第2話 異世界到着
すうっと意識が覚醒し、目を開いたとき、ローブを着た人たちに囲まれていました。
石造りの部屋の中、足元には、魔法陣が描かれています。
目の前にいた神官服を着た男がすぐに声を掛けてきました。
「ようこそいらっしゃいました、勇者さま。まずはこちらへどうぞ」
「えっと、ここは・・・」
「申し訳ございません。ここは慌ただしいので、こちらの方へお願いします」
神官服の男は質問を遮り、急ぎついてくるように促します。
部屋の中では、何人か倒れた人がいて、介抱する人たちがバタバタとしています。
た、たしかに、なんか慌ただしいな。
事故でもあったような感じに見える。
この状況って、まさか、俺が引き起こしたわけじゃないよね・・・。
部屋を出て、石造りの渡り廊下を歩きながら、神官服の男が話しかけて来ました。
「勇者様、あなたは人類を脅かす魔王軍を倒すべく異世界より召喚されました。是非そのお力で、我々人類をお救い頂きたい」
魔王軍を倒す・・・。
ああ、そんな話だったなぁ。
「もちろん、出来る限りのお手伝いをさせて頂きます」
「さすが、勇者様、よろしくお願い致します」
神官服の男が嬉しそうに頭を下げました。
勇者のチートスキルで世界を救う。
うん、いいな。
実にいい。
むふふ、これぞ王道ストーリー展開だな。
「勇者様には、まず勇者登録をしていただきます」
「勇者登録?」
「ええ、召喚された勇者であることを証明する勇者カードを作ります。とは言いましても、名前を登録するだけです。元の世界の名前でもいいですし、心機一転、新たな名前で登録されても構いません。名前を考える時間が必要であれば、お待ち致しますので、ごゆっくりお考えください」
ほほう、名前の登録か。
ゲームを始める時に自分のキャラクター名を決める感じかな?
折角だから、新しい名前でいきたいかな。
いや、しかし、名前を変えると突然呼ばれた時に返事ができなかったりするかもな。
それじゃぁ、名前はそのままで、苗字だけ変えようかな。
うん、そうしよう。
どんな苗字がいいか・・・。
珍しいのは止めておきたいが、あまりにありきたりなのも避けたいな。
う~ん・・・。
「勇者様には、こちらの部屋でしばしお待ちいただきます」
案内された部屋は、高そうなソファーとローテーブルが設えられた応接間でした。
入ってすぐの壁には大きな姿見があります。
「えっ!? 頭が真っ白じゃん!」
鏡に映る俺の髪の毛が真っ白だよ。
しかも坊主というか丸刈りじゃん。
なにこれ!?
「勇者様、それは召喚時に髪の毛の色が変化しただけであります」
「そうなの?」
「ええ、勇者様の髪の色は召喚される際に、こちらの世界の人間に合わせて変化しているのです。過去の勇者様方も同様です」
「こっちの世界の人って、髪の毛が真っ白なのですか?」
いや、あんたは禿頭みたいだけどな。
他の人はどうなの?
「赤、青、緑など、様々な色をしております。そのものの持つ魔力の性質により様々な色が現れるとされています」
「そうですか。髪型なんかも召喚時に変わるものですか?」
「ええ、そういう勇者様が多いですよ」
「まさか、勇者って髪の毛が伸びないなんてことは・・・」
「ははは、勇者様でも髪の毛は伸びますよ。ただ、伸びるのが遅い勇者様もおられるようですが」
「そ、そうですか・・・」
髪の毛、伸びなかったらどうしよう。
いっそのこと剃っちまうか?
いや、伸びることを祈ろう・・・。
そういやぁ、若返るって話だったけど・・・。
うん、小皺も無くなってるし、髭もない。
ちゃんと若返っているみたいだが・・・。
「それでは、お名前が決まりましたら、お声がけください」
「あ、もう決めました」
歩いているうちにな。
「そうですか。では、お伺いします」
神官服の男は、左腕に抱えていた紙束とペンをサッと取り出し、メモを取る姿勢を取りました。
「森山駿助でお願いします」
「モリヤマシュンスケですね。ファミリーネームやミドルネームなどはございますか?」
「あ、『森山』がファミリーネームで、『駿助』が名前です」
「なるほど、モリヤマがファミリーネームで、シュンスケがお名前ですね」
「そうです」
「そろでは、モリヤマ シュンスケで勇者登録を致します」
「よろしくお願いします」
「私は勇者登録をしてまいりますので、しばらくこの部屋でおくつろぎください。何かございましたら、部屋の外に立つ兵士にお知らせください」
そう言って、神官服の男は部屋を出て行きました。
駿助は一人、姿見の前に立ち、自身の姿をまじまじと眺めます。
「服装は、ザ・旅人の服って感じだな。簡素だけど着心地は悪くない。 だけど、頭が目立つなぁ。丸刈り白髪って老けて見えるか?」
そう呟いて、食い入るように鏡を見ます。
「いや、顔つきは若い。というか、童顔?
15歳っていやぁ・・・あ、中学生か。やべ、設定間違えたかも」
顎に手を当て、困ったように呟きます。
「くっ、なんか思ってたのと違う!!」
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