと爆発が起こり、石柱を粉々に砕きました。

 おおぅ!!と一際大きなどよめきが巻き起こしました。


 そして、皆の注目が駿助へと集まって来ました。


 ううっ、他の勇者が気になって集中できなかった。

 やばい、スキルのイメージわかねぇぞ。

 皆の視線が痛い!


 むむむむむぅ・・・。

 はっ!? これかも!


「勇者ボディ、オン・・・」


 控えめに呟いたと同時に、駿助の体は淡い光に包まれて、一瞬のうちに変身しました。


「「「「おおぅ!!」」」」


「ぶはっ! なんだありゃ」

「ぷー、くすくす」

「わはははははは」


 どよめく神官服の男達。

 そして笑い転げる勇者の面々。


 駿助の姿は、全身白タイツへと変身していたのです。

 当の本人は、周りの反応に戸惑いながら、自身の体を見下ろしました。


「なんじゃこりゃ!?」

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