弱小勇者の生きる道
すずしろ ホワイト ラーディッシュ
第1章 勇者召喚編
第1話 異世界からの呼び声
『異世界より勇者召喚が発動されました。あなたは召喚に応じますか?』
夢うつつのまどろみの中、その問いは頭の中に直接語り掛けられるような、とても不思議な感覚でした。
さらに不思議なことに、その問いが誰からのものであるかもわからないのに一切の疑念を抱くこともありませんでした。
異世界より勇者召喚???
ってことは俺は死んだのか?
そんな覚えは無いのだが・・・。
『あなたは死んでいません』
・・・はて、死んでいないのに異世界行きか。
そんなことってあるのか?
『召喚するだけですので問題ありません』
問題ないのか・・・。
しかし、この世界から俺は消えてしまうってことだよな。
謎の行方不明事件って扱いになるのか?
なんか嫌だな。
『この世界のあなたはそのまま残ります。あなたの魂をコピーして召喚するのでこちらの世界のあなたには何の影響もありません』
ほう、魂をコピーするのか。
凄いな、それ。
それで、こっちの世界に影響はないと。
ノーリスクってことでいいのかな?
『こちらの世界のあなたにとってはノーリスクです。ですが、異世界へ召喚された魂はその限りではありません。魔王軍との戦いで死んでしまうこともあるでしょう』
なるほど、魔王軍との戦う勇者として召喚されると。
うん、こちらの世界の俺は無事なようだし、異世界に行くのもありかもしれないな。
その手の小説やアニメは好きだしね。
あ、でも、俺40超えてるし、体力的に戦闘なんて無理じゃね?
『魂が召喚される際に、若い肉体を構築しますで問題ありません』
マジで!?
肉体が若返るのって、かなり魅力的だな。
最近体力落ちてきて辛いのよ。
えっと、ちなみに何歳くらいの体になるんですか?
『18歳を予定していますが、ご希望があれば承ります』
そうかそうか、18歳か。そりゃぁいい。
でも、成長を考えると、もう少し若い方がいいか?
だが、若すぎても苦労しそうか。
悩ましいところだな・・・。
ちなみに異世界での成人年齢はいくつですか?
『15歳です』
そっかぁ。
じゃぁ、ギリギリ大人の15歳でお願いします。
お酒飲みたいし。
『了解しました。15歳の肉体で異世界勇者召喚に応じるということでよろしいですか』
あ、ちょっと待って。
異世界物の定番のチート能力ってあるんですか?
『勇者スキルが付与されます』
勇者スキルか・・・・。
それって、具体的にはどんなスキルなんですか?
『さまざまな種類のスキルがありますので、特定してお応えすることは出来ません』
ほほう、いろんなスキルがあるのか。
それって、こんなスキルが欲しいですと希望すれば叶えてくれますか?
『それは出来ません。勇者召喚で異世界に肉体を生成する過程において魂に応じた勇者スキルが付与されます。どのようなスキルになるかは予想も出来ません』
あー、異世界へ行ってからでないと分からないのかぁ。
ようするに、ガチャだな。
スキルの数は決まってるんですか?
『付与されるスキルは1つだけです。ただし、勇者の成長に応じてスキルも変化しますので、派生スキルが生じる場合があります』
なるほど、派生スキルか。
面白いものだな。
うん、どんなスキルが与えられるかは楽しみにしておこう。
『それでは、15歳の肉体で異世界勇者召喚に応じるということでよろしいですか』
あ、そうだ。
もう一つ確認したい。
異世界の言語って、日本語じゃないよね。
召喚されたはいいけど、言葉が通じないなんてことになったら困るんだけど。
これ大事。
『新たな肉体を生成する際、異世界言語が話せるようになりますので問題ありません。ただし、読み書きは出来ませんので、文字の学習をお勧めします』
うん、最低限の言語スキルは勇者スキルとは別に付与されるってことだな。
納得です。
『それでは、15歳の肉体で異世界勇者召喚に応じるということでよろしいですか』
YES。
OKです。
よろしくお願いします。
『では、勇者召喚を開始します』
異世界かぁ、楽しみだなー。
勇者といえば主人公確定だし、ガンガン魔物を倒してレベルを上げて無双してやろう。綺麗なエルフのお姉さんやドワーフの鍛冶屋も定番だな。
そんでもって、冒険の途中ではヒロイン達とキャッキャウフフの展開が待ってたりして・・・。
あー、なんかテンション上がって・・・・
逸る気持ちとは裏腹に、すぅっと意識が遠のいていきました。
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